歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

私のひかる

＜side征哉＞

私の腕の中にひかるがいる。
だが、今までのひかるじゃない。

私の恋人になったひかるだ。

まさかこんなにも早く受け入れてもらえるなんて思ってもなかった。

キスの意味を誤魔化して嫌われるかと思ったが、それも許してくれた。
それどころか私の気持ちを受け入れてくれて、幸せそうに私の腕の中に留まってくれている。

もしかしたら、今日の志摩くんと谷垣くんの幸せそうな姿を見せたのもよかったのかもしれない。
ひかるが男同士ということに抵抗を感じなくて本当に良かった。

ひかるを無事に恋人にできたところで、今の問題はひかるの名前だ。

ひかるが辛い日々のことを思い出さないように、これから私と過ごす人生を幸せだと感じられるように二人で一緒に考えるとしよう。

「あの、征哉さん……」

「どうした？」

「僕、このゾウさんの名前を先に考えます。この子に合う名前を一生懸命考えてみます」

「そうか、そうだな。きっとゾウも喜ぶよ」

きっとこれはひかるの決意表明なんだろう。
名前がどんなに重要なものかを知るいい機会になるかもしれない。

さて、ひかるはこのゾウになんと名前をつけるだろう。
教えてもらうのが楽しみだな。


久々の外出で疲れていたひかるは、夕食を食べ終えてまもなく船を漕ぎ始めた。
最初は必死に起きようと抗っていたが、身体はもう限界のようだ。

「ひかる、ゆっくりお休み。後のことは全部やっておくから」

寝やすいようにベッドを倒し、さっと寝る身支度を整えてやると、ひかるはゾウを腕に抱きあっという間に眠ってしまった。

私は部屋からノートパソコンを持ってきて、ひかるがよく見える場所にあるテーブルに置き、メールを開いた。
ひかるが改名を決めた場合には各所に手続きが必要になる。
改名については、認められやすいいくつかの条件を満たしていればそれほど難しいことではないが、ひかるのように名前によって精神的な苦痛を生じるというだけではなかなか認められにくい。

だから、ここは協力を願うしかない。
私は裁判所関連に一番人脈のある磯山先生に相談してみることにした。