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どんどん好きになっていく
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「すみません、長瀬さん」
「いえ、私の前だけだとわかっているからホッとしてます。皆の前でもこうだと可愛過ぎて外に出せなくなってしまいますから」
「可愛いだなんて、そんな……っ」
「私も本当のことしか言いませんよ」
長瀬さんのそんな直球の言葉にドキドキする。
そんなドキドキを隠すように話題を出してみた。
「あ、あの長瀬さん……じゃあ何が食べたいですか?」
「えっ? ああ、そうですね。なんでもいいんですか?」
「はい。あ、でもそんなに凝ったものは作れないですけど」
「それなら卵焼きが食べたいです」
「えっ? そんな簡単なものでいいんですか?」
「卵焼きはその家の味がよくわかるメニューですから、千鶴さんの好きな実家の味を知っておきたいんです。これから長い人生を歩むには食べ物の好みが合うのは大事なことですからね」
「長瀬さん……っ」
そこまで私のことを思ってくれているなんて……すごく嬉しい。
「わかりました。じゃあいつもの卵焼きを作りますね」
冷蔵庫から卵三個を取り出して、ボウルに割り入れてからあの出汁シリーズの出汁を少し貰って入れた。
「千鶴さんの家はだし巻き卵なんですね」
「はい。祖母と母から教えて貰ったので母方の味なんですけど、父もこれは好きみたいです」
「なるほど。出来上がりが楽しみですね。火傷にだけは気をつけてくださいね」
「はい。大丈夫です」
そう答えたけれど、卵焼き用のフライパンで卵焼きを作っている間、ずっと心配そうにみてくれていた。
それが危なっかしい手つきだと思われてみられているのではなく、本当に純粋に私が痛い思いをしないかだけをみてくれているのがわかって嬉しくなる。
だって、それだけ大切に思われているってことだから。
少し緊張しながらもなんとかいつも通りにできた卵焼きを包丁で切り分けた。
形を整えるために端っこを少し切り落としたものをいつものように味見しようと思ったところで、ふと長瀬さんにも味見してもらおうかなと思ってしまった。
「長瀬さん、あーん」
「えっ……っ」
菜箸で長瀬さんの口に近づけたけれど、長瀬さんはびっくりしてそのまま固まってしまった。
あ、流石に菜箸のままは失礼だったかと気づいて箸を下げようとしたけれど、そっと腕を取られて味見用の卵焼きは無事に長瀬さんの口に入った。
「ん! 最高に美味しいですね!! こんなに美味しい卵焼きは初めてです」
かなり興奮気味に褒められてさすがにちょっと恥ずかしくなってしまった。
「大袈裟ですよ」
「いえ、千鶴さんに食べさせて貰った卵焼きですよ。大袈裟でもなんでもなく極上の一品です」
笑顔でそう言われて、私は恥ずかしさ以上に喜びが優っていた。
私が卵焼きを作っている間に、長瀬さんも料理が出来上がったようだ。
本当に手際がいい。
さすがだな。
筍の炊き込みご飯に小松菜と長ネギのお味噌汁、きんぴらごぼうに鯖の味噌煮、それに私が作った卵焼きも合わせて彩りのいい食事が並んでいる。
「美味しそう! こんな短時間でこんなにいっぱい! すごいです!」
「きんぴらは作り置きですからそこまで大したことではないですよ。でも褒めていただいて嬉しいです。さぁ、いただきましょうか」
「はい。いただきます」
どれも早く食べてみたいけれど、やっぱり一番最初はあの出汁シリーズを使ったお味噌汁。
「んっ! すごく美味しいです!」
「ふふっ。よかった。私もいただきます」
そう言って真っ先に食べてくれたのは卵焼き。
「ああ、やっぱり最高ですね。この味、覚えますよ」
「嬉しいです。でも、長瀬さんの味も食べてみたいですよ」
「――っ、わかりました。それでは今度は私の卵焼きを食べてください」
「ふふっ。はい」
長瀬さんが時折見せてくれる可愛い表情がたまらなく愛おしい。
普段は年上のような感じがするのに、あの瞬間だけは可愛い弟のように見えるから不思議だな。
「長瀬さんはご兄弟はいらっしゃるんですか?」
「いえ、一人っ子なんですよ。だから千鶴さんのように兄弟がいて、しかも双子だなんて憧れます」
「でも小学生の頃までは兄じゃなくて。姉だったら……って思ってた時期もあったんですよ。男女の双子なんて珍しがられてたので、ちょっと恥ずかしいと思っていたのかも……」
「そうなんですね」
「でも、中学生になって、男子部と女子部に分かれて、学校の建物自体も遠くなってしまったので、今まで学校で会えてた兄に会えなくなると言うのが、なんだか身体が半分なくなっちゃったみたいで不安になって……一時期学校に行くのも嫌だったんですけど、兄が<千鶴が困ってたらすぐに助けに行くから>って言ってくれて、安心したのを覚えてます。あの時は、兄でよかったなって思いました」
「素敵なご兄妹ですね。本当に羨ましい。そういうご兄弟の絆には培ってきた年月もありますから、すぐにお兄さんのようにはなれないかもしれませんが、これから困っていたときは私がついてますから、それだけは安心してください」
「ふふっ。はい。長瀬さんが一緒にいてくださるから安心してますよ」
「千鶴さん……」
もしかしたらお兄ちゃんに嫉妬してくれたのかな?
ふふっ。長瀬さんって本当に可愛いところがある。
長瀬さんのこと、知れば知るほどどんどん好きになっていく気がするな。
「いえ、私の前だけだとわかっているからホッとしてます。皆の前でもこうだと可愛過ぎて外に出せなくなってしまいますから」
「可愛いだなんて、そんな……っ」
「私も本当のことしか言いませんよ」
長瀬さんのそんな直球の言葉にドキドキする。
そんなドキドキを隠すように話題を出してみた。
「あ、あの長瀬さん……じゃあ何が食べたいですか?」
「えっ? ああ、そうですね。なんでもいいんですか?」
「はい。あ、でもそんなに凝ったものは作れないですけど」
「それなら卵焼きが食べたいです」
「えっ? そんな簡単なものでいいんですか?」
「卵焼きはその家の味がよくわかるメニューですから、千鶴さんの好きな実家の味を知っておきたいんです。これから長い人生を歩むには食べ物の好みが合うのは大事なことですからね」
「長瀬さん……っ」
そこまで私のことを思ってくれているなんて……すごく嬉しい。
「わかりました。じゃあいつもの卵焼きを作りますね」
冷蔵庫から卵三個を取り出して、ボウルに割り入れてからあの出汁シリーズの出汁を少し貰って入れた。
「千鶴さんの家はだし巻き卵なんですね」
「はい。祖母と母から教えて貰ったので母方の味なんですけど、父もこれは好きみたいです」
「なるほど。出来上がりが楽しみですね。火傷にだけは気をつけてくださいね」
「はい。大丈夫です」
そう答えたけれど、卵焼き用のフライパンで卵焼きを作っている間、ずっと心配そうにみてくれていた。
それが危なっかしい手つきだと思われてみられているのではなく、本当に純粋に私が痛い思いをしないかだけをみてくれているのがわかって嬉しくなる。
だって、それだけ大切に思われているってことだから。
少し緊張しながらもなんとかいつも通りにできた卵焼きを包丁で切り分けた。
形を整えるために端っこを少し切り落としたものをいつものように味見しようと思ったところで、ふと長瀬さんにも味見してもらおうかなと思ってしまった。
「長瀬さん、あーん」
「えっ……っ」
菜箸で長瀬さんの口に近づけたけれど、長瀬さんはびっくりしてそのまま固まってしまった。
あ、流石に菜箸のままは失礼だったかと気づいて箸を下げようとしたけれど、そっと腕を取られて味見用の卵焼きは無事に長瀬さんの口に入った。
「ん! 最高に美味しいですね!! こんなに美味しい卵焼きは初めてです」
かなり興奮気味に褒められてさすがにちょっと恥ずかしくなってしまった。
「大袈裟ですよ」
「いえ、千鶴さんに食べさせて貰った卵焼きですよ。大袈裟でもなんでもなく極上の一品です」
笑顔でそう言われて、私は恥ずかしさ以上に喜びが優っていた。
私が卵焼きを作っている間に、長瀬さんも料理が出来上がったようだ。
本当に手際がいい。
さすがだな。
筍の炊き込みご飯に小松菜と長ネギのお味噌汁、きんぴらごぼうに鯖の味噌煮、それに私が作った卵焼きも合わせて彩りのいい食事が並んでいる。
「美味しそう! こんな短時間でこんなにいっぱい! すごいです!」
「きんぴらは作り置きですからそこまで大したことではないですよ。でも褒めていただいて嬉しいです。さぁ、いただきましょうか」
「はい。いただきます」
どれも早く食べてみたいけれど、やっぱり一番最初はあの出汁シリーズを使ったお味噌汁。
「んっ! すごく美味しいです!」
「ふふっ。よかった。私もいただきます」
そう言って真っ先に食べてくれたのは卵焼き。
「ああ、やっぱり最高ですね。この味、覚えますよ」
「嬉しいです。でも、長瀬さんの味も食べてみたいですよ」
「――っ、わかりました。それでは今度は私の卵焼きを食べてください」
「ふふっ。はい」
長瀬さんが時折見せてくれる可愛い表情がたまらなく愛おしい。
普段は年上のような感じがするのに、あの瞬間だけは可愛い弟のように見えるから不思議だな。
「長瀬さんはご兄弟はいらっしゃるんですか?」
「いえ、一人っ子なんですよ。だから千鶴さんのように兄弟がいて、しかも双子だなんて憧れます」
「でも小学生の頃までは兄じゃなくて。姉だったら……って思ってた時期もあったんですよ。男女の双子なんて珍しがられてたので、ちょっと恥ずかしいと思っていたのかも……」
「そうなんですね」
「でも、中学生になって、男子部と女子部に分かれて、学校の建物自体も遠くなってしまったので、今まで学校で会えてた兄に会えなくなると言うのが、なんだか身体が半分なくなっちゃったみたいで不安になって……一時期学校に行くのも嫌だったんですけど、兄が<千鶴が困ってたらすぐに助けに行くから>って言ってくれて、安心したのを覚えてます。あの時は、兄でよかったなって思いました」
「素敵なご兄妹ですね。本当に羨ましい。そういうご兄弟の絆には培ってきた年月もありますから、すぐにお兄さんのようにはなれないかもしれませんが、これから困っていたときは私がついてますから、それだけは安心してください」
「ふふっ。はい。長瀬さんが一緒にいてくださるから安心してますよ」
「千鶴さん……」
もしかしたらお兄ちゃんに嫉妬してくれたのかな?
ふふっ。長瀬さんって本当に可愛いところがある。
長瀬さんのこと、知れば知るほどどんどん好きになっていく気がするな。
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