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みんなが幸せに
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<side征哉>
「んっ……」
「一花、起きたか?」
「あれ? もう、お家?」
てっきりまだ車の中だと思っていたのだろう。
自分の部屋で寝ていることにびっくりしている様子の一花が可愛い。
「ああ。初めての場所に行ったから疲れも出たんだろう。車が動き出してすぐからぐっすりだったよ。まだもう少し寝ていてもいいけど、起きるか?」
「うん、お腹が空いちゃった……」
そう言った途端、一花のお腹からきゅるると可愛い音が聞こえてきた。
「ふふっ。一花は身体も素直でいい子だな。すぐに食事の支度をさせよう」
「あ、グリは?」
「グリも初めての場所ではしゃぎすぎたのかもしれない。帰ってきてすぐに餌を食べたら眠ってしまったよ」
「そっか。でも直くんもあやちゃんもグリのことすっごく可愛がってくれて嬉しかったです」
「ああ。そうだな」
磯山先生のあの様子なら、ウサギを飼うのは当分無理そうだが、一花と会うときにグリも一緒に連れて行ってやればそれで満足してくださるだろう。
「征哉さん、未知子ママも一緒にご飯食べられる?」
「ああ。一花と一緒に食べるって言っていたから大丈夫だよ」
「良かったぁ。直くんと一緒に作ったリースを、プレゼントしたいです」
「そうだったな。きっと喜ぶよ」
「はい!」
絢斗さんが綺麗に箱に入れてくれたリースを一花に渡し、抱きかかえてダイニングルームに連れて行くともうすでに母は席に座って待っていた。
よほど一花と会うのが楽しみでたまらなかったようだ。
「未知子ママ。ただいま」
「ふふっ。お帰りなさい。今日は楽しかったみたいでよかったわ」
「はい。直くんともあやちゃんともいっぱいおしゃべりできました」
「あらあら。本当によかったわ」
「あの、これ……お土産です」
「私に? 何かしら?」
「直くんに教えてもらいながら、一緒に作ったんです」
「えっ? 直純くんと一緒に? 何かしら?」
母は驚きながらも綺麗にリボンを解き、丁寧に蓋をとった。
「――っ、まぁ! 素敵っ!! ちょうど今の季節にぴったりのお花のリースね。私がもらってもいいの?」
「はい。未知子ママにプレゼントしたいって思って作ったので。直くんも、未知子ママにプレゼントしたいって言ってましたよ」
「そう……直純くんが……頑張っているのね」
「いろんなことに挑戦するようにって未知子ママに言われて、直くん……いろいろできるようになったみたいです」
「そう。他にもどんなことができるようになったって?」
「毎日、昇さんのためにおにぎりを作ってるそうです」
「えっ? 直純くんが、おにぎりを? すごいわね」
「はい。それであやちゃんも直くんのパパにおにぎりを作れるように、直くんが作り方を調べて、作れるようになったみたいですよ」
「えっ? 絢斗さんが? 料理を?」
それは驚いた。
料理は一種の才能だという。
いろいろな工程を順番通りに進めるだけでみんなが上手にできるものではない。
磯山先生からは、絢斗さんにはそれが著しく欠けていると聞いたことがある。
だからこそ、磯山家の食事はすべて磯山先生が担っているのだと。
――私が作ったものを食べて絢斗が笑顔を見せてくれる上に、絢斗の血肉となるのだからそれ以上嬉しいことはない。
磯山先生はそうやって嬉しそうに話していたし、それが二人の中で幸せだと感じているのなら周りがとやかくいう必要もない。
私だって、一花が苦手なものは無理にさせようとは思わないし、一花のために自分ができるなら嬉しいと思うだろう。
それでも一花が苦手な中で私のために一生懸命してくれたなら、それがどんなものであったとしても幸せだ。
直純くんは磯山先生と絢斗さんにそんな幸せを贈ったのだろうな。
本当に彼は磯山家に引き取られてよかったんだ。
<side未知子>
食事を終えて、一花くんからもらったリースを持って自室に戻る。
「このリース、扉に飾りたいわ」
「はい。奥さま。すぐにご用意いたします」
牧田のおかげで、すぐに扉にリースがつけられた。
「ああ……本当に可愛いリースだわ。このお返しに一花くんと直純くんに何かプレゼントしたいけれど、何がいいかしら?」
廊下に立ち尽くしながら、そんなことを考えていると、
「母さん? こんなところで何をしているんだ?」
と征哉に声をかけられた。
「さっき一花くんにもらったリースをつけてもらったのよ。それよりあなたは一人で何をしているの?」
「ああ、一花を風呂に入れようと思って、準備をしにきたんだ。牧田、一花が疲れているからあっちの入浴剤を用意しておいてくれ」
「承知いたしました」
ふふっ。ラベンダーのあの入浴剤ね。
あれなら一花くんもスッキリ眠れるわ。
「扉にかけるとまた雰囲気が変わるものだな」
「ええ、そうなのよ。見ているだけで癒されるわ。ねぇ、こんな素敵なものをプレゼントしてもらったから、直純くんと一花くんにお返しがしたいんだけど、何かいいアイディアないかしら?」
「二人に、お返し……そうだな……。考えておくよ」
「よろしくね」
征哉が二人を喜ばせるために何を考えてくれるのか…‥ふふっ。私も楽しみだわ。
「んっ……」
「一花、起きたか?」
「あれ? もう、お家?」
てっきりまだ車の中だと思っていたのだろう。
自分の部屋で寝ていることにびっくりしている様子の一花が可愛い。
「ああ。初めての場所に行ったから疲れも出たんだろう。車が動き出してすぐからぐっすりだったよ。まだもう少し寝ていてもいいけど、起きるか?」
「うん、お腹が空いちゃった……」
そう言った途端、一花のお腹からきゅるると可愛い音が聞こえてきた。
「ふふっ。一花は身体も素直でいい子だな。すぐに食事の支度をさせよう」
「あ、グリは?」
「グリも初めての場所ではしゃぎすぎたのかもしれない。帰ってきてすぐに餌を食べたら眠ってしまったよ」
「そっか。でも直くんもあやちゃんもグリのことすっごく可愛がってくれて嬉しかったです」
「ああ。そうだな」
磯山先生のあの様子なら、ウサギを飼うのは当分無理そうだが、一花と会うときにグリも一緒に連れて行ってやればそれで満足してくださるだろう。
「征哉さん、未知子ママも一緒にご飯食べられる?」
「ああ。一花と一緒に食べるって言っていたから大丈夫だよ」
「良かったぁ。直くんと一緒に作ったリースを、プレゼントしたいです」
「そうだったな。きっと喜ぶよ」
「はい!」
絢斗さんが綺麗に箱に入れてくれたリースを一花に渡し、抱きかかえてダイニングルームに連れて行くともうすでに母は席に座って待っていた。
よほど一花と会うのが楽しみでたまらなかったようだ。
「未知子ママ。ただいま」
「ふふっ。お帰りなさい。今日は楽しかったみたいでよかったわ」
「はい。直くんともあやちゃんともいっぱいおしゃべりできました」
「あらあら。本当によかったわ」
「あの、これ……お土産です」
「私に? 何かしら?」
「直くんに教えてもらいながら、一緒に作ったんです」
「えっ? 直純くんと一緒に? 何かしら?」
母は驚きながらも綺麗にリボンを解き、丁寧に蓋をとった。
「――っ、まぁ! 素敵っ!! ちょうど今の季節にぴったりのお花のリースね。私がもらってもいいの?」
「はい。未知子ママにプレゼントしたいって思って作ったので。直くんも、未知子ママにプレゼントしたいって言ってましたよ」
「そう……直純くんが……頑張っているのね」
「いろんなことに挑戦するようにって未知子ママに言われて、直くん……いろいろできるようになったみたいです」
「そう。他にもどんなことができるようになったって?」
「毎日、昇さんのためにおにぎりを作ってるそうです」
「えっ? 直純くんが、おにぎりを? すごいわね」
「はい。それであやちゃんも直くんのパパにおにぎりを作れるように、直くんが作り方を調べて、作れるようになったみたいですよ」
「えっ? 絢斗さんが? 料理を?」
それは驚いた。
料理は一種の才能だという。
いろいろな工程を順番通りに進めるだけでみんなが上手にできるものではない。
磯山先生からは、絢斗さんにはそれが著しく欠けていると聞いたことがある。
だからこそ、磯山家の食事はすべて磯山先生が担っているのだと。
――私が作ったものを食べて絢斗が笑顔を見せてくれる上に、絢斗の血肉となるのだからそれ以上嬉しいことはない。
磯山先生はそうやって嬉しそうに話していたし、それが二人の中で幸せだと感じているのなら周りがとやかくいう必要もない。
私だって、一花が苦手なものは無理にさせようとは思わないし、一花のために自分ができるなら嬉しいと思うだろう。
それでも一花が苦手な中で私のために一生懸命してくれたなら、それがどんなものであったとしても幸せだ。
直純くんは磯山先生と絢斗さんにそんな幸せを贈ったのだろうな。
本当に彼は磯山家に引き取られてよかったんだ。
<side未知子>
食事を終えて、一花くんからもらったリースを持って自室に戻る。
「このリース、扉に飾りたいわ」
「はい。奥さま。すぐにご用意いたします」
牧田のおかげで、すぐに扉にリースがつけられた。
「ああ……本当に可愛いリースだわ。このお返しに一花くんと直純くんに何かプレゼントしたいけれど、何がいいかしら?」
廊下に立ち尽くしながら、そんなことを考えていると、
「母さん? こんなところで何をしているんだ?」
と征哉に声をかけられた。
「さっき一花くんにもらったリースをつけてもらったのよ。それよりあなたは一人で何をしているの?」
「ああ、一花を風呂に入れようと思って、準備をしにきたんだ。牧田、一花が疲れているからあっちの入浴剤を用意しておいてくれ」
「承知いたしました」
ふふっ。ラベンダーのあの入浴剤ね。
あれなら一花くんもスッキリ眠れるわ。
「扉にかけるとまた雰囲気が変わるものだな」
「ええ、そうなのよ。見ているだけで癒されるわ。ねぇ、こんな素敵なものをプレゼントしてもらったから、直純くんと一花くんにお返しがしたいんだけど、何かいいアイディアないかしら?」
「二人に、お返し……そうだな……。考えておくよ」
「よろしくね」
征哉が二人を喜ばせるために何を考えてくれるのか…‥ふふっ。私も楽しみだわ。
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