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いざ出発!
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<side一花>
「未知子お母さん、いってきます!」
「ふふっ。いってらっしゃい。時々写真やメッセージを送ってくれたら嬉しいわ!」
「はい。いっぱい送りますね!! あの……」
「んっ? どうしたの?」
「今度は……未知子お母さんも一緒に、行きたいです……」
「――っ、ええ。そうね。今度は一緒に。約束ね」
そう言って差し出された小指を絡める。
今日は一緒にいけないのは寂しいけれど、次の約束があると思うと嬉しくなる。
「母さん、一花と一緒に選んでお土産買って帰るから」
「ええ、楽しみにしてるわ。征哉、よろしくね」
「ああ、任せておいてくれ」
「志摩くんと尚孝くんも気をつけて、楽しんでいらっしゃい」
「はい。一花さんのことはどうぞご安心を」
僕たちは未知子お母さんに見送られながら、地下室にある駐車場に向かった。
「わぁっ! これ、おっきな車!! バスみたいです!!」
「ふふっ。驚いたか? これはキャンピングカーと言ってね、中にはキッチンやトイレも付いているんだ」
「えーっ、トイレも? すごいですね!!」
「ここには車も収納できるから、あっちに着いたらこの車で移動しよう」
そう言って、車の側面を開けて見せてくれた。
中にはかっこいい車が一台すっぽりと入っていて驚いてしまう。
車の中に車を収納できるなんて……すごいな。
「さぁ、一花。中に入ろうか。あ、車椅子はもう積み込んでいるから、心配しなくていいよ」
あっちでも乗ってみたいと言ったのを覚えてくれていたんだろう。
本当に征哉さんは優しい。
軽々と抱きかかえられたまま、キャンピングカーの中に乗り込んでいく。
「わっ! 部屋の中みたいです!!」
中には、ゆったりと寝転んで足を伸ばせそうな大きくて座り心地の良さそうなソファーや綺麗なテーブルが置かれていて、ここが車の中だなんて信じられないくらい広い。
「今日は長旅になるからな。これなら一花ものんびりできるだろう」
「あの、僕のためにこんなすごい車を……?」
「違うよ。私のためだ。私が一花とゆっくり出かけたいからだよ」
「征哉さん……」
「さぁ、出発しよう。都心を過ぎたらカーテンを開けてあげるからな」
「はい。お外が見られるの、楽しみです!」
この大きな車は志摩さんが運転してくれるみたい。
隣には尚孝さんが乗ってくれているから、志摩さんも寂しくないかな。
お家を出て、しばらく走ったところで、征哉さんがカーテンを開けてくれた。
さっと光が差し込んできて眩しいけど、外に出てきた! って感じがして嬉しい。
「この窓は中から外は見えるけれど、外から中は見えないから気にしないでいいよ」
「えっ、そんなすごい仕掛けがあるんですか?」
「ふふっ。一花の可愛い姿を誰にも見せたくないからね」
そう言ってギュッと抱きしめられる。
征哉さんの温もりに包まれるだけで僕は幸せなんだ。
<side未知子>
「ふふっ。一花くん、とっても楽しそうだったわ。さぁ、私もそろそろ出かけなくちゃ!」
自宅の周りには、マスコミ関係が張り込んだりしないように征哉が手を回してくれているから問題はないけれど、タクシーを尾行されないように気をつけないとね。
牧田くんに頼んでタクシーを呼んでもらおうとしていると、突然玄関の呼び鈴が鳴った。
「あら? 誰かしら? 今日は約束はないはずだけれど……」
不思議に思っていると、牧田くんがやってきて
「磯山弁護士がお越しです」
と教えてくれた。
「えっ? 磯山さんが?」
慌てて、玄関に向かうと、いつものようにピシッと決めたスーツ姿で玄関にいらっしゃった。
「磯山さん。いらっしゃいませ。もしかして一花くんのことで何か?」
「いいえ。絢斗から貴船さんが今日お越しになると伺ったので、お迎えに来たのですよ」
「えっ? わざわざそれだけで来てくださったのですか?」
「ええ。少し貴船さんにもお話がありましたから、車の中だとゆっくりと話せると思いまして」
「直純くんのことですか?」
「はい。ちょっと心配なことがいろいろと出てきたものですから。今日、貴船さんがお越しくださると伺って、居ても立ってもいられなかったんですよ」
「わかりました。それじゃあ、ゆっくりと伺いますね」
きっと直純くんに知られたくないのだろう。
だから、わざわざここまできてくださった……。
磯山さんも絢斗くんも本当に心から直純くんのことを思っているのね。
「外にマスコミは大丈夫でしたか?」
「ええ、ここまで尾行はされてなかったようです。我が家にいく時は少し遠回りをして向かいますね」
主人の時から会社の顧問弁護士を引き受けてくださっている磯山さんの車は、うちの地下駐車場にすんなり入れるように設定してある。
そのおかげで、私たちは地下駐車場から人目を避けて外に出ることができた。
「今のところ、ついてくる車はいないようですね」
「よかったわ。それで直純くんのことで心配事というのは……?」
そう尋ねると、磯山さんは少し苦しげな表情でゆっくりと口を開いた。
「未知子お母さん、いってきます!」
「ふふっ。いってらっしゃい。時々写真やメッセージを送ってくれたら嬉しいわ!」
「はい。いっぱい送りますね!! あの……」
「んっ? どうしたの?」
「今度は……未知子お母さんも一緒に、行きたいです……」
「――っ、ええ。そうね。今度は一緒に。約束ね」
そう言って差し出された小指を絡める。
今日は一緒にいけないのは寂しいけれど、次の約束があると思うと嬉しくなる。
「母さん、一花と一緒に選んでお土産買って帰るから」
「ええ、楽しみにしてるわ。征哉、よろしくね」
「ああ、任せておいてくれ」
「志摩くんと尚孝くんも気をつけて、楽しんでいらっしゃい」
「はい。一花さんのことはどうぞご安心を」
僕たちは未知子お母さんに見送られながら、地下室にある駐車場に向かった。
「わぁっ! これ、おっきな車!! バスみたいです!!」
「ふふっ。驚いたか? これはキャンピングカーと言ってね、中にはキッチンやトイレも付いているんだ」
「えーっ、トイレも? すごいですね!!」
「ここには車も収納できるから、あっちに着いたらこの車で移動しよう」
そう言って、車の側面を開けて見せてくれた。
中にはかっこいい車が一台すっぽりと入っていて驚いてしまう。
車の中に車を収納できるなんて……すごいな。
「さぁ、一花。中に入ろうか。あ、車椅子はもう積み込んでいるから、心配しなくていいよ」
あっちでも乗ってみたいと言ったのを覚えてくれていたんだろう。
本当に征哉さんは優しい。
軽々と抱きかかえられたまま、キャンピングカーの中に乗り込んでいく。
「わっ! 部屋の中みたいです!!」
中には、ゆったりと寝転んで足を伸ばせそうな大きくて座り心地の良さそうなソファーや綺麗なテーブルが置かれていて、ここが車の中だなんて信じられないくらい広い。
「今日は長旅になるからな。これなら一花ものんびりできるだろう」
「あの、僕のためにこんなすごい車を……?」
「違うよ。私のためだ。私が一花とゆっくり出かけたいからだよ」
「征哉さん……」
「さぁ、出発しよう。都心を過ぎたらカーテンを開けてあげるからな」
「はい。お外が見られるの、楽しみです!」
この大きな車は志摩さんが運転してくれるみたい。
隣には尚孝さんが乗ってくれているから、志摩さんも寂しくないかな。
お家を出て、しばらく走ったところで、征哉さんがカーテンを開けてくれた。
さっと光が差し込んできて眩しいけど、外に出てきた! って感じがして嬉しい。
「この窓は中から外は見えるけれど、外から中は見えないから気にしないでいいよ」
「えっ、そんなすごい仕掛けがあるんですか?」
「ふふっ。一花の可愛い姿を誰にも見せたくないからね」
そう言ってギュッと抱きしめられる。
征哉さんの温もりに包まれるだけで僕は幸せなんだ。
<side未知子>
「ふふっ。一花くん、とっても楽しそうだったわ。さぁ、私もそろそろ出かけなくちゃ!」
自宅の周りには、マスコミ関係が張り込んだりしないように征哉が手を回してくれているから問題はないけれど、タクシーを尾行されないように気をつけないとね。
牧田くんに頼んでタクシーを呼んでもらおうとしていると、突然玄関の呼び鈴が鳴った。
「あら? 誰かしら? 今日は約束はないはずだけれど……」
不思議に思っていると、牧田くんがやってきて
「磯山弁護士がお越しです」
と教えてくれた。
「えっ? 磯山さんが?」
慌てて、玄関に向かうと、いつものようにピシッと決めたスーツ姿で玄関にいらっしゃった。
「磯山さん。いらっしゃいませ。もしかして一花くんのことで何か?」
「いいえ。絢斗から貴船さんが今日お越しになると伺ったので、お迎えに来たのですよ」
「えっ? わざわざそれだけで来てくださったのですか?」
「ええ。少し貴船さんにもお話がありましたから、車の中だとゆっくりと話せると思いまして」
「直純くんのことですか?」
「はい。ちょっと心配なことがいろいろと出てきたものですから。今日、貴船さんがお越しくださると伺って、居ても立ってもいられなかったんですよ」
「わかりました。それじゃあ、ゆっくりと伺いますね」
きっと直純くんに知られたくないのだろう。
だから、わざわざここまできてくださった……。
磯山さんも絢斗くんも本当に心から直純くんのことを思っているのね。
「外にマスコミは大丈夫でしたか?」
「ええ、ここまで尾行はされてなかったようです。我が家にいく時は少し遠回りをして向かいますね」
主人の時から会社の顧問弁護士を引き受けてくださっている磯山さんの車は、うちの地下駐車場にすんなり入れるように設定してある。
そのおかげで、私たちは地下駐車場から人目を避けて外に出ることができた。
「今のところ、ついてくる車はいないようですね」
「よかったわ。それで直純くんのことで心配事というのは……?」
そう尋ねると、磯山さんは少し苦しげな表情でゆっくりと口を開いた。
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