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番外編
両親との会食 <前編>
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「空良、明日は病院が終わったら出かけよう」
「どこにいくんですか?」
「俺の両親が空良に会いたがってるんだ」
「えっ……寛人さんの、お父さんとお母さんが、僕に?」
「そうだ。空良とこれから先の人生を歩んでいくって約束しただろ? そうなったら、俺の両親は空良の両親でもあるわけだからな」
「僕の、両親……」
俺の言葉に空良は急に俯き、肩を震わせた。
もしかして勝手に話したことを怒っているのか?
それとも……。
亡くなったとはいえ、空良にとっての両親は唯一の存在だろうからな。
急に俺の両親を自分の両親のように思えというのは無理かもしれない。
「いや、無理に親と思えと言ってるんじゃないんだ。ただ、うちの親は息子の伴侶だから、空良を本当の息子だと思ってくれるみたいだから……ごめん、空良が嫌なら明日の話はやめておこう」
俺は慌てて空良を抱きしめながら落ち着かせようと背中を優しく撫でた。
「ちが――っ、僕……嬉しくて……」
「えっ? 嬉しい?」
「寛人さんのお父さんとお母さんが僕を息子だと思ってくれるなんて……思ってなかったから……」
「空良……」
「佳都さんが綾城さんのご両親から本当の息子のように思われてるのを見て、すごく羨ましかったんです……。でも、僕……高校も卒業してないし、寛人さんの役にも立ててないから……だから、一生懸命勉強して……それで大検に受かったら、寛人さんにお願いしようと思ってたんです。ご両親に会わせて欲しいって……それで僕が寛人さんのそばにいるのを認めて欲しいって……ずっと思ってたから……だから……」
「空良……だからあんなにも必死に勉強をしていたのか??」
俺の質問に頷いて答える空良がいじらしくてたまらない。
「ああ、俺はバカだな。空良がそんなことを思っているのも知らずに……」
空良がこんなにも思ってくれていたのが嬉しくて、俺はひたすらに空良を抱きしめ続けた。
「もっと早く両親に話しておけばよかったな。そうしたら空良をこんなに不安にさせなくてよかったのに……」
「寛人さん……今でも僕、嬉しいですよ」
「空良、本当に悪かった。俺が空良を独占したくて……ずっと両親に言うのを躊躇ってたんだ」
「えっ? 躊躇ってたってどうしてですか……?」
「俺の両親は俺が選んだ子なら絶対に認めてくれる自信があった。もちろん、相手が男の子だと言えば最初こそ驚きはするだろうが、最後には認めてくれると思っていた。だから、そのことを心配もしてなかったが……母さんは可愛いものが好きなんだ」
「可愛いもの?」
「ああ、だから空良の存在を知れば、いつでも空良に会いたいと言い出す。そうなると俺と空良の時間が減ると思ったんだよ」
そう。
親父は綾城の父からの報告しか聞いてなさそうだったが、母さんは、綾城の相手が可愛い男の子で、綾城の母さんが楽しそうに部屋を整えていると聞いて羨ましそうにしていたし、あの分だときっと観月の母さんからも何かしら報告を受けていそうだ。
観月のところはすでに親の籍にも入れて、観月の実家にも理央くんの部屋が作られてると話していたし、そんな楽しい状況になっているのを、観月の母さんがうちの母さんに何も言わないわけない。
あの二人の話を聞いて、母さんも俺から連絡が来るのを今か今かと待っていたはずだ。
それがわかっていて、母さんたちへの報告を今頃にしたんだから怒られても不思議はないな。
まぁほんの数%くらいは反対されるかもという気持ちがないわけではなかったが……。
俺が本気で恋愛できないって親父も母さんも知ってたみたいだったから、反対しても無駄だと思ったのかもな。
「空良が俺の両親と交流を喜んでくれるのなら、俺はもう何も言わない。だが、約束してくれ。空良にとっても優先順位はいつでも俺を最優先にして欲しいんだ」
「ふふっ。寛人さんったら……」
「俺は本気だぞ。どうだ? 約束してくれるか?」
「もちろんです。僕にとって一番はずっと寛人さんですから……」
「空良……愛してるよ」
「あの、僕も……寛人さんを愛してます」
「空良……っ!!」
俺たちはそれから箍が外れたように愛し合った。
もちろん、明日両親と会うのを忘れない程度には……。
翌日、空良は朝から興奮しているように見えた。
「ふふっ。そんなに楽しみなのか?」
「だって、寛人さんのご両親に会えるんですよ!!」
「そんなに楽しみにされると、俺は妬けるぞ。昨日の約束覚えているか?」
「ふふっ。僕はいつでも寛人さんが一番ですから……」
「ならいい」
そういってチュッと空良の唇にキスを贈ると、顔を真っ赤にして答えてくれる。
ふふっ。こんなキス以上のこといくらでもやっているのに、本当に初心で可愛らしい。
さて、両親との会食はどうなるか……。
母さんから空良を守らないとな。
「どこにいくんですか?」
「俺の両親が空良に会いたがってるんだ」
「えっ……寛人さんの、お父さんとお母さんが、僕に?」
「そうだ。空良とこれから先の人生を歩んでいくって約束しただろ? そうなったら、俺の両親は空良の両親でもあるわけだからな」
「僕の、両親……」
俺の言葉に空良は急に俯き、肩を震わせた。
もしかして勝手に話したことを怒っているのか?
それとも……。
亡くなったとはいえ、空良にとっての両親は唯一の存在だろうからな。
急に俺の両親を自分の両親のように思えというのは無理かもしれない。
「いや、無理に親と思えと言ってるんじゃないんだ。ただ、うちの親は息子の伴侶だから、空良を本当の息子だと思ってくれるみたいだから……ごめん、空良が嫌なら明日の話はやめておこう」
俺は慌てて空良を抱きしめながら落ち着かせようと背中を優しく撫でた。
「ちが――っ、僕……嬉しくて……」
「えっ? 嬉しい?」
「寛人さんのお父さんとお母さんが僕を息子だと思ってくれるなんて……思ってなかったから……」
「空良……」
「佳都さんが綾城さんのご両親から本当の息子のように思われてるのを見て、すごく羨ましかったんです……。でも、僕……高校も卒業してないし、寛人さんの役にも立ててないから……だから、一生懸命勉強して……それで大検に受かったら、寛人さんにお願いしようと思ってたんです。ご両親に会わせて欲しいって……それで僕が寛人さんのそばにいるのを認めて欲しいって……ずっと思ってたから……だから……」
「空良……だからあんなにも必死に勉強をしていたのか??」
俺の質問に頷いて答える空良がいじらしくてたまらない。
「ああ、俺はバカだな。空良がそんなことを思っているのも知らずに……」
空良がこんなにも思ってくれていたのが嬉しくて、俺はひたすらに空良を抱きしめ続けた。
「もっと早く両親に話しておけばよかったな。そうしたら空良をこんなに不安にさせなくてよかったのに……」
「寛人さん……今でも僕、嬉しいですよ」
「空良、本当に悪かった。俺が空良を独占したくて……ずっと両親に言うのを躊躇ってたんだ」
「えっ? 躊躇ってたってどうしてですか……?」
「俺の両親は俺が選んだ子なら絶対に認めてくれる自信があった。もちろん、相手が男の子だと言えば最初こそ驚きはするだろうが、最後には認めてくれると思っていた。だから、そのことを心配もしてなかったが……母さんは可愛いものが好きなんだ」
「可愛いもの?」
「ああ、だから空良の存在を知れば、いつでも空良に会いたいと言い出す。そうなると俺と空良の時間が減ると思ったんだよ」
そう。
親父は綾城の父からの報告しか聞いてなさそうだったが、母さんは、綾城の相手が可愛い男の子で、綾城の母さんが楽しそうに部屋を整えていると聞いて羨ましそうにしていたし、あの分だときっと観月の母さんからも何かしら報告を受けていそうだ。
観月のところはすでに親の籍にも入れて、観月の実家にも理央くんの部屋が作られてると話していたし、そんな楽しい状況になっているのを、観月の母さんがうちの母さんに何も言わないわけない。
あの二人の話を聞いて、母さんも俺から連絡が来るのを今か今かと待っていたはずだ。
それがわかっていて、母さんたちへの報告を今頃にしたんだから怒られても不思議はないな。
まぁほんの数%くらいは反対されるかもという気持ちがないわけではなかったが……。
俺が本気で恋愛できないって親父も母さんも知ってたみたいだったから、反対しても無駄だと思ったのかもな。
「空良が俺の両親と交流を喜んでくれるのなら、俺はもう何も言わない。だが、約束してくれ。空良にとっても優先順位はいつでも俺を最優先にして欲しいんだ」
「ふふっ。寛人さんったら……」
「俺は本気だぞ。どうだ? 約束してくれるか?」
「もちろんです。僕にとって一番はずっと寛人さんですから……」
「空良……愛してるよ」
「あの、僕も……寛人さんを愛してます」
「空良……っ!!」
俺たちはそれから箍が外れたように愛し合った。
もちろん、明日両親と会うのを忘れない程度には……。
翌日、空良は朝から興奮しているように見えた。
「ふふっ。そんなに楽しみなのか?」
「だって、寛人さんのご両親に会えるんですよ!!」
「そんなに楽しみにされると、俺は妬けるぞ。昨日の約束覚えているか?」
「ふふっ。僕はいつでも寛人さんが一番ですから……」
「ならいい」
そういってチュッと空良の唇にキスを贈ると、顔を真っ赤にして答えてくれる。
ふふっ。こんなキス以上のこといくらでもやっているのに、本当に初心で可愛らしい。
さて、両親との会食はどうなるか……。
母さんから空良を守らないとな。
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