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磯山先生のご自宅
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<side征哉>
一花が無理をしていないか、それが心配だったが心から楽しそうに見えて、ホッとした。
これなら磯山先生たちと話をすることもできそうだ。
一花を連れて行こうとすると、
「僕、直くんのパパとあやちゃんに会えるの楽しみです」
と一花が笑顔で言い出した。
えっ?
あや、ちゃん?
まさか、それは絢斗さんのことか?
あまりの衝撃に驚いていると、
「どうかしたんですか?」
と尋ねられた。
「いや、あやちゃんって……絢斗さんのことか?」
確認のためにそう尋ねると、
「絢斗さんって言うんですね。直くんがあやちゃんって呼んでるみたいで、そう教えてくれたんです」
「そう、なのか……」
あの磯山先生が、愛しい伴侶のことを『あやちゃん』と呼ばせるのを認めているとは……。
直純くんがどれだけ磯山先生の家族として溶け込んでいるかがわかるというものだ。
養子にしたいと仰るだけのことはある。
まぁ、磯山先生のこともパパと呼ばせているくらいだからな。
本当に直純くんのことを息子と思っているに違いない。
あの母親とはもう二度と会うことはないだろうし、父親からも別れの手紙が来た直純くんにとっては、この上ない両親ができて大喜びしていることだろう。
それにしても磯山先生がパパか……。
お義父さんも一花にパパと呼ばれて嬉しそうにしていたから、もしかしたら磯山先生の甘々な顔が見られるかもしれないな。
話をしに行くのが、さらに楽しみになってきた。
「じゃあ、一花。行こうか」
優しく抱きかかえて、キャンピングカーを降りると、彼らが志摩くんと談笑しているのが見えた。
谷垣くんと直純くんが意気投合していたと聞いていたが、志摩くんともこんなにも仲良くなっていたとはな。
「待たせたね」
「いえ、大丈夫です」
すぐに答えてくれたのは昇くん。
その手はしっかりと直純くんの手を握っている。
「志摩くん、これから磯山先生のご自宅にお邪魔するから君も一緒に行こう」
「はい。ではお邪魔させていただきます」
「あの、こちらにどうぞ」
昇くんと直純くんに先導され、ついていく間も時折直純くんは私たちを振り返り、一花と笑みを交わし合う。
その嬉しそうな表情に私はホッとしたのだった。
「伯父さん、絢斗さん。お連れしました」
昇くんの声かけに二人が玄関へとやってきた。
磯山先生と絢斗さんはまず直純くんに視線を向けた後で、その後私の腕に抱かれた一花を見た。
二人が一瞬、ハッとした表情をしたのは、私の腕に抱かれた一花があまりにも華奢で小さいことに驚いたからだろう。
誰が見ても一花と昇くんが同じ年には見えないのだから。
けれど、そこはさすがお二人だけあってすぐに笑顔を見せてくれる。
「一花くんだね、よく……来てくれた」
「磯山先生が僕のためにいろいろと動いてくださったって聞きました。ありがとうございます」
「いや、一花くんが幸せになってくれただけで私は嬉しいよ。さぁ、こんなところで立ち話もなんだか中に入ってくれ」
「はい。お邪魔します」
一花を抱きかかえたまま中に入ると、一花の座りやすそうなソファーが準備されているのが見える。
「磯山先生、これは……」
「ああ、一花くんが窮屈にならないように用意しておいたんだ。よければそこに一花くんを座らせてくれ」
その気遣いが嬉しい。
一花をそっと真ん中に座らせると、
「座り心地がいいです。ありがとうございます」
と笑顔を見せてくれた。
「何か飲み物を入れよう。何がいい?」
「あ、でしたら一花は果物のジュースをお願いできますか?」
「ああ、わかった。昇、手伝ってくれ」
「はい」
磯山先生の呼びかけに昇くんがキッチンへと向かった。
「直くん、私たちは座って待っていよう。征哉くんもどうぞ座って」
「はい。ありがとうございます」
一花が座っているソファーはどう見ても一人がけではない。
てっきり私も一緒に座らせてもらえると思っていたのだが、絢斗さんは当然のように一花の隣に座り、直純くんを反対隣に座らせた。
一花は挟むような席順に一瞬戸惑ってしまったが、私の戸惑いをよそに絢斗さんは、笑顔で一花に語りかけていた。
「一花くん、来てくれてありがとう」
「いえ、僕もお会いできて嬉しいです」
「直くんとは……お友達になれそうかな?」
「あの、僕は、もうお友達だと思ってます。ねっ、直くん」
「――っ!! 一花さんっ!! はい、僕もお友達だって思ってます」
「ふふっ。よかった」
一花が振り返り直くんに笑顔を向けていると、
「ああーっ!! よかった!!!」
と大きな声をあげながら、絢斗さんが一花に抱きついた。
「わっ!!」
一花は驚いているものの、嬉しそうにしている。
私は目の前で一花が抱きしめられていることに嫉妬してしまいそうになるが相手は絢斗さん。
もし、他の相手ならさっっさと引き離しに行っただろうが、絢斗さんが一花におかしな気持ちなど起こさないことはよくわかっているから、何もできずにただ見守るしかない。
そっとキッチンに視線を向けると、磯山先生もまた、気にはなっているようだが決して声をかけようとはしなかった。
一花が無理をしていないか、それが心配だったが心から楽しそうに見えて、ホッとした。
これなら磯山先生たちと話をすることもできそうだ。
一花を連れて行こうとすると、
「僕、直くんのパパとあやちゃんに会えるの楽しみです」
と一花が笑顔で言い出した。
えっ?
あや、ちゃん?
まさか、それは絢斗さんのことか?
あまりの衝撃に驚いていると、
「どうかしたんですか?」
と尋ねられた。
「いや、あやちゃんって……絢斗さんのことか?」
確認のためにそう尋ねると、
「絢斗さんって言うんですね。直くんがあやちゃんって呼んでるみたいで、そう教えてくれたんです」
「そう、なのか……」
あの磯山先生が、愛しい伴侶のことを『あやちゃん』と呼ばせるのを認めているとは……。
直純くんがどれだけ磯山先生の家族として溶け込んでいるかがわかるというものだ。
養子にしたいと仰るだけのことはある。
まぁ、磯山先生のこともパパと呼ばせているくらいだからな。
本当に直純くんのことを息子と思っているに違いない。
あの母親とはもう二度と会うことはないだろうし、父親からも別れの手紙が来た直純くんにとっては、この上ない両親ができて大喜びしていることだろう。
それにしても磯山先生がパパか……。
お義父さんも一花にパパと呼ばれて嬉しそうにしていたから、もしかしたら磯山先生の甘々な顔が見られるかもしれないな。
話をしに行くのが、さらに楽しみになってきた。
「じゃあ、一花。行こうか」
優しく抱きかかえて、キャンピングカーを降りると、彼らが志摩くんと談笑しているのが見えた。
谷垣くんと直純くんが意気投合していたと聞いていたが、志摩くんともこんなにも仲良くなっていたとはな。
「待たせたね」
「いえ、大丈夫です」
すぐに答えてくれたのは昇くん。
その手はしっかりと直純くんの手を握っている。
「志摩くん、これから磯山先生のご自宅にお邪魔するから君も一緒に行こう」
「はい。ではお邪魔させていただきます」
「あの、こちらにどうぞ」
昇くんと直純くんに先導され、ついていく間も時折直純くんは私たちを振り返り、一花と笑みを交わし合う。
その嬉しそうな表情に私はホッとしたのだった。
「伯父さん、絢斗さん。お連れしました」
昇くんの声かけに二人が玄関へとやってきた。
磯山先生と絢斗さんはまず直純くんに視線を向けた後で、その後私の腕に抱かれた一花を見た。
二人が一瞬、ハッとした表情をしたのは、私の腕に抱かれた一花があまりにも華奢で小さいことに驚いたからだろう。
誰が見ても一花と昇くんが同じ年には見えないのだから。
けれど、そこはさすがお二人だけあってすぐに笑顔を見せてくれる。
「一花くんだね、よく……来てくれた」
「磯山先生が僕のためにいろいろと動いてくださったって聞きました。ありがとうございます」
「いや、一花くんが幸せになってくれただけで私は嬉しいよ。さぁ、こんなところで立ち話もなんだか中に入ってくれ」
「はい。お邪魔します」
一花を抱きかかえたまま中に入ると、一花の座りやすそうなソファーが準備されているのが見える。
「磯山先生、これは……」
「ああ、一花くんが窮屈にならないように用意しておいたんだ。よければそこに一花くんを座らせてくれ」
その気遣いが嬉しい。
一花をそっと真ん中に座らせると、
「座り心地がいいです。ありがとうございます」
と笑顔を見せてくれた。
「何か飲み物を入れよう。何がいい?」
「あ、でしたら一花は果物のジュースをお願いできますか?」
「ああ、わかった。昇、手伝ってくれ」
「はい」
磯山先生の呼びかけに昇くんがキッチンへと向かった。
「直くん、私たちは座って待っていよう。征哉くんもどうぞ座って」
「はい。ありがとうございます」
一花が座っているソファーはどう見ても一人がけではない。
てっきり私も一緒に座らせてもらえると思っていたのだが、絢斗さんは当然のように一花の隣に座り、直純くんを反対隣に座らせた。
一花は挟むような席順に一瞬戸惑ってしまったが、私の戸惑いをよそに絢斗さんは、笑顔で一花に語りかけていた。
「一花くん、来てくれてありがとう」
「いえ、僕もお会いできて嬉しいです」
「直くんとは……お友達になれそうかな?」
「あの、僕は、もうお友達だと思ってます。ねっ、直くん」
「――っ!! 一花さんっ!! はい、僕もお友達だって思ってます」
「ふふっ。よかった」
一花が振り返り直くんに笑顔を向けていると、
「ああーっ!! よかった!!!」
と大きな声をあげながら、絢斗さんが一花に抱きついた。
「わっ!!」
一花は驚いているものの、嬉しそうにしている。
私は目の前で一花が抱きしめられていることに嫉妬してしまいそうになるが相手は絢斗さん。
もし、他の相手ならさっっさと引き離しに行っただろうが、絢斗さんが一花におかしな気持ちなど起こさないことはよくわかっているから、何もできずにただ見守るしかない。
そっとキッチンに視線を向けると、磯山先生もまた、気にはなっているようだが決して声をかけようとはしなかった。
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