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番外編
お兄ちゃんたちとの対面 7
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「透也にも見せて俺が年上に見えるってことがわかったし、もう着替えてくるよ」
メイクして自分が高校生に見えないことに満足したのか、さっさと着替えに戻ろうとするお兄ちゃんの言葉に透也さんが一瞬だけがっかりした表情を見せたことに私は気づいてしまった。
せっかく着替えたのにもったいないもんね。
それにこの姿なら外を出歩いたって気にする必要なんてない。
だって現に私と姉妹だと言ってもわからないくらい可愛いんだから。
お兄ちゃんはずっと自分がゲイだということを隠していたせいか、外で触れ合うことに抵抗があるみたい。
アメリカではそういう人たちも多くいるってわかったから手を繋いだりしているみたいだけど、日本じゃまだ難しいみたいだ。だからこそ、メイクをしたのよね。
お兄ちゃんはただ単純に私より年上に見えるかどうかが気になっていたみたいだったけれど、それでここまで完璧にはしない。
目的も果たしたし、これ以上女装している意味がないというお兄ちゃんに
「せっかくだからこの格好で夜ご飯食べに行こうよ」
と誘った。
案の定、バレるのが嫌だからと速攻で断られたけれど、私にはとっておきの言葉がある。
「大丈夫だって。ほら、お兄ちゃんさっき言ってたじゃない。日本でも透也さんとくっついて歩きたいって」
お兄ちゃんが言っていたのを透也さんにバラしてあげた。
「ちょっ――! 千鶴っ! それはいうなって!」
焦ってそう言ったら本当に言ったって自分からバラしたようなものだけど、そこがお兄ちゃんの可愛いところだ。
透也さんに本当ですかと聞かれて、言葉に詰まっていたけれど、
「お兄ちゃん、素直になったほうがいいよ」
というと諦めたのか、素直に認めた。
「――っ、わかったよ。本当だよ。千鶴と長瀬さんが羨ましいなって思ってた」
「大智……っ、そう言ってくれて嬉しいですよ。でも俺は大智が普段の格好でも気にしませんよ」
透也さんが嬉しそうにしながら、それでも普段のお兄ちゃんにも配慮しながら告げると、お兄ちゃんは自分が気にしすぎてるだけだと伝えていた。
これで少しは気にしなくなればいい。
日本だってどこでだって、二人には自然体でいて欲しいもん。
というわけでこれから出かけることに話は決まった。
とりあえず、最初の目的地は靴屋さん。
流石にスリッパのままじゃどこにも行けない。
「それならこの前千鶴さんの靴を買ったところに行きましょう。あそこならたくさん種類がありますよ」
理人さんに連れて行ってもらった靴屋さん。
素敵な靴がいっぱいで悩んでしまったけれど、理人さんがすぐに似合う靴を選んでくれて楽しかった。
きっとあそこなら、透也さんがお兄ちゃんの靴を選んでくれるかな。
ふふっ、楽しみ。
私もお兄ちゃんに合わせて外出着に着替えて、理人さんの車に乗り込むと、お兄ちゃんは透也さんに抱きかかえられて後部座席に乗り込んだ。
お兄ちゃんも華奢とはいえ、男性としてそれなりに体重もあるだろうに、軽々と抱きかかえている透也さんってすごいな……。
理人さんもすごく鍛えた身体をしているけれど、きっと透也さんも鍛えているんだろうな。
お兄ちゃんは体質であまり筋肉がつかないって前に言ってたから羨ましく思っているだろうな、きっと。
後部座席で楽しそうにおしゃべりをしている二人の姿を微笑ましく思っている間にあっという間に目的の靴屋さんに到着した。
「えっ? ここ?」
お兄ちゃんの顔がちょっと引き攣っているのがわかる。
うん、そうなるのわかる気がする。
お兄ちゃんが買いに行っていたのは、もっとフランクに入れるお店ばっかりだったもんね。
私は仕事を始めてから、高級だけど歩きやすくて疲れない、<走れるパンプス>というものを知って買いに行くようになったから、高級な靴屋さんの存在は知ってるんだよね。
本当にびっくりするくらいお値段はするけれど、足のためを思えば自分の足に合った靴を履くのって重要なんだって気づいた。一度履いたらこれ以外履けなくなるくらい、快適なんだ。
私が買いに行っていた靴屋さんとここは違うけれど、ここの靴の方が私の足により合っていて履きやすい。
全部理人さんが買ってくれるからお値段はどれくらいか知らないけれど、甘えて欲しいと言われているから素直に甘えさせてもらっている。本当に優しい人だ。
双子だけあって、お兄ちゃんの足もきっとここの靴に合うだろうと思う。
「あの……俺、車の中で待ってるってわけにはいかないよな?」
「お兄ちゃんの靴買いに来たんだからそれは無理でしょ。お兄ちゃん、今のサイズはわからないでしょう?」
あまりにも高級な佇まいに恐れ慄いているみたいだけど、靴はやっぱり自分で履いてみないとね。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。ここのお店、私も初めて連れて行ってもらった時は緊張したけど、靴の種類は多いし、気にいるものが必ず見つかるよ」
安心させるためにそう言ったけれど、耳に入っていないみたい。
緊張しているのがよくわかる。
大丈夫かなと心配になったけれど、透也さんがそばにいるから大丈夫かな。
理人さんと二人で先に車を降りると、お兄ちゃんは透也さんにお姫さま抱っこをされながら降りて来た。
めちゃくちゃみられているけど、透也さんは嬉しそうだな。
メイクして自分が高校生に見えないことに満足したのか、さっさと着替えに戻ろうとするお兄ちゃんの言葉に透也さんが一瞬だけがっかりした表情を見せたことに私は気づいてしまった。
せっかく着替えたのにもったいないもんね。
それにこの姿なら外を出歩いたって気にする必要なんてない。
だって現に私と姉妹だと言ってもわからないくらい可愛いんだから。
お兄ちゃんはずっと自分がゲイだということを隠していたせいか、外で触れ合うことに抵抗があるみたい。
アメリカではそういう人たちも多くいるってわかったから手を繋いだりしているみたいだけど、日本じゃまだ難しいみたいだ。だからこそ、メイクをしたのよね。
お兄ちゃんはただ単純に私より年上に見えるかどうかが気になっていたみたいだったけれど、それでここまで完璧にはしない。
目的も果たしたし、これ以上女装している意味がないというお兄ちゃんに
「せっかくだからこの格好で夜ご飯食べに行こうよ」
と誘った。
案の定、バレるのが嫌だからと速攻で断られたけれど、私にはとっておきの言葉がある。
「大丈夫だって。ほら、お兄ちゃんさっき言ってたじゃない。日本でも透也さんとくっついて歩きたいって」
お兄ちゃんが言っていたのを透也さんにバラしてあげた。
「ちょっ――! 千鶴っ! それはいうなって!」
焦ってそう言ったら本当に言ったって自分からバラしたようなものだけど、そこがお兄ちゃんの可愛いところだ。
透也さんに本当ですかと聞かれて、言葉に詰まっていたけれど、
「お兄ちゃん、素直になったほうがいいよ」
というと諦めたのか、素直に認めた。
「――っ、わかったよ。本当だよ。千鶴と長瀬さんが羨ましいなって思ってた」
「大智……っ、そう言ってくれて嬉しいですよ。でも俺は大智が普段の格好でも気にしませんよ」
透也さんが嬉しそうにしながら、それでも普段のお兄ちゃんにも配慮しながら告げると、お兄ちゃんは自分が気にしすぎてるだけだと伝えていた。
これで少しは気にしなくなればいい。
日本だってどこでだって、二人には自然体でいて欲しいもん。
というわけでこれから出かけることに話は決まった。
とりあえず、最初の目的地は靴屋さん。
流石にスリッパのままじゃどこにも行けない。
「それならこの前千鶴さんの靴を買ったところに行きましょう。あそこならたくさん種類がありますよ」
理人さんに連れて行ってもらった靴屋さん。
素敵な靴がいっぱいで悩んでしまったけれど、理人さんがすぐに似合う靴を選んでくれて楽しかった。
きっとあそこなら、透也さんがお兄ちゃんの靴を選んでくれるかな。
ふふっ、楽しみ。
私もお兄ちゃんに合わせて外出着に着替えて、理人さんの車に乗り込むと、お兄ちゃんは透也さんに抱きかかえられて後部座席に乗り込んだ。
お兄ちゃんも華奢とはいえ、男性としてそれなりに体重もあるだろうに、軽々と抱きかかえている透也さんってすごいな……。
理人さんもすごく鍛えた身体をしているけれど、きっと透也さんも鍛えているんだろうな。
お兄ちゃんは体質であまり筋肉がつかないって前に言ってたから羨ましく思っているだろうな、きっと。
後部座席で楽しそうにおしゃべりをしている二人の姿を微笑ましく思っている間にあっという間に目的の靴屋さんに到着した。
「えっ? ここ?」
お兄ちゃんの顔がちょっと引き攣っているのがわかる。
うん、そうなるのわかる気がする。
お兄ちゃんが買いに行っていたのは、もっとフランクに入れるお店ばっかりだったもんね。
私は仕事を始めてから、高級だけど歩きやすくて疲れない、<走れるパンプス>というものを知って買いに行くようになったから、高級な靴屋さんの存在は知ってるんだよね。
本当にびっくりするくらいお値段はするけれど、足のためを思えば自分の足に合った靴を履くのって重要なんだって気づいた。一度履いたらこれ以外履けなくなるくらい、快適なんだ。
私が買いに行っていた靴屋さんとここは違うけれど、ここの靴の方が私の足により合っていて履きやすい。
全部理人さんが買ってくれるからお値段はどれくらいか知らないけれど、甘えて欲しいと言われているから素直に甘えさせてもらっている。本当に優しい人だ。
双子だけあって、お兄ちゃんの足もきっとここの靴に合うだろうと思う。
「あの……俺、車の中で待ってるってわけにはいかないよな?」
「お兄ちゃんの靴買いに来たんだからそれは無理でしょ。お兄ちゃん、今のサイズはわからないでしょう?」
あまりにも高級な佇まいに恐れ慄いているみたいだけど、靴はやっぱり自分で履いてみないとね。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。ここのお店、私も初めて連れて行ってもらった時は緊張したけど、靴の種類は多いし、気にいるものが必ず見つかるよ」
安心させるためにそう言ったけれど、耳に入っていないみたい。
緊張しているのがよくわかる。
大丈夫かなと心配になったけれど、透也さんがそばにいるから大丈夫かな。
理人さんと二人で先に車を降りると、お兄ちゃんは透也さんにお姫さま抱っこをされながら降りて来た。
めちゃくちゃみられているけど、透也さんは嬉しそうだな。
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