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番外編
幸せな世界
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今までに書いた小説を整理していたら、
半分ほど書きかけで忘れていたのが出てきたのでとりあえず続きを書いて出してみました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
エリオット国王は本当にすぐに城内に私とアシェルのための部屋を作ってくれた。
そして、私を実の息子として周知してくれたおかげで何の苦労もない生活ができるようになったのだ。
ああ、あれほど仕事に追われていた私がこんなにも穏やかな生活を送れるようになるとは夢にも思っていなかったな。
アシェルと幸せな時間を過ごしていると、父が部屋を訪ねてきた。
「久遠、よかったらアシェルと一緒にお茶でもしないか?」
父の誘いにアシェルが是非にと言い出し、私たちは三人で中庭の東屋へと向かった。
「ここはいつもエリオットとお茶をしている憩いの場なんだよ」
父が教えてくれた通り、私たちが座るとすぐに執事のポールが紅茶を運んできてくれた。
それを楽しみながら、一番聞きたかったことを聞いてみることにした。
「父さんはあの時の事故でここに?」
「ああ、そうだよ。事故に遭っててっきり死んだと思っていたんだ。だが目を覚ましたらこの東屋に倒れてた」
「えっ? ここに?」
「ああ。あの時は驚いたよ。エリオットがいつもの習慣でここにお茶をしに来た時に見つけてくれて……ふふっ。懐かしいな」
「それですぐに『神の計らい』だと?」
「そうだ。お前の母さんと結婚して子どもまでいたのに、エリオットを見た瞬間、惹かれていた。自分はノーマルだと思っていたから驚いたが、運命の相手に男女の区別はないとエリオットに言われて納得したんだよ。まさか、お前までこの世界に来るとは思いもしなかったがな」
私だってそうだ。
まさか死んだと思っていた父と異世界で対面できるなんて思ってもなかった。
「お前たちには私がいなくなった後、苦労かけたのではないか?」
「突然の出来事だったから大変ではあったけれど、金銭的に不自由はなかったな。行きたい大学にも行かせてもらったし、父さんの会社も継いで一応順調ではあったよ。母さんは再婚はしなかったけど、不幸そうではなかったな。やりたいこともやって楽しそうにしていたよ。2年前に病気で亡くなったけれど、最後まで幸せそうだった」
暴漢に襲われて死んだのは内緒にしておいたほうが良さそうだ
今になって無駄に心配させることもないだろう。
「そうか……友里恵は亡くなったのか。お前たち二人のことだけが気がかりだったから、その後のことを知ることができてよかったよ」
「ああ。きっと母さんも今頃、喜んでいると思うよ」
「ところでアシェルとの新婚生活はどうだ? 不自由はないか?」
父のその言葉にアシェルがほんのり頬を赤らめる。
毎日毎日愛し合っているから不自由どころか幸せでしかないからな。
「国王さまによくしてもらえているおかげで何不自由ない生活を過ごせているよ。なぁ、アシェル」
「はい。この分だと、近いうちにお義父さまにもいいご報告ができるかもしれません」
「それは……そうか、それは楽しみだな」
どうやら父はアシェルの言わんとしていることに気づいたようだ。
妊娠可能となったアシェルの身体に半年ほど毎日蜜を注ぎつづけるとようやく子ができるのだからな。
「あの……父さんと国王さまには子どもは?」
「ああ、一人いるよ。次期国王となるべく、今は隣国で留学中だ。帰国したら久遠にも会わせたいとエリオットとも話をしているところだ」
「その子は、もしかして……父さんが、産んだのか?」
「――っ!!」
その父の表情に私は全てを悟った。
エリオット国王と二人でいるのを見た時から、アシェルと同じなのは父じゃないかと思っていたんだ。
まさか父が、母でもあったなんて……驚きしかないが、ここでは婚姻に男女の違いなどもないというのだから、考え自体を改めるしかないのだろう。
「久遠……私もここにきた時は葛藤もしたものだ。妻がいて、子どももいた私がエリオットに抱かれる。そこに戸惑いが何もなかったとは言わない。だが、その戸惑いすら払拭するほどに、私はエリオットを愛したんだ。今は、エリオットと愛し合い、エイデンを授かれたことを幸せだと思っている。これが、私たちにいた世界ならどんなに望んでも愛しいエリオットとの子どもなど望めないのだからな」
確かにそうだ。
私だって、いつかは愛するアシェルとの間に子ができることを望んでいるんだ。
きっとアシェルではなく、私が産むほうだったとしてもそれは変わらなかっただろう。
「エイデンが生まれた時の感動は一生忘れないよ。もちろん、お前が生まれた時のこともしっかりと覚えている。あの感動を覚えていたからこそ、私はエリオットとの子どもが欲しいと思えたんだ」
「父さん……」
「だから、私はエリオットと愛し合ったことを恥ずかしいとは思っていないよ。むしろ、こんなに愛されていることを自慢したいくらいだ」
そう堂々と言い切る父の姿に私は感動した。
私だってアシェルとのことをいつだって自慢したいくらいだからな。
「サク、嬉しいことを言ってくれるのだな」
「――っ、エリオット。聞いていたのですか?」
「愛しいサクが私とのことを息子に自慢してくれているのだ。聞かない選択などあるはずがない」
エリオット国王は嬉しそうに父の隣に腰を下ろした。
「クオン、其方の父は私が一生を賭けて愛し続けるから、心配しなくていいぞ。クオンとアシェルの子が生まれるのを楽しみにしている」
「はい。国王さま。父をよろしくお願いします」
そういうと、エリオット国王は嬉しそうに父の頬にキスをした。
恥ずかしそうにしながらも、父もまた嬉しそうで……私はアシェルと顔を見合わせて幸せを分かち合った。
半分ほど書きかけで忘れていたのが出てきたのでとりあえず続きを書いて出してみました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
エリオット国王は本当にすぐに城内に私とアシェルのための部屋を作ってくれた。
そして、私を実の息子として周知してくれたおかげで何の苦労もない生活ができるようになったのだ。
ああ、あれほど仕事に追われていた私がこんなにも穏やかな生活を送れるようになるとは夢にも思っていなかったな。
アシェルと幸せな時間を過ごしていると、父が部屋を訪ねてきた。
「久遠、よかったらアシェルと一緒にお茶でもしないか?」
父の誘いにアシェルが是非にと言い出し、私たちは三人で中庭の東屋へと向かった。
「ここはいつもエリオットとお茶をしている憩いの場なんだよ」
父が教えてくれた通り、私たちが座るとすぐに執事のポールが紅茶を運んできてくれた。
それを楽しみながら、一番聞きたかったことを聞いてみることにした。
「父さんはあの時の事故でここに?」
「ああ、そうだよ。事故に遭っててっきり死んだと思っていたんだ。だが目を覚ましたらこの東屋に倒れてた」
「えっ? ここに?」
「ああ。あの時は驚いたよ。エリオットがいつもの習慣でここにお茶をしに来た時に見つけてくれて……ふふっ。懐かしいな」
「それですぐに『神の計らい』だと?」
「そうだ。お前の母さんと結婚して子どもまでいたのに、エリオットを見た瞬間、惹かれていた。自分はノーマルだと思っていたから驚いたが、運命の相手に男女の区別はないとエリオットに言われて納得したんだよ。まさか、お前までこの世界に来るとは思いもしなかったがな」
私だってそうだ。
まさか死んだと思っていた父と異世界で対面できるなんて思ってもなかった。
「お前たちには私がいなくなった後、苦労かけたのではないか?」
「突然の出来事だったから大変ではあったけれど、金銭的に不自由はなかったな。行きたい大学にも行かせてもらったし、父さんの会社も継いで一応順調ではあったよ。母さんは再婚はしなかったけど、不幸そうではなかったな。やりたいこともやって楽しそうにしていたよ。2年前に病気で亡くなったけれど、最後まで幸せそうだった」
暴漢に襲われて死んだのは内緒にしておいたほうが良さそうだ
今になって無駄に心配させることもないだろう。
「そうか……友里恵は亡くなったのか。お前たち二人のことだけが気がかりだったから、その後のことを知ることができてよかったよ」
「ああ。きっと母さんも今頃、喜んでいると思うよ」
「ところでアシェルとの新婚生活はどうだ? 不自由はないか?」
父のその言葉にアシェルがほんのり頬を赤らめる。
毎日毎日愛し合っているから不自由どころか幸せでしかないからな。
「国王さまによくしてもらえているおかげで何不自由ない生活を過ごせているよ。なぁ、アシェル」
「はい。この分だと、近いうちにお義父さまにもいいご報告ができるかもしれません」
「それは……そうか、それは楽しみだな」
どうやら父はアシェルの言わんとしていることに気づいたようだ。
妊娠可能となったアシェルの身体に半年ほど毎日蜜を注ぎつづけるとようやく子ができるのだからな。
「あの……父さんと国王さまには子どもは?」
「ああ、一人いるよ。次期国王となるべく、今は隣国で留学中だ。帰国したら久遠にも会わせたいとエリオットとも話をしているところだ」
「その子は、もしかして……父さんが、産んだのか?」
「――っ!!」
その父の表情に私は全てを悟った。
エリオット国王と二人でいるのを見た時から、アシェルと同じなのは父じゃないかと思っていたんだ。
まさか父が、母でもあったなんて……驚きしかないが、ここでは婚姻に男女の違いなどもないというのだから、考え自体を改めるしかないのだろう。
「久遠……私もここにきた時は葛藤もしたものだ。妻がいて、子どももいた私がエリオットに抱かれる。そこに戸惑いが何もなかったとは言わない。だが、その戸惑いすら払拭するほどに、私はエリオットを愛したんだ。今は、エリオットと愛し合い、エイデンを授かれたことを幸せだと思っている。これが、私たちにいた世界ならどんなに望んでも愛しいエリオットとの子どもなど望めないのだからな」
確かにそうだ。
私だって、いつかは愛するアシェルとの間に子ができることを望んでいるんだ。
きっとアシェルではなく、私が産むほうだったとしてもそれは変わらなかっただろう。
「エイデンが生まれた時の感動は一生忘れないよ。もちろん、お前が生まれた時のこともしっかりと覚えている。あの感動を覚えていたからこそ、私はエリオットとの子どもが欲しいと思えたんだ」
「父さん……」
「だから、私はエリオットと愛し合ったことを恥ずかしいとは思っていないよ。むしろ、こんなに愛されていることを自慢したいくらいだ」
そう堂々と言い切る父の姿に私は感動した。
私だってアシェルとのことをいつだって自慢したいくらいだからな。
「サク、嬉しいことを言ってくれるのだな」
「――っ、エリオット。聞いていたのですか?」
「愛しいサクが私とのことを息子に自慢してくれているのだ。聞かない選択などあるはずがない」
エリオット国王は嬉しそうに父の隣に腰を下ろした。
「クオン、其方の父は私が一生を賭けて愛し続けるから、心配しなくていいぞ。クオンとアシェルの子が生まれるのを楽しみにしている」
「はい。国王さま。父をよろしくお願いします」
そういうと、エリオット国王は嬉しそうに父の頬にキスをした。
恥ずかしそうにしながらも、父もまた嬉しそうで……私はアシェルと顔を見合わせて幸せを分かち合った。
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