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空良との甘い生活
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電話を切って一息ついたところで風呂場の扉が開いた音が聞こえた。
ちょうどいいタイミングだったな。
俺が用意しておいた少し大きめの紺色のパジャマを着てこっちにくる空良は、お風呂で十分温まったのかほんのりと頬を赤く染めていて実に可愛い。
さっき美容院で髪を洗ってもらったばかりだから、今日は髪は洗わないでいいよと言っておいたから残念ながらドライヤーはかけられないな。
まぁ、それは明日の楽しみにしておくか。
「空良、こっちにおいで」
俺の声に少し恥ずかしそうに、より一層頬を染めながらもちゃんと俺のところへと歩いてくる。
「わっ――」
目の前に立った空良の腕を取り、ソファーに座っていた俺の足の間に後ろ向きにポスっと座らせ後ろからぎゅっと抱きしめた。
「しっかりと温まって来たみたいだな。偉いぞ」
「――っ、こ、子どもじゃないですよ」
「ふふっ。そうだな。子どもは俺が抱きしめただけでこんなには赤くならないな」
「えっ……あの、寛人さん……」
「んっ? どうした?」
「今、俺って……」
「ああ、空良は今日からここで一緒に暮らす家族になったんだから砕けた話し方してもいいだろう?
それとも今まで通り丁寧な方が良かったか?」
「んんっ……」
空良を抱きしめながら耳元で囁いてやると、空良は可愛らしい声をあげて
「今のが、いいです……」
と言ってくれた。
「そうか、それならこのままでいよう」
そのまましばらく空良の温もりを堪能して、
「俺も風呂に入ってくるよ。すぐ戻ってくるからここで待ってて」
と声をかけた。
空良は
「はい……」
と少し寂しげにか細い声をあげながら俺を見つめる。
どうやら俺が離れたのを寂しく思ってくれているようだ。
よしよし、いい傾向だな。
「すぐに戻ってくるから、俺のベッドで待ってるか?」
「えっ――、あ、あの……」
「ふふっ。冗談だよ」
俺は空良の頭を優しく撫で風呂場へと急いだ。
「くっ――!」
バスルームに残った空良の痕跡に興奮する自分がいることに驚きが隠せない。
こんな昂った姿で空良の元にも戻れない。一度風呂場で出しておいた方がいいかもしれない。
だがまさか、こんなことで俺が興奮するとはな……。
綾城や観月に知られたら笑われそうだ。
いや、綾城は佳都くんに対してどんなことでも興奮しそうだから同じか……。
同じ……。
あの独占欲全開で佳都くんに関しては見境がなくなる綾城と同じ……?
なんか複雑だな。
興奮した気持ちが一気に萎えたのをこれ幸いと急いで風呂に入り髪と身体を洗いおえた。
身支度を整えてリビングへと戻ると、空良はさっきと同じ格好でソファーに座っていた。
「空良」
俺の言葉に身体をピクリと震わせ、こっちを向いた。
真っ赤な顔で振り向くその空良の目がなんとなく欲を孕んだ目をしていることにゴクリと喉が鳴る。
少しは俺のことを意識してくれているのかもしれないな。
このまま抱いてしまいたい……。
だが、流石にまだ早いだろう。
それでも離れて寝るという選択肢は俺にはなかった。
「そろそろ寝ようか」
そう声をかけると、小さく頷くながら立ち上がった。
俺は空良に近づくと肩に手を回し、ぎゅっと抱き寄せながら自分の寝室へと連れていった。
「あの……僕、ここで寝るんですか……?」
「ああ、空良の部屋にはベッドを置いてなかっただろう?」
「えっ? あ、そういえば……」
そう。
俺はわざと用意した空良の部屋にはベッドを置かなかった。
それは俺の欲のためじゃない。
置いていたとしてもきっと1人では寝ないだろうと思ったんだ。
急に親を亡くしてひとりぼっちになった空良が一番心細く感じたのは真っ暗になった夜だろう。
だから、病院では夜怖がらないように空良のいる特別室だけ電気をつけていても構わないことにしておいた。
薬の影響もあって病院ではぐっすり寝れただろうが、慣れない家で1人で寝るなんてそんなこと空良が望まないと思ったんだ。
「空良、一緒に寝よう。大丈夫、空良が望まないうちは何もしない。ただ空良に安心して眠って欲しいだけなんだ」
そういうと、空良の身体からスッと力が抜けていくのがわかった。
きっとさっき風呂に入る前に俺が揶揄ったからずっと緊張していたんだろうな。
ちょっと怖がらせすぎたのかもしれない。
「寛人さんと一緒なら、ぐっすり寝れそうです」
俺を信頼しきった笑顔でそう言われて、少し申し訳なくなりながらも、空良と一緒にベッドに入る。
「うわぁっ。ふかふかだ」
「いいベッドで寝ると疲れも取れるし、熟睡できるんだ。さぁ、おいで」
「は、はい……」
空良は恥ずかしそうにしながらも俺の広げた腕の中にちょこんと入ってきた。
腕の上にかかる空良の頭の重みすら愛おしい。
「寛人さん……すごくいい匂いしますね」
「――っ!」
こんなに近づいた時に感じる俺の体臭をいい匂いだと言ってくれるなんて……きっと俺たちは相性がいいんだろうな。
空良を抱きしめて寝られる幸せを噛み締めていると、空良からスゥスゥと安定した呼吸音が聞こえ始めた。
こんなにもすぐに寝入ってくれる空良が可愛くてたまらない。
「空良……ゆっくりおやすみ」
そっと髪にキスをして、俺もようやく目を閉じた。
翌日、目が覚めるとベッドに空良の姿がなかった。
「えっ? 空良?」
一瞬今までのことが夢だったのかと思いそうになったが、流石にそれはない。
慌てて飛び起きて急いでリビングへと走っていくと、何やらキッチンからいい匂いがしてきた。
すぐにキッチンに向かうと、
「あっ、寛人さん。おはようございます」
と空良が満面の笑みで挨拶をしてくれた。
「あ、ああ。おはよう。空良、ベッドに居なかったから心配したぞ」
「あっ……ごめんなさい。ぐっすり眠ったからか、早く目が覚めてしまって……寛人さんの朝食でも準備しようかと思って……」
しょんぼりする空良に近づき、
「怒っているわけじゃないよ。驚いただけだ。食事の支度をしてくれたんだな、ありがとう」
と頭を撫でると、空良は途端にふわりとした笑顔を見せてくれた。
「空良の作ってくれた朝食を楽しみにしてる。顔洗ってくるから待っててくれ」
「――っ! あ、あの……いま……」
「ふふっ。朝の挨拶だよ」
朝からあまりにも可愛い笑顔を見せてくれるからつい頬にキスをしてしまったが、嫌がっている様子はなかったな。
これなら、毎日でもできそうだ。
俺は新しくできた空良との朝の習慣にほくそ笑みながら洗面所へと向かった。
ちょうどいいタイミングだったな。
俺が用意しておいた少し大きめの紺色のパジャマを着てこっちにくる空良は、お風呂で十分温まったのかほんのりと頬を赤く染めていて実に可愛い。
さっき美容院で髪を洗ってもらったばかりだから、今日は髪は洗わないでいいよと言っておいたから残念ながらドライヤーはかけられないな。
まぁ、それは明日の楽しみにしておくか。
「空良、こっちにおいで」
俺の声に少し恥ずかしそうに、より一層頬を染めながらもちゃんと俺のところへと歩いてくる。
「わっ――」
目の前に立った空良の腕を取り、ソファーに座っていた俺の足の間に後ろ向きにポスっと座らせ後ろからぎゅっと抱きしめた。
「しっかりと温まって来たみたいだな。偉いぞ」
「――っ、こ、子どもじゃないですよ」
「ふふっ。そうだな。子どもは俺が抱きしめただけでこんなには赤くならないな」
「えっ……あの、寛人さん……」
「んっ? どうした?」
「今、俺って……」
「ああ、空良は今日からここで一緒に暮らす家族になったんだから砕けた話し方してもいいだろう?
それとも今まで通り丁寧な方が良かったか?」
「んんっ……」
空良を抱きしめながら耳元で囁いてやると、空良は可愛らしい声をあげて
「今のが、いいです……」
と言ってくれた。
「そうか、それならこのままでいよう」
そのまましばらく空良の温もりを堪能して、
「俺も風呂に入ってくるよ。すぐ戻ってくるからここで待ってて」
と声をかけた。
空良は
「はい……」
と少し寂しげにか細い声をあげながら俺を見つめる。
どうやら俺が離れたのを寂しく思ってくれているようだ。
よしよし、いい傾向だな。
「すぐに戻ってくるから、俺のベッドで待ってるか?」
「えっ――、あ、あの……」
「ふふっ。冗談だよ」
俺は空良の頭を優しく撫で風呂場へと急いだ。
「くっ――!」
バスルームに残った空良の痕跡に興奮する自分がいることに驚きが隠せない。
こんな昂った姿で空良の元にも戻れない。一度風呂場で出しておいた方がいいかもしれない。
だがまさか、こんなことで俺が興奮するとはな……。
綾城や観月に知られたら笑われそうだ。
いや、綾城は佳都くんに対してどんなことでも興奮しそうだから同じか……。
同じ……。
あの独占欲全開で佳都くんに関しては見境がなくなる綾城と同じ……?
なんか複雑だな。
興奮した気持ちが一気に萎えたのをこれ幸いと急いで風呂に入り髪と身体を洗いおえた。
身支度を整えてリビングへと戻ると、空良はさっきと同じ格好でソファーに座っていた。
「空良」
俺の言葉に身体をピクリと震わせ、こっちを向いた。
真っ赤な顔で振り向くその空良の目がなんとなく欲を孕んだ目をしていることにゴクリと喉が鳴る。
少しは俺のことを意識してくれているのかもしれないな。
このまま抱いてしまいたい……。
だが、流石にまだ早いだろう。
それでも離れて寝るという選択肢は俺にはなかった。
「そろそろ寝ようか」
そう声をかけると、小さく頷くながら立ち上がった。
俺は空良に近づくと肩に手を回し、ぎゅっと抱き寄せながら自分の寝室へと連れていった。
「あの……僕、ここで寝るんですか……?」
「ああ、空良の部屋にはベッドを置いてなかっただろう?」
「えっ? あ、そういえば……」
そう。
俺はわざと用意した空良の部屋にはベッドを置かなかった。
それは俺の欲のためじゃない。
置いていたとしてもきっと1人では寝ないだろうと思ったんだ。
急に親を亡くしてひとりぼっちになった空良が一番心細く感じたのは真っ暗になった夜だろう。
だから、病院では夜怖がらないように空良のいる特別室だけ電気をつけていても構わないことにしておいた。
薬の影響もあって病院ではぐっすり寝れただろうが、慣れない家で1人で寝るなんてそんなこと空良が望まないと思ったんだ。
「空良、一緒に寝よう。大丈夫、空良が望まないうちは何もしない。ただ空良に安心して眠って欲しいだけなんだ」
そういうと、空良の身体からスッと力が抜けていくのがわかった。
きっとさっき風呂に入る前に俺が揶揄ったからずっと緊張していたんだろうな。
ちょっと怖がらせすぎたのかもしれない。
「寛人さんと一緒なら、ぐっすり寝れそうです」
俺を信頼しきった笑顔でそう言われて、少し申し訳なくなりながらも、空良と一緒にベッドに入る。
「うわぁっ。ふかふかだ」
「いいベッドで寝ると疲れも取れるし、熟睡できるんだ。さぁ、おいで」
「は、はい……」
空良は恥ずかしそうにしながらも俺の広げた腕の中にちょこんと入ってきた。
腕の上にかかる空良の頭の重みすら愛おしい。
「寛人さん……すごくいい匂いしますね」
「――っ!」
こんなに近づいた時に感じる俺の体臭をいい匂いだと言ってくれるなんて……きっと俺たちは相性がいいんだろうな。
空良を抱きしめて寝られる幸せを噛み締めていると、空良からスゥスゥと安定した呼吸音が聞こえ始めた。
こんなにもすぐに寝入ってくれる空良が可愛くてたまらない。
「空良……ゆっくりおやすみ」
そっと髪にキスをして、俺もようやく目を閉じた。
翌日、目が覚めるとベッドに空良の姿がなかった。
「えっ? 空良?」
一瞬今までのことが夢だったのかと思いそうになったが、流石にそれはない。
慌てて飛び起きて急いでリビングへと走っていくと、何やらキッチンからいい匂いがしてきた。
すぐにキッチンに向かうと、
「あっ、寛人さん。おはようございます」
と空良が満面の笑みで挨拶をしてくれた。
「あ、ああ。おはよう。空良、ベッドに居なかったから心配したぞ」
「あっ……ごめんなさい。ぐっすり眠ったからか、早く目が覚めてしまって……寛人さんの朝食でも準備しようかと思って……」
しょんぼりする空良に近づき、
「怒っているわけじゃないよ。驚いただけだ。食事の支度をしてくれたんだな、ありがとう」
と頭を撫でると、空良は途端にふわりとした笑顔を見せてくれた。
「空良の作ってくれた朝食を楽しみにしてる。顔洗ってくるから待っててくれ」
「――っ! あ、あの……いま……」
「ふふっ。朝の挨拶だよ」
朝からあまりにも可愛い笑顔を見せてくれるからつい頬にキスをしてしまったが、嫌がっている様子はなかったな。
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