歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
上 下
195 / 291

フランのために……

しおりを挟む
<side征哉>

今頃、お義父さんは磯山先生と話をしているのだろう。

一花が会いたいと言っているといえば、すぐに日時が決まりそうだ。

直純くんが一花と会って謝罪する……。
私もその日に、彼に今までの非礼を詫びなければいけないな。

「ふふっ。征哉さん、フランとこうして遊べるのって楽しいですね」

「ああ、そうだな。だが……私たちは家に帰るだろう? その時に一花には頑張ってほしいことがあるんだ」

「僕が、頑張る?」

「ああ。甲斐さんがフランをこの家に連れてきた時に、一花はいただろう?」

「はい」

「フランにとって、一花はこの家の家族だと認識されたんだ。だが、一花はこの家でずっと暮らしているわけじゃない。夕方には私たちの家に戻るだろう?」

そこまでいうと、私の言わんとしていることに気づき始めたのか、一花は小さく頷いた。

「私たちがこの家を出て帰る時、フランは一花に帰らないでと縋るだろう。だが、そこは心を鬼にして決して振り向いてはいけない。できる?」

「えっ……でも、それじゃあフランが……」

「可哀想だと振り返ってしまったら、これからフランは追い縋れば振り向いてくれると学習してしまう。一度喜ばせておいて結局いなくなったらそっちの方が可哀想じゃないか?」

「――っ!! そう、ですね……」

「甲斐さんもフランから離れる時に、さようならと告げた後は一度も振り返らずに帰っていただろう? あれはフランのためにしたことなんだよ」

「フランのため……」

「そうだ。そして、またこの家に遊びにきて私たちは家に帰る。そうすることでフランには一花は時々遊びに来てくれる優しい人という存在に変わるんだ。フランにはそうやって覚えさせることが大事なんだよ。そうしなければ、一花が帰ってしまった後、残されたお義父さんや二階堂さんが困ってしまうんだ」

「お父さんたちが……わかりました……僕、頑張ります。でも……ここにいる間は、フランといっぱい遊んでいいですよね?」

「ああ、もちろんだ」

そういうと、一花は満面の笑みを見せながらフランとの楽しい時間を過ごし始めた。

フランと一花のこの上なく楽しそうな姿を写真や動画に収めていると、一花を呼ぶお義父さんの声が聞こえた。

あの表情を見ると、どうやら磯山先生とは話がついたようだな。

しばらくお義父さんも交えてフランと遊んだ後で、私たちはリビングに戻った。
フランは二階堂さんが足を洗い、飲み物を飲ませてから連れてきてくれるようだ。

「一花、楽しかったか?」

「はい。早くフランとグリを一緒に遊ばせてあげたいなって思いました」

「そうか。それはいいな」

一息ついて、お義父さんは一花の目を見ながらゆっくりと口を開いた。

「昨夜話した、直純くんのことなんだが……磯山先生と話をしてきたよ」

「――っ、はい」

「一花に了承してもらえて喜んでおられた。こういうのはあまり時間を空けるのは良くないから、近いうちに一花と彼が会える場を作ろうと思っているのだが、この家や一花の家だと彼が緊張してしまうだろう。だから、征哉くんのキャンピングカーの中で会うのはどうだろう?」

「えっ、あのキャンピングカーですか?」

思っても見なかった内容に思わず聞き返してしまった。

「ああ、君が一花のために特注したと聞いているし、一花も気楽に過ごせるだろう? 一花、どうだ?」

「キャンピングカーってこの前saraさんのところに行く時に乗った車ですよね? また乗りたいと思っていたので嬉しいです!!」

「そうか、征哉くんはどうかな?」

「ええ。あの車なら、周りを気にする事なくゆっくりと話ができるでしょうね。ですが、一花と彼をあの車の中で二人っきりにするというのは……」

「ふふっ。心配はいらないだろうが、何かあればすぐに中に入ればいい。君は鍵を持っているのだから」

「ああ、そうですね……彼と一花の事情を考えれば、あの車の中が二人が会うには最適な場所かもしれません」

密室空間に一花と彼を二人っきりにすることに抵抗があったが、そこは杞憂か。

「わかりました。それでいつにしましょう?」

「相手方はこちらの都合に合わせると仰っていた。征哉くんが都合のいい日にしよう」

「では明後日の午後三時にしましょうか。一花、いいか?」

「はい。楽しみです」

一花の笑顔は心からのものだ。
その気持ちを大切にしてあげないとな。
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...