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私のイメージ

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たくさんの食事が並べられた和室のテーブルの下は掘り炬燵になっていて、一花を座らせるにはちょうどいい。
部屋は蓮見さんが指定して予約したと女将に聞いているから、きっと一花が過ごしやすいように考えてくれたのだろう。
本当に心遣いには感謝しかない。

いつもなら一花を膝に乗せて食事をとるが、料理を自分の箸で取るのもやってみたいだろう。
まぁ、今夜くらいはいいか。

「いただきまーす!」

可愛らしい一花の声に思わず笑みが溢れる。

一番最初に何を食べるのかと思ったが、一花は迷わず刺身に手を伸ばした。

「どうだ?」

「――っ、すっごく美味しいです!」

「そうか、一花は刺身が好きか?」

「あの、お刺身は征哉さんのお家に来て初めて食べたんですけど、最初は生だったからびっくりしたんです。でも、すっごく美味しくて……お刺身大好きになりました」

ああ、我が家に来る前を考えれば生食なんかできるような環境ではなかったからな。

「そうか、ならいっぱい食べるといい。お肉も焼いてあげよう」

「わぁ、ありがとうございます!」

私たちのやりとりを志摩くんも谷垣くんも笑顔で見守ってくれている。

これはもうすっかり恋人として一歩、いや三歩進んだ余裕の表れだろうか。

私もいつか一花と、二人のような関係になりたいものだ。

「会長、ぬいぐるみ作家の方とのお話はいかがでしたか?」

「ああ、とても気さくな方で話もしやすかったよ。オリジナルのぬいぐるみを作ってくれることも喜んで引き受けてくださったんだ。なぁ、一花」

「はい。僕を動物と掛け合わせて作ってくれるので、どの動物にしようか悩みました」

「へぇ、それは面白いね。それで何を選んだの?」

「ウサギさんと羊さんで悩んで、羊さんにしました」

「ふふっ。どっちも可愛いけど、一花くんに羊はよく似合うと思うよ」

「ありがとうございます。それで、僕、せっかくだからもう一つお願いをして、征哉さんのぬいぐるみも作ってもらうことにしたんです。ねぇ、征哉さん」

嬉しそうに微笑んでくる一花が可愛くてたまらない。

「ああ、私も動物と掛け合わせたのを作ってもらうのだが、何になったかわかるか?」

すぐには当たらないだろうと思って、問題を出してみたのだが

「それは会長がお選びになったんですか?」

と質問を返された。

「いや、一花が選んでくれた」

「ああ、それならすぐにわかりますよ。ねぇ、尚孝さん」

「はい。多分、あれですよね」

二人は顔を見合わせて笑っている。

「なんだ? そんなに簡単なのか?」

「はい、会長をイメージしたのならそれしかないですね」

「じゃあ、言ってみてくれ」

「ふふ、せーの」
「「ライオン!」」」


「わぁー! あたりです!!」

まさかの正解に驚きしかないが、志摩くんはさも当然と言った表情をしている。

「なんでわかったんだ?」

「それはもう会長といえば、百獣の王のイメージにピッタリだからですよ。。一花さんからもそう思われてるんじゃないですか?」

志摩くんの笑顔に、一花に言われたことが甦ってくる。

――ライオンは動物の王さまなんですよ。征哉さんにピッタリです。

ああ、私はみんなからこのように思われているのだな。
偉ぶっていると言う意味ではないだろうが、少し不安になってきた。
だが、

「ライオンさんは、ピンチの時になったら必ず助けてくれるんです。僕も征哉さんと出会ってそれまでの日々から助けてもらいましたし、本当に僕にとって、征哉さんはライオンさんですよ」

と言う一花の言葉に心が救われる気がした。

ああ。一花は私をそう言う意味でライオンだと言ってくれたんだな。


<side未知子>

「そろそろ私はお暇しようかしら」

「えっ、まだいいじゃないですか。ぜひ夕食も召し上がっていってください」

「あら、いいの?」

「ええ、もちろんです。ねぇ、卓さん」

「帰りは私が送りますから、ゆっくり過ごしていってください。今から夕食を作りますよ」

「ふふっ。ありがとうございます」

だいぶ直純くんの緊張も取れてきたし、もう少し深いところまで話をしてみたいと思っていたけれど、思いの外、時間が経っていたから、次の機会にしようと思っていたのよね。
でも、夕食までいられるなら、少し進んでみようかしら。

「じゃあ、その間絢斗くんにリース作りでも教えてもらおうかしら。それをうちの子にも教えてあげたいの」

「ええ、是非是非。ねぇ、直純くんも一緒にしようか。こっちにきてからもういくつか作ったよね」

「はい。僕、リース作るの好きです」

「そう、じゃあ今までに作ったのもみせてもらおうかしら」

「はい」

人が作ったものには、その子の精神状態が現れる。
特に絵にはそれが顕著に現れるようだけど、絵だけでなく手作りを見るだけでもその子がどういう感情を抱いているかわかる。

直純くんの気持ちが少しは改善しているといいのだけど。
そんな期待を持って、私は絢斗くんと一緒に直純くんの部屋に向かった。
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