歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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みんなへの挨拶

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プリムローズと天沢の店との統合の話はかなり突き詰めたところまで進んだし、あとは任せても大丈夫だろう。
有原くんが顧問弁護士になることも決まったしこれでひとまず安心だ。

「そろそろ一時間か……。いい加減、一花も休ませたいから、今日はこの辺にしようか。天沢、いいか?」

「そうだな。今日は本当に助かったよ。とりあえずあの写真の選定は私に任せてもらうが決定前に貴船にも確認を取るから」

「ああ、そうしてもらえると助かる。じゃあ、みなさん。そろそろお開きにしましょうか」

「それでは皆さんを駐車場までお見送りさせていただきます」

佐久川社長がすっと立ち上がってそう言ってくれたが、佐久川社長が見送るということはあの日南くんも最後までそれに付き合うということになる。

ということは、それだけ麻生さんと過ごす時間が遅くなるということだ。

彼の仕事が終わるのを静かに待っている麻生さんにこれ以上待たせるのも可哀想だ。

「いや、それぞれ駐車場も別ですし、見送りは必要ありませんよ」

「ですが……」

佐久川社長は恐縮している様子だったが、蓮見さんや磯山先生からも見送りはいらないと言われて、ようやく納得してくれた。

さぁ、これで一花との時間を過ごすことができる。

いの一番に花たちが戯れている中に入り、椅子に座っていた一花に近づいた。

「一花」

「あ、征哉さん。みんなとメッセージアプリのID交換したんですよ」

そう言って無邪気に画面を見せてくれる一花は友人が増えて嬉しそうだ。

「そうか、よかったな。だが、そろそろこの店を出る時間だ。宿泊所でのんびりと過ごそう」

「もうそんな時間なんですね。楽しかったからあっという間でした」

「直純くんや谷垣くん、それに史紀さんは同じ宿泊所だからあっちでも会えるよ」

「ああ、そうなんですね。楽しみ!」

「少しだけみんなに話をしてくるから、ここで待っていてくれ」

「はーい」

一花を椅子に座らせたまま、私は母の元に急いだ。

「母さんは牧田の車に乗るか? それともこっちに乗る?」

「そうね、荷物もあるし牧田の車に乗せてもらうわ。部屋は隣同士だったわね?」

「ああ、そうだよ」

「わかったわ。じゃあ、後でね」

牧田がさっと母の荷物を持ち、部屋から出ていくのを見送りながら今度は磯山先生に声をかけた。

「磯山先生、場所はお分かりですか?」

「ああ、大丈夫だよ。そちらは新婚だから忙しいかもしれないが、もし、少しでも会えるようなら声をかけてくれ。息子・・が喜ぶ」

「ふふっ。そうですね」

直純くんが正式に磯山先生の実子になったのは、もちろん直純くん自身も嬉しいだろうが、磯山先生も相当嬉しかったのだろう。

あの子はこれからきっと愛情たっぷりに育てられ幸せになるのだろうな。

「会長。ご移動されますか?」

「ああ。志摩くん、荷物は大丈夫か?」

「もう全て積み込んでいます。いつでも出発できますよ」

「さすが仕事が早いな。この結婚式のためにここ数日急がせて悪かったな」

「いえ。週明けから一週間お休みをいただきますので、これくらいは大丈夫ですよ」

そう。
あの時のお礼として提示した一週間の有給休暇を結婚式の翌週に丸々使いたいと言われて、了承した。

結婚式の打ち合わせまで完璧にこなしてくれた志摩くんには本当に感謝しかない。

二人で海外に行くらしいが、どこに行くかまでは聞いていない。

今日は保養所で疲れを癒やし、明日私たちを自宅に送り、そのまま空港に向かうと言っていたから私たちと過ごす時間はないだろう。
二人には今までたくさん世話になった。
たっぷりと楽しんできてもらいたい。

谷垣くんが休暇中は一花のリハビリも休みになる。

その間に直純くんを家に呼ぼうか。
宿泊所に着いたら、その話をするのもいいかもしれないな。

「私は挨拶をしてから駐車場に向かうから、二人は先に行っていていいぞ」

「わかりました。では失礼します」

二人を見送って、今度は甲斐さんたちに声をかけた。

「甲斐さん、伊月くん。今日のためにフランをありがとうございました」

「いえ、私たちも素敵な式に参列できて楽しかったですよ。伊月にもたくさん友人ができましたし、貴船さんと一花さんのおかげです」

「一花も伊月くんと友人になれてとても喜んでいますよ。いつでも遊びに来てください」

「は、はい。ありがとうございます」

私にはまだ人見知りしているようだが、一花とは楽しそうに話していたから大丈夫だろう。

「フランとグリちゃんは私どもでお預かりして、来週にでもお届けにあがります」

「よろしいのですか?」

「ええ。慣れない宿泊所よりはうちの方が安心してもらえると思いますので。それにグリちゃんもフランを気に入っているようですからね」

甲斐さんがサークルに視線を送るのをみて私もそっちに目を向けると、二匹が楽しそうに戯れているのが見える。

「ああ、確かにそのようですね。ではよろしくお願いします」

私の言葉に二人は笑顔でサークルに近づいていった。


「貴船くん」

「蓮見さん、お声かけが遅くなってしまってすみません。今日は遠いところまでお越しいただきありがとうございました」

「いや、私も敬介も楽しかったよ。なぁ、敬介」

「はい。一花くんの幸せな姿を見られてよかったです。どうぞお幸せに」

「ありがとうございます」

「それでは私たちは失礼しよう。荷物の運び出しはもう業者に任せているから安心してくれと伝えておいてくれ」

そういうと、二人は寄り添って部屋を出ていった。
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