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番外編
愛しいサク <前編>
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ふと思い立って書こうとして、何を書こうかと考え思いついたのが久遠の父とエリオット国王のお話。
出会いから最近のことまで書こうと思ったら長くなったので分けます。楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideエリオット(ヴァラスウィン王国国王)>
「サク、そちらの仕事は終わったか?」
「はい。ちょうど今終わったところです」
「そうか、じゃあおいで」
私の言葉にほんのりと頬を染めて私の元にやってきたサクは、手を広げた私の胸にスッポリとおさまってサクの方からキスをしてくれる。
甘い甘いキスが今日の仕事の疲れを瞬く間に癒してくれるのだ。
「ああ、今日もサクのおかげで仕事が捗ったよ。ありがとう」
「エリオット……私にお礼だなんて」
「いや、本当にサクがいてくれて助かっているのだ。サク……愛しているよ」
「私も、エリオットを愛してます……だから……」
「ああ、じゃああちらに行こうか」
* * *
サクと出会って二十年。
王城の中庭にある東屋でサクを見つけた時、私は十六歳であった。
かねてより病気療養中の父に代わり、成人前である十五歳から国王としての仕事に励んでいたが、若年齢で国を治めるというのは想像以上に神経を削られ疲労困憊となるもの。ヴァラスウィンが神に守られる国でなければ早々に潰されていたかもしれない。
ヴァラスウィン王国は神の思し召しによってこれまで繁栄を築いてきた。
その思し召しとは、『神の計らい』によって結婚相手を決めるというもの。
このヴァラスウィン王国に住む者は必ず十八までに運命の相手と出会い、その者を一生の伴侶として愛し続けることが運命として決められている。そして、その結婚相手には性別や住む世界などの区別はない。
神がその者にピッタリと合うものを運命の相手として必ず出会わせてくれるのだ。
ほとんどの者は十歳までに運命の者と出会い、成人を迎えるとすぐに結婚して夫婦(夫夫)となるのだが、私は十六になった今でもまだ運命の相手には出会えずにいた。
早く運命の相手に出会いたい。その願いだけで、忙しい日々を過ごしていたある日。
いつものように仕事終わりに向かった東屋で、倒れている人影を見つけた。
その姿が目に入った瞬間、彼こそが『神の計らい』ではないかという直感が働いた。
だから、私についていた護衛が慌てて駆け寄ろうとするのを制して離れさせ、私がその者に近づいた。
「エリオットさま。お気をつけください」
護衛のそんな声も耳に入らないくらい、私は彼しか目に入らなかった。
色白の滑らかな肌を惜しげもなく晒し、裸で丸まって倒れていたその姿を見て、私の直感が当たったことを理解した。
想像していたよりは逞しい身体をしていたが、私よりはまだ小さくてよかった。
誰にもこの者の裸を見せたくない! すぐにそんな独占欲が芽生え、私は上着を脱ぎ、彼に被せ腕に抱きかかえた。
すぐに大きな毛布を持って来させて、彼の美しい手足が見えないようにスッポリと覆い、急いで自室に連れ帰った。
裸で倒れていたのに土も泥も何もついていないその身体をベッドに仰向けに寝かせると、その美しさに興奮が止まらない。
だが、勝手に身体を奪うわけにはいかない。
しっかりと私の存在を理解してもらった上で身も心もつながらないとな。
「私の運命……早く目覚めてくれ」
彼と同じく私の全ての衣服を脱いで、彼の隣に身体を滑り込ませ、彼を胸にだきしめて彼が目覚めるのを待ち続けた。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
「んっ……」
可愛い声が聞こえて、視線を向けると彼がようやく瞼を開け、その漆黒の瞳に私を映してくれた。
「ああ、ようやく会えたな」
私の運命の相手にようやく出会えた喜びに言葉を漏らすと、
「あの、あなたは……? ここは、どこですか?」
と不安げな声が聞こえた。
確かに不安に思うのも無理はない。私は彼を怖がらせないように優しく説明した。
ここがヴァラスウィン王国で私は国王代理を任されていること。
裸で中庭に倒れていたのを助けてここまで運んできたこと。
そして、私の運命の相手であること。
「そんなこと……っ」
「信じられないだろうが、それが事実なのだ。おそらく、其方は今までの世界で命を落としてここにやってきたのではないかと思っている」
「あっ……それは、多分……」
聞けば、事故に遭いそこからの記憶がないとのこと。
今までにも異世界からわが国に『神の計らい』としてやってきた者は皆、彼方の世界で命を落としてきた者ばかりであった。だからこそ、元の世界に戻ることはない。もうすでに彼方での命を終えているのだから。
「彼方での命を終えて、この世界にやってきた其方を私は一生大切にする。だから、私の伴侶として私のそばにいてくれないか?」
「でも、私は男です。以前の世界には妻も子どももおりました。そんな私が次期国王さまの伴侶になどなれるはずが……」
「妻子がいても関係ない。神が私の伴侶として其方を連れてきてくれたのだ。私は中庭で倒れている其方を見た時から惹かれていた。『神の計らい』でなくてもいいと思えるほどに、其方を心から愛おしいと思ったのだ。其方が国王の伴侶になれぬというのなら、国王という身分など捨ててもいい。だから、頼む。私とともにこれからの人生を歩んでほしい」
「国王さま……」
「違う、エリオットだ。エリオットと呼んでくれ!」
「エリオットさま……」
「ああ、名前を呼ばれるだけでこんなにも幸せだと感じるとは……。私にも其方の名前を教えてはくれないか?」
「朔です。邑楽朔」
「サクか、良い名だ。サク……愛している。私の伴侶になってくれないか?」
「エリオットさま……私は三十歳を疾うに超えています。それでも、よろしいですか?」
「年齢など気にする必要はない。繋がれば、寿命は若い方と同じになるのだからな」
「そう、なのですか?」
「ああ。だから、これからたっぷりと愛し合える。サク……いいか?」
「……はい。エリオットさま……優しく、してください……」
「――っ!! ああ、任せておけ」
そう言ったが、サクの妖艶な姿にすっかり骨抜きにされ、そこから丸一日寝室から出ることはなかった。
出会いから最近のことまで書こうと思ったら長くなったので分けます。楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideエリオット(ヴァラスウィン王国国王)>
「サク、そちらの仕事は終わったか?」
「はい。ちょうど今終わったところです」
「そうか、じゃあおいで」
私の言葉にほんのりと頬を染めて私の元にやってきたサクは、手を広げた私の胸にスッポリとおさまってサクの方からキスをしてくれる。
甘い甘いキスが今日の仕事の疲れを瞬く間に癒してくれるのだ。
「ああ、今日もサクのおかげで仕事が捗ったよ。ありがとう」
「エリオット……私にお礼だなんて」
「いや、本当にサクがいてくれて助かっているのだ。サク……愛しているよ」
「私も、エリオットを愛してます……だから……」
「ああ、じゃああちらに行こうか」
* * *
サクと出会って二十年。
王城の中庭にある東屋でサクを見つけた時、私は十六歳であった。
かねてより病気療養中の父に代わり、成人前である十五歳から国王としての仕事に励んでいたが、若年齢で国を治めるというのは想像以上に神経を削られ疲労困憊となるもの。ヴァラスウィンが神に守られる国でなければ早々に潰されていたかもしれない。
ヴァラスウィン王国は神の思し召しによってこれまで繁栄を築いてきた。
その思し召しとは、『神の計らい』によって結婚相手を決めるというもの。
このヴァラスウィン王国に住む者は必ず十八までに運命の相手と出会い、その者を一生の伴侶として愛し続けることが運命として決められている。そして、その結婚相手には性別や住む世界などの区別はない。
神がその者にピッタリと合うものを運命の相手として必ず出会わせてくれるのだ。
ほとんどの者は十歳までに運命の者と出会い、成人を迎えるとすぐに結婚して夫婦(夫夫)となるのだが、私は十六になった今でもまだ運命の相手には出会えずにいた。
早く運命の相手に出会いたい。その願いだけで、忙しい日々を過ごしていたある日。
いつものように仕事終わりに向かった東屋で、倒れている人影を見つけた。
その姿が目に入った瞬間、彼こそが『神の計らい』ではないかという直感が働いた。
だから、私についていた護衛が慌てて駆け寄ろうとするのを制して離れさせ、私がその者に近づいた。
「エリオットさま。お気をつけください」
護衛のそんな声も耳に入らないくらい、私は彼しか目に入らなかった。
色白の滑らかな肌を惜しげもなく晒し、裸で丸まって倒れていたその姿を見て、私の直感が当たったことを理解した。
想像していたよりは逞しい身体をしていたが、私よりはまだ小さくてよかった。
誰にもこの者の裸を見せたくない! すぐにそんな独占欲が芽生え、私は上着を脱ぎ、彼に被せ腕に抱きかかえた。
すぐに大きな毛布を持って来させて、彼の美しい手足が見えないようにスッポリと覆い、急いで自室に連れ帰った。
裸で倒れていたのに土も泥も何もついていないその身体をベッドに仰向けに寝かせると、その美しさに興奮が止まらない。
だが、勝手に身体を奪うわけにはいかない。
しっかりと私の存在を理解してもらった上で身も心もつながらないとな。
「私の運命……早く目覚めてくれ」
彼と同じく私の全ての衣服を脱いで、彼の隣に身体を滑り込ませ、彼を胸にだきしめて彼が目覚めるのを待ち続けた。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
「んっ……」
可愛い声が聞こえて、視線を向けると彼がようやく瞼を開け、その漆黒の瞳に私を映してくれた。
「ああ、ようやく会えたな」
私の運命の相手にようやく出会えた喜びに言葉を漏らすと、
「あの、あなたは……? ここは、どこですか?」
と不安げな声が聞こえた。
確かに不安に思うのも無理はない。私は彼を怖がらせないように優しく説明した。
ここがヴァラスウィン王国で私は国王代理を任されていること。
裸で中庭に倒れていたのを助けてここまで運んできたこと。
そして、私の運命の相手であること。
「そんなこと……っ」
「信じられないだろうが、それが事実なのだ。おそらく、其方は今までの世界で命を落としてここにやってきたのではないかと思っている」
「あっ……それは、多分……」
聞けば、事故に遭いそこからの記憶がないとのこと。
今までにも異世界からわが国に『神の計らい』としてやってきた者は皆、彼方の世界で命を落としてきた者ばかりであった。だからこそ、元の世界に戻ることはない。もうすでに彼方での命を終えているのだから。
「彼方での命を終えて、この世界にやってきた其方を私は一生大切にする。だから、私の伴侶として私のそばにいてくれないか?」
「でも、私は男です。以前の世界には妻も子どももおりました。そんな私が次期国王さまの伴侶になどなれるはずが……」
「妻子がいても関係ない。神が私の伴侶として其方を連れてきてくれたのだ。私は中庭で倒れている其方を見た時から惹かれていた。『神の計らい』でなくてもいいと思えるほどに、其方を心から愛おしいと思ったのだ。其方が国王の伴侶になれぬというのなら、国王という身分など捨ててもいい。だから、頼む。私とともにこれからの人生を歩んでほしい」
「国王さま……」
「違う、エリオットだ。エリオットと呼んでくれ!」
「エリオットさま……」
「ああ、名前を呼ばれるだけでこんなにも幸せだと感じるとは……。私にも其方の名前を教えてはくれないか?」
「朔です。邑楽朔」
「サクか、良い名だ。サク……愛している。私の伴侶になってくれないか?」
「エリオットさま……私は三十歳を疾うに超えています。それでも、よろしいですか?」
「年齢など気にする必要はない。繋がれば、寿命は若い方と同じになるのだからな」
「そう、なのですか?」
「ああ。だから、これからたっぷりと愛し合える。サク……いいか?」
「……はい。エリオットさま……優しく、してください……」
「――っ!! ああ、任せておけ」
そう言ったが、サクの妖艶な姿にすっかり骨抜きにされ、そこから丸一日寝室から出ることはなかった。
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