異世界で陵辱され自ら死を選んだ僕が生まれ変わって国王さまに激甘に溺愛されました

波木真帆

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番外編

緊急事態

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たくさんの方に読んでいただきありがとうございます!
おまけのお話を書きましたので、楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *


<sideサイラス>


「サイラスっ! サイラスっ!!」

今までに聞いたことのないほどの大きな音で鳴らされたベルの音に慌ててサミュエルさまの自室へと向かうとサミュエルさまが部屋の中央で青褪めたお顔をしながら茫然と立っておられた。

「サミュエルさまっ! 一体どうなさったのです? もしや、ご伴侶さまに何か?」

「ああっ! 私はとんでもないことをしてしまった!! 神にどれだけ詫びれば良いのかわからぬ」

「サミュエルさま、落ち着いてください! 一体どうなさったのです?」

「マオが、マオが……っ! 高熱を出して苦しんでいるのだ!!」

「なんと――っ!!」



ご伴侶さまをお連れになってサミュエルさまが無事に戻られたのが半日ほど前。
それからすぐにご伴侶さまと自室に閉じこもられ、なかなかベルが鳴らされないことにヤキモキしていたが、つい1時間ほど前にようやく部屋のベルが鳴らされ、寝室の片付けを終えたのだった。

その時、ご伴侶さまの姿はもちろんサミュエルさまの姿もなく、お二人で寝室の隣にあるお風呂に入っていらした。
サミュエルさまの声に混じって、可愛らしい声がごく僅かに私の耳に届いていたから、その時まではお元気だったに違いない。

それなのに、こんなにすぐに体調を崩されるとはサミュエルさまでなくとも心配してしまうだろう。

しかも高熱を出しておられるというのなら、すぐにジョエル殿をお呼びした方がいい。

サミュエルさまはご伴侶さまの緊急事態に冷静な判断ができないでおられるようだ。
ここは私がしっかりしなければ!

「サミュエルさま、落ち着いてください。すぐにジョエル殿をお呼びします。サミュエルさまはご伴侶さまのおそばについてて差し上げてください。目を覚まされた時、サミュエルさまがいらっしゃらないと不安になってしまわれますよ」

「――っ、そうだな。サイラス、あとは頼むぞ」

サミュエルさまはそういうが早いかすぐにご伴侶さまのお眠りになっている寝室へと駆けていった。

急いでスウェンソン家に使者を送り、程なくジョエルさまが登城された。

「ご伴侶さまが体調をお崩しになられたとか?」

「そうなのです。サミュエルさまがかなり心配しておいでで……それでジョエル殿をお呼びした次第でございまして。すぐに診察をお願いいたします」

「サイラス殿。ご伴侶さまが体調を崩された理由は私には大体わかっております」

「えっ? ジョエル殿はお分かりなのですか? さすが、スウェンソン家のお方ですね」

「いえいえ、サイラス殿もご伴侶さまをしっかりとご覧になったらお分かりになると思いますよ。ご伴侶さまにはお会いになられましたか?」

「い、いえ。サミュエルさまがお城にお連れになった際に一度お目にかかりましたが、すぐにサミュエルさまがお身体でお隠しになられたもので……随分とお小さい方だと思ったくらいで特には……」

「やはりお小さいお方でしたか……。神の仰った通りです」

ジョエル殿が神のお告げをお受けになる方だとは聞いていたが……本当だったのだな。
さすが、スウェンソン家のお方だ。

「あの、神さまはなんと仰ったのでございますか?」

「それは殿下とお会いしてからお話しいたしましょう。サイラス殿にも一緒にいていただきますよ」

「私も伺ってもよろしいのですか?」

「はい。これからはサイラス殿にしっかりと見張っていただかないといけませんから……」

「見張る? それはどういう?」

聞き返そうと思ったが、ジョエル殿は笑顔を向けるだけでそのままスタスタとサミュエルさまの自室へと向かわれた。
私は後を追うように急いで部屋へと向かった。



寝室の扉を叩くと、中から入れと声が聞こえた。

ジョエル殿と共に中に入ると、先ほどの青褪めた表情のままサミュエルさまがベッドに横たわるご伴侶さまの手を握り、額の汗に優しくタオルをあてがっていた。

ああ、サミュエルさまがこんなにも心配そうな様子で人のお世話をされるとは……。
そんな姿を見られる日が来るとは思っても見なかった。

本当に生涯の伴侶という存在は言葉ではいい表せないほどものすごい存在のようだ。

「殿下。診察をさせていただいてもよろしゅうございますか?」

「ああ、頼む」

そう言いながらも、サミュエルさまはご伴侶さまから離れようとしない。
仕方がないのでジョエル殿は反対側にまわり、診察を始めた。

しばらくして、全ての診察が終わったようだ。

「ジョエル、それでどうなんだ? マオがどうして熱を出したかわかったのか?」

「はい。理由は明白です」

「なに? 一体なんだ?」

「理由は殿下……あなたさまです」

「なんだと? それはどういうことだ?」

「お伺いしますが、殿下はご伴侶さまと何度身体をお繋ぎになったのです?」

「えっ? そ、れは……二度、だったか……いや、三度だったか……」

サミュエルさまの目が明らかに泳いでいる。
これは確実に嘘をついておられるな。

「殿下、嘘をつかれても私には何度もわかるのですよ」

「――っ! い、いや。嘘をつく気はなかったが……正直な回数は覚えていないというのが本当で……」

「でしょうね。ご伴侶さまがお熱を出されたのはそのせいです」

「なに? それは本当か?」

「考えても見てください。ご伴侶さまのお身体は殿下に比べると大変小さくていらっしゃるのです。その身体で何度も何度も殿下の逞しいものを受けられるのですよ。体調を崩して当然です。それにサミュエルさまはお分かりかと存じますが、ご伴侶さまはあのイライジャ陛下に虐げられた異世界のお方の生まれ変わりでございます。異世界のお方は元々お身体が弱くていらっしゃるのですよ。ご伴侶さまは当時の記憶はお忘れになっていらっしゃいますが、お身体に受けた記憶は残っているかもしれません」

「な――っ、そ、れは……」

「これからは多くても三度で終わらせるようにして下さい。そして、毎日はご伴侶さまのお身体に負担をかけますので週に三度までにして差し上げてください」

「くっ――! わ、わかった……。なんとか自制してみせる」

サミュエルさまは苦しげな表情でそう仰っていたが、今までずっと淡白だったサミュエルさまがそれほどまでに激しく身体をお繋ぎになるとは……本当に驚きを隠せない。
やはりこれも生涯の伴侶がお相手だからか……。

「サイラス殿、殿下が暴走されないようにしっかりと見張ってくださいね。ご伴侶さまのためにも。それがひいてはこの国のためになるのですから……」

「承知いたしました。このサイラスにお任せください!!」

私がドンと胸を叩いてジョエル殿に宣言するのを、サミュエルさまは苦虫を噛み潰したような表情で見つめていた。


それにしても美しいご伴侶さま。
いつご紹介いただけるだろうかと思っていたが、とりあえずは熱が下がるまではお預けのようだ。

サミュエルさまの国王就任とお二人の結婚式の準備は粛々と進めている。
ああ、当日が今から待ち遠しくてたまらない。
とりあえず今は、目を覚まされるのを楽しみに待っている。
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