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辛すぎる現実
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荷物をまとめて姉さんと一緒にリビングへと戻ると、ロベールさんと佑さんが2人で何やら真剣な話をしていた。
多分さっき話してた資本提携の話をしているんだろう。
「ロベールさん、お待たせ」
「ああ、ヒロ。じゃあ行こうか――っつ!」
「あぶな――っ!!」
ソファーから立ちあがろうとしたロベールさんの長い足が目の前の机にぶつかりそうになって、俺は慌てて荷物を離しロベールさんの元へ駆けつけた。
「わっ!!」
片足でふらついたロベールさんをガシッと抱きしめたけれど、やはり俺1人の力ではロベールさんを支えきれない。
そのまま2人で畳に倒れそうになるのを佑さんがロベールさんの腕をガシッと捕まえて助けてくれた。
「大丈夫か? 比呂くん、ロベール」
「は、はい……俺はなんとか……。ロベールさん、大丈夫ですか?」
「ヒロが助けてくれたから大丈夫だ」
「俺は何も……助けたのはタスクさんですよ」
「ヒロが先に私を支えてくれなかったらとっくに倒れてしまっていたよ。なぁ、タスク」
「ふふっ。そうだな、愛の力はすごいな」
「ありがとう、ハニー」
そういうとロベールさんは俺の頬にチュッとキスをした後で、
「タスクも、助かったよ。悪いが、このままヒロに車まで支えてもらうから、タスクはヒロの荷物を持ってくれないか?」
と頼むと、佑さんは
「ああ、任せてくれ」
とささっと俺の放り出したキャリーケースを持ち玄関へと運んでいった。
俺はほっぺたとはいえ、姉さんの目の前でキスされたことに恥ずかしく思ったけれど、姉さんは何も気にする様子もなく
「比呂、気をつけて。ロベールさんのお世話頑張ってね」
と見送ってくれた。
姉さんの優しさに感謝しながら、
「うん、ありがとう。姉さん、明日からの新婚旅行楽しんできて」
そう言うと、姉さんは嬉しそうに頷いた。
「ロベールさん、比呂のこと……よろしくお願いします」
「はい。ヒロのこと一生大切にします。お任せください」
なんだか嫁に出されるような気分だと思いながら、玄関へと向かうと佑さんが笑いを堪えながらこっちへ戻ってきた。
「なぁロベール、あんなデカい車でここにきたのか?」
「ああ、何か悪かったか?」
「いや、あまりにもデカすぎてびっくりしただけだよ。ほら、楓も見てごらんよ」
佑さんが姉さんの手を引いて玄関へと連れていくと、目を大きく見開いてすぐに姉さんが戻ってきた。
「2人であそこからあの車で帰ってきたの?」
「うん、そうだけど……」
「坂田さんに何か言われなかった? あの人、悪い人じゃないんだけどほんと目敏くてうるさいから……」
「ああ……、うん。言われたけど……ロベールさんが追い払ってくれた……から大丈夫だと思う」
「ええーっ! あの人を?? すごいじゃないっ、ロベールさん!!」
姉さんがロベールさんを尊敬の眼差しを向けながら驚いているのは、むかし、散々佑さんとのことを聞かれて嫌な思いをさせられていたからだ。
ある時から突然佑さんのことは聞いてこなくなってホッとしてたんだけど、今回ロベールさんのことで久々に迫ってきたから驚いたんだよね。
ロベールさんが早々に追い払ってくれたから、俺は全然嫌な思いはしなかったけれど。
「私のヒロに勝手に触れないように頼んだだけだよ。なぁ、ヒロ」
「ああ、うん……そ、そうだね」
「彼女もきっとわかってくれただろうから、もう何も言ってこないよ」
なぜか自信満々にいうロベールさんが気になったけれど、まぁ確かにそう頼んでたし、坂田さんもきっと来ないだろう。
意味がわかってるかはわかんないけど……。
「そっか。なら、よかった。じゃあ、旅行から帰ってきたら連絡するから」
「うん、姉さんも佑さんも気をつけて」
本当に気をつけて!
そう心の中で強く願いながら、姉さんたちと別れて俺とロベールさんは車に乗り込んだ。
車はあっという間に、ロベールさんの言っていた港区にある<ロードナイトホテル>に到着した。
何度か前は通ったことはあるけれど、まさかこのホテルに足を踏み入れる日がくるとは……そして泊まれる日が来るとは思っても見なかった。
俺たちの乗った白いリムジンはホテルの入り口につけられ、俺が先に出てロベールさんを支えながら車から降ろすとすぐに
「おかえりなさいませ」
と声がかけられた。
ロベールさんを支えていたから荷物を取り出すことができず、どうしようかと思っていると、ロベールさんはそれにすぐ気づいて玄関にいたベルボーイさんに荷物を部屋まで運ぶようにと頼んでくれた。
俺の荷物を運んでくれるのを見送りながら、ロベールさんとゆっくりホテルの中に入り専用エレベーターへと向かっていると、
『ロベールっ!!』
と突然の大声がロビー内に響き渡った途端、柱の影から俺たちに向かって何かが飛び出してきた。
『邪魔よ、あんたっ!』
と俺は強い力でドンッと何かに押しのけられ、何が起こったのかわからないまま気づけばホテルの床に倒れていた。
「――ったたっ!!」
ぶつけたお尻をさすりながら起き上がる俺の目に飛び込んできたのは、ブロンドの女性に抱きしめられ顔が重なり合っているロベールさんの姿だった。
「えっ――き、キス……してる??」
俺は目の前の光景が到底真実だと思えず、その場に立ち尽くしているとロベールさんとキスをしていた女性が俺に振り返って高らかに言い放った。
『ロベール、この子どもが証人よ。ああー、これで私があなたの婚約者、そして妻になるのね!
ふふっ。この私が<ロードナイトホテル>の会長夫人になるのよ!!!』
婚約者?
妻?
その言葉にもショックを受けたけれど、一番のショックはさっきのキス……。
ロベールさんが俺以外の人とキスをしているのを目にするのがこんなに辛いなんて……。
ああ、俺はもうこんなにもロベールさんを好きになっていたんだな。
俺はあまりのショックにその場から消えたい、その一心で玄関へと走り出した。
多分さっき話してた資本提携の話をしているんだろう。
「ロベールさん、お待たせ」
「ああ、ヒロ。じゃあ行こうか――っつ!」
「あぶな――っ!!」
ソファーから立ちあがろうとしたロベールさんの長い足が目の前の机にぶつかりそうになって、俺は慌てて荷物を離しロベールさんの元へ駆けつけた。
「わっ!!」
片足でふらついたロベールさんをガシッと抱きしめたけれど、やはり俺1人の力ではロベールさんを支えきれない。
そのまま2人で畳に倒れそうになるのを佑さんがロベールさんの腕をガシッと捕まえて助けてくれた。
「大丈夫か? 比呂くん、ロベール」
「は、はい……俺はなんとか……。ロベールさん、大丈夫ですか?」
「ヒロが助けてくれたから大丈夫だ」
「俺は何も……助けたのはタスクさんですよ」
「ヒロが先に私を支えてくれなかったらとっくに倒れてしまっていたよ。なぁ、タスク」
「ふふっ。そうだな、愛の力はすごいな」
「ありがとう、ハニー」
そういうとロベールさんは俺の頬にチュッとキスをした後で、
「タスクも、助かったよ。悪いが、このままヒロに車まで支えてもらうから、タスクはヒロの荷物を持ってくれないか?」
と頼むと、佑さんは
「ああ、任せてくれ」
とささっと俺の放り出したキャリーケースを持ち玄関へと運んでいった。
俺はほっぺたとはいえ、姉さんの目の前でキスされたことに恥ずかしく思ったけれど、姉さんは何も気にする様子もなく
「比呂、気をつけて。ロベールさんのお世話頑張ってね」
と見送ってくれた。
姉さんの優しさに感謝しながら、
「うん、ありがとう。姉さん、明日からの新婚旅行楽しんできて」
そう言うと、姉さんは嬉しそうに頷いた。
「ロベールさん、比呂のこと……よろしくお願いします」
「はい。ヒロのこと一生大切にします。お任せください」
なんだか嫁に出されるような気分だと思いながら、玄関へと向かうと佑さんが笑いを堪えながらこっちへ戻ってきた。
「なぁロベール、あんなデカい車でここにきたのか?」
「ああ、何か悪かったか?」
「いや、あまりにもデカすぎてびっくりしただけだよ。ほら、楓も見てごらんよ」
佑さんが姉さんの手を引いて玄関へと連れていくと、目を大きく見開いてすぐに姉さんが戻ってきた。
「2人であそこからあの車で帰ってきたの?」
「うん、そうだけど……」
「坂田さんに何か言われなかった? あの人、悪い人じゃないんだけどほんと目敏くてうるさいから……」
「ああ……、うん。言われたけど……ロベールさんが追い払ってくれた……から大丈夫だと思う」
「ええーっ! あの人を?? すごいじゃないっ、ロベールさん!!」
姉さんがロベールさんを尊敬の眼差しを向けながら驚いているのは、むかし、散々佑さんとのことを聞かれて嫌な思いをさせられていたからだ。
ある時から突然佑さんのことは聞いてこなくなってホッとしてたんだけど、今回ロベールさんのことで久々に迫ってきたから驚いたんだよね。
ロベールさんが早々に追い払ってくれたから、俺は全然嫌な思いはしなかったけれど。
「私のヒロに勝手に触れないように頼んだだけだよ。なぁ、ヒロ」
「ああ、うん……そ、そうだね」
「彼女もきっとわかってくれただろうから、もう何も言ってこないよ」
なぜか自信満々にいうロベールさんが気になったけれど、まぁ確かにそう頼んでたし、坂田さんもきっと来ないだろう。
意味がわかってるかはわかんないけど……。
「そっか。なら、よかった。じゃあ、旅行から帰ってきたら連絡するから」
「うん、姉さんも佑さんも気をつけて」
本当に気をつけて!
そう心の中で強く願いながら、姉さんたちと別れて俺とロベールさんは車に乗り込んだ。
車はあっという間に、ロベールさんの言っていた港区にある<ロードナイトホテル>に到着した。
何度か前は通ったことはあるけれど、まさかこのホテルに足を踏み入れる日がくるとは……そして泊まれる日が来るとは思っても見なかった。
俺たちの乗った白いリムジンはホテルの入り口につけられ、俺が先に出てロベールさんを支えながら車から降ろすとすぐに
「おかえりなさいませ」
と声がかけられた。
ロベールさんを支えていたから荷物を取り出すことができず、どうしようかと思っていると、ロベールさんはそれにすぐ気づいて玄関にいたベルボーイさんに荷物を部屋まで運ぶようにと頼んでくれた。
俺の荷物を運んでくれるのを見送りながら、ロベールさんとゆっくりホテルの中に入り専用エレベーターへと向かっていると、
『ロベールっ!!』
と突然の大声がロビー内に響き渡った途端、柱の影から俺たちに向かって何かが飛び出してきた。
『邪魔よ、あんたっ!』
と俺は強い力でドンッと何かに押しのけられ、何が起こったのかわからないまま気づけばホテルの床に倒れていた。
「――ったたっ!!」
ぶつけたお尻をさすりながら起き上がる俺の目に飛び込んできたのは、ブロンドの女性に抱きしめられ顔が重なり合っているロベールさんの姿だった。
「えっ――き、キス……してる??」
俺は目の前の光景が到底真実だと思えず、その場に立ち尽くしているとロベールさんとキスをしていた女性が俺に振り返って高らかに言い放った。
『ロベール、この子どもが証人よ。ああー、これで私があなたの婚約者、そして妻になるのね!
ふふっ。この私が<ロードナイトホテル>の会長夫人になるのよ!!!』
婚約者?
妻?
その言葉にもショックを受けたけれど、一番のショックはさっきのキス……。
ロベールさんが俺以外の人とキスをしているのを目にするのがこんなに辛いなんて……。
ああ、俺はもうこんなにもロベールさんを好きになっていたんだな。
俺はあまりのショックにその場から消えたい、その一心で玄関へと走り出した。
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