上 下
3 / 26

〜可愛い真守と素敵な家族〜 side雪乃(真守のママ)

しおりを挟む
<side雪乃>

「雪乃……申し訳ないが、私の子を我が家で引き取りたいんだ」

智春ともはるさんからそう言われたのは、結婚して一年が経った頃だった。


私、和倉わくら雪乃ゆきのは古美術商を営んでいた両親の元に生まれた。
二つ上の兄・あきらも含めて、家族仲はすこぶる良く幸せな家族だった。

けれど私が中学生に上がる頃、両親が突然の事故で他界してしまった。
親戚たちは私たちを迷惑がって施設に預けようとしたけれど、後見人として私たちの面倒を見ると手を上げてくれたのが、智春さんだった。

智春さんはお店の常連さんで、いつも買い物に来てはお父さんと古美術談義に花を咲かせていたから、私も面識があったというよりはいつも智春さんが来てくれるのを心待ちにしていた。

その智春さんのお世話になりながら、お兄ちゃんは高校、大学に進み、今ではイギリスで両親の後を継ぐように古美術商を営んでいる。

そして、私は智春さんの優しい人柄に惹かれ、十六歳の誕生日に晴れて智春さんの妻になった。

十歳も年上だったけれど、智春さんが心から私を愛してくれているのがわかっていたからお兄ちゃんもものすごく喜んでくれた。

そんな幸せな結婚生活を過ごしていたのに、突然の智春さんからの

――私の子を我が家で引き取りたい

という言葉は、もしかしたら今までずっと裏切られていたのかと不安になってしまったけれど、私は信じたかった。

「詳しく教えてください」

決して感情的にならずに尋ねると、智春さんは全てを包み隠さず教えてくれた。

高校時代にたった一度だけそういうことをした相手がその直後に姿を消し、智春さんの知らないところで妊娠し、子どもを産んでいた。
生まれた子どもには父親である智春さんの存在は一切明かさずに過ごしていたけれど、病気になり命が尽きる前に、これから一人になってしまう我が子のため、彼女は智春さんの名前を教えたのだそうだ。
そして実の母を失い、一人になってしまったその子はその名前と母親の出身地だけを頼りに智春さんを探し出し、連絡してきたのだという。

智春さんに子どもがいたことは確かに驚いたけれど、その子を受け入れない選択は私にはなかった。

「わかりました。我が家で引き取りましょう」

「――っ、雪乃! ありがとう」

「ふふっ。一帆かずほくん……きっといいお兄ちゃんになりますよ」

「えっ? 雪乃、それは……」

「三ヶ月に入ったところですって。今日はそれを報告しようと思っていたんです」

「そんな……っ、何も知らなくて悪いっ」

「いいえ。今日は一気に家族が増えると決まった幸せな日ですよ」

「雪乃!! ああ、本当に雪乃は最高だ!!」

「智春さん。これから一気に二児のパパですから身体に気をつけて頑張ってくださいね」

「ああ、任せてくれ!!」

それからすぐに私たちの可愛い息子・一帆かずほくんが我が家にやってきた。
十歳の彼とは年も近いし、話も合う。
智春さんが仕事の時も、妊娠中の私のためにいろいろとお世話をしてくれて、赤ちゃんが元気に生まれた時には涙を流して喜んでくれた。

三人でアイディアを出し合って決まった名前は『真守まもる

家族みんなの愛情を受けて順調に大きくなった真守は、編入した桜守さくらもり初等部から中等部に進んだ一帆と同じ系列の桜守幼稚園に通うことになった。
同じ系列だと言っても、校舎は全く別の場所にあるけれど、大きなイベントでは兄弟で参加できることもあるらしい。
一帆はそれを楽しみにしていた。

「あのねー、ママー。ようちえんでおともだちできたのー!」

「そう、良かったわね。なんてお名前?」

「うーんとね、いちかちゃん」

「あら、可愛らしいお名前ね。女の子?」

「ううん。おとこのこ。でもすっごくかわいいよ」

「ふふっ。そう。真守にお友達ができて良かったわ」

それからは毎日、幼稚園から帰る車の中ではいつも一花ちゃんの話題でもちっきり。
その子があの櫻葉グループのご令息だったことには驚いてしまったけれど、子どもたちにはそういうのは関係ないものね。

「どうだ? 真守。桜守初等部の入学試験は合格できそうか?」

「うん! だって、いちかちゃんといっしょにおべんきょうしてるもん!」

「そうか。なら大丈夫だな。だが真守ももうすぐ小学生か。早いな」

「ふふっ。ぼく、おにいちゃんがもってたのとおなじいろのランドセルほしいー!」

「一帆の? あれは、確か、茶色だったか?」

「うん! すっごくかっこよかったの!」

「真守っ!!」

「ふふっ。おにいちゃん、だーいすき!!」

あらあら。真守が抱きついてるから、一帆が嬉しそう。

「じゃあ、すぐにオーダーメイドで作らせよう」

智春さんと一帆が張り切って作り上げたランドセルが届くと、真守は大喜びして家の中でもずっと背負っていた。

「このランドセルせおって、ぜったいにさくらもりしょとうぶにいくんだ!!」

そう宣言していた通り、真守は全体の二番で桜守初等部に合格した。
一番はもちろん、一花ちゃん。

ふふっ。これで初等部でも真守と一花ちゃんはおなじクラスね。

きっと楽しい小学校生活が過ごせるわ。

そうして迎えた入学式。
真守にたくさんのお友達ができて、私にも素敵なママ友がいっぱいできた。
これからは可愛い息子たちの話題でたくさん盛り上がれそうだわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

処理中です...