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番外編
両親との会食 <後編>
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「――っ!!」
空良の言葉に驚いている俺の目の前で
「あらあら、うふふっ」
と嬉しそうな母さんの顔が見える。
「寛人、お前……ニヤケすぎだぞ」
「そんなこと――っ」
「ははっ。鏡でもみてきたらどうだ?」
くそっ、親父と母さんに揶揄われるなんて子どもの時以来じゃないか?
でも……空良が言ってくれたことが嬉しくてたまらない。
親父たちの前で俺を好きだと言ってくれるなんて思ってもみなかったからな。
「あ、あの……寛人、さん……僕……」
ああ、まずい空良の目が潤んでる。
もしかして何かまずいことでも言ってしまったのかと勘違いしているんじゃないか?
「違うぞっ! 空良! 空良が俺を好きだと言ってくれたのが嬉しいだけなんだ」
慌てて、空良を抱きしめながら、そういうと空良は自分が言ったことを思い出したようで一気に顔を赤らめた。
ということはさっきの言葉は無意識だったのか?
まずい、相当嬉しいんだが……。
「空良くん、寛人のことそんなに好きになってくれるなんて嬉しいわ。寛人はね、空良くんが初恋なのよ」
「えっ? は、つこい?」
「ええ。だから、さっき空良くんから大好きだって言われて、こんなに喜んでるのよ」
「母さんっ!!」
「ふふっ。いいじゃないの。寛人のこんな姿見られるなんて私も嬉しいもの」
はぁーっ。
こうなったらどうしようもない。
「寛人さん……ほんと?」
「ああ、言ったろ? こんなに好きになった人は空良以外いないって。初めてなんだよ、人を好きになったこと自体が。空良だけだ、俺の心を揺さぶるのは」
その言葉に空良は涙を流して喜び、親父と母さんは嬉しそうに俺たちを見つめていた。
「空良、ずっと一緒にいてくれ」
「――っ、はい。僕も寛人さんとずっと一緒にいたい!!」
腕の中の空良を思いっきり抱きしめると、
「二人の心からの気持ちも聞かせてもらったし、これで私たちは本当の家族だな」
と親父の声が聞こえた。
「寛人、空良くんを決して泣かせるんじゃないぞ!」
「ああ、わかってる。約束するよ」
「じゃあ、そろそろ食事にしましょう。空良くんもお腹すいたでしょ?」
「あの、僕――『きゅるるっ』」
可愛らしい空良の腹の音が響き、微笑ましく見つめるが当の本人は恥ずかしそうにお腹を押さえている。
「気にしなくていいよ、家族だろ」
そう言ってやると、空良はまだほんのり頬を染めたまま嬉しそうに笑った。
ダイニングに連れていくと、もうすでにたくさんの手料理が並べられていた。
親父……張り切りすぎだろ。
「わーっ! 美味しそうっ!!」
「だろう? 腕によりをかけて作ったんだよ。無理しない程度に好きなものだけ食べなさい」
「はい、ありがとうございます」
「寛人、こっちに」
そうだ、ステーキの焼き方を教えてもらうんだった。
だが、空良を置いていくのはな……。
「寛人、私がいるから早く寛海さんのところに行ってきなさい」
いや、母さんのそばに置いていく方が心配……とは言えそうにないな。
渋々母さんにお願いして、親父の元に向かう。
「茜音なら大丈夫だ、暴走はしてもちゃんとわかってはいるから」
やはり親父は俺の心配をわかってくれている。
「それよりしっかり見て覚えておけ」
そう言われて親父がステーキを焼くのをじっくりとインプットする。
今度は家で俺が焼いてやろう。
出来上がったステーキを持って空良の元に戻ると、空良は一口ずついろんな種類を味わっていた。
「空良、どうだ。美味しいか?」
「はい。どれも美味しいけど……これ、食べたことない味だけどすっごく美味しかったです」
「あ、それ……」
「ふふっ。鹿肉のテリーヌは寛人の大好物よね。やっぱりそういうところの相性もピッタリなのね」
そんなところまで似ているのか。
それだけでもすごく嬉しい。
「空良、これも食べてみてくれ。美味しいぞ」
「わぁっ、お肉だ! 柔らかくてとろける~!!」
空良の嬉しそうな声と表情を見ているだけで親父も母さんも満面の笑みになっている。
こんな幸せな食卓……何年ぶりだろう。
食事を終え、デザートを食べながら父さんが徐に口を開いた。
「それでお前は空良くんの籍をどうするつもりなんだ?」
「夫婦として結婚はまだできないから、俺の籍に入れようかと思っている。大学に行きたいと言っているから、入学までに悠木の苗字にするつもりだ」
「なるほど。それなら、空良くんは私たちの籍に入れたらいい」
「親父たちの?」
「ああ、戸籍上はお前と空良くんは兄弟になるが、その方が何かと面倒がなくていい。私たちの遺産も空良くんにあげられるし、久嗣のところもそうしてると言ってたしな」
そうだ。
観月もそう言っていたな。
「空良、親父たちが戸籍上は空良の両親ということになるがいいか?」
「そんな……っ、僕の方がお願いしたいくらいです」
「いいのか?」
「だって……寛人さんとお父さんとお母さんと本当の家族になれるんですよね? そんなに嬉しいことないです!」
「空良くんがそう言ってくれるなら、すぐにでもそうしよう。もう意思確認も取れたし、今日から空良くんは私たちの息子だ。いつでも来ていいんだからね」
「――っ! ありがとうございます、お父さん……」
「ああ、ずるい! 私もお母さんって言って」
「ありがとうございます、お母さん」
「ふふっ。可愛い。ねぇ、空良くん。ここに空良くんのお部屋を作ったの。一緒に観に行きましょう。そして今日はこのまま泊まったらいいわ」
「ちょ――っ、母さんっ!!」
俺が止める間も無く、母さんはさっさと空良を連れて部屋に行ってしまった。
「寛人、今日は諦めろ。茜音はずっと楽しみにしていたんだからな」
それはわかってるけど……。
今日は家族になった記念に朝まで愛し合おうかと思っていたのに……。
向こうから空良の嬉しそうな声が聞こえる。
まぁ仕方ないか。
久しぶりに隣に眠るだけも悪くない。
俺たちはこれからずっと一緒なんだから……。
空良の言葉に驚いている俺の目の前で
「あらあら、うふふっ」
と嬉しそうな母さんの顔が見える。
「寛人、お前……ニヤケすぎだぞ」
「そんなこと――っ」
「ははっ。鏡でもみてきたらどうだ?」
くそっ、親父と母さんに揶揄われるなんて子どもの時以来じゃないか?
でも……空良が言ってくれたことが嬉しくてたまらない。
親父たちの前で俺を好きだと言ってくれるなんて思ってもみなかったからな。
「あ、あの……寛人、さん……僕……」
ああ、まずい空良の目が潤んでる。
もしかして何かまずいことでも言ってしまったのかと勘違いしているんじゃないか?
「違うぞっ! 空良! 空良が俺を好きだと言ってくれたのが嬉しいだけなんだ」
慌てて、空良を抱きしめながら、そういうと空良は自分が言ったことを思い出したようで一気に顔を赤らめた。
ということはさっきの言葉は無意識だったのか?
まずい、相当嬉しいんだが……。
「空良くん、寛人のことそんなに好きになってくれるなんて嬉しいわ。寛人はね、空良くんが初恋なのよ」
「えっ? は、つこい?」
「ええ。だから、さっき空良くんから大好きだって言われて、こんなに喜んでるのよ」
「母さんっ!!」
「ふふっ。いいじゃないの。寛人のこんな姿見られるなんて私も嬉しいもの」
はぁーっ。
こうなったらどうしようもない。
「寛人さん……ほんと?」
「ああ、言ったろ? こんなに好きになった人は空良以外いないって。初めてなんだよ、人を好きになったこと自体が。空良だけだ、俺の心を揺さぶるのは」
その言葉に空良は涙を流して喜び、親父と母さんは嬉しそうに俺たちを見つめていた。
「空良、ずっと一緒にいてくれ」
「――っ、はい。僕も寛人さんとずっと一緒にいたい!!」
腕の中の空良を思いっきり抱きしめると、
「二人の心からの気持ちも聞かせてもらったし、これで私たちは本当の家族だな」
と親父の声が聞こえた。
「寛人、空良くんを決して泣かせるんじゃないぞ!」
「ああ、わかってる。約束するよ」
「じゃあ、そろそろ食事にしましょう。空良くんもお腹すいたでしょ?」
「あの、僕――『きゅるるっ』」
可愛らしい空良の腹の音が響き、微笑ましく見つめるが当の本人は恥ずかしそうにお腹を押さえている。
「気にしなくていいよ、家族だろ」
そう言ってやると、空良はまだほんのり頬を染めたまま嬉しそうに笑った。
ダイニングに連れていくと、もうすでにたくさんの手料理が並べられていた。
親父……張り切りすぎだろ。
「わーっ! 美味しそうっ!!」
「だろう? 腕によりをかけて作ったんだよ。無理しない程度に好きなものだけ食べなさい」
「はい、ありがとうございます」
「寛人、こっちに」
そうだ、ステーキの焼き方を教えてもらうんだった。
だが、空良を置いていくのはな……。
「寛人、私がいるから早く寛海さんのところに行ってきなさい」
いや、母さんのそばに置いていく方が心配……とは言えそうにないな。
渋々母さんにお願いして、親父の元に向かう。
「茜音なら大丈夫だ、暴走はしてもちゃんとわかってはいるから」
やはり親父は俺の心配をわかってくれている。
「それよりしっかり見て覚えておけ」
そう言われて親父がステーキを焼くのをじっくりとインプットする。
今度は家で俺が焼いてやろう。
出来上がったステーキを持って空良の元に戻ると、空良は一口ずついろんな種類を味わっていた。
「空良、どうだ。美味しいか?」
「はい。どれも美味しいけど……これ、食べたことない味だけどすっごく美味しかったです」
「あ、それ……」
「ふふっ。鹿肉のテリーヌは寛人の大好物よね。やっぱりそういうところの相性もピッタリなのね」
そんなところまで似ているのか。
それだけでもすごく嬉しい。
「空良、これも食べてみてくれ。美味しいぞ」
「わぁっ、お肉だ! 柔らかくてとろける~!!」
空良の嬉しそうな声と表情を見ているだけで親父も母さんも満面の笑みになっている。
こんな幸せな食卓……何年ぶりだろう。
食事を終え、デザートを食べながら父さんが徐に口を開いた。
「それでお前は空良くんの籍をどうするつもりなんだ?」
「夫婦として結婚はまだできないから、俺の籍に入れようかと思っている。大学に行きたいと言っているから、入学までに悠木の苗字にするつもりだ」
「なるほど。それなら、空良くんは私たちの籍に入れたらいい」
「親父たちの?」
「ああ、戸籍上はお前と空良くんは兄弟になるが、その方が何かと面倒がなくていい。私たちの遺産も空良くんにあげられるし、久嗣のところもそうしてると言ってたしな」
そうだ。
観月もそう言っていたな。
「空良、親父たちが戸籍上は空良の両親ということになるがいいか?」
「そんな……っ、僕の方がお願いしたいくらいです」
「いいのか?」
「だって……寛人さんとお父さんとお母さんと本当の家族になれるんですよね? そんなに嬉しいことないです!」
「空良くんがそう言ってくれるなら、すぐにでもそうしよう。もう意思確認も取れたし、今日から空良くんは私たちの息子だ。いつでも来ていいんだからね」
「――っ! ありがとうございます、お父さん……」
「ああ、ずるい! 私もお母さんって言って」
「ありがとうございます、お母さん」
「ふふっ。可愛い。ねぇ、空良くん。ここに空良くんのお部屋を作ったの。一緒に観に行きましょう。そして今日はこのまま泊まったらいいわ」
「ちょ――っ、母さんっ!!」
俺が止める間も無く、母さんはさっさと空良を連れて部屋に行ってしまった。
「寛人、今日は諦めろ。茜音はずっと楽しみにしていたんだからな」
それはわかってるけど……。
今日は家族になった記念に朝まで愛し合おうかと思っていたのに……。
向こうから空良の嬉しそうな声が聞こえる。
まぁ仕方ないか。
久しぶりに隣に眠るだけも悪くない。
俺たちはこれからずっと一緒なんだから……。
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大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
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