歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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驚きと喜び

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「志摩くん、相談があるんだ」

「朝からそんな神妙な顔をなさって、どうされたんですか?」

「実はな……」

朝、迎えに来てくれた志摩くんと車に乗り込んですぐに、昨夜天沢から持ち込まれた話を全て話した。

「なるほど。一花さんとパンフレットの撮影とはいえ、本物の結婚式を挙げられるわけですね」

「ああ、そうなんだ。それで志摩くんに相談なんだが、せっかくの機会だから私の母はもちろん、櫻葉家とできれば磯山先生とご家族にも参列してもらいたいと思っているんだ」

「二人だけの撮影ではなく、親族や皆さまをご招待して本当の結婚式にする、というわけですか?」

「そうだ。あの後、天沢とも話をしたんだが、人数が増える分には構わないと言ってくれてね。一花の体調を考えると何度も挙式をするのは難しいだろう? だが一花と何よりも櫻葉会長のためにも心から祝ってくれるみんなの前でお披露目をしてやりたいんだ。どうだろう?」

「それは素晴らしいアイディアだと思います。天沢さんのお店の近くには、貴船コンツェルンの保養所がありますから参列してくださる皆さまにはそちらでご宿泊もしていただけますね」

「そうだな。全ての移動にはうちの車を手配しよう」

「もうあまりお日にちがありませんので、招待される方のリストをすぐに用意してください。私から直接ご連絡いたします」

もうすっかり仕事モードに入った志摩くんをみて安心する。
やはり志摩くんに相談するとことが進むのが早いな。

「わかった。それからもう一つ頼みがあるのだが……」

「なんでしょう?」

「このことは当日まで谷垣くんには内緒にしてもらいたいんだ」

「えっ? どうしてですか?」

「一花へのサプライズにしたいんだよ。花嫁衣装を着て出てきたらみんなに迎えられるようにしてやりたい」

「なるほど、そういうことですか」

「谷垣くんは一花のそばにいる分、計画を知ってしまうと隠すのが辛くなるだろう?」

「それは確かにそうですね。尚孝さんは素直ですから」

「だから、谷垣くんにも計画は伝えないでほしい」

「わかりました。尚孝さんに隠し事するのはあまりしたくはありませんが、ことがことなのでご協力いたします」

「ありがとう、助かるよ」

「それで、招待客のおおまかなリストと、当日のスケジュールですが……」

車の中でほとんどのことが決まっていく。
さすがだな。

<side一眞>

会長室で会議が始まるまでの時間を過ごしていると、突然スマホが鳴り出した。
画面表示を見ると<貴船コンツェルン会長秘書・志摩くん>とある。

仕事の連絡ならば会社を通してくるから、スマホにかかってきたということはプライベートな内容なのだろう。
もしかしたら、一花が征哉くんに何かあったのかと慌てて電話をとった。

ーもしもし。

ーお忙しいところ恐れ入ります。私、貴船コンツェルンで会長秘書をしております志摩と申します。櫻葉会長のお電話でよろしいですか?

ーああ、志摩くん。どうした?

ー今、お時間よろしいですか?

ーああ、あと30分ほどで会議が始まるがそれまでなら構わない。

ーありがとうございます。実は…………

そう言って志摩くんが話してくれた内容に私は、驚きが強すぎて言葉が出なくなってしまっていた。

ーあの、会長……電話つながっていらっしゃいますか?

ーあ、ああ。申し訳ない。あまりの驚きと喜びで返事をするのを忘れてしまっていた。でも、まさか一花の花嫁姿を見られる日が来るとは夢にも思っていなかったよ。

ーこちらとしても突然のお話でしたので、驚かせてしまいまして申し訳ございません。つきましては、是非ともご参列いただきたいのですが、いかがでしょうか?

ーもちろん参列させてもらうよ!! 史紀と恋人にも声をかけてみよう。ああ、史紀の恋人は店をしているから難しいかもしれないが声をかけてみるよ。

ーはい。お二人揃ってご参列いただければ一花さんも喜ばれると思います。それから二階堂さんもぜひお声がけください。

ー二階堂も……いいのか?

ーもちろんです。一花さんの幸せを喜んでいただける方ならどなたでも参列いただきたいです。急で申し訳ございませんが、明日までに人数をお知らせいただけると幸いでございます。

ーわかった。すぐに連絡しよう。

ーありがとうございます。それではすぐにその日のスケジュールをメールにてお送りいたしますのでご確認ください。

ーありがとう。確認しておくよ。

ーそれから、一番重要な伝達事項がございます。

ーなんだ?

ーこの計画は一花さんには内緒にしていただきたいのです。

ーえっ? 一花に秘密に?

ーはい。貴船が一花さんを驚かせたいと申しております。

ーなるほど、そういうことか。わかった。それはそちらに合わせるとしよう。

そう言って電話を切った。
一花が、結婚式か……。

息子である一花が花嫁衣装を着るということに複雑な思いはするが、生きて私の前に戻ってきてくれただけでそれ以上を望んではいけない。
何より一花が征哉くんとの結婚を望んでいるんだ。
父としてその気持ちを奪ってはいけないな。

私はすぐに史紀を部屋に呼び、志摩くんから聞いた話を全て話した。

「できれば、史紀の恋人、伊吹くんだったか……彼にも出席してほしいが、店はどうだろうか?」

「は、はい。事情が事情なので多分参列してくれると思いますが、とりあえず確認します」

「そうか、うちからもできるだけたくさん人を出して祝ってやりたいからな」

「はい。私も一花さんの幸せそうな顔を見たいです。一眞さん……本当によかったですね」

「――っ、あ、ああ、ありがとう」

ずっと私が一花を探していたのを知っている史紀からの言葉に胸がいっぱいになる。
私は本当に幸せものだ。
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