138 / 286
楽しみな約束
しおりを挟む
<side征哉>
「一花、まさか櫻葉会長の分までマフラーを編んでいるとは思わなかったぞ」
帰りの車の中でそのことを告げると、
「麻友子お母さんのお墓参りに行く時に、お母さんの作ってくれたあの服をぬいぐるみに着せていくっていうのはずっと考えてましたけど、お父さんにも何かしてあげられたら……って思ってたんです。そうしたら未知子お母さんがお父さんにもマフラーを編んであげたらどうかって言ってくれて……。でも、お父さんに会う日が早くなったので、ここのところお父さんのしか編めていなくて……征哉さんのマフラーの完成が遅くなってしまってごめんなさい……」
と謝られてしまった。
「ああ、違うんだよ。一花。私は別に怒っているわけではない。あれほどのマフラーを二本も編み上げるのは大変だっただろうと、一花の身体が心配になっただけだ」
「征哉さん……よかった。でも、大丈夫です。マフラーを編むのってすごく楽しくて……喜んでくれるかなって思いながら編むのはとても楽しいです」
「そうか。ならいいが、無理はしないでいいからな」
「はい。征哉さんのマフラーももうすぐできるので完成したら使ってくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。その時は一花が首に巻いてくれるんだろう?」
「はい。僕でよかったら喜んで」
「ああ、ぜひやってくれ。実は一花にマフラーを巻いてもらっている櫻葉会長が羨ましくて仕方がなかったんだ」
「ふふっ。征哉さんったら……」
一花は冗談だと思っているようだが、私はいつだって真剣だ。
一花の全てを私が独占したいといつだって思っている。
ただ一花に呆れられたくなくて我慢しているだけだ。
自宅に戻り、
「少し休むか?」
と尋ねると、
「ちょっとだけグリと遊びたいです」
と言い出した。
「このところ、編み物が忙しくてグリとあまり遊べてなかったので……。
「そうだったか。わかった。でも少しだけだぞ」
グリのいるサークルの中に一花を座らせると、グリが嬉しそうにケージから飛び出してきた。
一花は小さなボールを手に持って誘うとそれを目掛けて駆けてくる。
「ふふっ。グリ、このボール大好きだもんね」
楽しそうにグリと遊んでいる一花を見ていると、写真を撮らずにはいられなかった。
「一花、こっち向いて」
「えっ? あっ!」
不意を突いて声をかけると、グリを抱っこしたまま可愛くこちらを向く。
「ああ、最高の写真が撮れたな」
「いきなりでびっくりしちゃいました」
「いきなりでもいつでも一花は可愛いぞ」
「征哉さんったら……」
「これは浅香さんに送ろうか。ほら、一花もグリもよく撮れてる」
そう言って、撮った写真を見せると一花が嬉しそうに笑う。
「浅香さんと明後日会えるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、その話と一緒にこの写真を送ります」
もうすっかりメッセージに写真をつけて送るのも上手になった一花は私から写真を受け取ると、メッセージを入れてそのまま浅香さんに送っていた。
すると数分もしないうちに
<グリの表情を見たらどれだけ愛されているかがわかるな。グリを大切に育ててくれている一花くんと明後日会えるのを楽しみにしているよ。ちなみに、一花くんはメロンは好きかな?>
と浅香さんからメッセージが届いた。
「メロンって、前に食べたあの甘いのですよね?」
「ああ、そうだ。一花はメロンも好きだよ」
「はーい」
私の言葉を聞いて嬉しそうにメッセージを返す一花にまたすぐにメッセージが返ってくる。
しかも可愛らしいスタンプ付きで。
もうすっかり浅香さんとは仲良しになっているようだ。
これなら明後日も心配はいらないな。
<side浅香敬介>
「周平さん、一花くんからメッセージが届きましたよ」
「本当に定期便だな。それで今日はどんな写真だ?」
「ふふっ。見てください」
「おお、これはまた、可愛らしいな」
「きっと不意打ちで貴船さんが撮られたものでしょう。無防備な感じが出ていてとても可愛ですね」
毎日一花くんから送られてくるグリとの写真。
最初こそ、グリの成長記録のような写真だったけれど、一度一花くんと一緒に写っている写真を送ってくれたのが可愛くて喜びのメッセージを返したところ、それからは一花くんと一緒に映った写真が増えていった。
次第に、この写真を見ることが俺の癒しになっていた。
「それにしても明後日、一花くんがうちのホテルに来てくれるなんて……嬉しい限りですね」
「ああ、あのぬいぐるみ作家のsaraさんを紹介してあげたお礼をしたいと言われたから、無理を承知で頼んでみたのだが、了承してくれてよかったと思っているよ。時期が時期だけに外に出すのを躊躇うかと思っていたが、早々に実現できてよかった。その間、警備は私に任せてくれ。敬介は一花くんとゆっくり楽しんでくれていいから」
「はい。ありがとうございます」
周平さんはいつだって俺を最優先にしてくれる。
今回のお礼も俺のために一花くんとの時間を作ってもらえるように頼んでくれた。
一花くんは弟のような感じで守ってあげたくなるんだよな。
本当に可愛いんだ。
パティシエには特別なものを用意するように頼んでいるし、喜ぶ顔を見るのが今から楽しみでたまらない。
ああ、早く明後日にならないかな。
「一花、まさか櫻葉会長の分までマフラーを編んでいるとは思わなかったぞ」
帰りの車の中でそのことを告げると、
「麻友子お母さんのお墓参りに行く時に、お母さんの作ってくれたあの服をぬいぐるみに着せていくっていうのはずっと考えてましたけど、お父さんにも何かしてあげられたら……って思ってたんです。そうしたら未知子お母さんがお父さんにもマフラーを編んであげたらどうかって言ってくれて……。でも、お父さんに会う日が早くなったので、ここのところお父さんのしか編めていなくて……征哉さんのマフラーの完成が遅くなってしまってごめんなさい……」
と謝られてしまった。
「ああ、違うんだよ。一花。私は別に怒っているわけではない。あれほどのマフラーを二本も編み上げるのは大変だっただろうと、一花の身体が心配になっただけだ」
「征哉さん……よかった。でも、大丈夫です。マフラーを編むのってすごく楽しくて……喜んでくれるかなって思いながら編むのはとても楽しいです」
「そうか。ならいいが、無理はしないでいいからな」
「はい。征哉さんのマフラーももうすぐできるので完成したら使ってくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。その時は一花が首に巻いてくれるんだろう?」
「はい。僕でよかったら喜んで」
「ああ、ぜひやってくれ。実は一花にマフラーを巻いてもらっている櫻葉会長が羨ましくて仕方がなかったんだ」
「ふふっ。征哉さんったら……」
一花は冗談だと思っているようだが、私はいつだって真剣だ。
一花の全てを私が独占したいといつだって思っている。
ただ一花に呆れられたくなくて我慢しているだけだ。
自宅に戻り、
「少し休むか?」
と尋ねると、
「ちょっとだけグリと遊びたいです」
と言い出した。
「このところ、編み物が忙しくてグリとあまり遊べてなかったので……。
「そうだったか。わかった。でも少しだけだぞ」
グリのいるサークルの中に一花を座らせると、グリが嬉しそうにケージから飛び出してきた。
一花は小さなボールを手に持って誘うとそれを目掛けて駆けてくる。
「ふふっ。グリ、このボール大好きだもんね」
楽しそうにグリと遊んでいる一花を見ていると、写真を撮らずにはいられなかった。
「一花、こっち向いて」
「えっ? あっ!」
不意を突いて声をかけると、グリを抱っこしたまま可愛くこちらを向く。
「ああ、最高の写真が撮れたな」
「いきなりでびっくりしちゃいました」
「いきなりでもいつでも一花は可愛いぞ」
「征哉さんったら……」
「これは浅香さんに送ろうか。ほら、一花もグリもよく撮れてる」
そう言って、撮った写真を見せると一花が嬉しそうに笑う。
「浅香さんと明後日会えるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、その話と一緒にこの写真を送ります」
もうすっかりメッセージに写真をつけて送るのも上手になった一花は私から写真を受け取ると、メッセージを入れてそのまま浅香さんに送っていた。
すると数分もしないうちに
<グリの表情を見たらどれだけ愛されているかがわかるな。グリを大切に育ててくれている一花くんと明後日会えるのを楽しみにしているよ。ちなみに、一花くんはメロンは好きかな?>
と浅香さんからメッセージが届いた。
「メロンって、前に食べたあの甘いのですよね?」
「ああ、そうだ。一花はメロンも好きだよ」
「はーい」
私の言葉を聞いて嬉しそうにメッセージを返す一花にまたすぐにメッセージが返ってくる。
しかも可愛らしいスタンプ付きで。
もうすっかり浅香さんとは仲良しになっているようだ。
これなら明後日も心配はいらないな。
<side浅香敬介>
「周平さん、一花くんからメッセージが届きましたよ」
「本当に定期便だな。それで今日はどんな写真だ?」
「ふふっ。見てください」
「おお、これはまた、可愛らしいな」
「きっと不意打ちで貴船さんが撮られたものでしょう。無防備な感じが出ていてとても可愛ですね」
毎日一花くんから送られてくるグリとの写真。
最初こそ、グリの成長記録のような写真だったけれど、一度一花くんと一緒に写っている写真を送ってくれたのが可愛くて喜びのメッセージを返したところ、それからは一花くんと一緒に映った写真が増えていった。
次第に、この写真を見ることが俺の癒しになっていた。
「それにしても明後日、一花くんがうちのホテルに来てくれるなんて……嬉しい限りですね」
「ああ、あのぬいぐるみ作家のsaraさんを紹介してあげたお礼をしたいと言われたから、無理を承知で頼んでみたのだが、了承してくれてよかったと思っているよ。時期が時期だけに外に出すのを躊躇うかと思っていたが、早々に実現できてよかった。その間、警備は私に任せてくれ。敬介は一花くんとゆっくり楽しんでくれていいから」
「はい。ありがとうございます」
周平さんはいつだって俺を最優先にしてくれる。
今回のお礼も俺のために一花くんとの時間を作ってもらえるように頼んでくれた。
一花くんは弟のような感じで守ってあげたくなるんだよな。
本当に可愛いんだ。
パティシエには特別なものを用意するように頼んでいるし、喜ぶ顔を見るのが今から楽しみでたまらない。
ああ、早く明後日にならないかな。
594
お気に入りに追加
4,733
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる