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番外編
お兄ちゃんたちとの対面 5
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でも本当に肌がもちもちプルプルしていてびっくりする。
もちろん透也さんのスキンケアの効果がすごいとは思うけど、お兄ちゃんのことだから透也さんに出会う前は特に気を遣っていなかったはず。その期間のほうが長いのに、ここまでシミひとつない綺麗な肌ってことは、生まれ持った美肌っていうことだ。
私もあまりニキビやシミも出にくくて友だちから羨ましがられたものだけど、手入れも全くせずにこの肌をキープし続けていたお兄ちゃんのほうが絶対的にすごそう。
透也さんが嬉々としてスキンケアをしているのが目に浮かぶ。
でも人のメイクするのって自分のメイクと違ってなんだか楽しい。透也さんがお兄ちゃんのスキンケアを楽しむのもわかる気がする。
ファンデーションはあまり塗らなくてもいいか。透也さん、ナチュラルが好きそうだし。
アイシャドウはせっかくだから少し明るいのにしようかな。
それにしてもお兄ちゃんってば、つけまつげ要らずの長いまつ毛。ビューラーを使うとその長さが際立つな。
アイライナーを綺麗に入れたら、ただでさえ大きな目がクリクリに見える。
マスカラをつけてアイメイクは完璧。軽くチークと口紅を塗って、よし! 完成!
うん! 我ながらいい仕事してる!
自分でメイクをした時以上の達成感と爽快感。
「お兄ちゃん、終わったよ。鏡、見てみて!」
得意満面で告げ、さっと鏡の前から避けた。
お兄ちゃんは恐る恐る鏡を見て、
「はっ? これ、誰?」
驚きの声をあげていた。
ベースはお兄ちゃんだからそこまで極端に変わるわけではないけれど、メイク姿を初めて見たのなら驚くのも無理はない。
でもものすごい美人が驚愕の表情を見せているのはちょっと面白い。
「お兄ちゃんでしょ」
見慣れない自分の姿に慌てふためくお兄ちゃんの様子がちょっと楽しくて、あっけらかんと言い切ってあげた。
それでもまだ困惑しているお兄ちゃんに、
「これなら、どう見ても高校生には見えないよ」
というと、どうやら納得してくれたらしい。
まぁ、鏡に映るお兄ちゃんはすっぴんの時と比べると三歳くらいは大人びて見えるしものすごく美人だもんね。
私がメイクをしているからお兄ちゃんより年上に見えることに関しては理解したみたいだ。
お兄ちゃんは私と話をしながらもずっと食い入るように鏡を見つめていた。
「何? メイク、気に入っちゃった?」
「えっ? いや、そうじゃなくて……これなら、日本でも透也と並んで歩いてもおかしな目で見られることはないんだろうなって思っただけだよ」
そういえば駅で会った時、私は理人さんと腕を組んでいたけど、お兄ちゃんたちは少し距離をとっていたっけ。
日本でも……ってことは、あっちでは手を繋いで歩いたりしているってことなのかな。
確かに同性カップルに関しては、地域にもよるだろうけど日本よりもアメリカのほうが寛容なのかもしれない。
本当は日本でも堂々といつもの姿で手を繋いだり、腕を組んだりしたいんだろうな……。
それならその願いを叶えたい。せっかくメイクもしたんだし、この機会を逃したらもったいないもんね。
「ねぇ、お兄ちゃん。せっかくだからメイクだけじゃなくて完璧に女装しちゃう?」
「えっ? 完璧ってどういうことだ?」
「だから、私の持ってるウイッグとか洋服とか着て女の子の格好しちゃおうよってこと」
「そ、それは流石にやばくないか? 透也も引くだろうし……」
透也さんの反応ならきっと、いや、絶対大丈夫。
お兄ちゃんがどんな格好していたって好きだと言ってくれる人だもん。
「大丈夫だって。こんなに綺麗なんだよ。ね、こんな機会ないよ。普段はアメリカにいるんだし、誰も知っている人には会わないからいいじゃない。ね、そうしよう」
もう決定事項と言わんばかりに告げると、どうやら諦めたらしい。
でも本当に嫌なら諦めたりしないから、きっとお兄ちゃんの中にもやってみようかなっていう気持ちはあったんだと思う。
「それで、ウイッグってどんなのがあるんだ? っていうか、そんなの持ってたんだな」
やると決まったら切り替えも早いお兄ちゃんはウイッグに興味津々な様子。
基本的に長い髪が好きな私は、その日の気分で髪を纏めたり、下ろしてみたり、ヘアアイロンで巻いてみたりしてヘアアレンジを楽しんでいるけれど、たまにはショートやボブを楽しみたい気持ちになることもあって、そういう時にウイッグを遣っていた。
手軽に別人感覚を味わえて、イメチェンにはもってこいだ。
長い髪を切ると、失恋だなんだと言ってくる上司や取引先もいたからそういうのを躱すのにもちょうどよかった。
髪を短くすると周りからいろいろ言われるとお兄ちゃんにいうと、
「まだそんなことを聞いてくる奴がいるのか? うちならすぐにセクハラでコンプラ違反だぞ」
呆れた様子を見せる。
外資系とは言ってもまだまだ固い考えを持つ上司が多いうちと違って、お兄ちゃんが勤めるベルンシュトルフホールディングスは会長自らLGBTQに柔軟な対応をするくらい時代の先端を行っている。
その考えを社長となる透也さんも踏襲しているから社員も安心して仕事ができているんだろう。
「今は特に透也が目を光らせてるからな。透也は本当にすごいんだよ」
私にも透也さんの凄さを惚気るお兄ちゃんが可愛く見える。このまま惚気を聞いていると遅くなりそうで、私は話題を変えた。
「このショートボブなら今より少し長いくらいだし。お兄ちゃん、小顔だから似合うよ」
「あ、これ。自然でいいかも」
いいウィッグを見つけて嬉しそうなお兄ちゃんに今度は洋服を選ばせる。
このままでいいなんて言っていたけれど、どうみたって今のメイクした顔とは釣り合いが取れない。
私が持っている服の中から、お兄ちゃんが着られそうな服を選んで渡した。
選んだのは、お気に入りのライムイエローのノースリーブのワンピース。
あまり体型を選ばないワンピースだからお兄ちゃんでも着られるはず。それにショート丈のベージュのカーディガンをチョイスした。
もちろん透也さんのスキンケアの効果がすごいとは思うけど、お兄ちゃんのことだから透也さんに出会う前は特に気を遣っていなかったはず。その期間のほうが長いのに、ここまでシミひとつない綺麗な肌ってことは、生まれ持った美肌っていうことだ。
私もあまりニキビやシミも出にくくて友だちから羨ましがられたものだけど、手入れも全くせずにこの肌をキープし続けていたお兄ちゃんのほうが絶対的にすごそう。
透也さんが嬉々としてスキンケアをしているのが目に浮かぶ。
でも人のメイクするのって自分のメイクと違ってなんだか楽しい。透也さんがお兄ちゃんのスキンケアを楽しむのもわかる気がする。
ファンデーションはあまり塗らなくてもいいか。透也さん、ナチュラルが好きそうだし。
アイシャドウはせっかくだから少し明るいのにしようかな。
それにしてもお兄ちゃんってば、つけまつげ要らずの長いまつ毛。ビューラーを使うとその長さが際立つな。
アイライナーを綺麗に入れたら、ただでさえ大きな目がクリクリに見える。
マスカラをつけてアイメイクは完璧。軽くチークと口紅を塗って、よし! 完成!
うん! 我ながらいい仕事してる!
自分でメイクをした時以上の達成感と爽快感。
「お兄ちゃん、終わったよ。鏡、見てみて!」
得意満面で告げ、さっと鏡の前から避けた。
お兄ちゃんは恐る恐る鏡を見て、
「はっ? これ、誰?」
驚きの声をあげていた。
ベースはお兄ちゃんだからそこまで極端に変わるわけではないけれど、メイク姿を初めて見たのなら驚くのも無理はない。
でもものすごい美人が驚愕の表情を見せているのはちょっと面白い。
「お兄ちゃんでしょ」
見慣れない自分の姿に慌てふためくお兄ちゃんの様子がちょっと楽しくて、あっけらかんと言い切ってあげた。
それでもまだ困惑しているお兄ちゃんに、
「これなら、どう見ても高校生には見えないよ」
というと、どうやら納得してくれたらしい。
まぁ、鏡に映るお兄ちゃんはすっぴんの時と比べると三歳くらいは大人びて見えるしものすごく美人だもんね。
私がメイクをしているからお兄ちゃんより年上に見えることに関しては理解したみたいだ。
お兄ちゃんは私と話をしながらもずっと食い入るように鏡を見つめていた。
「何? メイク、気に入っちゃった?」
「えっ? いや、そうじゃなくて……これなら、日本でも透也と並んで歩いてもおかしな目で見られることはないんだろうなって思っただけだよ」
そういえば駅で会った時、私は理人さんと腕を組んでいたけど、お兄ちゃんたちは少し距離をとっていたっけ。
日本でも……ってことは、あっちでは手を繋いで歩いたりしているってことなのかな。
確かに同性カップルに関しては、地域にもよるだろうけど日本よりもアメリカのほうが寛容なのかもしれない。
本当は日本でも堂々といつもの姿で手を繋いだり、腕を組んだりしたいんだろうな……。
それならその願いを叶えたい。せっかくメイクもしたんだし、この機会を逃したらもったいないもんね。
「ねぇ、お兄ちゃん。せっかくだからメイクだけじゃなくて完璧に女装しちゃう?」
「えっ? 完璧ってどういうことだ?」
「だから、私の持ってるウイッグとか洋服とか着て女の子の格好しちゃおうよってこと」
「そ、それは流石にやばくないか? 透也も引くだろうし……」
透也さんの反応ならきっと、いや、絶対大丈夫。
お兄ちゃんがどんな格好していたって好きだと言ってくれる人だもん。
「大丈夫だって。こんなに綺麗なんだよ。ね、こんな機会ないよ。普段はアメリカにいるんだし、誰も知っている人には会わないからいいじゃない。ね、そうしよう」
もう決定事項と言わんばかりに告げると、どうやら諦めたらしい。
でも本当に嫌なら諦めたりしないから、きっとお兄ちゃんの中にもやってみようかなっていう気持ちはあったんだと思う。
「それで、ウイッグってどんなのがあるんだ? っていうか、そんなの持ってたんだな」
やると決まったら切り替えも早いお兄ちゃんはウイッグに興味津々な様子。
基本的に長い髪が好きな私は、その日の気分で髪を纏めたり、下ろしてみたり、ヘアアイロンで巻いてみたりしてヘアアレンジを楽しんでいるけれど、たまにはショートやボブを楽しみたい気持ちになることもあって、そういう時にウイッグを遣っていた。
手軽に別人感覚を味わえて、イメチェンにはもってこいだ。
長い髪を切ると、失恋だなんだと言ってくる上司や取引先もいたからそういうのを躱すのにもちょうどよかった。
髪を短くすると周りからいろいろ言われるとお兄ちゃんにいうと、
「まだそんなことを聞いてくる奴がいるのか? うちならすぐにセクハラでコンプラ違反だぞ」
呆れた様子を見せる。
外資系とは言ってもまだまだ固い考えを持つ上司が多いうちと違って、お兄ちゃんが勤めるベルンシュトルフホールディングスは会長自らLGBTQに柔軟な対応をするくらい時代の先端を行っている。
その考えを社長となる透也さんも踏襲しているから社員も安心して仕事ができているんだろう。
「今は特に透也が目を光らせてるからな。透也は本当にすごいんだよ」
私にも透也さんの凄さを惚気るお兄ちゃんが可愛く見える。このまま惚気を聞いていると遅くなりそうで、私は話題を変えた。
「このショートボブなら今より少し長いくらいだし。お兄ちゃん、小顔だから似合うよ」
「あ、これ。自然でいいかも」
いいウィッグを見つけて嬉しそうなお兄ちゃんに今度は洋服を選ばせる。
このままでいいなんて言っていたけれど、どうみたって今のメイクした顔とは釣り合いが取れない。
私が持っている服の中から、お兄ちゃんが着られそうな服を選んで渡した。
選んだのは、お気に入りのライムイエローのノースリーブのワンピース。
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