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美しい庭園を見ながら昼食を

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<side征哉>

「さぁ、着いたよ。ここは入り口が少し狭いから、私が抱いて連れていこう」

「はい」

本当は車椅子でも十分行ける場所だが、先ほどの水族館で少し疲れているように見えた。

身体が回復してきたとあっても、やはり長時間の車椅子は疲れるのだろう。
それに抱きかかえている方が何かあってもすぐに守れるし、外では都合がいい。

一花は私のいうことには決して反対はしないから、素直に手を差し出してくれるのが可愛くてたまらない。

まぁ、いろいろ理由はつけたが、私が一花と離れているのが寂しいだけなのだ。

車から降りると、少し離れた場所に日本家屋のような建物が見える。
これが今から行く店だ。

「すごいお家ですね」

「ああ、歴史ある日本家屋を店にしているんだよ。さぁ、行こうか」

私たちの後ろから志摩くんと谷垣くんもついてくる。
イチャイチャとしているわけでもないが、二人の間には入り込めないような雰囲気が漂っている。
志摩くんのあんな姿を見られるとは思ってなかったな。

ガラガラと引き戸を開けて中に入ると、作務衣を着た男性がにこやかな笑顔で

「いらっしゃいませ」

と声をかけてきた。

「予約をしている貴船だが……」

「お待ちしておりました。お部屋にご案内いたします」

物腰柔らかなその男性店員に案内されて、入った部屋は雰囲気の良い落ち着いた和室。

頼んでいた通り、中央に置かれた掘り炬燵にはあの旅館と同じく、一花用の座椅子が置かれていてホッとする。

「後でオーナーがご挨拶に伺いたいと申しておりました」

「ああ、わかった。料理をすぐに用意してくれ」

「承知しました」

それぞれ席につくと、一花は興味深そうにキョロキョロと部屋の中を見渡す。
そんな姿も可愛い。

「会長、こちらはお知り合いのお店ですか?」

「ああ、そうなんだ。学生時代の友人でね、天沢あまさわくんというんだが、料理人になってここに店を出したんだよ」

「そうだったんですね。あの……天沢って、もしかして……」

「ああ、やはりわかったか? 旧華族の天沢家でそこの三男だよ。ここは元々天沢家の別荘で、父親に頼み込んでここを譲り受けて店にしたらしい」

「そうだったんですね。でもこの家をお店にというのは納得です。雰囲気もとても素晴らしいですから。ねぇ、尚孝さん」

窓から見える美しい庭園にうっとりしながら志摩くんが声をかけると、谷垣くんもまた楽しそうに笑っていた。
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