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新しい出会い
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「わぁっ!」
「あっ、だめっ! 危ないっ!」
「ふふっ」
「きれーいっ!!」
「よかったぁ……っ」
映画を見ながら、一喜一憂する一花の素直な反応に私も、お義父さんも笑みが溢れる。
本当に素直で可愛らしい。
合間に二階堂さんが用意してくれたキャラメル味のポップコーンを口に入れてやると、目を輝かせて喜んでくれた。
映画の邪魔にならないタイミングを見計らって食べさせたり、飲み物を飲ませたり、こんなにも楽しい映画鑑賞は初めてだ。
映画が終わり、電気が灯ると
「はぁー-っ」
と一花が大きなため息を吐いた。
「一花、どうだった?」
「すっごく面白かったです!! 終わっちゃったのが寂しいくらいでした」
「ははっ。そうか。それはよかった。他にも作品はあるから好きなだけ見てもらって構わないが、あまり長時間だと一花が疲れるだろうからな。うちに来た時はいつも見てくれて構わないよ」
「はい。嬉しいです!!」
一花の楽しいことに、映画鑑賞が追加されたようだな。
我が家にもシアタールームを設置しようか。
それともしばらくはここだけの楽しみにしていた方がいいか、悩むところだな。
そういえば、そろそろ志摩くんから連絡が来ているだろうか。
一花がお義父さんと話している隙にさっとスマホを確認してみたが、メッセージも着信もまだ来ていない。
話し合いが長引いているのか……。
それとも打ち解けて楽しい時間でも過ごしているのか、見当もつかないが、とりあえず待つしかないか。
「旦那さま。甲斐さまがお越しになりました。応接室でお待ちいただいております」
一花を抱きかかえて、リビングへ移動していると、二階堂さんがやってきてお義父さんに伝えているのが聞こえた。
「おお、来たか。わかった、すぐに行く」
「お義父さん、私たちは部屋に行っておきましょうか?」
「ああ、いや。気にしないでいい。一花のために来てもらったんだ」
「一花のために?」
「先にリビングに行っておいてくれないか? 私は彼を連れてくるから」
「わかりました」
事情が全くわからないので気になるが、一花のためにと言っているのだから危険はないだろう。
名前に聞き覚えはないから、会社関係や身内ではなさそうだが……わざわざ一花が来ている時に呼ぶくらいだから、何か大事な用事でもあるのだろうか?
一花を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、すぐに二階堂さんがお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いえ、旦那さまはすぐにお越しになりますので、しばらくお待ちください」
「あの、二階堂さん……甲斐さんって……」
「ふふっ。すぐにお分かりになりますよ」
気になって尋ねてみたが、二階堂さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、すぐに部屋から出ていった。
「征哉さん、お父さんのお客さんってどんな人ですか?」
「うーん、私にもわからないな。だが、一花のためだと仰っていたからきっといい人だよ」
「はい。そうですね」
一花の笑顔はお義父さんへの絶対的な信頼だな。
それからしばらくさっきの映画の感想の話題で盛り上がっていると、扉をノックする音が聞こえてゆっくりと扉が開いた。
お義父さんがすぐに入ってくると思ったが、扉の影からひょっこり現れたのは柔らかなイエローの毛色が可愛いミニチュアダックスフンド。
「わぁっ!」
一花の嬉しそうな声に、驚くこともなくその犬は駆け寄ってきた。
万が一噛みつかれたりしてはいけないと一花を守りつつ、犬が寄ってくるのを見ていたが、その犬は私たちのすぐそばでピタッと止まり、一花に撫でてとでもいうようにそっと頭を差し出した。
「可愛いっ!!」
一花がそっと頭を撫でると、クゥンクゥンと嬉しそうな声をあげる。
その姿を少し離れた場所からお義父さんが嬉しそうに写真におさめている姿が私の視界に入っていた。
数枚写真を撮って満足したのか、お義父さんが我々の元にやってきた。
「一花、どうだ? 気に入ったかな?」
「お義父さん、この子……」
「我が家の新しい家族だよ」
「えっ、本当に?」
「ああ。実を言うと、子どもが生まれたら犬を飼って一緒に育てたいと思っていたんだ。だが、麻友子が犬アレルギーでね……諦めていたんだが、一花にはアレルギーはないと聞いて、我が家に迎え入れようと探していたんだ。つい先日、この子と出会って運命的なものを感じてね。一花が帰ってきた日に我が家に来てくれてよかったよ」
「お父さん……」
「この子に会いにいつでも帰ってきてくれ」
「はい。僕……いつか、この子のお散歩ができるように頑張ります!」
「ああ、そうだな」
一花の新しい目標ができたな。
きっとこの子は一花と会えない日のお義父さんの癒しにもなってくれるだろう。
「あっ、だめっ! 危ないっ!」
「ふふっ」
「きれーいっ!!」
「よかったぁ……っ」
映画を見ながら、一喜一憂する一花の素直な反応に私も、お義父さんも笑みが溢れる。
本当に素直で可愛らしい。
合間に二階堂さんが用意してくれたキャラメル味のポップコーンを口に入れてやると、目を輝かせて喜んでくれた。
映画の邪魔にならないタイミングを見計らって食べさせたり、飲み物を飲ませたり、こんなにも楽しい映画鑑賞は初めてだ。
映画が終わり、電気が灯ると
「はぁー-っ」
と一花が大きなため息を吐いた。
「一花、どうだった?」
「すっごく面白かったです!! 終わっちゃったのが寂しいくらいでした」
「ははっ。そうか。それはよかった。他にも作品はあるから好きなだけ見てもらって構わないが、あまり長時間だと一花が疲れるだろうからな。うちに来た時はいつも見てくれて構わないよ」
「はい。嬉しいです!!」
一花の楽しいことに、映画鑑賞が追加されたようだな。
我が家にもシアタールームを設置しようか。
それともしばらくはここだけの楽しみにしていた方がいいか、悩むところだな。
そういえば、そろそろ志摩くんから連絡が来ているだろうか。
一花がお義父さんと話している隙にさっとスマホを確認してみたが、メッセージも着信もまだ来ていない。
話し合いが長引いているのか……。
それとも打ち解けて楽しい時間でも過ごしているのか、見当もつかないが、とりあえず待つしかないか。
「旦那さま。甲斐さまがお越しになりました。応接室でお待ちいただいております」
一花を抱きかかえて、リビングへ移動していると、二階堂さんがやってきてお義父さんに伝えているのが聞こえた。
「おお、来たか。わかった、すぐに行く」
「お義父さん、私たちは部屋に行っておきましょうか?」
「ああ、いや。気にしないでいい。一花のために来てもらったんだ」
「一花のために?」
「先にリビングに行っておいてくれないか? 私は彼を連れてくるから」
「わかりました」
事情が全くわからないので気になるが、一花のためにと言っているのだから危険はないだろう。
名前に聞き覚えはないから、会社関係や身内ではなさそうだが……わざわざ一花が来ている時に呼ぶくらいだから、何か大事な用事でもあるのだろうか?
一花を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、すぐに二階堂さんがお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いえ、旦那さまはすぐにお越しになりますので、しばらくお待ちください」
「あの、二階堂さん……甲斐さんって……」
「ふふっ。すぐにお分かりになりますよ」
気になって尋ねてみたが、二階堂さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、すぐに部屋から出ていった。
「征哉さん、お父さんのお客さんってどんな人ですか?」
「うーん、私にもわからないな。だが、一花のためだと仰っていたからきっといい人だよ」
「はい。そうですね」
一花の笑顔はお義父さんへの絶対的な信頼だな。
それからしばらくさっきの映画の感想の話題で盛り上がっていると、扉をノックする音が聞こえてゆっくりと扉が開いた。
お義父さんがすぐに入ってくると思ったが、扉の影からひょっこり現れたのは柔らかなイエローの毛色が可愛いミニチュアダックスフンド。
「わぁっ!」
一花の嬉しそうな声に、驚くこともなくその犬は駆け寄ってきた。
万が一噛みつかれたりしてはいけないと一花を守りつつ、犬が寄ってくるのを見ていたが、その犬は私たちのすぐそばでピタッと止まり、一花に撫でてとでもいうようにそっと頭を差し出した。
「可愛いっ!!」
一花がそっと頭を撫でると、クゥンクゥンと嬉しそうな声をあげる。
その姿を少し離れた場所からお義父さんが嬉しそうに写真におさめている姿が私の視界に入っていた。
数枚写真を撮って満足したのか、お義父さんが我々の元にやってきた。
「一花、どうだ? 気に入ったかな?」
「お義父さん、この子……」
「我が家の新しい家族だよ」
「えっ、本当に?」
「ああ。実を言うと、子どもが生まれたら犬を飼って一緒に育てたいと思っていたんだ。だが、麻友子が犬アレルギーでね……諦めていたんだが、一花にはアレルギーはないと聞いて、我が家に迎え入れようと探していたんだ。つい先日、この子と出会って運命的なものを感じてね。一花が帰ってきた日に我が家に来てくれてよかったよ」
「お父さん……」
「この子に会いにいつでも帰ってきてくれ」
「はい。僕……いつか、この子のお散歩ができるように頑張ります!」
「ああ、そうだな」
一花の新しい目標ができたな。
きっとこの子は一花と会えない日のお義父さんの癒しにもなってくれるだろう。
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