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フランのために……
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<side征哉>
今頃、お義父さんは磯山先生と話をしているのだろう。
一花が会いたいと言っているといえば、すぐに日時が決まりそうだ。
直純くんが一花と会って謝罪する……。
私もその日に、彼に今までの非礼を詫びなければいけないな。
「ふふっ。征哉さん、フランとこうして遊べるのって楽しいですね」
「ああ、そうだな。だが……私たちは家に帰るだろう? その時に一花には頑張ってほしいことがあるんだ」
「僕が、頑張る?」
「ああ。甲斐さんがフランをこの家に連れてきた時に、一花はいただろう?」
「はい」
「フランにとって、一花はこの家の家族だと認識されたんだ。だが、一花はこの家でずっと暮らしているわけじゃない。夕方には私たちの家に戻るだろう?」
そこまでいうと、私の言わんとしていることに気づき始めたのか、一花は小さく頷いた。
「私たちがこの家を出て帰る時、フランは一花に帰らないでと縋るだろう。だが、そこは心を鬼にして決して振り向いてはいけない。できる?」
「えっ……でも、それじゃあフランが……」
「可哀想だと振り返ってしまったら、これからフランは追い縋れば振り向いてくれると学習してしまう。一度喜ばせておいて結局いなくなったらそっちの方が可哀想じゃないか?」
「――っ!! そう、ですね……」
「甲斐さんもフランから離れる時に、さようならと告げた後は一度も振り返らずに帰っていただろう? あれはフランのためにしたことなんだよ」
「フランのため……」
「そうだ。そして、またこの家に遊びにきて私たちは家に帰る。そうすることでフランには一花は時々遊びに来てくれる優しい人という存在に変わるんだ。フランにはそうやって覚えさせることが大事なんだよ。そうしなければ、一花が帰ってしまった後、残されたお義父さんや二階堂さんが困ってしまうんだ」
「お父さんたちが……わかりました……僕、頑張ります。でも……ここにいる間は、フランといっぱい遊んでいいですよね?」
「ああ、もちろんだ」
そういうと、一花は満面の笑みを見せながらフランとの楽しい時間を過ごし始めた。
フランと一花のこの上なく楽しそうな姿を写真や動画に収めていると、一花を呼ぶお義父さんの声が聞こえた。
あの表情を見ると、どうやら磯山先生とは話がついたようだな。
しばらくお義父さんも交えてフランと遊んだ後で、私たちはリビングに戻った。
フランは二階堂さんが足を洗い、飲み物を飲ませてから連れてきてくれるようだ。
「一花、楽しかったか?」
「はい。早くフランとグリを一緒に遊ばせてあげたいなって思いました」
「そうか。それはいいな」
一息ついて、お義父さんは一花の目を見ながらゆっくりと口を開いた。
「昨夜話した、直純くんのことなんだが……磯山先生と話をしてきたよ」
「――っ、はい」
「一花に了承してもらえて喜んでおられた。こういうのはあまり時間を空けるのは良くないから、近いうちに一花と彼が会える場を作ろうと思っているのだが、この家や一花の家だと彼が緊張してしまうだろう。だから、征哉くんのキャンピングカーの中で会うのはどうだろう?」
「えっ、あのキャンピングカーですか?」
思っても見なかった内容に思わず聞き返してしまった。
「ああ、君が一花のために特注したと聞いているし、一花も気楽に過ごせるだろう? 一花、どうだ?」
「キャンピングカーってこの前saraさんのところに行く時に乗った車ですよね? また乗りたいと思っていたので嬉しいです!!」
「そうか、征哉くんはどうかな?」
「ええ。あの車なら、周りを気にする事なくゆっくりと話ができるでしょうね。ですが、一花と彼をあの車の中で二人っきりにするというのは……」
「ふふっ。心配はいらないだろうが、何かあればすぐに中に入ればいい。君は鍵を持っているのだから」
「ああ、そうですね……彼と一花の事情を考えれば、あの車の中が二人が会うには最適な場所かもしれません」
密室空間に一花と彼を二人っきりにすることに抵抗があったが、そこは杞憂か。
「わかりました。それでいつにしましょう?」
「相手方はこちらの都合に合わせると仰っていた。征哉くんが都合のいい日にしよう」
「では明後日の午後三時にしましょうか。一花、いいか?」
「はい。楽しみです」
一花の笑顔は心からのものだ。
その気持ちを大切にしてあげないとな。
今頃、お義父さんは磯山先生と話をしているのだろう。
一花が会いたいと言っているといえば、すぐに日時が決まりそうだ。
直純くんが一花と会って謝罪する……。
私もその日に、彼に今までの非礼を詫びなければいけないな。
「ふふっ。征哉さん、フランとこうして遊べるのって楽しいですね」
「ああ、そうだな。だが……私たちは家に帰るだろう? その時に一花には頑張ってほしいことがあるんだ」
「僕が、頑張る?」
「ああ。甲斐さんがフランをこの家に連れてきた時に、一花はいただろう?」
「はい」
「フランにとって、一花はこの家の家族だと認識されたんだ。だが、一花はこの家でずっと暮らしているわけじゃない。夕方には私たちの家に戻るだろう?」
そこまでいうと、私の言わんとしていることに気づき始めたのか、一花は小さく頷いた。
「私たちがこの家を出て帰る時、フランは一花に帰らないでと縋るだろう。だが、そこは心を鬼にして決して振り向いてはいけない。できる?」
「えっ……でも、それじゃあフランが……」
「可哀想だと振り返ってしまったら、これからフランは追い縋れば振り向いてくれると学習してしまう。一度喜ばせておいて結局いなくなったらそっちの方が可哀想じゃないか?」
「――っ!! そう、ですね……」
「甲斐さんもフランから離れる時に、さようならと告げた後は一度も振り返らずに帰っていただろう? あれはフランのためにしたことなんだよ」
「フランのため……」
「そうだ。そして、またこの家に遊びにきて私たちは家に帰る。そうすることでフランには一花は時々遊びに来てくれる優しい人という存在に変わるんだ。フランにはそうやって覚えさせることが大事なんだよ。そうしなければ、一花が帰ってしまった後、残されたお義父さんや二階堂さんが困ってしまうんだ」
「お父さんたちが……わかりました……僕、頑張ります。でも……ここにいる間は、フランといっぱい遊んでいいですよね?」
「ああ、もちろんだ」
そういうと、一花は満面の笑みを見せながらフランとの楽しい時間を過ごし始めた。
フランと一花のこの上なく楽しそうな姿を写真や動画に収めていると、一花を呼ぶお義父さんの声が聞こえた。
あの表情を見ると、どうやら磯山先生とは話がついたようだな。
しばらくお義父さんも交えてフランと遊んだ後で、私たちはリビングに戻った。
フランは二階堂さんが足を洗い、飲み物を飲ませてから連れてきてくれるようだ。
「一花、楽しかったか?」
「はい。早くフランとグリを一緒に遊ばせてあげたいなって思いました」
「そうか。それはいいな」
一息ついて、お義父さんは一花の目を見ながらゆっくりと口を開いた。
「昨夜話した、直純くんのことなんだが……磯山先生と話をしてきたよ」
「――っ、はい」
「一花に了承してもらえて喜んでおられた。こういうのはあまり時間を空けるのは良くないから、近いうちに一花と彼が会える場を作ろうと思っているのだが、この家や一花の家だと彼が緊張してしまうだろう。だから、征哉くんのキャンピングカーの中で会うのはどうだろう?」
「えっ、あのキャンピングカーですか?」
思っても見なかった内容に思わず聞き返してしまった。
「ああ、君が一花のために特注したと聞いているし、一花も気楽に過ごせるだろう? 一花、どうだ?」
「キャンピングカーってこの前saraさんのところに行く時に乗った車ですよね? また乗りたいと思っていたので嬉しいです!!」
「そうか、征哉くんはどうかな?」
「ええ。あの車なら、周りを気にする事なくゆっくりと話ができるでしょうね。ですが、一花と彼をあの車の中で二人っきりにするというのは……」
「ふふっ。心配はいらないだろうが、何かあればすぐに中に入ればいい。君は鍵を持っているのだから」
「ああ、そうですね……彼と一花の事情を考えれば、あの車の中が二人が会うには最適な場所かもしれません」
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「わかりました。それでいつにしましょう?」
「相手方はこちらの都合に合わせると仰っていた。征哉くんが都合のいい日にしよう」
「では明後日の午後三時にしましょうか。一花、いいか?」
「はい。楽しみです」
一花の笑顔は心からのものだ。
その気持ちを大切にしてあげないとな。
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