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突然の予定変更
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運転手さんが病院から借りてきてくれた車椅子にロベールさんを乗せ、俺が車椅子を押して病院に入った。
すでに連絡済みだったのか、すぐに看護師さんが駆け寄ってきてくれてそのまま診察室へと入ることになった。
「お願いします」
と声をかけながら診察室に入ると、机を向いて座っていた熊みたいにガタイの大きな先生が椅子ごとこちらに身体を向けた。
「ここに足置いて」
先生に指示された通りにロベールさんに伝えると、ロベールさんはゆっくりと台に足を置いた。
「へぇ。このテーピングは誰がやったの?」
「あ、僕がしました。とりあえず関節が動かないように固定しておいた方がいいと思って……」
「うん、よく出来ているよ。君はよくテーピングを巻くの?」
「あ、いえ。ちょうどこの前大学の授業で習ったばかりで」
「ああ、医学生なのか。それなら彼は君に出会えて幸運だったな。怪我をした時は最初の応急処置が大事だから」
現役の先生に褒められて俺は嬉しかった。
何より俺のやったことでロベールさんのためになったことが本当に嬉しかった。
「大丈夫だとは思うが念の為レントゲンを撮っておこう」
先生の言葉をロベールさんに伝えると、
『さっきは2人で何を話していたんだ?』
と尋ねられた。
確かに自分の知らない言葉で話されているのを隣でずっと聞いておくのは俺も嫌かも。
『テーピングの巻き方が上手だって褒められたんです』
『ああ、そういうことか。ヒロにあそこで出会えたことは本当に幸運だったな』
先生と同じことをいうロベールさんに思わず笑みが溢れた。
レントゲンの準備ができたと看護師さんに連れていかれるロベールさんを見送りながら診察室で待っている時に、そういえば結婚式の時にスマホの電源を切ったままだったと思い出した。
昨日はスマホを見る余裕もなかったもんなと思いながら、慌ててスマホを取り出して電源を入れると、
「うわっ!!」
その瞬間、途轍もないメッセージの数が次々に入ってきて思わず声を上げてしまった。
慌ててそのメッセージを開こうとしたが、開く前に今度はすかさず着信が入ってきた。
画面表示は姉さん。
うわっ、これはかなり心配してるな……。
相当怒られそうだと思いながらも取らなかった方が余計心配かけると思い、俺は急いで診察室から出て病院の外に向かった。
恐る恐る電話を取ると、
ーもしも――っわっ!
ー比呂?!! やっと繋がった!!! あんた、今、どこにいるの??
心配そうな姉さんの声が耳に飛び込んでくる。
ーあーっ、ごめん。昨日結婚式で電源切ってからつけるの忘れてて……
ーもう何やってるのよ! 何度かけても通じないし、メッセージ送っても既読にならないし、心配でコテージの管理人さんに朝、見に行ってもらったら誰もいないって言われたし……本当に心配したんだからね!!
ーごめんって。俺もいろいろあったんだよ。
ーいろいろって何よ?
ーえっ……いやー、その……
ロベールさんとのことを話していいものかどうか悩んだけれど、婚約者だと言われている以上姉さんに内緒にしておくわけにもいかない。
なんて言ったって姉さんは俺の親代わりなんだから。
ー驚かせると思うんだけど……
と前置きした上で、俺は昨日からのことを全て包み隠さず話したが、とりあえずロベールさんが<ロードナイトホテル>の御曹司だということだけ伏せておいた。
もし何かの騒ぎになった時にロベールさんだけは守りたいと思ったんだ。
姉さんは俺の話を黙って聞いてくれていたけれど、俺がその人の婚約者になったと話すと
ーそう、わかった。
と一言呟いた。
ーえっ? わかったって?
ー今から私も実家に帰るわ。そこで一緒に会いましょう。
ーえっ、でも姉さんたちは今日から新婚旅行に行くはずじゃ……。午後の飛行機って言ってたから、そろそろ空港行かないとやばいんじゃない?
ー何言ってんの! たった1人の弟に婚約者ができてその人と今日から一緒に暮らすなんて言われたら、挨拶しとかないといけないでしょうがっ!! 新婚旅行なんか二の次でしょ!!
ーで、でも……佑さんが……
ー大丈夫、私も一緒に行くよ。気になることもあるしね。
ーうわぁっ、なんでいきなり佑さんの声が?
ーごめんね、スピーカーで一緒に聞いてたんだ。
ーそうなんですね。あの、佑さん……気になることって??
ーふふっ。それは会った時にね。じゃあ、その人と気をつけて帰ってきて。
ーあ、はい。わかり、ました……。
結局佑さんが何に気になったのかはわからないまま、俺は診察室へと戻った。
『ヒロ、どこに行ってたんだ? いなかったから心配した』
『ごめんなさい、姉から連絡が来て外で話してたんです』
『そうか、お姉さんと。それでそんな暗い顔をしてどうしたんだ?』
『あの、車に戻ってからゆっくり話します。今は先に診察を……』
そういうとロベールさんは少し不服そうにしながらも診察を受けてくれた。
「結果からいうと、骨には異常なかったよ」
「本当ですか! よかった」
俺は喜びつつ、ロベールさんにも先生の言葉を告げるとロベールさんもホッとした表情をしていた。
「ただし、2週間は無理しないように。治ったと思ってすぐに歩き出すと、かえって酷くなるから」
「わかりました。安静ですね」
ロベールさんにも同じことを告げ、テーピングと湿布を処方してもらい病院を出た。
すでに連絡済みだったのか、すぐに看護師さんが駆け寄ってきてくれてそのまま診察室へと入ることになった。
「お願いします」
と声をかけながら診察室に入ると、机を向いて座っていた熊みたいにガタイの大きな先生が椅子ごとこちらに身体を向けた。
「ここに足置いて」
先生に指示された通りにロベールさんに伝えると、ロベールさんはゆっくりと台に足を置いた。
「へぇ。このテーピングは誰がやったの?」
「あ、僕がしました。とりあえず関節が動かないように固定しておいた方がいいと思って……」
「うん、よく出来ているよ。君はよくテーピングを巻くの?」
「あ、いえ。ちょうどこの前大学の授業で習ったばかりで」
「ああ、医学生なのか。それなら彼は君に出会えて幸運だったな。怪我をした時は最初の応急処置が大事だから」
現役の先生に褒められて俺は嬉しかった。
何より俺のやったことでロベールさんのためになったことが本当に嬉しかった。
「大丈夫だとは思うが念の為レントゲンを撮っておこう」
先生の言葉をロベールさんに伝えると、
『さっきは2人で何を話していたんだ?』
と尋ねられた。
確かに自分の知らない言葉で話されているのを隣でずっと聞いておくのは俺も嫌かも。
『テーピングの巻き方が上手だって褒められたんです』
『ああ、そういうことか。ヒロにあそこで出会えたことは本当に幸運だったな』
先生と同じことをいうロベールさんに思わず笑みが溢れた。
レントゲンの準備ができたと看護師さんに連れていかれるロベールさんを見送りながら診察室で待っている時に、そういえば結婚式の時にスマホの電源を切ったままだったと思い出した。
昨日はスマホを見る余裕もなかったもんなと思いながら、慌ててスマホを取り出して電源を入れると、
「うわっ!!」
その瞬間、途轍もないメッセージの数が次々に入ってきて思わず声を上げてしまった。
慌ててそのメッセージを開こうとしたが、開く前に今度はすかさず着信が入ってきた。
画面表示は姉さん。
うわっ、これはかなり心配してるな……。
相当怒られそうだと思いながらも取らなかった方が余計心配かけると思い、俺は急いで診察室から出て病院の外に向かった。
恐る恐る電話を取ると、
ーもしも――っわっ!
ー比呂?!! やっと繋がった!!! あんた、今、どこにいるの??
心配そうな姉さんの声が耳に飛び込んでくる。
ーあーっ、ごめん。昨日結婚式で電源切ってからつけるの忘れてて……
ーもう何やってるのよ! 何度かけても通じないし、メッセージ送っても既読にならないし、心配でコテージの管理人さんに朝、見に行ってもらったら誰もいないって言われたし……本当に心配したんだからね!!
ーごめんって。俺もいろいろあったんだよ。
ーいろいろって何よ?
ーえっ……いやー、その……
ロベールさんとのことを話していいものかどうか悩んだけれど、婚約者だと言われている以上姉さんに内緒にしておくわけにもいかない。
なんて言ったって姉さんは俺の親代わりなんだから。
ー驚かせると思うんだけど……
と前置きした上で、俺は昨日からのことを全て包み隠さず話したが、とりあえずロベールさんが<ロードナイトホテル>の御曹司だということだけ伏せておいた。
もし何かの騒ぎになった時にロベールさんだけは守りたいと思ったんだ。
姉さんは俺の話を黙って聞いてくれていたけれど、俺がその人の婚約者になったと話すと
ーそう、わかった。
と一言呟いた。
ーえっ? わかったって?
ー今から私も実家に帰るわ。そこで一緒に会いましょう。
ーえっ、でも姉さんたちは今日から新婚旅行に行くはずじゃ……。午後の飛行機って言ってたから、そろそろ空港行かないとやばいんじゃない?
ー何言ってんの! たった1人の弟に婚約者ができてその人と今日から一緒に暮らすなんて言われたら、挨拶しとかないといけないでしょうがっ!! 新婚旅行なんか二の次でしょ!!
ーで、でも……佑さんが……
ー大丈夫、私も一緒に行くよ。気になることもあるしね。
ーうわぁっ、なんでいきなり佑さんの声が?
ーごめんね、スピーカーで一緒に聞いてたんだ。
ーそうなんですね。あの、佑さん……気になることって??
ーふふっ。それは会った時にね。じゃあ、その人と気をつけて帰ってきて。
ーあ、はい。わかり、ました……。
結局佑さんが何に気になったのかはわからないまま、俺は診察室へと戻った。
『ヒロ、どこに行ってたんだ? いなかったから心配した』
『ごめんなさい、姉から連絡が来て外で話してたんです』
『そうか、お姉さんと。それでそんな暗い顔をしてどうしたんだ?』
『あの、車に戻ってからゆっくり話します。今は先に診察を……』
そういうとロベールさんは少し不服そうにしながらも診察を受けてくれた。
「結果からいうと、骨には異常なかったよ」
「本当ですか! よかった」
俺は喜びつつ、ロベールさんにも先生の言葉を告げるとロベールさんもホッとした表情をしていた。
「ただし、2週間は無理しないように。治ったと思ってすぐに歩き出すと、かえって酷くなるから」
「わかりました。安静ですね」
ロベールさんにも同じことを告げ、テーピングと湿布を処方してもらい病院を出た。
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