異世界で陵辱され自ら死を選んだ僕が生まれ変わって国王さまに激甘に溺愛されました

波木真帆

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番外編

マオさまの願い  <前編>

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他の異世界カップルでリクエストいただいたお話ですが、ちょっと狭量すぎて許可しそうになかったので(笑)
こちらのカップルで書いてみました。
前後編になりますが楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<sideサイラス>


「サイラスさん……あの少し相談に乗って欲しいことがあるんですけど……」

「――っ!!!」

サミュエルさまが午後の仕事に行かれてから、しばらくしてマオさまの部屋のベルが鳴り、急いで駆けつけた私にマオさまはそう仰った。

ほんのり頬を染め、上目遣いでそんなことを仰られると、その気がなくとも一瞬ドキリとしてしまうのは男の性だろうか。
こんな思いを抱いただけでもサミュエルさまに知られたらとんでもないことになってしまう。

私は急いで煩悩を振り払い、冷静を装った。

「私めにマオさまがご相談とは、一体どのようなことでございましょう?」

「あの……僕、サムに……贈り物がしたいんです」

「えっ? マオさまがサミュエルさまに贈り物、でございますか?」

「はい。サムはいつでも僕のためになんでもしてくれて……もったいないくらいたくさんの衣装も作ってくれて……サムにしてもらうばかりで申し訳ないなって思うんです。だから、僕もサムに何か贈り物ができればと思うんですけど……その、僕……お金を持っていないので、何も買えなくて……だから、どこか働かせてもらえるような場所をサイラスさんに紹介してもらいたいなと思って……」

えっ……今、マオさまはなんと仰った?
サミュエルさまのために贈り物がしたい……そこまではいい。
だが、お金がないからどこかで働きたいから紹介してほしい?

いやいや、何を仰っているのでしょう。
サミュエルさまのご伴侶で、次期王妃となられるマオさまがどこかでお働きになる?

そんなことサミュエルさまがお知りになったらどうなることか……。

絶対にダメだとおっしゃるのはわかっている。
だが、縋るような目を向けてくるマオさまに即座に無理ですとは言えそうにない。

「……な、なるほど。マオさまがどれほどサミュエルさまをお思いになっていらっしゃるか、この爺にもよくわかりました。どこかご紹介できますところがありますかどうか、少しお時間をいただいても宜しゅうございますか?」

「――っ!! はいっ! サイラスさんっ! ありがとうございます!!」

「くっ……」

こんなにもキラキラとした目でお礼を言われてしまうと、どうにかして差し上げたいと思うが……さて、どうしたらいいだろう。
ぬか喜びにさせてしまっただけでは申し訳がない。


「はぁーっ、どうすれば良いのだ……」

「サイラス殿、何か困り事ですかな?」

「ジョエル殿! どうしてこちらに?」

「いえ、近くを通りかかったもので、マオさまのご様子をお伺いに参ったのですよ。先にサイラス殿にご挨拶をしようと使用人に尋ねたら、庭にいらっしゃるというもので足を運びました」

「それは御足労をおかけして申し訳ございません」

「いえいえ、私が勝手に参っただけですから。それよりも何かご心配なことでもおありでしょうか?」

マオさまのことのお身体のことは主治医であるジョエル殿が一番ご存じのはず。
ジョエル殿がマオさまの体調を慮って外でお働きになるのをお止めになれば、マオさまも諦めなさるかもしれない。
そんな微かな希望を持って、私はジョエル殿に相談することにした。

「――というわけで、マオさまが働いたお金でサミュエルさまに贈り物がしたいと仰っておいでなのです。ですがサミュエルさまがそのようなことをお許しになるはずがございません。万が一お許しになったとしても、マオさまの働き場所に適したところが見つかるかどうか……」

「なるほど……そういうことなら、マオさまにぴったりのいい働き口を私が紹介できますよ」

「えっ?」

ジョエルさまにはマオさまのお考えを止めていただくつもりだったのに、まさか働き口を紹介されるとは思いもしなかった。

「マオさまもサミュエルさまのご伴侶となり、将来の王妃として、この国のために尽力するお方なのですから、外で働く経験はきっと何かの役に立つでしょう。決して無駄にはなりませんよ」

「それはそうでしょうが、でもどちらなのです?」

「ふふっ。私の病院です。そちらで三時間だけ私の手伝いをしていただくというのはどうでしょう? 安心で安全な場所ですし、お優しいマオさまにはうってつけの場所だと思いますが」

「ジョエルさまの病院……それは素晴らしいお考えでございます」

「では、早速明日、午後にでもサミュエルさまが執務に入られたら、私の病院にお連れいただけますか?」

「承知しました。何卒よろしくお願いいたします」

ジョエル殿のおかげでマオさまの思いを無にすることなく、そしてもしサミュエルさまに知られてもジョエルさまの病院でのお手伝いならご納得いただけるはずだ。

私は喜び勇んでマオさまにお伝えに行った。


翌日、午後の執務にサミュエルさまをお見送りになってすぐに、マオさまをこっそりと馬車にのせジョエル殿の病院にお連れした。

「ジョエル先生」

「よくいらっしゃいました。今日はお手伝いをよろしくお願いいたします」

「はい。こちらこそ働かせていただけるなんてとっても嬉しいです。頑張りますのでよろしくお願いします」

「マオさま……」

ジョエル殿はマオさまの丁寧なご挨拶にたいそう驚かれているご様子だ。
それはそうだろう。
なんといってもマオさまは次期王妃となられるお方なのだから。

ジョエル殿は驚きつつも用意なさっていた着替えをマオさまに手渡した。

「マオさま、こちらが仕事服になりますのでお召しになってください」

「はい! わかりました」

「――っ!!! あ、あちらに更衣室がございますのでそちらへどうぞ」

「あ、すみません。ありがとうございます」

その場で服を脱ぎ出そうとされて、驚きつつも慌てて更衣室にお連れする。
マオさまはどうも危なっかしいところがおありになる。

マオさまの肌を見たとなれば、サミュエルさまがどれほどお怒りになるか想像するだけでも恐ろしい。

それにしてもいつも冷静なジョエル殿があんなにも驚かれたのは初めて見たかもしれないな。


「あの……着替えてきました」

「――っ!!」

更衣室から出てきたマオさまに私もジョエル殿も驚きを隠せなかった。

決して肌を見せないように手首からくるぶしまで全てを隠した衣服に、白衣を羽織った、ただそれだけの服なのに、なぜこんなにも美しいのだろう。

普通なら野暮ったくなるだけの衣装なのに……マオさまがお召しになるだけでこんなにも印象が変わってしまうのか……。
サミュエルさまがそばにお置きになって、隠しておきたいと仰った気持ちが今ならよくわかる。

病人や怪我人としか接さないとはいえ、マオさまに不埒な考えを持つようなものが出ないようにそばでしっかりと見張っていなければな。

今はただ、無事にお手伝いを終えられることを願うだけだ。
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