自家焙煎珈琲店で出会ったのは自分好みのコーヒーと運命の相手でした

波木真帆

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辛い過去

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BL作品・ベルンシュトルフシリーズを読んでくださっている方にはすぐにわかっていただけると思いますが、
『年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます』の主人公:杉山大智の双子の妹・千鶴のお話になります。
単体でお楽しみいただけますが、もしBLに興味があればそちらも合わせて読んでいただけると嬉しいです♡



  *   *   *



「おばあちゃん、何もできなくてごめんね……」

「いいのよ。おばあちゃんはね、千鶴がいてくれるだけでいいの。ねっ」

「うん、ありがとう」


実家を離れて、東京郊外にあるおばあちゃんの家に泊まらせてもらってもうすぐ一ヶ月。
外に出ることもできずに、毎日ただ部屋の窓から外の景色を眺めるだけの日々。

おばあちゃんにも心配をかけっぱなしだけど、どうしてもまだ人と会うのが怖い。

私はこのままどうなってしまうんだろう……。

  *   *   *

私、杉山すぎやま千鶴ちづるは特技の英語を生かし、外資系企業のマーケティング課でバリバリ働いていた。
お父さんは大手企業の部長職についていて、双子のお兄ちゃん・大智だいちは海外にも支社のある、大手企業ベルンシュトルフホールディングスで働いていて、先日L.A支社長を命じられ、L.Aへと旅立った。

双子とはいえ、男女だからそこまでべったり仲が良いというわけではないけれど、何かあればお兄ちゃんを頼るし、お兄ちゃんもまた私を可愛がってくれてそこそこ仲がいい関係ではあった。
ただ、大学を卒業して一人暮らしを始めたお兄ちゃんと違って、早くにお母さんを亡くした我が家ではお父さんを一人にするのも心配だったことと、私に一人暮らしをさせるのを心配したお父さんとお兄ちゃんの気持ちも汲んで、私は今でもお父さんと一緒に暮らしている。

基本的に自分のことはなんでもできるお父さんとの生活は意外と楽で、この生活にもうすっかり慣れきっているからか、あまり結婚願望がなく、三十歳になった今でも恋人の一人もできたことはない。
でも、仕事も楽しいし毎日が充実していたから、ずっとこのままでも良いかと短絡的に考えていた。

そんなある日、

――悪い。今日取引先の人と飲んで帰るから、夕食はいらないから。

とお父さんから連絡が来た。

どうやら取引先の担当が変わったということで、お父さんはその人に誘いを受け、二人でお酒を飲みに行くことになったらしい。

あまり接待に行くことがないお父さんは、毎日ほぼほぼ定時で帰ってきていただけに、久しぶりの一人の夜に私は浮かれていたけれど、午後11時を回って帰ってきたお父さんはかなり泥酔状態で、その世話はかなり大変だった。

翌日、外回りから直帰だった私に仕事中のはずのお父さんから連絡が来た。

――千鶴、悪い。昨日、取引先相手の大事な資料を間違えて持ち帰ったみたいなんだ。全く覚えてないが、茶色の封筒を持ち帰らなかったか?

その言葉に私はすぐに思い出した。
確かに腕に抱えていた。
てっきりお父さんのものだと思って一応保管していたけれど、どうやらその取引先相手のものだったらしい。

――昨夜の取引先相手、安田さんというんだが、その資料がすぐに必要だというんだよ。悪いが彼の会社である笹川コーポレーションにすぐにその資料を届けてくれないか? お礼に今度美味しい寿司でも食べに連れて行くから。頼む。

お寿司に釣られたわけではないけれど、あまりにも困った様子のお父さんが可哀想になって、その安田さんに資料を届けることにした。

受付で名前を言うとすぐに安田さんが下りてきて、じっとりとした目で私を上から下まで舐めるように見てきたのがものすごく気持ちが悪かったけれど、あくまでもお父さんの取引先の社員だ。
何か粗相をしてお父さんに迷惑をかけてしまっては困る。

とりあえず、仕事用の笑顔を見せ、資料を渡して帰ろうとすると

――わざわざ届けてくれたんだから、お礼をさせてほしい。行きつけの美味しい店を知ってるから、一杯だけ! ねっ、一杯だけ付き合ってよ。お父さんとの取引もこれでうまく行くんだからさ。

としつこく誘われて断れず、一杯だけと言う約束で、安田さんの行きつけの店に連れて行かれた。
けれど、乾杯で渡されたお酒を飲んでから、一切の記憶がない。

気がついた時には私はどこかの安宿のベッドに裸で両腕をベッドに縛られて寝かされていた。

「んんーっ!!」

「ふふっ。やっと起きたか。待ちかねたぞ」

「んんーっ!!!」

「目が覚めたばかりなのに元気だな。まぁいい。意識が戻ったならゆっくり楽しもうか」

「んーっ!! んーーっ!!」

思いっきり叫びたいのに口の中に何かを突っ込まれて、その上からガムテープか何かを付けられているようで全然声が出せない。

舌なめずりしながら、私に近寄ってくる気持ち悪い安田の姿に吐きそうになる。
必死に足をばたつかせて抵抗しようとするけれど、

「死にたいのか? 騒ぐと殺すぞ!!」

と血走った目で鋭いナイフを向けられ、ペチペチとナイフで頬を叩かれて、恐怖に身体が震えた。

「ふふっ。おとなしくしてれば可愛がってやるからな。やっとお前が手に入る。ずっとこの日を楽しみにしてたんだ」

片手にナイフを持ち、脅しながら、もう片方の手が私の身体を撫で回す。
触れられるたびにゾワゾワと悪寒が走る。

気持ちが悪くてどうしようもないのに、目の前にいる安田は鼻息荒く興奮しまくっている。

そして、私に見せつけるように裸になると、私の足を持ち上げて一気に貫いてきた。

「ぐぅぅ――っ!!!」

ずっと大事にしてきたわけじゃない。
愛する人ができたらいつでも捧げるつもりでいた。

でも……私の初めてはこんなケダモノのような男に奪われてしまった。

悔しいっ!!
こんな男に涙は見せたくないけれど、あまりの悔しさに涙が出る。

「ははっ。俺のが気持ち良すぎて泣いてるのか。最初が俺で良かったな。こんなデカいもので可愛がってもらえたら最高だろ」

嬉しそうに安田は私の上で腰を何度か振ると、あっという間に果てた。

「ああ、やべー。気持ち良すぎて中出ししたな。まぁ、いいか。子どもができたら結婚してやるからな。ははっ」

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
あんな男のものが自分の身体の中にあるというだけで、自分の身体全部が穢れてしまった気がする。
このまま死んだ方が幸せかもしれない。
そう思ってしまうくらいに、私は絶望のどん底にいた。

「ああ、そうだ。大事なことを忘れていた」

そういうと、安田はスマホを手に取り、両手を縛られた裸の私の写真を何枚も撮り始めた。

「これで、お前の恥ずかしい写真は俺の手の中だ。警察にチクったり、会社や親にバラしてみろ! この写真が世間に出回ることになるぞ!! こんな写真が出たらもう外は歩けないな。それは困るだろう?」

ニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべると、

「さっさと服を着ろ」

と言って、私の腕を縛っていた紐を解いた。

「これからも俺が呼んだら来るんだぞ。お前はもう俺の奴隷だからな」

そんな言葉を投げつけられ、そこからどうやって帰ってきたのかも覚えてない。
ただ、あの男に触れられて中に出されて穢れてしまった身体を、皮膚が赤く腫れるまで何度も洗い続けて、部屋に引き篭もった。
それからはお父さんの顔を見るのも、外に出るのも怖くて、部屋から出られなくなってしまった。

会社には体調不良だと言って休みをもらったけれど、いつまで休めるかもわからない。
何があったのか何も知らないお父さんは、心配して部屋の外に食事をおいてくれるけれど、何も食べる気にもならなかった。
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