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番外編
食事会 前編 <side智>
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<side智>
「暁、そろそろ起きる時間だぞ」
「う、ん……ちゅーして」
「ふふっ。仰せの通りに」
寝ぼけている暁は時々こうやってキスを強請ってくる。
きっと夢だと思っているんだろうが、そんなおねだりをされてしないという選択肢はない。
「んっ……ふぅ……っん」
柔らかくて甘い唇をしっかりと堪能すると、ようやく暁の目が覚めたようだ。
名残惜しいが仕方がない。
ゆっくりと唇を離すと、暁の開いたばかりの綺麗な瞳が私を映した。
寝起きで少し激しいキスをしたせいか、綺麗な瞳がうっすらと潤んでいるのがわかる。
ああ、本当に可愛い。
「さ、としさん……」
「暁、おはよう。目が覚めたか?」
「おはよう、ございます……あの、ぼく……」
「朝から、暁がキスを強請ってくれたから今日一日いいことがありそうだ」
「さとしさんったら……」
「ふふっ。このままベッドにいたら押し倒したくなるからそろそろ起きようか?」
「は、はい」
慌てて飛び起きた暁を抱き上げて、そのままトイレに連れて行った。
流石に中に入らせてはくれなかったが、近いうちにトイレの世話までしてやろうと目論んでいる。
出てきた暁を抱き上げて洗面所に運び、洗った後の顔をタオルで拭ってあげて、ダイニングテーブルに座らせた。
今日の朝食は暁のリクエストで和食だ。
一緒に住むようになってから、暁がこれまでほとんど朝食をゼリーで済ませていたのを知って、毎日しっかりと食べさせるようにした。
そのおかげか、だんだんと健康的になってきている。
それがわかっているからか、暁も私の食事を嫌がったりすることはない。
それどころか、暁の方から食べたいものをリクエストしてくれるようになったのはいい変化だった。
炊き立てのご飯と卵焼き、そして、焼き魚。
こんなオーソドックスな朝食を暁が喜んでくれるのだから作り甲斐があるというものだ。
雛鳥のように朝食を食べさせ、今日のスーツを選んでやり、着替えさせる。
ネクタイを結んでやるのももちろん私の大切な朝の楽しみの一つだ。
最初こそ、暁も遠慮したり、恥じらっていたりしていたが慣れというものは恐ろしいもので、全てをやってしまえばそれに慣れてくれる。
今では私がいなければ、寂しそうな顔をして待っているのだから可愛いことこの上ない。
これでいい、暁は私無しでは生きていけないくらいにしてやるんだ。
「暁、今日の夜の約束は覚えているか?」
「はい。上田先生とその恋人さんと会えるんですよね」
「ああ、そうだ。だから、定時になったらいつものように玄関前で待っているから、終わったらすぐに来るんだぞ」
「はい。楽しみですね」
「ああ。私も上田先生に恋人を紹介していただくのは初めてだから、楽しみだよ」
「あ、あの……智さん」
「んっ? どうした?」
「あの……その、恋人さんに一目惚れとか、しないでくださいね……」
少し不安げな表情で私を見上げるその瞳が少し潤んでいる。
ああ、もうなんでこんなに可愛いんだろうな。
「暁……」
「んんっ……ん」
不安にさせないように唇を重ね、暁をそっと抱きしめる。
「私が暁にしか興味がないことは暁が一番わかっているだろう? それとも何か不安にさせてしまっているか?」
「あっ、ちが――っ、僕が……ただ不安なだけで……」
「ふふっ。心配なんてしなくていいよ。私には暁だけだ。身も心も暁にしか反応しないよ」
「智さん……」
「帰ったら、私がどれだけ暁を愛しているか身体にいっぱい教えてあげよう」
「ひゃあっ……」
耳元でそっと囁くと、暁は身を震わせて私に抱きついてきた。
ああっ、しまった。
これから仕事に行かせなければいけないのに色っぽい顔にさせてしまった。
仕方ない。
今日は遠回りして会社に連れて行くとしようか。
少しドライブを楽しみながら、暁を会社に連れて行きそれから事務所に向かった。
到着したのはいつもより遅れてはいたが、始業時間にはまだ早い。
ホッとしつつ事務所に入ると、珍しく上田先生はまだ来られていなかった。
そうか、もう一緒に住み始めたのだから私と同じように可愛い恋人の魅力に抗えないでいるのかもしれないな。
今までの先生なら信じられないことだが、私も暁という運命の相手を見つけて変わったのだから、先生の気持ちはよくわかる。
それが理解できたから、同じタイミングで愛しい恋人ができたことは本当によかった。
「ああ、小田切くん。おはよう。遅くなって悪かったな」
「おはようございます、先生。いえ、私もさっき着いたばかりですから気にしないでください」
「そうか、なるほど。どちらも同じというわけだな」
「はい。そのようです」
「今日の食事会だが、予定通り大丈夫か?」
「はい。暁も随分と楽しみにしていましたよ。緊張もしてましたが……ふふっ」
私が先生の恋人に一目惚れしないかと不安になっていたのは内緒にしておこう。
可愛い暁を知るのは私だけでいいのだからな。
「なんだ、ニヤニヤして。おおかた、愛しい恋人のことでも考えてるんだろうが、依頼人にはそんなデレデレした顔は見せないようにな。惚れられでもしたら困るぞ」
「心配ご無用です。暁以外のことには笑顔は出ませんから」
「ハハッ。確かにそうだな。じゃあ、今日も頑張ってくれ」
それから夕方まで淡々と仕事をこなし合間に暁とメッセージを楽しんでいると、あっという間に暁を迎えに行く時間になった。
「先生、では先に失礼します。そのままお店に向かいますので」
「ああ、わかった。気をつけてくるんだぞ」
「はい。失礼します」
先生の優しさに感謝しながら、暁の会社に向かった。
到着してすぐに暁が玄関から出てこちらに駆けてくるのが見えた。
ちょうどいいタイミングだったな。
前回、先生に暁を紹介した店に向かう。
暁は少し緊張しているようだったが、私がついているから大丈夫だ。
そう言い聞かせて店に着くと、もう先生たちは部屋に到着しているようだ。
やはり彼方の方が早かったな。
緊張で少し手指が冷たくなっている暁の手を取り、ピッタリと寄り添いながら部屋に入ると、先生の隣にピッタリとくっついた綺麗な男性の姿が目に入った。
ああ、彼が先生の恋人か。
なるほど。
暁と気が合うと言ってくれたのがわかる気がする。
だが、彼は私たちの様子に驚いたのか、目をぱちくりさせたまま動かなかった。
「暁、そろそろ起きる時間だぞ」
「う、ん……ちゅーして」
「ふふっ。仰せの通りに」
寝ぼけている暁は時々こうやってキスを強請ってくる。
きっと夢だと思っているんだろうが、そんなおねだりをされてしないという選択肢はない。
「んっ……ふぅ……っん」
柔らかくて甘い唇をしっかりと堪能すると、ようやく暁の目が覚めたようだ。
名残惜しいが仕方がない。
ゆっくりと唇を離すと、暁の開いたばかりの綺麗な瞳が私を映した。
寝起きで少し激しいキスをしたせいか、綺麗な瞳がうっすらと潤んでいるのがわかる。
ああ、本当に可愛い。
「さ、としさん……」
「暁、おはよう。目が覚めたか?」
「おはよう、ございます……あの、ぼく……」
「朝から、暁がキスを強請ってくれたから今日一日いいことがありそうだ」
「さとしさんったら……」
「ふふっ。このままベッドにいたら押し倒したくなるからそろそろ起きようか?」
「は、はい」
慌てて飛び起きた暁を抱き上げて、そのままトイレに連れて行った。
流石に中に入らせてはくれなかったが、近いうちにトイレの世話までしてやろうと目論んでいる。
出てきた暁を抱き上げて洗面所に運び、洗った後の顔をタオルで拭ってあげて、ダイニングテーブルに座らせた。
今日の朝食は暁のリクエストで和食だ。
一緒に住むようになってから、暁がこれまでほとんど朝食をゼリーで済ませていたのを知って、毎日しっかりと食べさせるようにした。
そのおかげか、だんだんと健康的になってきている。
それがわかっているからか、暁も私の食事を嫌がったりすることはない。
それどころか、暁の方から食べたいものをリクエストしてくれるようになったのはいい変化だった。
炊き立てのご飯と卵焼き、そして、焼き魚。
こんなオーソドックスな朝食を暁が喜んでくれるのだから作り甲斐があるというものだ。
雛鳥のように朝食を食べさせ、今日のスーツを選んでやり、着替えさせる。
ネクタイを結んでやるのももちろん私の大切な朝の楽しみの一つだ。
最初こそ、暁も遠慮したり、恥じらっていたりしていたが慣れというものは恐ろしいもので、全てをやってしまえばそれに慣れてくれる。
今では私がいなければ、寂しそうな顔をして待っているのだから可愛いことこの上ない。
これでいい、暁は私無しでは生きていけないくらいにしてやるんだ。
「暁、今日の夜の約束は覚えているか?」
「はい。上田先生とその恋人さんと会えるんですよね」
「ああ、そうだ。だから、定時になったらいつものように玄関前で待っているから、終わったらすぐに来るんだぞ」
「はい。楽しみですね」
「ああ。私も上田先生に恋人を紹介していただくのは初めてだから、楽しみだよ」
「あ、あの……智さん」
「んっ? どうした?」
「あの……その、恋人さんに一目惚れとか、しないでくださいね……」
少し不安げな表情で私を見上げるその瞳が少し潤んでいる。
ああ、もうなんでこんなに可愛いんだろうな。
「暁……」
「んんっ……ん」
不安にさせないように唇を重ね、暁をそっと抱きしめる。
「私が暁にしか興味がないことは暁が一番わかっているだろう? それとも何か不安にさせてしまっているか?」
「あっ、ちが――っ、僕が……ただ不安なだけで……」
「ふふっ。心配なんてしなくていいよ。私には暁だけだ。身も心も暁にしか反応しないよ」
「智さん……」
「帰ったら、私がどれだけ暁を愛しているか身体にいっぱい教えてあげよう」
「ひゃあっ……」
耳元でそっと囁くと、暁は身を震わせて私に抱きついてきた。
ああっ、しまった。
これから仕事に行かせなければいけないのに色っぽい顔にさせてしまった。
仕方ない。
今日は遠回りして会社に連れて行くとしようか。
少しドライブを楽しみながら、暁を会社に連れて行きそれから事務所に向かった。
到着したのはいつもより遅れてはいたが、始業時間にはまだ早い。
ホッとしつつ事務所に入ると、珍しく上田先生はまだ来られていなかった。
そうか、もう一緒に住み始めたのだから私と同じように可愛い恋人の魅力に抗えないでいるのかもしれないな。
今までの先生なら信じられないことだが、私も暁という運命の相手を見つけて変わったのだから、先生の気持ちはよくわかる。
それが理解できたから、同じタイミングで愛しい恋人ができたことは本当によかった。
「ああ、小田切くん。おはよう。遅くなって悪かったな」
「おはようございます、先生。いえ、私もさっき着いたばかりですから気にしないでください」
「そうか、なるほど。どちらも同じというわけだな」
「はい。そのようです」
「今日の食事会だが、予定通り大丈夫か?」
「はい。暁も随分と楽しみにしていましたよ。緊張もしてましたが……ふふっ」
私が先生の恋人に一目惚れしないかと不安になっていたのは内緒にしておこう。
可愛い暁を知るのは私だけでいいのだからな。
「なんだ、ニヤニヤして。おおかた、愛しい恋人のことでも考えてるんだろうが、依頼人にはそんなデレデレした顔は見せないようにな。惚れられでもしたら困るぞ」
「心配ご無用です。暁以外のことには笑顔は出ませんから」
「ハハッ。確かにそうだな。じゃあ、今日も頑張ってくれ」
それから夕方まで淡々と仕事をこなし合間に暁とメッセージを楽しんでいると、あっという間に暁を迎えに行く時間になった。
「先生、では先に失礼します。そのままお店に向かいますので」
「ああ、わかった。気をつけてくるんだぞ」
「はい。失礼します」
先生の優しさに感謝しながら、暁の会社に向かった。
到着してすぐに暁が玄関から出てこちらに駆けてくるのが見えた。
ちょうどいいタイミングだったな。
前回、先生に暁を紹介した店に向かう。
暁は少し緊張しているようだったが、私がついているから大丈夫だ。
そう言い聞かせて店に着くと、もう先生たちは部屋に到着しているようだ。
やはり彼方の方が早かったな。
緊張で少し手指が冷たくなっている暁の手を取り、ピッタリと寄り添いながら部屋に入ると、先生の隣にピッタリとくっついた綺麗な男性の姿が目に入った。
ああ、彼が先生の恋人か。
なるほど。
暁と気が合うと言ってくれたのがわかる気がする。
だが、彼は私たちの様子に驚いたのか、目をぱちくりさせたまま動かなかった。
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