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番外編
思い出と共に
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「んっ? 何?」
夢の中で揺れているような気がして目を覚ますと、俺はロベールの腕の中にいた。
なんだ、ただの夢か。
そう思ってまた目を瞑ろうとしたけれど、やっぱり身体が揺れている。
というより、ベッドごと動いている気がする。
何、これ?
不安になって、
「ロベール?」
と名前を呼ぶと、腕の力が強くなってロベールの胸元に顔が押しつけられる。
「ヒロ、起こしてしまったか? 悪い、地震が起きているようだ」
「えっ? 地震?」
その言葉に改めて感じれば、本当だ。
うっすら揺れている気がする。
ここはホテルの最上階のペントハウス。
ここでうっすら感じるくらいの揺れなら大したことはなさそうだけど。
そんな話をしている間に揺れもおさまったみたいだ。
「これくらいなら大丈夫みたいだね。よかった」
「いや、今のはかなり大きかったはずだ。うちのホテルは免震構造を取り入れているから揺れは最小限だったが、今の揺れは少し心配だな」
「心配って?」
「ヒロの家だよ。すぐにでも調査を入れた方が良さそうだ」
そういうと、ロベールはすぐにベッドから起き上がると、どこかに連絡を入れてくれた。
俺はその間にテレビをつけてみて驚いた。
最大震度6弱。
俺が感じたのはせいぜい震度2くらいだと思っていたのに……。
改めてロードナイトホテルの凄さを思い知らされた。
日本が地震大国だから、地震対策は十分過ぎるほどしているからと聞いていたけれど実際に体験してその凄さがわかる。
明日には俺の家に移ろうと話をしていただけに、少し心配だ。
なんといっても古い家だからな。
たとえ、どこか壊れていなくても、家の中のものが壊れたりなんてことはありそうだ。
ホテル内では特に騒ぎは起きなかったようで安心したけれど、ロベールは俺の家のことも調査を入れてくれながら、ホテルの対応にも追われていて、しばらくの間忙しそうにしていて、何も手伝えないのが申し訳ないくらいだった。
「ヒロ、一人にして悪い」
ようやく俺の元に戻ってきてくれて、すぐに俺を抱きしめてくれる。
その温もりを感じるだけで安心するんだ。
「ううん、ホテルのこともあるのに、俺のうちのことを調べてくれているんだから忙しくて当然だよ。それよりうちの様子はわかった?」
「ああ、このホテルの設計士と一緒にタスクが家を見にいってくれたんだが、足の踏み場がない状態だと言っていたよ。原状回復までには時間がかかりそうだな」
「そんなに酷かったんだ……でも、そうか。タンスとか食器棚とか何も対策してなかったもんね」
「設計士が言うには家の骨組みにも少し問題がありそうだと言っていたから、あの家に長く住もうと思ったら一度詳しく調査を入れないと難しいかもしれないな」
「そっか……」
古い家だし、元々手入れはしないといけないと思っていたけど、ロベールを危険な目に遭わせてまで住みたいとは思っていない。
ただ思い出として残したいと思っていただけだ。
父さんや母さんと過ごしたあの家を。
「あの家を残したいヒロの気持ちもわかるし、私もヒロの生まれ育った家に住んでみたいと思っていたが、ヒロを危険な目に遭わせたくはない。だから、ご両親の思い出も残しつつ、新しい家を建てないか?」
「新しい、家……」
「そうだ。そこにあの家の思い出を連れて行こう」
俺がずっとあの家に住みたいと言っていたのをロベールは一生懸命守ろうとしてくれているんだ。
ロベールのその気持ちが何よりも嬉しい。
これがいい機会なのかもしれないな。
「ヒロ、どうだろうか?」
「ロベール……ありがとう。俺……ロベールと一緒に新しい家で思い出を作りたい」
「――っ!! ヒロっ!! ああ、私もヒロとたくさんの思い出を作りたいよ。小さな頃からのヒロのたくさんの思い出も一緒に連れていくとしよう」
そこからのロベールの行動は早かった。
今回の地震で壊れなかった、家の中のもの全てをペントハウスの空いている部屋に全て運び入れてくれて、あの土地も高値で買ってくれる人を探してくれた。
あの家が無くなったことが寂しくないといえば嘘になる。
でも、今はロベールと一緒に過ごすことが幸せだからもうそれでいい。
姉さんだって、あの家のことはずっと気にしていた。
だから、ある意味すっぱり無くなってホッとしているかもしれない。
「私たちの家にふさわしい土地が見つかったから、ここに私とヒロの新居を建てよう。ヒロの好きなように作りたいから、なんでも希望を言ってくれ」
もう土地まで探してくれたなんて、仕事が早いな。
さすがロベール。
なんて思いながら土地の図面を見せてもらって驚いた。
「えっ!! ここに、本当に建てるの?」
「ああ、いい場所だと思うが気に入らないか? それなら、他の場所を買おうか。ヒロはどこがいい?」
「えっ、いやそうじゃなくて……これ、都内だよね?」
「ああ、もちろんだよ。ヒロが大学に通うなら近い方がいいだろう?」
当然のように言ってくれるけど、図面に書かれた広さは2000平米。
約600坪。
600坪って……想像がつかないんだけど……。
ここに俺とロベールの家を?
「ちょ、ちょっと広すぎない?」
「そんなことはないよ。アメリカの家の五分の一くらいの広さしかないから大したことはないが、二人ならちょうどいいだろう」
ええー……。
もう異次元すぎてわからないんだけど。
やっぱりあの家を売るの早まったかな……。
夢の中で揺れているような気がして目を覚ますと、俺はロベールの腕の中にいた。
なんだ、ただの夢か。
そう思ってまた目を瞑ろうとしたけれど、やっぱり身体が揺れている。
というより、ベッドごと動いている気がする。
何、これ?
不安になって、
「ロベール?」
と名前を呼ぶと、腕の力が強くなってロベールの胸元に顔が押しつけられる。
「ヒロ、起こしてしまったか? 悪い、地震が起きているようだ」
「えっ? 地震?」
その言葉に改めて感じれば、本当だ。
うっすら揺れている気がする。
ここはホテルの最上階のペントハウス。
ここでうっすら感じるくらいの揺れなら大したことはなさそうだけど。
そんな話をしている間に揺れもおさまったみたいだ。
「これくらいなら大丈夫みたいだね。よかった」
「いや、今のはかなり大きかったはずだ。うちのホテルは免震構造を取り入れているから揺れは最小限だったが、今の揺れは少し心配だな」
「心配って?」
「ヒロの家だよ。すぐにでも調査を入れた方が良さそうだ」
そういうと、ロベールはすぐにベッドから起き上がると、どこかに連絡を入れてくれた。
俺はその間にテレビをつけてみて驚いた。
最大震度6弱。
俺が感じたのはせいぜい震度2くらいだと思っていたのに……。
改めてロードナイトホテルの凄さを思い知らされた。
日本が地震大国だから、地震対策は十分過ぎるほどしているからと聞いていたけれど実際に体験してその凄さがわかる。
明日には俺の家に移ろうと話をしていただけに、少し心配だ。
なんといっても古い家だからな。
たとえ、どこか壊れていなくても、家の中のものが壊れたりなんてことはありそうだ。
ホテル内では特に騒ぎは起きなかったようで安心したけれど、ロベールは俺の家のことも調査を入れてくれながら、ホテルの対応にも追われていて、しばらくの間忙しそうにしていて、何も手伝えないのが申し訳ないくらいだった。
「ヒロ、一人にして悪い」
ようやく俺の元に戻ってきてくれて、すぐに俺を抱きしめてくれる。
その温もりを感じるだけで安心するんだ。
「ううん、ホテルのこともあるのに、俺のうちのことを調べてくれているんだから忙しくて当然だよ。それよりうちの様子はわかった?」
「ああ、このホテルの設計士と一緒にタスクが家を見にいってくれたんだが、足の踏み場がない状態だと言っていたよ。原状回復までには時間がかかりそうだな」
「そんなに酷かったんだ……でも、そうか。タンスとか食器棚とか何も対策してなかったもんね」
「設計士が言うには家の骨組みにも少し問題がありそうだと言っていたから、あの家に長く住もうと思ったら一度詳しく調査を入れないと難しいかもしれないな」
「そっか……」
古い家だし、元々手入れはしないといけないと思っていたけど、ロベールを危険な目に遭わせてまで住みたいとは思っていない。
ただ思い出として残したいと思っていただけだ。
父さんや母さんと過ごしたあの家を。
「あの家を残したいヒロの気持ちもわかるし、私もヒロの生まれ育った家に住んでみたいと思っていたが、ヒロを危険な目に遭わせたくはない。だから、ご両親の思い出も残しつつ、新しい家を建てないか?」
「新しい、家……」
「そうだ。そこにあの家の思い出を連れて行こう」
俺がずっとあの家に住みたいと言っていたのをロベールは一生懸命守ろうとしてくれているんだ。
ロベールのその気持ちが何よりも嬉しい。
これがいい機会なのかもしれないな。
「ヒロ、どうだろうか?」
「ロベール……ありがとう。俺……ロベールと一緒に新しい家で思い出を作りたい」
「――っ!! ヒロっ!! ああ、私もヒロとたくさんの思い出を作りたいよ。小さな頃からのヒロのたくさんの思い出も一緒に連れていくとしよう」
そこからのロベールの行動は早かった。
今回の地震で壊れなかった、家の中のもの全てをペントハウスの空いている部屋に全て運び入れてくれて、あの土地も高値で買ってくれる人を探してくれた。
あの家が無くなったことが寂しくないといえば嘘になる。
でも、今はロベールと一緒に過ごすことが幸せだからもうそれでいい。
姉さんだって、あの家のことはずっと気にしていた。
だから、ある意味すっぱり無くなってホッとしているかもしれない。
「私たちの家にふさわしい土地が見つかったから、ここに私とヒロの新居を建てよう。ヒロの好きなように作りたいから、なんでも希望を言ってくれ」
もう土地まで探してくれたなんて、仕事が早いな。
さすがロベール。
なんて思いながら土地の図面を見せてもらって驚いた。
「えっ!! ここに、本当に建てるの?」
「ああ、いい場所だと思うが気に入らないか? それなら、他の場所を買おうか。ヒロはどこがいい?」
「えっ、いやそうじゃなくて……これ、都内だよね?」
「ああ、もちろんだよ。ヒロが大学に通うなら近い方がいいだろう?」
当然のように言ってくれるけど、図面に書かれた広さは2000平米。
約600坪。
600坪って……想像がつかないんだけど……。
ここに俺とロベールの家を?
「ちょ、ちょっと広すぎない?」
「そんなことはないよ。アメリカの家の五分の一くらいの広さしかないから大したことはないが、二人ならちょうどいいだろう」
ええー……。
もう異次元すぎてわからないんだけど。
やっぱりあの家を売るの早まったかな……。
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