ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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お迎えに行こう!

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「はるかちゃん、どうしたのー?」

「あ、ごめんね。あのね、今からお出かけしたいんだけど、碧斗くんも一緒についてきて欲しいんだ」

「おでかけー? いいの?」

さすが西条さんのお子さんだな。
外に出ちゃいけないっていう約束を守っているんだろう。

「パパからおでかけしてもいいってオッケーもらったから大丈夫。行ってくれる?」

「うん! あおと、ついていってあげる! だって、はるかちゃん、とってもかなしそうだもん。あおとがまもってあげるね!」

碧斗くんの優しい気持ちに涙が出そうになる。
西条さんと碧斗くんのおかげで怪我して辛い思いをしている琳のところに行けるんだ。

「じゃあ、行こうか」

何かあった時のために琳の保険証と親子手帳はいつも持ち歩いている。
使う機会がないほうが本当はいいけれど、今日は持ってきておいて正解だった。

碧斗くんの手をしっかり握って、家を出る。
鍵はどうしようかと思ったけれど、家の中が無人になったのを察知してすぐに鍵がかかった。
本当にここの防犯システムはすごい。

エレベーターで一階まで降りるとすぐにコンシェルジュさんが近づいてきた。

「あの……」

「友利さま。あちらのタクシーにお乗りください」

なんと言って説明しようかと思ったのに、もうすでにコンシェルジュさんに話が伝わっているみたいだ。
西条さんのあまりにも迅速な対応に驚かされる。

タクシーが停まっている場所まで案内してくれるけれど、駐車場には僕が知っているタクシーとは違う、もっと大きな車が停まっていた。

「えっ、これ……?」

戸惑う僕をよそに車外で待ってくれていた運転手さんが後部座席の扉を開けてくれる。

「あっ! すごい!」

後部座席には二列シートがあり、その後列にはチャイルドシートが並んで設置されていた。
そうか、碧斗くんと琳を座らせるんだから必要だ。

だからこの大きなタクシーにしてくれたんだ。
西条さんの細やかな気配りに感謝しながら、僕は碧斗くんを後ろのチャイルドシートに座らせて僕は前列の席に座った。

「どちらにご案内いたしますか?」

「あの、この保育園までお願いします」

僕はスマホで保育園のHPを見せると、運転手さんは名前と場所を確認しゆっくりと車を走らせた。

「はるかちゃん、どこにいくのー?」

「あのね、僕の息子……琳って言うんだけど、琳が保育園で怪我をしちゃったんだ」

「えっ、けがしちゃったの?」

外に出られてちょっと嬉しそうにしていた碧斗くんが一気に心配そうな表情に変わる。

「そう。だから、琳をお迎えに行って、その後病院で手当してもらいに行くんだ。碧斗くん……琳は痛くて泣いていると思うから、手を繋いでくれるかな?」

「うん! まかせてー!」

碧斗くんの元気な声が、今の僕の支えだ。
琳……すぐに行くからね!


タクシーは保育園の入り口に到着した。
離れた園庭で遊んでいた子どもたちが、大きな車が停まったことに大騒ぎしている様子が見える。

「ここにいるのー?」

碧斗くんは窓の外を不思議そうに見つめている。
保育園に行ったことがないからわからないのも無理はない。
お金持ちの人たちは付属の二年制の幼稚園に入れる人が多いから、碧斗くんもきっと来年四月からその幼稚園に行くんだろう。

「そうだよ。運転手さん、ちょっとここで待っててください。碧斗くんもここで――」
「ううん。はるかちゃんといっしょにいくー!! あおとがてをつないであげるんだもん!」

僕がさっき言ったことを守ろうとしてくれているんだ。

「わかった。じゃあ、一緒に行こう。絶対に僕の手を離さないでね」

「うん! わかったー!!」

碧斗くんをチャイルドシートから下ろし、一緒に車から降りる。
保育園の入り口に設置されているセキュリティゲートに保護者カードを当てると、鍵が開いた。

碧斗くんと手を繋ぎ、保育園の事務所へ急ぐ。

「すみません。友利琳の父親です。琳を迎えに来ました」

「琳くんのお父さん! あら? その子は?」

「今、ベビーシッター中で……ひとりで家に残すわけには行かないので連れてきました。それより琳は……」

「医務室にいますので、ご案内します。どうぞ」

靴をさっと脱ぎ、碧斗くんの靴を脱がせて中に入ると、廊下の突き当たりに医務室がある。

「琳くん、お父さんがお迎えに来てくれたよー」

扉を開けながら先生が声をかけると、部屋の奥から「はるかちゃーん!」と涙声の琳の声が聞こえてきた。

「琳!」

手に痛々しい包帯を巻き付けて、トタトタと駆け寄ってきた琳の前にしゃがみ込み、琳を受け止めようと片手を広げた。すると、碧斗くんも空いている手を広げて僕の隣で琳を受け止めようとしてくれていた。

琳は一瞬戸惑いの表情を浮かべたものの、そのまま僕と碧斗くんの胸に飛び込んできた。

「ふぇーん、はるかちゃーん!」

怪我している腕に当たらないように抱きしめると、碧斗くんが僕の手の代わりにとでもいうように、琳の頭を優しく撫でてくれる。そのおかげだろうか、琳も安心した表情をしているのがわかる。

「琳。怖かったね。でももう大丈夫だよ。一緒に病院で診てもらおうね」

「びょーいん? ちゅーしゃ、する?」

パッと顔を上げて、不安げに尋ねてくる。
琳は注射が苦手だからな。
泣きはしないけど、必死に堪えてその後熱を出したりするんだ。

「大丈夫。注射はしないよ」

「ほんと?」

その時、琳の不安そうな表情を間近で見ていた碧斗くんが突然話に入ってきた。

「りんくん。ぼく、あおとだよ。ぼくも、いっしょにびょーいんいくからこわくないよ」

「あおとくんも、いっしょにいってくれるの?」

「うん! はやくびょーいんいって、ぼくのうちであそぼー!」

「うん!! あおとくんちであそぶー!!」

すっかり琳が笑顔を取り戻していることにびっくりする。
でも、碧斗くんのおかげで涙が止まったみたいだからよかったかな。

碧斗くんと握っていた手を離すと、碧斗くんは当然のように片方空いている琳の手を優しく握っていた。
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