歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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それぞれの親密度

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<side未知子>

動物園に行きたいと願っていたひかるくんの夢を今日叶えることができて、年甲斐もなく私もはしゃいでしまったわ。

ひかるくんは動物は図鑑でしか見たことはないと言っていたから、実際の動物を見るたびに動物の大きさや声の大きさに驚いていて本当に可愛かった。

ひかるくんの屈託のない笑顔に、征哉がまだ小さな頃にあの人も一緒に動物園に行った時のことを思い出してしまった。

――みてー! おとうさん! きりんさんだよー!! くびがながーい!!

嬉しそうな声をあげる隣で、真面目なあの人は

――征哉。きりんの首は長いが、首の骨の数は人間と同じなんだぞ。

とまだ小さな征哉に教えてあげていた。
まだ三つやそこらの子どもにそんなことを教えてもわからないだろうに。
毎日忙しいあの人は征哉とどう接していいのかわからなかったようだから、動物を介して話をするのが楽だったのかもしれないわね。

征哉は征哉で、「そっかー」なんて言っていたけどあれは意味がわかっているというよりは、あの人と一緒に過ごせるのを楽しんでいたという感じだったかしらね。

動物園に来ると家族で過ごしたあの日の光景を思い出す。

でも、これからはひかるくんと来た今日のことも思い出すようになるんでしょうね。
もうひかるくんは私たち家族にとってなくてはならない存在になっているのだもの。

ふれあい広場で可愛いウサギを膝に乗せ、片手で優しく撫でながら片手で口を押さえていたひかるくんに理由を尋ねると、

「僕の声で小さな動物を驚かしちゃ可哀想だから」

と言っていたのがとても印象的だった。

こんなにも優しく純粋な子が酷い目に遭わされていたことが今でも許せないけれど、今、目の前にいるひかるくんが嬉しそうにしているからもう忘れよう。

あの時のひかるくんは事故でいなくなった。
そして、新しく私たちの家族として生まれ変わったのだ、そう思うことにしよう。

征哉がひかるくんを抱きかかえてゾウ舎に入っていく。
あんな大きなゾウに餌やりなんて流石に怖がるかと思ったけれど、あれだけずっとゾウさんに会いたいと言っていたものね。
それにしてもひかるくんの征哉への信頼感はますます深まっているみたい。
そうでもないと、膝枕であんなにしあわせそうな表情を見せたりしないものね。
今日のおでかけが征哉とひかるくんの距離をさらに縮めたのかもしれないわ。

「志摩くんがひかるくんのために頑張ってくれたんでしょう? ほらみて。あんなに嬉しそうにしてる。ありがとう」

「いいえ、そんなお礼だなんて。ひかるさんのために尽力している会長の手助けになれたらと思っただけですから」

「その気持ちが嬉しいのよ。ねぇ、尚孝くん。志摩くんは優しい人でしょう?」

「ええ、そうですね。唯人さんは優しくて素敵だと思います」

「尚孝さん……っ」

さりげなく尚孝くんに話を振ってみたら、嬉しそうな笑顔で志摩くんを褒めている。
それに知らない間にお互い名前で呼び合っているみたいだし……。

ふふっ。こっちも今日の動物園デートで仲は深まったみたいね。

出会ったばかりなのに、こんなに急速に進展するなんて……押せ押せムードの志摩くんはともかく、尚孝くんの方も志摩くんに少なからず気があったってことなのかしらね。

いずれにしても、若い人たちの恋愛を見るのは私まで若返るみたいで嬉しいわ。


「お母さん! みてくれてましたか? 僕、ゾウさんをヨシヨシしたんですよ」

「ふふっ。ちゃんとみてたわ。おとなしくて可愛いゾウさんだったわね」

「はい。りんごもむしゃむしゃ食べててすっごく可愛かったです。それで……」

よほど楽しかったのか、ひかるくんは興奮気味にゾウさんの話を続ける。
そんな可愛いらしいひかるくんの姿に征哉はもちろん、志摩くんも尚孝くんも目を細めて見つめていた。

「ひかる、あそこに入ってから今日は帰ろうか」

「あそこはなんの動物さんがいるんですか?」

「ふふっ。行ってみたらわかるよ」

そう言ってひかるくんの車椅子を押してぐんぐん進んでいく。

征哉ったら、本当にひかるくんを驚かせるのが好きなんだから。
征哉にこんな一面があるなんて今まで知らなかったわね。

「志摩くん、征哉の今日の様子で驚くことばかりでしょう?」

「ええ。そうですね。ひかるさんと出会ってから、かなり変わったとは思ってましたが、これまでとは……正直驚きしかないですね。尚孝さんもそう思いませんか?」

「え、ええ。そうですね。貴船会長といえば、クールで何事にも動じず、感情を表に出さない人だって有名でしたから……でも、ひかるくんのリハビリでよくお会いするようになってからはイメージはすっかり変わりました。本当に笑顔が多くてびっくりしましたよ」

「ふふっ。それはひかるさんの前だけですよ。それ以外の人では今も感情を全く表に出しませんから」

「えっ、そうなんですか?」

尚孝くんの驚き具合に志摩くんと顔を見合わせて笑ってしまう。

「ひかるさんだけが特別なんですよね。私にとっての尚孝さんと同じですよ」

「えっ、そんな……っ」

「あらあら、ごちそうさま」

真っ赤になる尚孝くんをみながら、笑顔でそういうと、尚孝くんはさらに顔を赤らめた。
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