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番外編
マオさまの願い <後編>
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「ジョエル先生、僕は何をしたらいいですか?」
「そうですね、今から、病気や怪我の方を診察する時間になりますので、お薬を渡したり、手当の手伝いをお願いいたします」
「はいっ! わかりました」
張り切っておられるが、私は心配でならない。
私はしっかりとマオさまを見守っているとしよう。
「最初の患者さん、どうぞ」
ジョエル殿が声をかけると、診察室の扉が開き男性が入ってきた。
「今日はどうしましたか?」
「昨日から腹痛が続いているんです」
「少し見てみましょう。ああ、何か野草を食べましたか?」
「ああ、そういえば貰い物で食べた気が……」
「おそらく軽い毒にあたったのでしょう。解毒薬をお渡しします」
「ありがとうございます」
ジョエル殿と患者の男性の会話を聞きながら、マオさまが薬棚からある薬を取り出した。
「先生、お薬はこれですか?」
「えっ? あ、はい。そうです。よくお分かりになりましたね」
「田舎にいた時に同じ症状の方を見たことがあったので、その時のお薬と同じかと」
マオさまの言葉にジョエル殿は驚きを隠せない様子だ。
それもそうだろう。
薬棚には100以上の薬が置かれているのに、それをピンポイントで探し出されるとは……。
「これを一日に二回、朝と晩に飲んでください」
ジョエル殿が患者に説明しているが、患者の男性は美しいマオさまに目を奪われて、話を聞いているのかどうか……。
マオさまはそんな様子にも気づくことなく、
「さぁ、お薬をどうぞ」
と笑顔を向けられた。
「ぐぅ――!!」
当然のことだが、目の前でその天使のような笑顔を向けられた男性は一気に椅子から転げ落ちてしまった。
「――っ、だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ろうとするマオさまを制し、私は急いでその男性を起こした。
そして、マオさまからお薬をいただき、放心しているその男性を診察室の外へと押し出した。
心配そうに見つめるマオさまに、
「あ、あの野草を食べるとたまにああいう発作が出るのが特徴なのですよ」
とジョエル殿が説明していると、素直に納得されたようだ。
そんな発作はマオさまがいない限りは決してでるはずもなかろうが、今はそういうことにしておこう。
そこからも何人か患者を迎えるたびに、患者は椅子から崩れ落ちていくのを不思議そうにしながらも、マオさまは楽しそうに仕事をしておられた。
こちらにきてからずっとサミュエルさまのお部屋にいらっしゃるのだから、当然か。
サミュエルさまがご心配なさるお気持ちもとてもよくわかるが、マオさまにも少しは外部との関わりを持たせるのも必要なことなのかもしれないな。
「次で最後の患者さんですね」
入ってきたのは、まだ幼い子ども。
母親の腕に抱かれているが機嫌が悪そうだ。
「昨晩から熱が下がらなくて……食事もあまりしたがらないんです」
「ふむ、それは心配ですね」
ジョエル殿が診察をしようと手を伸ばすと、子どもは大声で泣き叫び始めた。
手のつけられないほどの暴れように、母親でさえどうしたらいいのかわからない様子だ。
こういう時は落ち着くまで待つしかないのが鉄則だ。
けれど、マオさまは暴れまくる子を必死に抱きしめる母親に近づき声をおかけになった。
「あの……この子の名前はなんというんですか?」
「えっ……あ、あの……チャーリー、です」
「ふふっ。チャーリー、可愛い名前ですね」
マオさまのほんわかとした笑顔に母親の顔に赤みがさす。
と同時にあれほど泣き叫んで暴れていた子がマオさまを見て急におとなしくなり始めた。
「チャーリー。少しだけ抱っこしてもいいかな?」
マオさまがその子の目の高さまでしゃがんで手を伸ばすと、その子は目に溜まっていた大粒の涙をポロポロと溢しながらも、きょとんとした顔でマオさまに向かって手を伸ばした。
「ふふっ。可愛い」
軽々とその子を抱きかかえたマオさまのお姿はまるで女神のよう。
「チャーリー。今から悪いところがないか、先生が診てくれるからね。一緒に頑張ろうか」
「うんっ!」
そう声をかけると、さっきまであれほど暴れて泣き叫んでいたのが嘘のようにおとなしくなって、静かにジョエル殿の診察を受け始めた。
もちろん、マオさまの腕の中で。
単なる風邪のようでジョエル殿は母親に薬を手渡した。
さぁ、これで全ての診察が終わりだ。
「チャーリー、偉かったね。いい子だったよ」
「ちゃーりー、いいこ」
「そう、いい子。おうちに帰っても頑張ってお薬飲もうね」
「ちゃーりー、いいこだから、のむ」
「ふふっ」
可愛らしいマオさまと幼子のやりとりに診察室に和やかな時間が流れる。
あまりにも距離が近すぎて少し心配ではあるが誰も声を発さず、そこから出ようともせず、ただ二人のやり取りを見守っていた。
「チャーリー、そろそろお母さんのところに行こうね」
「おねえちゃんも、いっしょ。ちゃーりーの、およめさんに、してあげる」
ああ、やはりか……。
恐れていた通り、いい子だった幼子はどうやらマオさまに心を奪われてしまったようだ。
だが、到底そんなことは受け入れられるはずもない。
「あの、ごめんね、チャーリー。もう結婚しているんだ」
「いやぁーっ、ちゃーりーの、およめさんにするぅーっ!」
いい子だったはずの幼子は、マオさまに断られた途端大声で泣き始めた。
「サイラスさん……どうしよう」
かわいそうだが仕方がない。
私が急いで引き離そうとしたその時、
「悪いがマオは私の妃だ。諦めてもらおうか」
と低い声が響き渡った。
「えっ?」
「あっ!」
「サムっ!」
「サミュエルさまっ!」
「えっ?? こ、国王さま――っ!!」
サミュエルさまの突然のご登場に、私も含めて全員が驚く中、サミュエルさまだけはただ冷静にマオさまの腕から幼子をさっと引き離し、母親の腕に渡した。
顔面蒼白な母親と、なにが起こっているのかわかっていない幼子の前に、サミュエルさまはマオさまをさっと抱きかかえた。
「サムっ、どうしてここに?」
「マオとサイラスが何かを隠しているのはわかっていたからしばらく様子を見ていたが、もういい加減いいだろうと思って迎えにきたのだ。サイラスっ! 私に内緒でマオを連れ出すとはどういうことだ? ジョエル殿もここでマオを働かせるとはどういうことなんだ?」
「「申し訳ございません」」
まさか全てお見通しであったとは……。
私もジョエル殿も頭を下げるしかない。
「とりあえず話は後でじっくり聞こう。この子の診察は終わったのか?」
サミュエルさまはまだ青褪めたままの母親に向かって声をかけた。
「は、はい。お、終わりました」
「ならば、帰るが良い。今日のことは誰にも話すでないぞ」
「は、はい。し、失礼いたします」
「いやぁーっ、おねえちゃぁ~んっ!」
母親は泣き叫ぶ幼子を連れ、急いで診察室から出て行った。
一気に静寂に包まれた中、マオさまが口を開いた。
「サム、違うの。僕がお願いしたんだ。だからサイラスさんとジョエルさんは悪くないんだよ」
「マオ……私が心配するのをわかっていて頼んだのか?」
「ごめんなさい……でも、サムのためにどうしても働きたかったんだ」
「私のために?」
「僕……いつもサムにいろんなものを与えてもらっているから、僕もサムに何か贈り物がしたかったんだ。でもお金がなくて……それで……」
「それでここで働かせてもらうことにしたのか?」
「内緒で贈り物を買って驚かせたくて……でも、心配かけてごめんなさい」
「そういうことだったか……マオの気持ちはとても嬉しいよ。ありがとう」
「本当?」
「ああ。だが、今日のことでわかったと思うが、マオはあんな幼子さえ魅了させるほど美しいのだ。私のいない場所で求婚されるなど、心配でなにも手につかなくなる。私はマオがそばにいてくれるだけでたくさんの贈り物をもらっているのだ。わかるだろう?」
マオさまの存在がサミュエルさまの全ての原動力になっていることは事実だ。
「僕……贈り物もだけど、サムの役にも立ちたかったんだ」
「そうか……。マオ……ならば、これからは私と共に働いてもらおうか」
「えっ? サムと一緒に?」
「ああ、今までは心配で外にも出さなかったが、マオがそれほど働きたいのなら私も一緒ならどこでも働いてもらえる。小さな子の相手があれほど上手なら、孤児院に慰問してもらうのもいいかもしれない」
「サム……っ!」
「だが、求婚されないようにだけ気をつけてくれ。マオは私だけの妃なのだからな」
「サムっ! ありがとう! 大好きっ!!」
マオさまはよほど嬉しかったのか、腕に抱かれたままサミュエルさまの唇にチュッと口づけをなさった。
「――っ!! ああっ! マオっ!!」
その瞬間、サミュエルさまの顔つきが一瞬で変わったのが私にもジョエル殿にもわかった。
「もう仕事は終わりだな? マオ、城に帰るぞ!」
「えっ? サムっ、どうしたの?」
きっと今日はこのままお部屋から出てくることはないだろう。
だが、原因を作ったのは我々だ。
今日はどれだけ激しくても止めることはできない。
「サイラス殿、こちらのお薬をお持ちください」
「これは?」
「マオさまの疲労回復に効果のあるお薬です。これを飲ませないとおそらく明日はベッドから動けなくなると思われますので……サミュエルさまに途中で必ずお飲ませになるようにとお伝えください」
「はい。ありがとうございます。
「それからこれは今日働いていただいた分の給金です。マオさまにお渡しください」
「いえ、それはご迷惑をおかけしましたので、こちらからお渡しいたします」
「いいえ、マオさまの働き分のお礼ですのでお納めください」
「ありがとうございます。これはしっかりとマオさまにお渡しいたします」
マオさまは初めての給金でなにをお買いになるのだろうか。
いずれにしてもこれをお使いになるのはしばらく後になりそうだ。
「そうですね、今から、病気や怪我の方を診察する時間になりますので、お薬を渡したり、手当の手伝いをお願いいたします」
「はいっ! わかりました」
張り切っておられるが、私は心配でならない。
私はしっかりとマオさまを見守っているとしよう。
「最初の患者さん、どうぞ」
ジョエル殿が声をかけると、診察室の扉が開き男性が入ってきた。
「今日はどうしましたか?」
「昨日から腹痛が続いているんです」
「少し見てみましょう。ああ、何か野草を食べましたか?」
「ああ、そういえば貰い物で食べた気が……」
「おそらく軽い毒にあたったのでしょう。解毒薬をお渡しします」
「ありがとうございます」
ジョエル殿と患者の男性の会話を聞きながら、マオさまが薬棚からある薬を取り出した。
「先生、お薬はこれですか?」
「えっ? あ、はい。そうです。よくお分かりになりましたね」
「田舎にいた時に同じ症状の方を見たことがあったので、その時のお薬と同じかと」
マオさまの言葉にジョエル殿は驚きを隠せない様子だ。
それもそうだろう。
薬棚には100以上の薬が置かれているのに、それをピンポイントで探し出されるとは……。
「これを一日に二回、朝と晩に飲んでください」
ジョエル殿が患者に説明しているが、患者の男性は美しいマオさまに目を奪われて、話を聞いているのかどうか……。
マオさまはそんな様子にも気づくことなく、
「さぁ、お薬をどうぞ」
と笑顔を向けられた。
「ぐぅ――!!」
当然のことだが、目の前でその天使のような笑顔を向けられた男性は一気に椅子から転げ落ちてしまった。
「――っ、だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ろうとするマオさまを制し、私は急いでその男性を起こした。
そして、マオさまからお薬をいただき、放心しているその男性を診察室の外へと押し出した。
心配そうに見つめるマオさまに、
「あ、あの野草を食べるとたまにああいう発作が出るのが特徴なのですよ」
とジョエル殿が説明していると、素直に納得されたようだ。
そんな発作はマオさまがいない限りは決してでるはずもなかろうが、今はそういうことにしておこう。
そこからも何人か患者を迎えるたびに、患者は椅子から崩れ落ちていくのを不思議そうにしながらも、マオさまは楽しそうに仕事をしておられた。
こちらにきてからずっとサミュエルさまのお部屋にいらっしゃるのだから、当然か。
サミュエルさまがご心配なさるお気持ちもとてもよくわかるが、マオさまにも少しは外部との関わりを持たせるのも必要なことなのかもしれないな。
「次で最後の患者さんですね」
入ってきたのは、まだ幼い子ども。
母親の腕に抱かれているが機嫌が悪そうだ。
「昨晩から熱が下がらなくて……食事もあまりしたがらないんです」
「ふむ、それは心配ですね」
ジョエル殿が診察をしようと手を伸ばすと、子どもは大声で泣き叫び始めた。
手のつけられないほどの暴れように、母親でさえどうしたらいいのかわからない様子だ。
こういう時は落ち着くまで待つしかないのが鉄則だ。
けれど、マオさまは暴れまくる子を必死に抱きしめる母親に近づき声をおかけになった。
「あの……この子の名前はなんというんですか?」
「えっ……あ、あの……チャーリー、です」
「ふふっ。チャーリー、可愛い名前ですね」
マオさまのほんわかとした笑顔に母親の顔に赤みがさす。
と同時にあれほど泣き叫んで暴れていた子がマオさまを見て急におとなしくなり始めた。
「チャーリー。少しだけ抱っこしてもいいかな?」
マオさまがその子の目の高さまでしゃがんで手を伸ばすと、その子は目に溜まっていた大粒の涙をポロポロと溢しながらも、きょとんとした顔でマオさまに向かって手を伸ばした。
「ふふっ。可愛い」
軽々とその子を抱きかかえたマオさまのお姿はまるで女神のよう。
「チャーリー。今から悪いところがないか、先生が診てくれるからね。一緒に頑張ろうか」
「うんっ!」
そう声をかけると、さっきまであれほど暴れて泣き叫んでいたのが嘘のようにおとなしくなって、静かにジョエル殿の診察を受け始めた。
もちろん、マオさまの腕の中で。
単なる風邪のようでジョエル殿は母親に薬を手渡した。
さぁ、これで全ての診察が終わりだ。
「チャーリー、偉かったね。いい子だったよ」
「ちゃーりー、いいこ」
「そう、いい子。おうちに帰っても頑張ってお薬飲もうね」
「ちゃーりー、いいこだから、のむ」
「ふふっ」
可愛らしいマオさまと幼子のやりとりに診察室に和やかな時間が流れる。
あまりにも距離が近すぎて少し心配ではあるが誰も声を発さず、そこから出ようともせず、ただ二人のやり取りを見守っていた。
「チャーリー、そろそろお母さんのところに行こうね」
「おねえちゃんも、いっしょ。ちゃーりーの、およめさんに、してあげる」
ああ、やはりか……。
恐れていた通り、いい子だった幼子はどうやらマオさまに心を奪われてしまったようだ。
だが、到底そんなことは受け入れられるはずもない。
「あの、ごめんね、チャーリー。もう結婚しているんだ」
「いやぁーっ、ちゃーりーの、およめさんにするぅーっ!」
いい子だったはずの幼子は、マオさまに断られた途端大声で泣き始めた。
「サイラスさん……どうしよう」
かわいそうだが仕方がない。
私が急いで引き離そうとしたその時、
「悪いがマオは私の妃だ。諦めてもらおうか」
と低い声が響き渡った。
「えっ?」
「あっ!」
「サムっ!」
「サミュエルさまっ!」
「えっ?? こ、国王さま――っ!!」
サミュエルさまの突然のご登場に、私も含めて全員が驚く中、サミュエルさまだけはただ冷静にマオさまの腕から幼子をさっと引き離し、母親の腕に渡した。
顔面蒼白な母親と、なにが起こっているのかわかっていない幼子の前に、サミュエルさまはマオさまをさっと抱きかかえた。
「サムっ、どうしてここに?」
「マオとサイラスが何かを隠しているのはわかっていたからしばらく様子を見ていたが、もういい加減いいだろうと思って迎えにきたのだ。サイラスっ! 私に内緒でマオを連れ出すとはどういうことだ? ジョエル殿もここでマオを働かせるとはどういうことなんだ?」
「「申し訳ございません」」
まさか全てお見通しであったとは……。
私もジョエル殿も頭を下げるしかない。
「とりあえず話は後でじっくり聞こう。この子の診察は終わったのか?」
サミュエルさまはまだ青褪めたままの母親に向かって声をかけた。
「は、はい。お、終わりました」
「ならば、帰るが良い。今日のことは誰にも話すでないぞ」
「は、はい。し、失礼いたします」
「いやぁーっ、おねえちゃぁ~んっ!」
母親は泣き叫ぶ幼子を連れ、急いで診察室から出て行った。
一気に静寂に包まれた中、マオさまが口を開いた。
「サム、違うの。僕がお願いしたんだ。だからサイラスさんとジョエルさんは悪くないんだよ」
「マオ……私が心配するのをわかっていて頼んだのか?」
「ごめんなさい……でも、サムのためにどうしても働きたかったんだ」
「私のために?」
「僕……いつもサムにいろんなものを与えてもらっているから、僕もサムに何か贈り物がしたかったんだ。でもお金がなくて……それで……」
「それでここで働かせてもらうことにしたのか?」
「内緒で贈り物を買って驚かせたくて……でも、心配かけてごめんなさい」
「そういうことだったか……マオの気持ちはとても嬉しいよ。ありがとう」
「本当?」
「ああ。だが、今日のことでわかったと思うが、マオはあんな幼子さえ魅了させるほど美しいのだ。私のいない場所で求婚されるなど、心配でなにも手につかなくなる。私はマオがそばにいてくれるだけでたくさんの贈り物をもらっているのだ。わかるだろう?」
マオさまの存在がサミュエルさまの全ての原動力になっていることは事実だ。
「僕……贈り物もだけど、サムの役にも立ちたかったんだ」
「そうか……。マオ……ならば、これからは私と共に働いてもらおうか」
「えっ? サムと一緒に?」
「ああ、今までは心配で外にも出さなかったが、マオがそれほど働きたいのなら私も一緒ならどこでも働いてもらえる。小さな子の相手があれほど上手なら、孤児院に慰問してもらうのもいいかもしれない」
「サム……っ!」
「だが、求婚されないようにだけ気をつけてくれ。マオは私だけの妃なのだからな」
「サムっ! ありがとう! 大好きっ!!」
マオさまはよほど嬉しかったのか、腕に抱かれたままサミュエルさまの唇にチュッと口づけをなさった。
「――っ!! ああっ! マオっ!!」
その瞬間、サミュエルさまの顔つきが一瞬で変わったのが私にもジョエル殿にもわかった。
「もう仕事は終わりだな? マオ、城に帰るぞ!」
「えっ? サムっ、どうしたの?」
きっと今日はこのままお部屋から出てくることはないだろう。
だが、原因を作ったのは我々だ。
今日はどれだけ激しくても止めることはできない。
「サイラス殿、こちらのお薬をお持ちください」
「これは?」
「マオさまの疲労回復に効果のあるお薬です。これを飲ませないとおそらく明日はベッドから動けなくなると思われますので……サミュエルさまに途中で必ずお飲ませになるようにとお伝えください」
「はい。ありがとうございます。
「それからこれは今日働いていただいた分の給金です。マオさまにお渡しください」
「いえ、それはご迷惑をおかけしましたので、こちらからお渡しいたします」
「いいえ、マオさまの働き分のお礼ですのでお納めください」
「ありがとうございます。これはしっかりとマオさまにお渡しいたします」
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