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〜可愛い理央のために〜 <後編> side凌也
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「凌也、ちょっと話がしたいんだが……」
父さんにそう言われたのは、理央を引き取って半年ほどが経った頃だった。
「何? なんかあった?」
「理央のことだよ。そろそろ理央の将来のことを考えないといけない」
理央は特別養子縁組で我が家に迎えて、戸籍の上でも正式に両親の息子であり、俺の弟になった。
特別養子縁組は実親との縁が完全に切れるため、基本的に手続きには実親の承諾が必要になるが、理央の場合は両親の所在が不明ということで父さんの人脈を駆使して全てつつがなく手続きされた。
だからこれからもし理央のことを知り、実親がやってきたとしても親権を主張することはできない。
これから先、理央の平和を脅かす存在がいないというのは安心できる。
だが、これから大きくなるにつれて理央には別の不安が付きまとうだろう。
なんて言ったってこの上なく可愛い理央だ。
父さんはそれを心配しているんだ。
「お前の場合は、特に心配はしていなかったが理央は別だ。わかるだろう?」
そう堂々と宣言されても、実子として全く異論はない。
そう言い切れるくらい本当に理央は可愛くて特別なのだから。
「わかるよ。それで父さんの考えは何?」
「理央をゆくゆくは桜守に進学させようと思っている。あの学校なら理央を通わせても安心だ」
「確かにそうだけど、流石に今から幼稚園の編入試験を受けさせるのは……」
「そう、そこなんだ。本来なら幼稚園から行かせて友人も作ってから初等部に行かせたいが、流石に今の理央にはまだ受験を突破できるほどの体力はない。万が一、合格できたとしてもまだ理央には集団生活は難しいだろう。だから、理央には家庭教師をつけて初等部を受験するときまで勉強を見てもらうのはどうだろう?」
「勉強させるのはいいと思うけど、それなら家庭教師は必要ない。俺が理央に勉強を教えるよ」
「だが、お前だって、もうすぐ高校受験が待っているだろう。そのあとは大学受験もあるんだぞ。理央の勉強も見ながら自分のもなんて……」
「関係ないよ。俺はどっちも両立させてみせる。俺は高校だって大学だって首席で合格してみせるよ。だから理央を他人に任せたりしない」
「凌也、お前……理央と出会って変わったな」
「ああ、理央は俺の運命だから」
「それはお前の態度を見てたらわかるさ。だからこそ、理央を我が家に迎えたんだし」
「だから誰の手も借りない。理央を教えるのは俺だ」
「ああ、わかったよ。じゃあ、そうしよう。その代わり、お前の成績が下がるようなら理央に家庭教師をつける。いいな?」
「ああ。わかった。約束する」
その日から遊びながら理央に勉強を教え、三ヶ月ほどでひらがなもカタカナもスラスラと読めるようになった理央は、本や図鑑に興味を持ち、どんどん学力をつけていった。
もちろん俺の勉強にも一切手を抜かなかった。
そのおかげで入学した高校でも俺は一度も成績を一番から落としたことはなかった。
まぁ、同率で同じ成績のやつが二人いたけどそれは仕方がない。
「りょうちゃん、これは?」
「ああ、これは……」
理央は何か質問してはどんどん知識を吸収していく。
そのおかげで桜守初等部の外部入学試験ではかなりの好成績をとったようだ。
人見知りだけど、面接でもしっかりと受け答えができて、面接を担当していた桜守の先生たちも面接の間中笑顔が絶えることがなかった。
そうして、理央の結果はもちろん合格。
俺の桜城大学の合格も決まりダブルでお祝いとなった。
お祝いに理央の希望で温泉旅行に行った。
理央の場合、初めてのお風呂デビューが露天風呂ということもあって、今ではお風呂好きだ。
そんな理央のために我が家にも露天風呂を増設したくらいだからな。
今でもあの時のアヒルは理央の宝物になっている。
「それにしても有言実行するだろうと思っていたが、お前がまさか法学部を選ぶとは思わなかったな」
「理央をいつでも守れるように弁護士になりたいと思ったんだ」
「ははっ。お前の原動力はいつだって理央だな」
「当たり前だろう」
「まぁ、とにかくおめでとう」
「ありがとう」
俺の大学の入学式の数日後、理央の桜守初等部の入学式で、理央のおかげでとんでもない人たちと次々に縁ができ、俺はもちろん両親も驚いたけれど、何より理央に初めての友達ができたのが何よりも嬉しかった。
* * *
理央から凌也への呼び方を『りょうちゃん』に変更しました。
父さんにそう言われたのは、理央を引き取って半年ほどが経った頃だった。
「何? なんかあった?」
「理央のことだよ。そろそろ理央の将来のことを考えないといけない」
理央は特別養子縁組で我が家に迎えて、戸籍の上でも正式に両親の息子であり、俺の弟になった。
特別養子縁組は実親との縁が完全に切れるため、基本的に手続きには実親の承諾が必要になるが、理央の場合は両親の所在が不明ということで父さんの人脈を駆使して全てつつがなく手続きされた。
だからこれからもし理央のことを知り、実親がやってきたとしても親権を主張することはできない。
これから先、理央の平和を脅かす存在がいないというのは安心できる。
だが、これから大きくなるにつれて理央には別の不安が付きまとうだろう。
なんて言ったってこの上なく可愛い理央だ。
父さんはそれを心配しているんだ。
「お前の場合は、特に心配はしていなかったが理央は別だ。わかるだろう?」
そう堂々と宣言されても、実子として全く異論はない。
そう言い切れるくらい本当に理央は可愛くて特別なのだから。
「わかるよ。それで父さんの考えは何?」
「理央をゆくゆくは桜守に進学させようと思っている。あの学校なら理央を通わせても安心だ」
「確かにそうだけど、流石に今から幼稚園の編入試験を受けさせるのは……」
「そう、そこなんだ。本来なら幼稚園から行かせて友人も作ってから初等部に行かせたいが、流石に今の理央にはまだ受験を突破できるほどの体力はない。万が一、合格できたとしてもまだ理央には集団生活は難しいだろう。だから、理央には家庭教師をつけて初等部を受験するときまで勉強を見てもらうのはどうだろう?」
「勉強させるのはいいと思うけど、それなら家庭教師は必要ない。俺が理央に勉強を教えるよ」
「だが、お前だって、もうすぐ高校受験が待っているだろう。そのあとは大学受験もあるんだぞ。理央の勉強も見ながら自分のもなんて……」
「関係ないよ。俺はどっちも両立させてみせる。俺は高校だって大学だって首席で合格してみせるよ。だから理央を他人に任せたりしない」
「凌也、お前……理央と出会って変わったな」
「ああ、理央は俺の運命だから」
「それはお前の態度を見てたらわかるさ。だからこそ、理央を我が家に迎えたんだし」
「だから誰の手も借りない。理央を教えるのは俺だ」
「ああ、わかったよ。じゃあ、そうしよう。その代わり、お前の成績が下がるようなら理央に家庭教師をつける。いいな?」
「ああ。わかった。約束する」
その日から遊びながら理央に勉強を教え、三ヶ月ほどでひらがなもカタカナもスラスラと読めるようになった理央は、本や図鑑に興味を持ち、どんどん学力をつけていった。
もちろん俺の勉強にも一切手を抜かなかった。
そのおかげで入学した高校でも俺は一度も成績を一番から落としたことはなかった。
まぁ、同率で同じ成績のやつが二人いたけどそれは仕方がない。
「りょうちゃん、これは?」
「ああ、これは……」
理央は何か質問してはどんどん知識を吸収していく。
そのおかげで桜守初等部の外部入学試験ではかなりの好成績をとったようだ。
人見知りだけど、面接でもしっかりと受け答えができて、面接を担当していた桜守の先生たちも面接の間中笑顔が絶えることがなかった。
そうして、理央の結果はもちろん合格。
俺の桜城大学の合格も決まりダブルでお祝いとなった。
お祝いに理央の希望で温泉旅行に行った。
理央の場合、初めてのお風呂デビューが露天風呂ということもあって、今ではお風呂好きだ。
そんな理央のために我が家にも露天風呂を増設したくらいだからな。
今でもあの時のアヒルは理央の宝物になっている。
「それにしても有言実行するだろうと思っていたが、お前がまさか法学部を選ぶとは思わなかったな」
「理央をいつでも守れるように弁護士になりたいと思ったんだ」
「ははっ。お前の原動力はいつだって理央だな」
「当たり前だろう」
「まぁ、とにかくおめでとう」
「ありがとう」
俺の大学の入学式の数日後、理央の桜守初等部の入学式で、理央のおかげでとんでもない人たちと次々に縁ができ、俺はもちろん両親も驚いたけれど、何より理央に初めての友達ができたのが何よりも嬉しかった。
* * *
理央から凌也への呼び方を『りょうちゃん』に変更しました。
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