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桜の伝説 4 side修一(敬介の父)

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父との挨拶が長くなってしまいました。なかなか桜にいきつかない(汗)
というわけでもうしばらく続きそうですが楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *

<side修一(敬介の父)>

「珍しいな、敬介が夕食の時間にいないなんて」

「ええ。お友だちと一緒に夕食を食べて帰ると連絡があったわ」

「友人? 蓮見くんか? それとも倉橋くんか?」

「どちらもよ。みんなでレポートを書いた後、蓮見くんのご実家でご馳走になると言っていたわ」

「そうか。蓮見くんの実家ならご両親も揃っていらっしゃるから安心だな」

幼稚園からわが桜守学園で大切に育ててきた敬介が、桜城大学に行きたいと言い出した時はどうなることかと心配したが、入学して早々にいい友人に恵まれ、二人も敬介のことを気遣い守ってくれて安心して大学に行かせることができている。

二人を何度か我が家にも呼んで一緒に食事をしたことがあるが、とてもいい青年たちだった。

桜守にいた頃の敬介は常に皆から期待され、率先して前に出ることが多かったが、敬介自身はそこまで前に出ることが好きではなかったようだ。それでも頼られると人一倍頑張ってしまう。
桜城大学に行きたいと言われて悩みながらも最終的に許可したのは、同じように率先して前に出るタイプの人間が多いあの大学なら、敬介も楽に過ごせると思ったからだ。

その予想通り、敬介は蓮見くんや倉橋くんといるとかなり楽に過ごせるようだ。と言っても、彼らの影に隠れて引っ込み思案になったわけではない。お互いが得意なところを担うことで良いバランスを保っている。

正直なところを言うと、彼らのどちらかなら敬介を託してもいいかなとさえ思っているほど、私は彼らを気に入っている。まぁ、こればっかりは本人たちの気持ちもあるし、何より知成も許さないだろうがな。
いい加減、知成も敬介ばかりに囚われずに周りに目を向けてくれたらいいのだが……。
あのブラコンっぷりは少々目に余るものがある。確かに敬介は可愛いが、敬介を基準に考えられては知成の恋人になるのはかなり難しいだろうな。

敬介との夕食を目当てに家を出た今でも頻繁に我が家に夕食を食べに来る知成だが、今日は敬介がいないことを知っているのだろう。私は久しぶりに雛子ひなことの二人での夕食を済ませ、のんびりと本を読みながら夫婦の時間を過ごしていると、敬介が帰ってきたと報告が来た。

同伴者がいると聞いて、彼らが送ってくれたのだろうと思った私は、もう風呂を済ませて寝巻きに着替えていた雛子をリビングで待たせて、お礼を言いに一人で玄関まで出迎えに行った。するとそこには敬介に寄り添う、逞しくも少し強面の青年の姿があった。

「敬介。おかえり」

「お父さん、ただいま」

「そちらの方は誰だね?」

「あ、あの、この方は……」

「初めまして。蓮見周平と申します。ご子息には弟がいつもお世話になっています」

強面の表情とは対照的に優しい声で頭を下げる彼の姿に好感を持った。

「ああ、蓮見くんのお兄さんか。いやいや、こちらこそ蓮見くんにはいつもお世話になっているよ。今日はわざわざお兄さんに送っていただいて申し訳ない。ありがとう」

「いえ。わざわざではありません。私が送らせていただきたいとお願いしました」

「んっ? それは、なぜだね?」

私の言葉に一瞬その場がピンと張り詰めたような空気になり、敬介は少し不安げな表情をしているが、彼はそっと敬介に視線を向けると、優しく微笑んだ。

そして、私に真剣な目で向き直り、

「この度、ご子息である敬介さんとおつきあいさせていただくこととなりましたので、ご挨拶に伺いました」

ときっぱりと言い切り、頭を下げた。

「おつきあい、とは……その、恋人、ということかな?」

「はい。これから恋人としてお互いを深く知り合い、ゆくゆくは一生のパートナーとして過ごしていきたいと考えています。どうかお許しいただけないでしょうか?」

「お許し、と言われてもまずは敬介の気持ちを聞かなければいけないが、敬介はどうなんだ?」

「お父さん、俺も同じ気持ちです。周平さんとは今日出会ったばかりだけど、離れちゃいけないって、ずっとそばにいたいって思うんだ。だから、俺……お父さんに反対されても、周平さんと一緒にいたい」

敬介の真剣な訴えに、昔の……雛子と出会ったころの自分を思い出した。

私も一目惚れで、そのまま猛アタックをしてその日のうちに恋人になったのだったな。懐かしい。
敬介も私たちと同じように運命の相手を見つけたということか。

相手があの二人ではなく、彼だったことには驚いたが、まぁ、あの二人なら出会ってすぐに運命の相手だとわかっただろうから違ったのは明白だな。敬介が心酔している鳴宮くんの一生のパートナーが男性だった時から、敬介ももしかしたらと思っていたが、やはりそうなったな。私はあの二人なら託しても……と思っていたくらいだから、今更敬介の相手が男でも気にはならない。敬介のことを心から愛してくれさえすればそれで構わない。

「敬介、お前の気持ちはよく分かった。もうお前は成人しているし、私たち親がとやかくいうことではない。許可をするということではなく、私は二人の気持ちを尊重しよう。もちろん雛子も同じ気持ちだよ」

「――っ!! お父さん! ありがとう!!」

「お義父さん、ありがとうございます!」

「はは。お義父さんか。我が家に逞しい息子が増えて何よりだよ」

私の言葉に、敬介と彼は顔を見合わせて笑っていた。

「あの、つきましては敬介さんと一緒に暮らしたいと思っているのですが、お許しいただけますか?」

「同棲か? そうだな、寂しくなるが、二人の気持ちを尊重するよ。好きにしたらいい」

「ありがとうございます!!」

喜ぶ彼の横で、敬介は驚きの表情を見せていた。
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