歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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全て終わりにしよう

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ー磯山先生? 大丈夫ですか?

ーすみません、私は大丈夫です。絢斗が一緒に話を聞いていたもので……櫻葉さんのお話を聞いて、感極まったようで……

ーそうでしたか。またあとでかけ直しましょうか?

ー申し訳ありません。私の方からすぐに折り返します。

そういうと、すぐに電話が切れた。
一花と彼を会わせると話しただけであれほど喜んでくれるとは……。

よほど心配だったのだろうな。
すぐに電話が来たのも彼の話だったからだろう。

私が思っていた以上に、愛情深く育てているのだろうな。

しばらくして、磯山先生からの着信があった。

ーはい。

ー先ほどは失礼いたしました。

ーいえ、絢斗さんはもう大丈夫ですか?

ーはい。今、直純くんのところに話をしに行っています。

ーそうですか。よかった。

ーそれで、一花さんと会わせていただけるというお話ですが……

ーええ。その場所についてご相談というか、話し合いたいと思ってるんです。直純くんはまだ外には出られない状況でしょう?

ーそう、ですね……あの日からまだ一度も外に出したことはありません。まだ養子縁組の手続きも終わっていませんし。正式に私の子どもとして手続きが終われば、少しずつ外に出していこうとは考えていますが、まずは直純くんの父親から書類を返送してもらわないことには話が進まないので……。

ーそうですか……。一花は怪我もだいぶ良くなっては来ていますが、まだ一人で動き回れるような状況ではありませんので、磯山先生のご自宅では気を遣わせてしまうでしょう。直純くんが外に出られるようになってから、我が家か貴船家に連れてきていただくのが一番いいかと思いますが、その分だとかなり後になりそうですね。

ーそうですね。ただ、正直な気持ちを申しますと、貴船さんや櫻葉さんが一緒にいらっしゃるところではかなり緊張してしまうと思うのです。

ーそうでしょうね。あのとき、私たちの彼への態度は彼を傷つけたでしょうしね。

ーいえ、あの時は彼の母のこともありましたから、あの状況で怒りを抑えられる人は少ないですよ。彼もそのことは理解しているはずです。ですが、彼の性格上、大人に囲まれるとなかなか話もできないと思いますので、できれば一花さんとだけの空間を用意していただきたいのです。

ーうーん……。一花とだけ……。

磯山先生の話は理解できるが、一花の体調を考えると少し難しいが……いや、ちょっと待てよ。

ーああっ! もしかしたらいい方法が見つかったかもしれません。

ーえっ? 本当ですか?

ーええ。征哉くんに話を通してからになりますが、彼の持っているキャンピングカーの中なら、誰の目を気にすることもなく尚且つ一花の体調も考慮できるでしょう。

ーなるほど! それはいいアイディアですね。我が家の駐車場に止めていただいて構いませんよ。

ーではその形で征哉くんに話をしておきましょう。都合の良い日時はありますか?

ーいえ。こちらはいつでも合わせられますのでご都合のいい時間に決めていただいて構いません。

ーわかりました。それでは後ほどご連絡させていただきますね。

ーはい。よろしくお願いします。櫻葉さん……本当にありがとうございます。

ー私は何も……。全ては一花自身の気持ちですから。

そういったけれど、磯山先生は何度もお礼を言っていた。

電話を切って、私は天を仰いだ。
麻友子……これでよかったんだよな。

ーええ。一眞さん……これでよかったの。

そんな麻友子の声が聞こえたような気がして、深い恨みの気持ちが解き放たれる。
一花が彼の謝罪を受けたら、もうこれで全てを終わりにしよう。
そう心に誓った。


気持ちを落ち着かせてから、一花たちのいるテラスに向かう。
まだフランを遊んでいるだろうか。

テラスに近づくと

「フランっ、えらい、えらい!」

「ふふっ。こっちだよーー!」

と一花の楽しげな声が耳に飛び込んでくる。

その声に惹きつけられるようにテラスに足を踏み入れると、満面の笑顔でフランと征哉くんと戯れる一花がそこにいた。

「一花っ!」

「あっ! お父さんっ!!」

思わず名前を呼びかけると、嬉しそうに私に大きく手を振って、

「お父さんもこっちにきてー!!」

と誘ってくれた。

18年の辛い日々などまるで感じさせない一花の嬉しそうな笑顔に、私の心も浄化されていった。
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