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みんなで一緒に
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「りんくん、どっちがいい?」
両手に蓋付き小さなサイズのジュースを抱えて駆け寄ってきた碧斗くんの手にあるのは、リンゴジュースとブドウジュース。
字は読めなくても瑞々しい果物の絵がパックに描かれているから琳にもわかるだろう。
りんごもぶどうも琳の好きなものだからどちらを選んでも良さそう。
碧斗くん、いいのを選んできてくれたな。
「りんが、えらんでいいのー?」
「うん! あおと、どっちもすきだもん!」
「りんも、どっちもすきー!」
「じゃあ、はんぶんずっこしようか」
碧斗くんからの提案に琳は目を輝かせて頷いた。
でもこれは直接口をつけて飲むタイプのジュース。
うちは別に気にしないけど、西条さんのところは気にするかもしれない。
「あの、半分こはやめさせた方がいいですか?」
「子どものやることだ。私は気にしないが、遥くんが気になるならやめさせようか?」
「い、いえ。うちも気にはしませんが…」
「それなら構わない」
意外と寛大なんだな。
もっと潔癖なのかと思っていた。
琳と碧斗くんの楽しそうな会話を聞いていると、不安でいっぱいだった心が少しずつ落ち着いてくるのがわかる。
碧斗くんに一緒に来てもらってよかった。
「はるかちゃん! このじゅーす、とってもおいしいよ!」
僕に見えるように高らかとジュースを掲げて見せてくれるけれど、そのジュースは見たことがない。
自販機で売っているものはスーパーでも見てそうなのに。
じっくり見るとパックには<特選生搾りストレート果汁100%>の文字がある。
「えっ、これって……」
デパ地下とか売ってそうなものすごく高いジュースじゃない?
これが自販機に?
「あ、あの……西条さん、このジュースってすごく高いんじゃ……」
「子どもの飲むものだから安心なものがいいだろう。値段は二の次だ。それに大した金額ではないよ」
確かにその通りだけど……やっぱりこの辺りは庶民と感覚が違いそうだ。
まだ温かいペットボトルのお茶を流し込むと、じわじわと身体の中に広がって冷え切っていた僕の身体を温めてくれた。
「友利さん、お入りください」
それほど待つことなく声がかかり、ホッとした。
急いで返事をして、琳を連れて行こうと立ち上がると、碧斗くんがポンと椅子から下りて琳の手を取った。
まるでエスコートでもするように琳を優しく椅子から下ろすのを、僕は茫然と眺めていた。
「はるかちゃん、いかないの?」
「えっ? あ、うん。僕が琳を連れて行ってくるから、碧斗くんはパパとここで待ってて」
「えーっ、あおともいっしょにせんせーのおはなしきくー!! りんくんも、あおとがいっしょのほうがいいよね?」
「うん、りんもいっしょがいいー! ねー、はるかちゃん。だめー?」
キラキラとした無垢な瞳で琳と碧斗くんと二人から見つめられるとダメだと言えなくなってしまう。
どうしようと思って西条さんに視線を向けると、仕方ないなとでもいうような表情をみせた。
「わかった。じゃあみんなで行こう」
「わぁーい!!」
西条さんの言葉に琳と碧斗くんは大喜びで手を繋いだ。
「あの、西条さん……」
「ここで長々と説得するよりは早く行って治療をしてもらったほうがいいだろう」
「は、はい。そうですね」
確かにそれが一番かもしれないけれど、西条さんも一緒に?
なんだか不思議な感じ。
「はるかちゃん、いこー!」
碧斗くんに手を差し出されて不思議な気分を味わいながら手を取り西条さんは僕の隣に立って一緒に診察室まで行ってくれた。
先生は優しそうなおじいちゃん先生。
「お父さんはお子さんを抱っこしてそこに座ってください」
「は、はい。琳、おいで」
琳は碧斗くんと繋いでいた手を離し、僕のところにやってきた。抱っこして先生の前に置いてある椅子に腰を下ろすと、琳が少し緊張している様子がわかる。
「怖くないからね。ちょっと怪我をしたところを見せてね」
おじいちゃん先生が優しく声をかけてくれて、琳はそっと腕を伸ばした。
先生は応急処置をかなり慎重に外した。剥き出しになった琳の手首はかなり腫れていた。
「うーん、ちょっとレントゲンを撮った方がいいかな。お父さんも一緒に入れるからね」
そう言われてホッとする。
一緒にレントゲン室に入り、撮影が終わって出てくると先生はレントゲン写真を真剣な眼差しで見つめていた。
「どうですか?」
「腫れていたから心配したけど、骨には異常ないよ」
「ああー、よかった」
それでも痛い思いをしたことに変わりはないけれど、骨折じゃなくて本当に良かった。
「ただ、酷く捻っているから一週間は安静にね。保育園に通っているのかな?」
スモッグを着ているからそう思ったんだろう。
「はい、そうです」
「それなら治るまでは休ませたほうがいいかな」
琳が保育園に行けない。
ということはその間、碧斗くんのお世話はどうしよう。
琳のことを思えば休ませるのは当然のことなのに、碧斗くんのことも心配でたまらない。
「遙くん、その間は琳くんをうちに連れてきたらいい」
「えっ?」
西条さんからの思いがけない提案に思わず大きな声が出てしまった。
両手に蓋付き小さなサイズのジュースを抱えて駆け寄ってきた碧斗くんの手にあるのは、リンゴジュースとブドウジュース。
字は読めなくても瑞々しい果物の絵がパックに描かれているから琳にもわかるだろう。
りんごもぶどうも琳の好きなものだからどちらを選んでも良さそう。
碧斗くん、いいのを選んできてくれたな。
「りんが、えらんでいいのー?」
「うん! あおと、どっちもすきだもん!」
「りんも、どっちもすきー!」
「じゃあ、はんぶんずっこしようか」
碧斗くんからの提案に琳は目を輝かせて頷いた。
でもこれは直接口をつけて飲むタイプのジュース。
うちは別に気にしないけど、西条さんのところは気にするかもしれない。
「あの、半分こはやめさせた方がいいですか?」
「子どものやることだ。私は気にしないが、遥くんが気になるならやめさせようか?」
「い、いえ。うちも気にはしませんが…」
「それなら構わない」
意外と寛大なんだな。
もっと潔癖なのかと思っていた。
琳と碧斗くんの楽しそうな会話を聞いていると、不安でいっぱいだった心が少しずつ落ち着いてくるのがわかる。
碧斗くんに一緒に来てもらってよかった。
「はるかちゃん! このじゅーす、とってもおいしいよ!」
僕に見えるように高らかとジュースを掲げて見せてくれるけれど、そのジュースは見たことがない。
自販機で売っているものはスーパーでも見てそうなのに。
じっくり見るとパックには<特選生搾りストレート果汁100%>の文字がある。
「えっ、これって……」
デパ地下とか売ってそうなものすごく高いジュースじゃない?
これが自販機に?
「あ、あの……西条さん、このジュースってすごく高いんじゃ……」
「子どもの飲むものだから安心なものがいいだろう。値段は二の次だ。それに大した金額ではないよ」
確かにその通りだけど……やっぱりこの辺りは庶民と感覚が違いそうだ。
まだ温かいペットボトルのお茶を流し込むと、じわじわと身体の中に広がって冷え切っていた僕の身体を温めてくれた。
「友利さん、お入りください」
それほど待つことなく声がかかり、ホッとした。
急いで返事をして、琳を連れて行こうと立ち上がると、碧斗くんがポンと椅子から下りて琳の手を取った。
まるでエスコートでもするように琳を優しく椅子から下ろすのを、僕は茫然と眺めていた。
「はるかちゃん、いかないの?」
「えっ? あ、うん。僕が琳を連れて行ってくるから、碧斗くんはパパとここで待ってて」
「えーっ、あおともいっしょにせんせーのおはなしきくー!! りんくんも、あおとがいっしょのほうがいいよね?」
「うん、りんもいっしょがいいー! ねー、はるかちゃん。だめー?」
キラキラとした無垢な瞳で琳と碧斗くんと二人から見つめられるとダメだと言えなくなってしまう。
どうしようと思って西条さんに視線を向けると、仕方ないなとでもいうような表情をみせた。
「わかった。じゃあみんなで行こう」
「わぁーい!!」
西条さんの言葉に琳と碧斗くんは大喜びで手を繋いだ。
「あの、西条さん……」
「ここで長々と説得するよりは早く行って治療をしてもらったほうがいいだろう」
「は、はい。そうですね」
確かにそれが一番かもしれないけれど、西条さんも一緒に?
なんだか不思議な感じ。
「はるかちゃん、いこー!」
碧斗くんに手を差し出されて不思議な気分を味わいながら手を取り西条さんは僕の隣に立って一緒に診察室まで行ってくれた。
先生は優しそうなおじいちゃん先生。
「お父さんはお子さんを抱っこしてそこに座ってください」
「は、はい。琳、おいで」
琳は碧斗くんと繋いでいた手を離し、僕のところにやってきた。抱っこして先生の前に置いてある椅子に腰を下ろすと、琳が少し緊張している様子がわかる。
「怖くないからね。ちょっと怪我をしたところを見せてね」
おじいちゃん先生が優しく声をかけてくれて、琳はそっと腕を伸ばした。
先生は応急処置をかなり慎重に外した。剥き出しになった琳の手首はかなり腫れていた。
「うーん、ちょっとレントゲンを撮った方がいいかな。お父さんも一緒に入れるからね」
そう言われてホッとする。
一緒にレントゲン室に入り、撮影が終わって出てくると先生はレントゲン写真を真剣な眼差しで見つめていた。
「どうですか?」
「腫れていたから心配したけど、骨には異常ないよ」
「ああー、よかった」
それでも痛い思いをしたことに変わりはないけれど、骨折じゃなくて本当に良かった。
「ただ、酷く捻っているから一週間は安静にね。保育園に通っているのかな?」
スモッグを着ているからそう思ったんだろう。
「はい、そうです」
「それなら治るまでは休ませたほうがいいかな」
琳が保育園に行けない。
ということはその間、碧斗くんのお世話はどうしよう。
琳のことを思えば休ませるのは当然のことなのに、碧斗くんのことも心配でたまらない。
「遙くん、その間は琳くんをうちに連れてきたらいい」
「えっ?」
西条さんからの思いがけない提案に思わず大きな声が出てしまった。
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