歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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それぞれの家に

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<side征哉>

ようやく事件も一息つき、残った息子・直純くんは磯山先生が預かってくれることになった。

「磯山先生、櫻葉会長。母にこれからのことを説明しなければいけないので私は先に失礼します」

「ああ、征哉くん。今日はありがとう。偶然だったが、君がいてくれて助かったよ」

「ちょっと待ってくれ、征哉くん。車に一花への贈り物を置いてるんだ。それを持って帰ってくれ」

「それなら我が家に来ませんか? 一花も喜びますし、私と母が席を外している間、一緒にいていただけたら安心ですから」

「そうか? なら、お邪魔しようか」

「お邪魔だなんて、いつでも一花に会いに来てくださっていいんですよ」

「そうか、ありがとう。じゃあ、磯山先生、私も失礼しよう。何かあれば連絡してください」

「わかりました。気をつけておかえりください」

磯山先生に見送られ、櫻葉会長と自宅に向かう。

「一花への贈り物って、何か伺ってもいいですか?」

「ああ、帽子だよ」

「帽子、ですか?」

てっきりお菓子の類だと思っていただけに少しびっくりしてしまった。

「ほら、この前会った時に一花が麻友子の墓参りに行きたいと言ってくれただろう? 近いうちに連れて行こうと思っていたが、事件が明るみになったら写真を撮られるかもしれないから一花のプライベートを守るためにも必要だと思ってね」

「ああ、そういうことですか」

「つばが広くて可愛いのをオーダーメイドで作ったんだ。一花も気に入ってくれるはずだ」

あえて服にしなかったのは私への配慮だろうな。

「そうですね、きっと喜びますよ。じゃあ、行きましょうか。途中でケーキ屋に寄って行きますけど、会長も行かれますか?」

「そうだな。一花の好みを教えてくれ。次回、お土産にしたいからな」

これまでよりもずっと笑顔が優しい。
きっと櫻葉会長を長年苦しめていた胸の支えが少し楽になったからかもしれないな。

果物が好きな一花のために苺のショートケーキとフルーツタルトなどいくつかケーキを買い、会長と共に自宅に帰った。


部屋に向かうと、一花はオーディオブックを聴いていた。

話はもうそろそろエンディングを迎えていて、ちょうどいいタイミングだったようだ。
終わるのを見計らって

「ただいま、一花」

と声をかけると、私が帰ったことに気づいていなかった一花は驚きの声をあげた。

「征哉さんっ! お帰りなさい!」

「一花にお土産があるぞ」

「えっ、なんだろう?」

「いーちか」

私の後ろから嬉しそうに飛び出してくる櫻葉会長に思わず笑ってしまうが、一花は満面の笑みを浮かべた。

「あっ、お父さん!! 遊びに来てくれたんですか?」

「ああ、一花に会いたくてね。来てしまったよ。喜んでくれるか?」

「はい。もちろんです」

「一花は今、何をしていたのかな?」

「オーディオブックで本を聴いていたんです。これ、すっごく楽しくてワクワクしました」

「そうか、どんな内容か私に聴かせてくれ」

会長が一花と話をしてくれている間に、私は同じ部屋にいた母をそっと呼び出し、自室に連れて行った。
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