17 / 62
誤解なんだ!
しおりを挟む
「やっぱりわかったか?」
「ああ、俺も同じだからな」
「綾城が佳都くんにぞっこんになったのを見てここまで人間って変わるものなんだと驚いたが、自分もまさか同じようになるとは思っても見なかったよ。理央を初めて見た時に不思議な感覚があったんだが、あの時はあそこから出すことしか考えられなくてもう二度と会えないと覚悟してたんだ。助け出せただけよかったとしようと思ってたんだが、まさか理央が俺を探し出してくれるとは思わなかったから……嬉しかったよ」
観月が理央くんを見る眼差しがあまりにも優しくて驚いた。
こいつがこんな柔らかい表情するなんてな……。
まぁ俺も観月にはそう思われているかもしれないが。
「それで、お前……理央くんとはもう?」
「いや……流石にまだだ。あまりそういう知識も持っていないみたいでな、キスするのも初めてだったよ」
「そうか、それも同じだな」
「じゃあ、空良くんも?」
「ああ。抱きしめたりは少し慣れてくれたみたいだが、キスもこの前初めてしたくらいで……」
「ふふっ。あれだけモテてた俺たちがこんなに奥手とはな」
「大切にしたいからこそ手を出せないって今頃分かった気がするな」
「確かに」
俺と観月は美味しそうにケーキを食べる空良と理央くんを微笑ましく思いながら、コーヒーに手を伸ばした。
ああ、ここのコーヒーは美味しい。
美味しそうにケーキを食べていた空良が突然こっちを向いて、
「寛人さんもケーキ食べませんか?」
と笑顔を向けてくれた。
「空良が全部食べていいんだぞ」
「でも……美味しいから一緒に食べたくて……」
「く――っ、そ、そうか。じゃあ、貰おうかな」
上目遣いでそんなふうに言われたら受けないわけがない。
「はいっ! あーん」
空良が嬉しそうに差し出してくれたケーキを、パクリと口に入れるととびきり甘いマンゴーが口の中に広がった。
「どうですか? 美味しい?」
「ああ、美味しいな」
「ふふっ。よかった」
観月はにやにやと俺たちの様子を見ていたが、理央くんに同じように『あーん』と言いながらフォークを差し出され、少し照れながら口を開けていた。
やっぱり俺たちは似たもの同士。
可愛い恋人には敵わないな。
ロビーでゆっくりとお茶をしていると、ポケットに入れていたスマホが震えるのを感じて急いでスマホを取り出すと、綾城からメッセージが届いていた。
「お前もか?」
みれば、観月にも綾城からメッセージが届いているようだ。
「用意が終わったのかもしれないな」
と言いつつ、メッセージを開くと、
<式前に話しておきたいことがあるから、新郎控え室に来てくれないか?>
と書かれていた。
「観月、これ……」
画面を見せれば、観月にも同じ文面が届いていた。
ということは俺たち2人に同じ話があるということか?
なんの話だろう? とは思ったが、とりあえず聞きにいくしかない。
俺たちは2人で顔を見合わせて、空良と理央くんに声をかけた。
2人はすでにケーキを食べ終わっていて仲良く談笑中だったが、流石にここに2人を置いていくわけにはいかない。
こんなに可愛く目立つ2人をロビーに置いていったりしたら、声をかけてくれと言わんばかりだ。
「空良、理央くん。今日の主役の新郎新夫に挨拶に行こうか」
「僕たちも一緒に行っても大丈夫なんですか?」
「ああ、もちろんだ。空良も理央くんもちゃんと招待を受けてるんだからな」
嬉しそうに顔を綻ばせる空良と理央くんを連れて、俺たちはロビーラウンジをでた。
4人で連れ立って歩いていると、2人でいた時よりもさらに視線を感じる。
俺と観月は空良と理央くんを隠すように急いで綾城のいる新郎控え室に向かった。
扉をトントントンと叩くと、
「どうぞ、入ってくれ」
と声が聞こえて、カチャリと扉を開けると、相好を崩した綾城の姿が飛び込んできて俺も観月も思わず
「くくっ」
と笑ってしまった。
「なんだ? お前たち、会って早々失礼だな」
「悪い、悪い。あまりにもデレデレした顔をしているから我慢できなかった。お前、相当嬉しいんだな、今日の結婚式」
「当たり前だろっ! 俺がどれだけ待ち侘びてたか……」
俺たちが綾城とそんな会話で盛り上がっていると、突然袖をツンツンと引っ張られた。
「んっ? どうした、空良」
「あ、あの……あの人が寛人さんのお友達ですか?」
「ああ。そうだ。綾城直己。俺と観月の高校時代からの悪友だ。それがどうかしたか?」
「いや、えっ……だって、あの……」
なぜか綾城を見て混乱した様子の空良に
「どうしたんだ? 落ち着いて話を聞かせてくれ」
としゃがみ込んで顔を近づけながら尋ねると、空良は少し言いづらそうに
「あの……お友達さんと結婚するのが彼だって言ってたから、てっきりお友達さんは女性の方だとばかり思ってて……その、男同士で結婚できるって知らなくて……それでびっくりしたっていうか……」
としどろもどろになりながらも教えてくれた。
そういえば、俺……綾城としか言ってなかったな。
空良は男同士で結婚なんて……と思っただろうか?
空良の言葉に新郎控え室がしんとなりかけた時、
「それって、僕と寛人さんも結婚できるってことですよね?」
と空良の嬉しそうな声が響いた。
「……えっ? 結、婚……?」
「えっ……? 僕たちは結婚、できない……んですか……?」
俺が思っても見なかった空良の言葉にポカーンと口を開けていると、空良が一気に目を潤ませながら悲しげに言ってきた。
これはまずいっ!!
すぐに誤解を解かないとっ!!
「やっ――、ちがっ――!」
しかし、俺の声は虚しく空良の泣き声に阻まれ、空良の耳には入らなかったようだ。
「寛人さん! ひどいです!! 空良くんのこと、揶揄ってたんですか?」
「違うっ!! そんなことあるわけないだろうっ!!」
「だって、今そう言ったじゃないですかっ!!」
「理央、落ち着けっ!!」
観月が興奮した理央くんを窘めてくれたが、理央くんは空良をがっちりと守って離そうとしない。
幸せに包まれるはずの新郎控え室がいきなり修羅場になってしまった。
どうしようかと思っていると、
「ちょっと、こっちで話さない?」
と俺たちの後ろから声が聞こえた。
「ああ、俺も同じだからな」
「綾城が佳都くんにぞっこんになったのを見てここまで人間って変わるものなんだと驚いたが、自分もまさか同じようになるとは思っても見なかったよ。理央を初めて見た時に不思議な感覚があったんだが、あの時はあそこから出すことしか考えられなくてもう二度と会えないと覚悟してたんだ。助け出せただけよかったとしようと思ってたんだが、まさか理央が俺を探し出してくれるとは思わなかったから……嬉しかったよ」
観月が理央くんを見る眼差しがあまりにも優しくて驚いた。
こいつがこんな柔らかい表情するなんてな……。
まぁ俺も観月にはそう思われているかもしれないが。
「それで、お前……理央くんとはもう?」
「いや……流石にまだだ。あまりそういう知識も持っていないみたいでな、キスするのも初めてだったよ」
「そうか、それも同じだな」
「じゃあ、空良くんも?」
「ああ。抱きしめたりは少し慣れてくれたみたいだが、キスもこの前初めてしたくらいで……」
「ふふっ。あれだけモテてた俺たちがこんなに奥手とはな」
「大切にしたいからこそ手を出せないって今頃分かった気がするな」
「確かに」
俺と観月は美味しそうにケーキを食べる空良と理央くんを微笑ましく思いながら、コーヒーに手を伸ばした。
ああ、ここのコーヒーは美味しい。
美味しそうにケーキを食べていた空良が突然こっちを向いて、
「寛人さんもケーキ食べませんか?」
と笑顔を向けてくれた。
「空良が全部食べていいんだぞ」
「でも……美味しいから一緒に食べたくて……」
「く――っ、そ、そうか。じゃあ、貰おうかな」
上目遣いでそんなふうに言われたら受けないわけがない。
「はいっ! あーん」
空良が嬉しそうに差し出してくれたケーキを、パクリと口に入れるととびきり甘いマンゴーが口の中に広がった。
「どうですか? 美味しい?」
「ああ、美味しいな」
「ふふっ。よかった」
観月はにやにやと俺たちの様子を見ていたが、理央くんに同じように『あーん』と言いながらフォークを差し出され、少し照れながら口を開けていた。
やっぱり俺たちは似たもの同士。
可愛い恋人には敵わないな。
ロビーでゆっくりとお茶をしていると、ポケットに入れていたスマホが震えるのを感じて急いでスマホを取り出すと、綾城からメッセージが届いていた。
「お前もか?」
みれば、観月にも綾城からメッセージが届いているようだ。
「用意が終わったのかもしれないな」
と言いつつ、メッセージを開くと、
<式前に話しておきたいことがあるから、新郎控え室に来てくれないか?>
と書かれていた。
「観月、これ……」
画面を見せれば、観月にも同じ文面が届いていた。
ということは俺たち2人に同じ話があるということか?
なんの話だろう? とは思ったが、とりあえず聞きにいくしかない。
俺たちは2人で顔を見合わせて、空良と理央くんに声をかけた。
2人はすでにケーキを食べ終わっていて仲良く談笑中だったが、流石にここに2人を置いていくわけにはいかない。
こんなに可愛く目立つ2人をロビーに置いていったりしたら、声をかけてくれと言わんばかりだ。
「空良、理央くん。今日の主役の新郎新夫に挨拶に行こうか」
「僕たちも一緒に行っても大丈夫なんですか?」
「ああ、もちろんだ。空良も理央くんもちゃんと招待を受けてるんだからな」
嬉しそうに顔を綻ばせる空良と理央くんを連れて、俺たちはロビーラウンジをでた。
4人で連れ立って歩いていると、2人でいた時よりもさらに視線を感じる。
俺と観月は空良と理央くんを隠すように急いで綾城のいる新郎控え室に向かった。
扉をトントントンと叩くと、
「どうぞ、入ってくれ」
と声が聞こえて、カチャリと扉を開けると、相好を崩した綾城の姿が飛び込んできて俺も観月も思わず
「くくっ」
と笑ってしまった。
「なんだ? お前たち、会って早々失礼だな」
「悪い、悪い。あまりにもデレデレした顔をしているから我慢できなかった。お前、相当嬉しいんだな、今日の結婚式」
「当たり前だろっ! 俺がどれだけ待ち侘びてたか……」
俺たちが綾城とそんな会話で盛り上がっていると、突然袖をツンツンと引っ張られた。
「んっ? どうした、空良」
「あ、あの……あの人が寛人さんのお友達ですか?」
「ああ。そうだ。綾城直己。俺と観月の高校時代からの悪友だ。それがどうかしたか?」
「いや、えっ……だって、あの……」
なぜか綾城を見て混乱した様子の空良に
「どうしたんだ? 落ち着いて話を聞かせてくれ」
としゃがみ込んで顔を近づけながら尋ねると、空良は少し言いづらそうに
「あの……お友達さんと結婚するのが彼だって言ってたから、てっきりお友達さんは女性の方だとばかり思ってて……その、男同士で結婚できるって知らなくて……それでびっくりしたっていうか……」
としどろもどろになりながらも教えてくれた。
そういえば、俺……綾城としか言ってなかったな。
空良は男同士で結婚なんて……と思っただろうか?
空良の言葉に新郎控え室がしんとなりかけた時、
「それって、僕と寛人さんも結婚できるってことですよね?」
と空良の嬉しそうな声が響いた。
「……えっ? 結、婚……?」
「えっ……? 僕たちは結婚、できない……んですか……?」
俺が思っても見なかった空良の言葉にポカーンと口を開けていると、空良が一気に目を潤ませながら悲しげに言ってきた。
これはまずいっ!!
すぐに誤解を解かないとっ!!
「やっ――、ちがっ――!」
しかし、俺の声は虚しく空良の泣き声に阻まれ、空良の耳には入らなかったようだ。
「寛人さん! ひどいです!! 空良くんのこと、揶揄ってたんですか?」
「違うっ!! そんなことあるわけないだろうっ!!」
「だって、今そう言ったじゃないですかっ!!」
「理央、落ち着けっ!!」
観月が興奮した理央くんを窘めてくれたが、理央くんは空良をがっちりと守って離そうとしない。
幸せに包まれるはずの新郎控え室がいきなり修羅場になってしまった。
どうしようかと思っていると、
「ちょっと、こっちで話さない?」
と俺たちの後ろから声が聞こえた。
192
お気に入りに追加
1,731
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
強引に伴侶にされた俺は、なぜか溺愛されています
すいかちゃん
BL
昔から、葵家と登坂家ではある約束が交わされていた。それは、葵家の当主は登坂家の誰かと婚姻を結ばなくてはならないという事だ。だが、困った事に登坂家に男しかいない。男なのに当主の伴侶に指名された登坂樹は困惑する。だが、葵奏貴(かなた)は樹をとても気に入ったと熱烈アプローチ。かくして、樹は奏貴と婚礼を挙げる事になり…。
樹は、奏貴のある能力を知り…。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる