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番外編
撮影に行こう!
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「空良、俺も準備できたぞ。撮影に行こうか」
着替えを済ませて空良の前に出ると、
「わぁーっ!! 寛人さん、すっごくかっこいいですっ!!」
と目を輝かせて俺を見つめてくれた。
「空良のドレスと合うように仕立てたんだが、気に入ってくれたか?」
「はい。もちろんです! うわぁーっ、本当に格好いいっ!」
嬉しそうに俺を見てくれる空良を見ていると、なんだか意地悪をしてやりたくなる。
「そんなに格好いいと言われると、普段が格好悪いのかと不安になるな」
「えっ、あっ、ちが――っ、寛人さんはいつでも格好いいです!!!」
「本当にそう思ってるか?」
「はいっ! だって、寛人さんは僕だけの王子さまだから」
「――っ!!」
少し拗ねたふりをして言ってみただけなのに、こんなにも可愛らしく言われたら抑えられなくなるな。
「空良も俺だけの美しい花嫁だよ」
「んんっ……んっ」
空良の甘い唇にチュッと重ね合わせる。
軽く重ね合わせるだけで我慢しようと思ったが、あんなに可愛いことを言われて我慢できるはずもない。
「ひ、ろとさん……っ」
「ごめん、夜まで我慢するつもりだったんだが……空良が可愛すぎて……。早く出ようか」
もうこれ以上二人でいると、本当に抑えが効かなくなる。
俺は空良の小さくて可愛い足に少しヒールのある靴を履かせ、さっと抱きかかえて部屋を出た。
「待たせてしまって済まない」
部屋の外で待っていたエミリーさんに声をかけると、
「いいえ。お美しい花嫁さまですから当然でございますよ」
とにっこり微笑まれる。
「あ、ソラさま。ティアラを少しお直しいたしましょう。ユウキさま、こちらにお願いいたします」
廊下に置かれた、背もたれのない綺麗なアンティークのスツールを示され、その通りに空良を座らせると、
「ソラさま。目を瞑っていただけますか?」
と声をかける。
空良が目を瞑ると、マリアティアラを少し動かしながらさっと口紅を塗り直す。
そのあまりの早技に驚いてしまう。
どうやら俺たちがキスをしていたことはエミリーさんにはバレていたようだ。
それを空良に指摘すれば、はずがしがることはわかっている。
だから、マリアティアラに意識を向かせている間に口紅を直したんだ。
ああ、さすがだな。
エミリーさんの心遣いに、彼女への信頼度がさらに高まっていく。
やはりロレーヌ総帥が選んでくれる人は、最高だ。
空良とエミリーさんに気を取られていて、気付くのが遅れたが少し離れた場所で俺たちの様子を気にしている人がいる。
あの機材……ああ、カメラマンか。
俺たちが出てきたらすぐに挨拶しようとここで待っていてくれたんだろう。
申し訳なかった。
『今日のカメラマンの方ですね。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。私は悠木。そして彼が今日の花嫁の空良です。素晴らしい腕をお持ちだと伺っています。どうぞよろしく』
『おおっ、フランス語がお上手ですね。ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。私はアントワーヌと申します。本日大役をいただきとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いします』
爽やかな笑顔を浮かべる彼は、かなりのイケメンだ。
空良のそばに置いておくことも躊躇してしまいたくなるが、ロレーヌ総帥から、彼にはすでに可愛い夫がいると聞いている。
彼からは、俺や観月たちと同等の匂いを感じる。
きっとたった一人の最愛に一途に向き合うタイプなのだろう。
まぁ、そうでもなければ、ロレーヌ総帥が彼を選ぶはずがないからな。
「寛人さん……」
「ああ、悪い。ティアラの直しは終わったか?」
「はい。あの、この人……」
「今日のカメラマンさんだよ」
俺が彼とフランス語で話をしていたから声をかけられなかったんだろう。
初対面の彼に少し怯えているようだが、どうだろう。
そう思っていると、
「ハじめ、ましテ! あんとワーヌ、デス! ワタシ、ニホン、だいすき!」
と満面の笑みを浮かべ、辿々しい日本語で空良に挨拶してくれた。
「わぁっ! すごいっ! アントワーヌさん、日本語上手!」
「ふふっ。マダマダ、デス。でも、モット、ジョーズ、なるネ」
空良にパチンとウィンクを向けてきたのはいただけないが、空良はウィンクには全く靡いていないようだ。
やはり空良は俺しか愛情を感じないんだよな。
『アントワーヌさん、日本語はどこで勉強されたんですか?』
『実は、私の夫は日本人なのですよ。ここで生まれ育ったから、普段はフランス語で会話をしていますが、今回お二人のカメラマンに選んでいただいたので、夫に教えてもらいました』
『ああ、なるほど。そういうことですか。いいパートナーですね』
『ええ、それはもちろん』
にこやかに微笑む彼を見ると、本当に心配はいらないなとホッとした。
着替えを済ませて空良の前に出ると、
「わぁーっ!! 寛人さん、すっごくかっこいいですっ!!」
と目を輝かせて俺を見つめてくれた。
「空良のドレスと合うように仕立てたんだが、気に入ってくれたか?」
「はい。もちろんです! うわぁーっ、本当に格好いいっ!」
嬉しそうに俺を見てくれる空良を見ていると、なんだか意地悪をしてやりたくなる。
「そんなに格好いいと言われると、普段が格好悪いのかと不安になるな」
「えっ、あっ、ちが――っ、寛人さんはいつでも格好いいです!!!」
「本当にそう思ってるか?」
「はいっ! だって、寛人さんは僕だけの王子さまだから」
「――っ!!」
少し拗ねたふりをして言ってみただけなのに、こんなにも可愛らしく言われたら抑えられなくなるな。
「空良も俺だけの美しい花嫁だよ」
「んんっ……んっ」
空良の甘い唇にチュッと重ね合わせる。
軽く重ね合わせるだけで我慢しようと思ったが、あんなに可愛いことを言われて我慢できるはずもない。
「ひ、ろとさん……っ」
「ごめん、夜まで我慢するつもりだったんだが……空良が可愛すぎて……。早く出ようか」
もうこれ以上二人でいると、本当に抑えが効かなくなる。
俺は空良の小さくて可愛い足に少しヒールのある靴を履かせ、さっと抱きかかえて部屋を出た。
「待たせてしまって済まない」
部屋の外で待っていたエミリーさんに声をかけると、
「いいえ。お美しい花嫁さまですから当然でございますよ」
とにっこり微笑まれる。
「あ、ソラさま。ティアラを少しお直しいたしましょう。ユウキさま、こちらにお願いいたします」
廊下に置かれた、背もたれのない綺麗なアンティークのスツールを示され、その通りに空良を座らせると、
「ソラさま。目を瞑っていただけますか?」
と声をかける。
空良が目を瞑ると、マリアティアラを少し動かしながらさっと口紅を塗り直す。
そのあまりの早技に驚いてしまう。
どうやら俺たちがキスをしていたことはエミリーさんにはバレていたようだ。
それを空良に指摘すれば、はずがしがることはわかっている。
だから、マリアティアラに意識を向かせている間に口紅を直したんだ。
ああ、さすがだな。
エミリーさんの心遣いに、彼女への信頼度がさらに高まっていく。
やはりロレーヌ総帥が選んでくれる人は、最高だ。
空良とエミリーさんに気を取られていて、気付くのが遅れたが少し離れた場所で俺たちの様子を気にしている人がいる。
あの機材……ああ、カメラマンか。
俺たちが出てきたらすぐに挨拶しようとここで待っていてくれたんだろう。
申し訳なかった。
『今日のカメラマンの方ですね。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。私は悠木。そして彼が今日の花嫁の空良です。素晴らしい腕をお持ちだと伺っています。どうぞよろしく』
『おおっ、フランス語がお上手ですね。ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。私はアントワーヌと申します。本日大役をいただきとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いします』
爽やかな笑顔を浮かべる彼は、かなりのイケメンだ。
空良のそばに置いておくことも躊躇してしまいたくなるが、ロレーヌ総帥から、彼にはすでに可愛い夫がいると聞いている。
彼からは、俺や観月たちと同等の匂いを感じる。
きっとたった一人の最愛に一途に向き合うタイプなのだろう。
まぁ、そうでもなければ、ロレーヌ総帥が彼を選ぶはずがないからな。
「寛人さん……」
「ああ、悪い。ティアラの直しは終わったか?」
「はい。あの、この人……」
「今日のカメラマンさんだよ」
俺が彼とフランス語で話をしていたから声をかけられなかったんだろう。
初対面の彼に少し怯えているようだが、どうだろう。
そう思っていると、
「ハじめ、ましテ! あんとワーヌ、デス! ワタシ、ニホン、だいすき!」
と満面の笑みを浮かべ、辿々しい日本語で空良に挨拶してくれた。
「わぁっ! すごいっ! アントワーヌさん、日本語上手!」
「ふふっ。マダマダ、デス。でも、モット、ジョーズ、なるネ」
空良にパチンとウィンクを向けてきたのはいただけないが、空良はウィンクには全く靡いていないようだ。
やはり空良は俺しか愛情を感じないんだよな。
『アントワーヌさん、日本語はどこで勉強されたんですか?』
『実は、私の夫は日本人なのですよ。ここで生まれ育ったから、普段はフランス語で会話をしていますが、今回お二人のカメラマンに選んでいただいたので、夫に教えてもらいました』
『ああ、なるほど。そういうことですか。いいパートナーですね』
『ええ、それはもちろん』
にこやかに微笑む彼を見ると、本当に心配はいらないなとホッとした。
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