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毛糸を選ぼう!
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メロンやイチゴが乗った生クリームのケーキ、マンゴーや桃が乗ったタルト、ふわふわチーズケーキにガトーショコラ、栗と苺のモンブラン、抹茶と小豆のケーキ、フルーツが入ったロールケーキなどなど、史紀さんが説明してくれるたびに、僕と直くんからは美味しそうという声が漏れる。
キラキラと輝いてみえる美味しそうなケーキを選ぶのはとても楽しい。
僕は悩みに悩んでメロンの生クリームケーキと抹茶と小豆のケーキをお皿に取ってもらった。直くんは苺のモンブランとガトーショコラを選んでいた。うん、どっちも美味しそう。
砂糖とミルクがたっぷり入ったカフェオレと一緒に甘いケーキにフォークを入れた。
「んっ! 美味しい!!」
「本当に美味しいわ!」
未知子ママはふわふわのチーズケーキを食べて笑顔で僕を見た。あやちゃんも史紀さんも同じように幸せそうだ。
直くんはどうかな? と思っていると、ガトーショコラの上に乗っていたチョコレートの小さな棒を指で摘んで美味しそうに食べているのが見えて思わず笑ってしまった。だって、僕も初めてケーキの上に乗っているチョコレートを見て同じようにしていたから。あれ、絶対にしちゃうよね。
「あっ、ごめんなさいっ」
僕が見ていたことに気づいて、直くんは恥ずかしそうに手を下げたけれど、謝ることなんて何もない。
「気にしないでいいよ。僕もいつもそうしちゃうし。なんでだろうね、摘んで食べる方がずっと美味しく感じるよね」
「一花さん……」
「んっ? ああ、そのチョコレート? 僕もやるよ。大人だから恥ずかしいけどこっそりね」
僕たちの話を聞いていた史紀さんは自分のお皿に乗っていたイチゴを摘んで口に入れた。
「ん、美味しいね。ケーキは幸せになる食べ物だから好きに食べたらいいんだよ」
その笑顔に僕はもちろん、直くんも笑顔になった。やっぱり史紀さんって優しい。
美味しいケーキと楽しい話で休憩も終わり、編み物に慣れてきたあやちゃんと直くんには何を作るかそれぞれ決めてもらうことになった。
「僕は、まずは昇さんのパパとママにマフラーを編みたいです。それが完成したら昇さんとパパとあやちゃんの分も編みたいです」
「大忙しだね。でも、直くんなら作れそう! あやちゃんは何を作りますか?」
「うーん、直くんが卓さんにマフラーを編むなら、私は違うのにしようかな? 史紀さん、手袋は難しいかな?」
「初心者にはかなり難しいですが、絢斗さんなら作れると思いますよ」
「本当?」
「はい、初めてであれだけできるんですから、やり方を覚えればすぐにできると思います」
僕もまだマフラーしか編んだことはない。僕もあやちゃんと一緒に頑張って手袋を編んでみようかな。征哉さんが使ってくれたら嬉しい。
「じゃあ、頑張ってみようかな」
「絢斗くん、毛糸はもう選んだ?」
「直くんとも話したんですけど、今日教えてもらうまでは編み物ができるようになるかわからなかったから、大丈夫そうなら毛糸を買おうかなって思っててまだ選んでないんです」
「そう、それならよかったわ。毛糸にはいろんな種類があるから作るものが決まっているならそれに合った毛糸を選んだ方がより編みやすいのよ」
未知子ママの言葉にあやちゃんと直くんはホッとした表情を見せた。
「あのアプリに毛糸がたくさん追加されたって征哉が言っていたわ。史紀さんはあのアプリを知っているのかしら?」
「ええ。先日、敬介さんから教えてもらいました。今からみんなで好きな毛糸を選びましょうか?」
「わぁ、史紀さんたちに聞きながら選んだら間違いはないからいいね。直くん」
「はい。僕だけだと選べないから一緒に選んでもらえると嬉しいです」
きっと直くんもお買い物苦手なんだろうな。僕も最初はどれを選んでいいのかもわからなくて困ったもん。でも尚孝さんや未知子ママと一緒に選ぶようになって、征哉さんも喜んでくれるし、お買い物が楽しいって思えるようになったんだ。直くんもきっとそうなるかな。
みんなで一緒にアプリを起動させて、画面と睨めっこしながら毛糸を選ぶ。
「この色、素敵!」
「あっ、こっちの色もいいね!」
「わぁー、いっぱいあって悩んじゃうな」
アプリを見ると、毛糸の種類にマフラーにおすすめとか手袋におすすめとか分けられていて、そこから選べるからものすごく探しやすい。
周平さんの作ってくれたお買い物アプリ、本当にすごいな。
「あっ! これ! すごく綺麗!! ふーちゃんに似合いそう! あやちゃん、どうですか?」
「わ、いいね。似合いそう!!」
ふーちゃんというのは昇さんのママのことなんだって。
直くんがそのふーちゃんに似合うと言って見せてくれたのは、菖蒲色の毛糸。
昇さんのママならすごく似合いそうだ。
「毅パパは……あ、これ! いいかも!!」
直くんが指差したのは、縹色。青よりも少し薄い色でとても綺麗だ。
昇さんのパパは磯山先生によく似ているらしいから、磯山先生のイメージで考えるとすごくよく似合う気がする。
「直くん、似合う色を選ぶのが上手だね」
「えっ、そんな……っ」
「リースを作る時に配色を整えるのも上手だったもんね。直くんって色選びの才能があるんだね」
「そんなの言われたの初めてです……でも、嬉しい」
今日の編み物会で直くんの才能もあやちゃんの才能も開花したみたいでよかったな。
キラキラと輝いてみえる美味しそうなケーキを選ぶのはとても楽しい。
僕は悩みに悩んでメロンの生クリームケーキと抹茶と小豆のケーキをお皿に取ってもらった。直くんは苺のモンブランとガトーショコラを選んでいた。うん、どっちも美味しそう。
砂糖とミルクがたっぷり入ったカフェオレと一緒に甘いケーキにフォークを入れた。
「んっ! 美味しい!!」
「本当に美味しいわ!」
未知子ママはふわふわのチーズケーキを食べて笑顔で僕を見た。あやちゃんも史紀さんも同じように幸せそうだ。
直くんはどうかな? と思っていると、ガトーショコラの上に乗っていたチョコレートの小さな棒を指で摘んで美味しそうに食べているのが見えて思わず笑ってしまった。だって、僕も初めてケーキの上に乗っているチョコレートを見て同じようにしていたから。あれ、絶対にしちゃうよね。
「あっ、ごめんなさいっ」
僕が見ていたことに気づいて、直くんは恥ずかしそうに手を下げたけれど、謝ることなんて何もない。
「気にしないでいいよ。僕もいつもそうしちゃうし。なんでだろうね、摘んで食べる方がずっと美味しく感じるよね」
「一花さん……」
「んっ? ああ、そのチョコレート? 僕もやるよ。大人だから恥ずかしいけどこっそりね」
僕たちの話を聞いていた史紀さんは自分のお皿に乗っていたイチゴを摘んで口に入れた。
「ん、美味しいね。ケーキは幸せになる食べ物だから好きに食べたらいいんだよ」
その笑顔に僕はもちろん、直くんも笑顔になった。やっぱり史紀さんって優しい。
美味しいケーキと楽しい話で休憩も終わり、編み物に慣れてきたあやちゃんと直くんには何を作るかそれぞれ決めてもらうことになった。
「僕は、まずは昇さんのパパとママにマフラーを編みたいです。それが完成したら昇さんとパパとあやちゃんの分も編みたいです」
「大忙しだね。でも、直くんなら作れそう! あやちゃんは何を作りますか?」
「うーん、直くんが卓さんにマフラーを編むなら、私は違うのにしようかな? 史紀さん、手袋は難しいかな?」
「初心者にはかなり難しいですが、絢斗さんなら作れると思いますよ」
「本当?」
「はい、初めてであれだけできるんですから、やり方を覚えればすぐにできると思います」
僕もまだマフラーしか編んだことはない。僕もあやちゃんと一緒に頑張って手袋を編んでみようかな。征哉さんが使ってくれたら嬉しい。
「じゃあ、頑張ってみようかな」
「絢斗くん、毛糸はもう選んだ?」
「直くんとも話したんですけど、今日教えてもらうまでは編み物ができるようになるかわからなかったから、大丈夫そうなら毛糸を買おうかなって思っててまだ選んでないんです」
「そう、それならよかったわ。毛糸にはいろんな種類があるから作るものが決まっているならそれに合った毛糸を選んだ方がより編みやすいのよ」
未知子ママの言葉にあやちゃんと直くんはホッとした表情を見せた。
「あのアプリに毛糸がたくさん追加されたって征哉が言っていたわ。史紀さんはあのアプリを知っているのかしら?」
「ええ。先日、敬介さんから教えてもらいました。今からみんなで好きな毛糸を選びましょうか?」
「わぁ、史紀さんたちに聞きながら選んだら間違いはないからいいね。直くん」
「はい。僕だけだと選べないから一緒に選んでもらえると嬉しいです」
きっと直くんもお買い物苦手なんだろうな。僕も最初はどれを選んでいいのかもわからなくて困ったもん。でも尚孝さんや未知子ママと一緒に選ぶようになって、征哉さんも喜んでくれるし、お買い物が楽しいって思えるようになったんだ。直くんもきっとそうなるかな。
みんなで一緒にアプリを起動させて、画面と睨めっこしながら毛糸を選ぶ。
「この色、素敵!」
「あっ、こっちの色もいいね!」
「わぁー、いっぱいあって悩んじゃうな」
アプリを見ると、毛糸の種類にマフラーにおすすめとか手袋におすすめとか分けられていて、そこから選べるからものすごく探しやすい。
周平さんの作ってくれたお買い物アプリ、本当にすごいな。
「あっ! これ! すごく綺麗!! ふーちゃんに似合いそう! あやちゃん、どうですか?」
「わ、いいね。似合いそう!!」
ふーちゃんというのは昇さんのママのことなんだって。
直くんがそのふーちゃんに似合うと言って見せてくれたのは、菖蒲色の毛糸。
昇さんのママならすごく似合いそうだ。
「毅パパは……あ、これ! いいかも!!」
直くんが指差したのは、縹色。青よりも少し薄い色でとても綺麗だ。
昇さんのパパは磯山先生によく似ているらしいから、磯山先生のイメージで考えるとすごくよく似合う気がする。
「直くん、似合う色を選ぶのが上手だね」
「えっ、そんな……っ」
「リースを作る時に配色を整えるのも上手だったもんね。直くんって色選びの才能があるんだね」
「そんなの言われたの初めてです……でも、嬉しい」
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