歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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仲間になれた

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<side榎木医師>

久しぶりの佳史とのデート。
どこに行きたいかと尋ねると、佳史の希望はイリゼホテル銀座。

「まさか佳史からホテルに誘われるとは思わなかったな」

可愛い佳史のおねだりに、そんな揶揄いの言葉をかけると真っ赤になって反論してきた。

――違うっ、週末限定の季節のスイーツが食べたいだけだ!

ふふっ。
ほんの冗談なのに、いつまで経っても付き合いたての高校生のように照れる佳史が可愛くてたまらない。

それでもこれ以上冗談を続けると拗ねてしまうから、謝って一緒に食べに行こうと後ろから抱きしめて耳元で囁くとすぐに許してくれる。

本当に私の佳史は可愛すぎて困るくらいだ。

いつもお互いに忙しいから休日に出かけるときは午前中はのんびりと過ごすのは社会人になってからの暗黙のルール。
まぁそれは佳史が思っている理由で、本当のところは休日の前夜はたっぷりと愛し合うから、午前中から色気ダダ漏れの佳史を外に出したくないのが理由だ。

ピッタリと寄り添って、ペアコーデをしていても良からぬことを考える輩はいるもので、私たち二人に声をかけてくる女性や、ほんの少し離れただけで佳史に声をかける男もいる。
だから、今日は誰が見てもカップルだとわかるようなコーディーネートを選び、佳史が私のものだと牽制しながら二人で出かける。

久しぶりの銀座はやはり佳史に注がれる視線は多いが、声をかけてくる強者はいない。
今日の作戦はうまくいったようだ。

レストランに向かい、中に入ると珍しい人物に出会った。
つい先日、診察に行った時にあったばかりの貴船さんだから見間違うわけもない。

声をかけると流石に驚いていたが、私は彼が一緒にいる人物の方に驚きを隠せなかった。

蓮見周平さん。
桜城大学卒業生で彼の名前を知らない者はいないんじゃないかと思うほどの有名人。

彼のオーラに圧倒される。

慌てて挨拶をすると、笑顔で挨拶を返される。

話に聞いていた様子とは全く違う蓮見さんの表情にただただ驚きしかないが、彼ら二人がここにいるのが護衛と聞いた瞬間、合点がいった。

なるほど。孤高の人と称された蓮見さんにも最愛の存在ができたということか。
それならこの柔らかな表情も納得だ。

なんせ、隣にいる貴船さんも同じように最愛の存在ができて大きく変わったのだから。

それにしても護衛か。
私も佳史に余計な虫がつかないように苦労しているが、それはそばについてこそ。
こうして離れた場所から見守ることまではしたことがない。
仕事以外では佳史は一人で出かけることはほとんどないし、有段者だということも安心材料だ。

その点、彼らの最愛は少しでも離れると危なそうだ。
だからこそ、邪魔しないように離れながらも目を光らせているのだろう。
休みの日に大変だと思うが、それもまた幸せな時間なのだろうな。

「あっ! 榎木先生だ!!」

一花くんの元気な声が耳に飛び込んできた。
どうやら私の姿に気づいたようだ。
白衣姿でないとあまり気づかれないのだが、それはそれで嬉しいものだ。

せっかくだからと佳史を連れて一花くんの元に挨拶に向かう。
もちろん、蓮見さんと貴船さんには了承を得て。

「やぁ、元気そうだね。ここで会えるとは思わなかったよ」

「はい。あの、浅香さんが誘ってくださったんです。あ、あの浅香さん。えっと、僕の先生の榎木先生です」

そんな可愛い紹介を受けて、浅香さんに自分が聖ラグエル病院の医師だと挨拶をし、隣にいる佳史も紹介した。

「彼は弁護士の有原です。私の大事な恋人ですよ」

抱きしめながらそう紹介すると、佳史は恥ずかしそうにしていたが、浅香さんも一花くんも目を輝かせて佳史を見ていた。

「弁護士さん……すごい……」
「お似合いのカップルですね」

それぞれ感想は異なっていたが、どうやら受け入れてもらえたようだ。
まぁ、そうか。
彼らもカップルなのだから。

「今日は何かお目当てがあってお越しになったのですか?」

「ええ。そうなんです。佳史がどうしても季節限定のスイーツが食べたいといったものですから」

「――っ、賢吾っ! そんなことバラさなくても……っ」

「ああ、甘いものがお好きなんですね」

「は、はい。忙しくてなかなか食べに行ける機会がないのですが……」

照れながらも浅香さんに言葉を返す佳史が可愛い。

「ふふっ。当ホテルをお選びいただき光栄です。あの、もしよかったら、特別スイーツをご用意いたしますので、召し上がって行かれませんか?」

「えっ? 特別スイーツですか?」

「はい。今日は一花くんとのお茶会のためにパティシエに頼んだものなのですが、まだありますのでもしよかったらこちらで一緒に召し上がりませんか?」

「お邪魔してもよろしいんですか?」

「はい。ねぇ、一花くん」

「はい。僕、弁護士さんとお話してみたいです」

もしかしたら一花くんは弁護士という仕事に憧れでもあるのかもしれない。
せっかくの一花くんの興味を奪うのは主治医として良くないな。

「佳史、せっかくの誘いだ。お邪魔させていただいたらどうだ?」

「賢吾、いいのか?」

「ああ、私はあちらで蓮見さんと貴船さんと話をさせてもらうよ。こんな機会でもないとじっくりとお話なんててできない方たちだからな。浅香さん、一花くん。佳史をお願いします」

私の言葉に浅香さんがすぐにテーブルに佳史の席を設けてくれた。

その場に佳史を残し、私は彼らの席に戻り、

「佳史がお茶会に参加することになりまして、私はこちらでお邪魔させていただいてもよろしいでしょうか?」

と告げると、

「仲間が増えたな」

と笑って迎え入れてくれた。
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