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本当に良かった
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食事を終えて、お風呂に入る。
あの日以来、自分の裸を見るのも嫌で、明るい電気の下で入るお風呂の間は鏡を極力見ないようにしていた。
けれど、理人さんが愛してくれた身体だと思うと好きだと思えるから不思議だ。
――千鶴さん……とっても綺麗だ。
抱き合っている最中、優しい手で触れて身体中に何度も所有の証をつけてくれた。
「まだ残ってる……」
一番最初につけてくれた鎖骨の花弁のような赤い痕に触れると、まだ理人さんの熱を感じる気がする。
「理人さん……」
私、どうしちゃったんだろう。
昨日あんなにたくさん愛されたのに、今日もまた理人さんに触れて欲しいと思うなんて……。
今まで感じたことのない感情に自分でもわからなくなりながら、髪と身体を洗い終えて部屋に戻った。
何をしていても、理人さんのことを考えてしまう。
こんなの初めて……。
ベッドに横たわりながら、もだもだと身悶えていると突然スマホの音が鳴り出した。
もしかして理人さん?
夜寝る前にかけるって言ってくれていたし……。
少し緊張してスマホを手に取ると画面表示には<お兄ちゃん>の文字が見えた。
「ああ、なんだ……お兄ちゃん……」
私のメッセージを読んで電話してくれたんだから、有り難く思わないといけないのに。
理人さんのことを考えていて、勝手に理人さんだと思っていて、違ったからってガッカリするなんて酷すぎる。
慌てて電話をとると、まだ少し寝起きのような声で
ーおはよう。千鶴。メッセージ読んだぞ。何かあったか?
と問いかけられた。
ーお兄ちゃん、ごめんね。電話ありがとう。
寝起きでメッセージを読んでそのままかけてくれたのがわかって申し訳なくて心を込めて謝った。
きっとお兄ちゃんには訳がわからないだろうけど、それでもいい。
ーいや、お礼はいらないけどどうした? 何かあったのか?
ーうん。前に話していた人……やっぱり、運命の人だったみたい。
ーそれって……
ー長瀬さんと結婚、することになると思う。
ーええーっ!! 展開早すぎないか?
ーうん。私も思う。でも……離れられないってわかったから……。
ー離れられない……そうか。それならその気持ちを大切にしたほうがいいな。それで父さんには、もう話したのか?
ーうん。ちゃんと話したよ。驚いてたけど、おめでとうって言ってもらえた。
ーそうか、なら俺が心配することはないな。千鶴、おめでとう。
ーありがとう。
ーそれで結婚式とか、ああいや、その前に結納か。いつになる? その時は俺も帰国するよ。
ーそんなのまだわからないよ。今日、お付き合いすることになったばっかりだし。
ーでも結婚を前提で、離れる気は無いんだろう?
ーそうだけど……。
ーそれなら、家族として俺も会っておいたほうがいいだろう。大きな仕事も一段落したし、妹の結婚絡みの用事なら融通も利くからさ。それに……俺も家族に恋人を紹介したいし。
ーえっ……それって、恋人さんも一緒に来るってこと?
ーああ。もう家族に隠し事をするのはやめようと思ってるんだ。それで認めてもらえなくても俺はもう大人だから。
ーそっか……。
ーその反応……やっぱり、千鶴は知ってたんだな? 俺が、その……ゲイだってこと。
ーうん。確証はなかったけど、もしかしたらそうかなって……。多分、おばあちゃんもそうだと思う。
ーやっぱりか。
ー多分だけどお父さんも気づいてるんじゃ無いかな? 確証はないだろうけど、同じようにもしかしたらとは思ってたかも。
ーそうなのか? それは知らなかった。
ーだから、気にしなくていいよ。ねぇ、ちょっとだけでいいから先に教えてよ。アメリカ人なの?
ーいや、日本人。社宅が同じなんだ。
ーえっ、ってことは同じ会社の人ってこと?
ー同じ会社っていうか……まぁ、会社の人っていうのは合ってるけど。
ーなに? そんなに言いにくい人?
ーいや。千鶴が驚くんじゃないかと思ってさ。
ーえっ? まさか、新卒のかなり年下の子とか? それとも、ひと回り上とか?
ー年下は年下だけど、五つ下だよ。
ーそれくらいなら驚かないよ。
ーいや、そうじゃなくて……その、ベルンシュトルフホールディングスの、次期社長なんだ。俺の恋人。
ーえっ? ベルンシュトルフの、次期社長? それ、本当なの?
ーああ。本当だよ。でもそれを知ってて恋人になった訳じゃないんだ。俺は純粋に透也を愛しただけなんだよ。俺にとっては透也が運命だったんだ。
お兄ちゃんが地位や財産に惹かれるような人でないことはよく知ってる。
だから次期社長だから恋人になった訳じゃないってわかってる。
ーお兄ちゃん、おめでとう。よかったね。
私たち、やっぱり双子なんだな。
同じようなタイミングで運命の人に出会えるなんて……。
でも、本当に良かった。
そう心から言える。
あの日以来、自分の裸を見るのも嫌で、明るい電気の下で入るお風呂の間は鏡を極力見ないようにしていた。
けれど、理人さんが愛してくれた身体だと思うと好きだと思えるから不思議だ。
――千鶴さん……とっても綺麗だ。
抱き合っている最中、優しい手で触れて身体中に何度も所有の証をつけてくれた。
「まだ残ってる……」
一番最初につけてくれた鎖骨の花弁のような赤い痕に触れると、まだ理人さんの熱を感じる気がする。
「理人さん……」
私、どうしちゃったんだろう。
昨日あんなにたくさん愛されたのに、今日もまた理人さんに触れて欲しいと思うなんて……。
今まで感じたことのない感情に自分でもわからなくなりながら、髪と身体を洗い終えて部屋に戻った。
何をしていても、理人さんのことを考えてしまう。
こんなの初めて……。
ベッドに横たわりながら、もだもだと身悶えていると突然スマホの音が鳴り出した。
もしかして理人さん?
夜寝る前にかけるって言ってくれていたし……。
少し緊張してスマホを手に取ると画面表示には<お兄ちゃん>の文字が見えた。
「ああ、なんだ……お兄ちゃん……」
私のメッセージを読んで電話してくれたんだから、有り難く思わないといけないのに。
理人さんのことを考えていて、勝手に理人さんだと思っていて、違ったからってガッカリするなんて酷すぎる。
慌てて電話をとると、まだ少し寝起きのような声で
ーおはよう。千鶴。メッセージ読んだぞ。何かあったか?
と問いかけられた。
ーお兄ちゃん、ごめんね。電話ありがとう。
寝起きでメッセージを読んでそのままかけてくれたのがわかって申し訳なくて心を込めて謝った。
きっとお兄ちゃんには訳がわからないだろうけど、それでもいい。
ーいや、お礼はいらないけどどうした? 何かあったのか?
ーうん。前に話していた人……やっぱり、運命の人だったみたい。
ーそれって……
ー長瀬さんと結婚、することになると思う。
ーええーっ!! 展開早すぎないか?
ーうん。私も思う。でも……離れられないってわかったから……。
ー離れられない……そうか。それならその気持ちを大切にしたほうがいいな。それで父さんには、もう話したのか?
ーうん。ちゃんと話したよ。驚いてたけど、おめでとうって言ってもらえた。
ーそうか、なら俺が心配することはないな。千鶴、おめでとう。
ーありがとう。
ーそれで結婚式とか、ああいや、その前に結納か。いつになる? その時は俺も帰国するよ。
ーそんなのまだわからないよ。今日、お付き合いすることになったばっかりだし。
ーでも結婚を前提で、離れる気は無いんだろう?
ーそうだけど……。
ーそれなら、家族として俺も会っておいたほうがいいだろう。大きな仕事も一段落したし、妹の結婚絡みの用事なら融通も利くからさ。それに……俺も家族に恋人を紹介したいし。
ーえっ……それって、恋人さんも一緒に来るってこと?
ーああ。もう家族に隠し事をするのはやめようと思ってるんだ。それで認めてもらえなくても俺はもう大人だから。
ーそっか……。
ーその反応……やっぱり、千鶴は知ってたんだな? 俺が、その……ゲイだってこと。
ーうん。確証はなかったけど、もしかしたらそうかなって……。多分、おばあちゃんもそうだと思う。
ーやっぱりか。
ー多分だけどお父さんも気づいてるんじゃ無いかな? 確証はないだろうけど、同じようにもしかしたらとは思ってたかも。
ーそうなのか? それは知らなかった。
ーだから、気にしなくていいよ。ねぇ、ちょっとだけでいいから先に教えてよ。アメリカ人なの?
ーいや、日本人。社宅が同じなんだ。
ーえっ、ってことは同じ会社の人ってこと?
ー同じ会社っていうか……まぁ、会社の人っていうのは合ってるけど。
ーなに? そんなに言いにくい人?
ーいや。千鶴が驚くんじゃないかと思ってさ。
ーえっ? まさか、新卒のかなり年下の子とか? それとも、ひと回り上とか?
ー年下は年下だけど、五つ下だよ。
ーそれくらいなら驚かないよ。
ーいや、そうじゃなくて……その、ベルンシュトルフホールディングスの、次期社長なんだ。俺の恋人。
ーえっ? ベルンシュトルフの、次期社長? それ、本当なの?
ーああ。本当だよ。でもそれを知ってて恋人になった訳じゃないんだ。俺は純粋に透也を愛しただけなんだよ。俺にとっては透也が運命だったんだ。
お兄ちゃんが地位や財産に惹かれるような人でないことはよく知ってる。
だから次期社長だから恋人になった訳じゃないってわかってる。
ーお兄ちゃん、おめでとう。よかったね。
私たち、やっぱり双子なんだな。
同じようなタイミングで運命の人に出会えるなんて……。
でも、本当に良かった。
そう心から言える。
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