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新たな人生を
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<side征哉>
一花と母を乗せ、キャンピングカーを運転して自宅に向かう。
運転席から一花たちのいる後部座席の様子は見えないが、ナビ用のモニターに後部座席の様子を映し出しているから何かあればすぐに対処できるだろう。
一花の可愛さについ箍が外れて激しくしてしまったが、傷に障るようなことはしていない。ただ、想像以上に疲れさせてしまっただけだ。
結婚式で肉体的にも精神的にも疲労していただろうに、一花はそんなそぶりも見せず、直純くんたちとの時間も過ごしていたからな。その上、温泉で少し体力を使い、私と愛し合ったのだ。疲れないわけがない。激しくしない代わりに時間が長かったのも一花の疲労を増したのだろうな。
自宅に戻るまでに何度か休憩を挟んだが、一花は目覚めることはなかった。
母は小児科医をしていたこともあって一花の様子をずっとみていてくれたが、疲れて眠っているだけだという判断だったし、私自身も一花を見ても眠っているだけだとわかる。
そのことにホッとしながらも、ここまで長時間眠ってしまうほど疲労させたことについては申し訳なく思っている。
「征哉、一花くんの体力のなさはこれでよく分かったでしょう? 疲労し切った身体が睡眠を欲しているから寝かせておくしかないのだけど、その間食事を取れない分、体力の回復は遅いのだからこれからは気をつけてあげないとダメよ」
自宅の駐車場について早々に母に言われてしまったが、なんの反論もない。
「分かってる。今回は本当にイレギュラーだったんだ。これからは十分気をつけるよ」
とりあえず一花をベッドに寝かせて楽にさせないとな。
「荷物は私と牧田で運んでおくから征哉は一花くんを連れて行って」
「ありがとう」
どちらの部屋に寝かせようかと悩んだが、まだ当分は夜以外は一花の部屋を使うようにしようと決め、一花をそっちのベッドに寝かせた。
それから一時間ほど経ってようやく一花が目を覚ました。
「んっ……せ、いやさん……」
「おはよう。一花。目が覚めたか?」
「すごく、いっぱいねたきがします……」
まだ少し寝ぼけたままで話す一花が可愛い。
「あれ? ここ……」
「ああ、一花が寝ている間に帰ってきたんだ」
「そうなんですね、びっくりしました。あれが全部夢だったのかなって」
「ははっ。夢だったら困るな。せっかく一花を私のものにできたのに」
「せいやさん……」
一気に頬を赤らめながら私を見上げるが、それだけで興奮してしまう。
これまでだって、一花にこうして見上げられたことなんて何度もあるのに関係が変わっただけでこんなにも興奮してしまうなんて思いもしなかった。
もう、一花の全てを知ってしまった私は、以前のような触れ合いだけでは我慢できなくなってしまったのだろうな。それほどに一花との愛し合った時間は濃厚で最高の時間だった。
「一花……愛しているよ」
「はい。僕も、征哉さんが大好きです……」
一花を胸に抱き、甘く柔らかな唇に重ねる。
「んっ……」
一花の甘い吐息が漏れる中、一花の小さな指が私の手を握った。
カチッという微かな音に唇を離し、一花と二人で視線を下げるとキラキラと輝く指輪が綺麗に重なり合っていた。
「これ、とっても綺麗……」
「ああ、私の一花への愛の証だよ」
永遠に輝きを失わないこの宝石のように、私の一花への愛も永遠に変わらない。
これから私たちは新たな人生を二人で歩み続けるのだ。
* * *
「いらっしゃい!」
「一花さん! お招きありがとうございます!」
あっという間に約束の木曜日。絢斗さんと直純くんが我が家にやってきた。
一花と初めて会って以来、見るたびに子どもらしい溌剌とした表情を見せる直純くんを見ていると、初めて会った日とは別人のように思える。それほど、あの時は感情も何もかも抑圧されていたのだとわかる。
本当に磯山先生の家に引き取られてよかったと感じながら、私も一花とともに出迎えると、
「あ、あの……貴船さん。お邪魔します」
とまだ少し緊張しながらも笑顔を向けてくれた。
「ああ、今日は来てくれてありがとう。一花とゆっくりと過ごしてくれ」
「は、はい」
できるだけ優しい言葉をかけると、満面の笑みで返してくれる。ああ、これが本当の直純くんだったのだな。
玄関まで出迎えに行った一花を抱きかかえて、彼らを一花の部屋に案内する。
「じゃあ、母さん。あとは頼むよ。私は部屋で仕事をしているから、何かあったら声をかけてくれ」
「ええ、分かったわ」
私がいたら気を遣わせてしまうだろうと早々に退散して、自室に向かおうとすると玄関チャイムが鳴った。
ああ、もう一人の先生の登場か。
「いらっしゃい」
「征哉さん。お邪魔します」
長らく私を貴船会長と呼んでいた史紀さんだったが、あの結婚式の日を境に名前で呼んでくれるようになった。
まぁ、縁戚になるのだしいつまでも貴船会長と呼ばれるのもおかしいからな。
「一花たちが先生の到着を待っていましたよ」
「そんな……っ、先生だなんて……」
「ははっ。今日はゆっくり楽しんでいってください」
「ありがとうございます」
牧田に部屋まで案内させて、私は自室へ戻った。
今頃、一花たちの部屋はきっと盛り上がっているに違いない。
その間に私はしっかりと仕事でもしていようか。志摩くんもいないが、今日はリモートでも大丈夫なようにしてくれているから助かる。本当に志摩くんさまさまだな。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます!
当初の予定では結婚式を挙げて、二人が初夜を迎えたら完結にしようと思っていたのですが、せっかくなら楽しい編み物会の様子まで本編に入れてしまおうと思い、そのまま続けることにしました。
なので、もうちょこっとだけお付き合いいただけると嬉しいです♡
最後までどうぞよろしくお願いします!
一花と母を乗せ、キャンピングカーを運転して自宅に向かう。
運転席から一花たちのいる後部座席の様子は見えないが、ナビ用のモニターに後部座席の様子を映し出しているから何かあればすぐに対処できるだろう。
一花の可愛さについ箍が外れて激しくしてしまったが、傷に障るようなことはしていない。ただ、想像以上に疲れさせてしまっただけだ。
結婚式で肉体的にも精神的にも疲労していただろうに、一花はそんなそぶりも見せず、直純くんたちとの時間も過ごしていたからな。その上、温泉で少し体力を使い、私と愛し合ったのだ。疲れないわけがない。激しくしない代わりに時間が長かったのも一花の疲労を増したのだろうな。
自宅に戻るまでに何度か休憩を挟んだが、一花は目覚めることはなかった。
母は小児科医をしていたこともあって一花の様子をずっとみていてくれたが、疲れて眠っているだけだという判断だったし、私自身も一花を見ても眠っているだけだとわかる。
そのことにホッとしながらも、ここまで長時間眠ってしまうほど疲労させたことについては申し訳なく思っている。
「征哉、一花くんの体力のなさはこれでよく分かったでしょう? 疲労し切った身体が睡眠を欲しているから寝かせておくしかないのだけど、その間食事を取れない分、体力の回復は遅いのだからこれからは気をつけてあげないとダメよ」
自宅の駐車場について早々に母に言われてしまったが、なんの反論もない。
「分かってる。今回は本当にイレギュラーだったんだ。これからは十分気をつけるよ」
とりあえず一花をベッドに寝かせて楽にさせないとな。
「荷物は私と牧田で運んでおくから征哉は一花くんを連れて行って」
「ありがとう」
どちらの部屋に寝かせようかと悩んだが、まだ当分は夜以外は一花の部屋を使うようにしようと決め、一花をそっちのベッドに寝かせた。
それから一時間ほど経ってようやく一花が目を覚ました。
「んっ……せ、いやさん……」
「おはよう。一花。目が覚めたか?」
「すごく、いっぱいねたきがします……」
まだ少し寝ぼけたままで話す一花が可愛い。
「あれ? ここ……」
「ああ、一花が寝ている間に帰ってきたんだ」
「そうなんですね、びっくりしました。あれが全部夢だったのかなって」
「ははっ。夢だったら困るな。せっかく一花を私のものにできたのに」
「せいやさん……」
一気に頬を赤らめながら私を見上げるが、それだけで興奮してしまう。
これまでだって、一花にこうして見上げられたことなんて何度もあるのに関係が変わっただけでこんなにも興奮してしまうなんて思いもしなかった。
もう、一花の全てを知ってしまった私は、以前のような触れ合いだけでは我慢できなくなってしまったのだろうな。それほどに一花との愛し合った時間は濃厚で最高の時間だった。
「一花……愛しているよ」
「はい。僕も、征哉さんが大好きです……」
一花を胸に抱き、甘く柔らかな唇に重ねる。
「んっ……」
一花の甘い吐息が漏れる中、一花の小さな指が私の手を握った。
カチッという微かな音に唇を離し、一花と二人で視線を下げるとキラキラと輝く指輪が綺麗に重なり合っていた。
「これ、とっても綺麗……」
「ああ、私の一花への愛の証だよ」
永遠に輝きを失わないこの宝石のように、私の一花への愛も永遠に変わらない。
これから私たちは新たな人生を二人で歩み続けるのだ。
* * *
「いらっしゃい!」
「一花さん! お招きありがとうございます!」
あっという間に約束の木曜日。絢斗さんと直純くんが我が家にやってきた。
一花と初めて会って以来、見るたびに子どもらしい溌剌とした表情を見せる直純くんを見ていると、初めて会った日とは別人のように思える。それほど、あの時は感情も何もかも抑圧されていたのだとわかる。
本当に磯山先生の家に引き取られてよかったと感じながら、私も一花とともに出迎えると、
「あ、あの……貴船さん。お邪魔します」
とまだ少し緊張しながらも笑顔を向けてくれた。
「ああ、今日は来てくれてありがとう。一花とゆっくりと過ごしてくれ」
「は、はい」
できるだけ優しい言葉をかけると、満面の笑みで返してくれる。ああ、これが本当の直純くんだったのだな。
玄関まで出迎えに行った一花を抱きかかえて、彼らを一花の部屋に案内する。
「じゃあ、母さん。あとは頼むよ。私は部屋で仕事をしているから、何かあったら声をかけてくれ」
「ええ、分かったわ」
私がいたら気を遣わせてしまうだろうと早々に退散して、自室に向かおうとすると玄関チャイムが鳴った。
ああ、もう一人の先生の登場か。
「いらっしゃい」
「征哉さん。お邪魔します」
長らく私を貴船会長と呼んでいた史紀さんだったが、あの結婚式の日を境に名前で呼んでくれるようになった。
まぁ、縁戚になるのだしいつまでも貴船会長と呼ばれるのもおかしいからな。
「一花たちが先生の到着を待っていましたよ」
「そんな……っ、先生だなんて……」
「ははっ。今日はゆっくり楽しんでいってください」
「ありがとうございます」
牧田に部屋まで案内させて、私は自室へ戻った。
今頃、一花たちの部屋はきっと盛り上がっているに違いない。
その間に私はしっかりと仕事でもしていようか。志摩くんもいないが、今日はリモートでも大丈夫なようにしてくれているから助かる。本当に志摩くんさまさまだな。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます!
当初の予定では結婚式を挙げて、二人が初夜を迎えたら完結にしようと思っていたのですが、せっかくなら楽しい編み物会の様子まで本編に入れてしまおうと思い、そのまま続けることにしました。
なので、もうちょこっとだけお付き合いいただけると嬉しいです♡
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