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神の計らい
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「んっ? ここは……どこだ?」
辺りを見回すとかなり広々とした部屋に見慣れない家具が置かれている。
ぱっと見ただけでもどれも手の込んだ細工がされているのがわかる。
それに私が寝ているこのベッドもかなり品質が良く私の部屋に置いていたものと大差は無さそうだ。
だが、どれにも見覚えはない。
ここは一体どこなんだ?
落ち着け。
思い出すんだ。
私は……確か………………。
ああ、そうだ。
車に乗り込もうとしたところを暴漢に襲われたのだったな……。
ドンと誰かに体当たりされたと思ったら、内臓が抉られるような不快な感覚を味わった。
刺されたと気付いたのは足へ伝っていく生温かな血の感触と鉄の匂いを嗅いだからだ。
刺された刃物が引き抜かれた瞬間、一気に大量の血液が流れ出しあっという間に立っていられなくなった。
一番近い記憶がこれだということは、もしかしたらここは病室かもしれない。
そうか……あれほどの出血がありながら、命を取り留めたのか……。
ふっ。私もかなりしぶといな。
あの時の騒然とした情景を思い出すと、今こうして自分が生きていられることはとてつもない奇跡だろう。
……いや、ちょっと待て。
ここが病室だとしたら、あれだけの傷を負いながらどうして酸素マスクどころか管も何もないのだ?
点滴すらもしていないじゃないか。
それに何より身体に痛みが何もない。
恐る恐る刺された場所に手をやると、そこには手当ての痕どころか、傷を負った痕跡すらない。
「な――っ? これは、一体どういうことだ……?」
ここを刺されたと思ったがあまりの大量出血に記憶が混乱してるのか?
そう思って布団を剥ぎ取り、身体中をくまなく触れてみたがどこにも怪我ひとつしていない上、病院着のようなものしか身につけていない。
「……どういうことなんだ?」
もう訳がわからない。
この場所どころか自分の記憶すらもわからなくなっているこの状況でなにから整理すればわからない。
いや、落ち着け。
こういう時こそ冷静でいなければ……。
必死に深呼吸をして気持ちを落ち着けようとするが、落ち着かせようと思えば思うほど焦ってしまうのは何故だろう。
自分の周りを見回したが、鞄どころか、時計やスマホ、自分がきていたであろうスーツでさえも見当たらない。
そう。
ここには調べる術が全くないのだ。
とはいえ、ここがどこかもわからないのに勝手に部屋を出て動き回ることもできない。
この部屋に誰かが来てくれるのを待つしかないのか……。
そう思っていたその時、カチャリと扉が開く音が聞こえた。
「あ、目を覚まされましたか?」
「――っ!」
私を見てにっこりと微笑みかける美しい少女……いや、少年にときめいてしまった。
薄い茶色の髪は柔らかそうだ。
大きな二重の目に輝く青い瞳。それを覆う長いまつ毛、小さいがスーッと筋の通った可愛らしい鼻。
そして、小さくて形の良い唇。
何よりも陶器のように滑らかで色白の肌。
その全てが私を魅了する。
「ただお眠りになっているだけとの医師の診断だったのですが、どこかお加減でも? もう一度医師をお呼び致しましょうか?」
「あ、いや。大丈夫だ。迷惑をかけてしまったようで申し訳ない」
「お元気になられたようで安心いたしました。さぁ、よろしければこちらをお飲みください」
「これは……?」
「レモン水です。随分長くお眠りでしたから、喉が渇いていらっしゃるでしょう?」
見慣れない場所で手渡される飲み物に少し警戒してしまうが、目の前の美しい彼が悪いものを飲ませるとは到底思えず、私はそれを受け取りゴクリと飲んだ。
爽やかなレモン水がカラカラに渇いていた身体にスーッと染み渡っていくようなそんな感覚がして、私は一気にそれを飲み干した。
「ふふっ。おかわりをお持ちしましょうか?」
「えっ、あ、いや。もう大丈夫だ。ありがとう」
グラスを手渡すと彼の指がそっと触れる。
それだけでもなぜか無性にドキドキしてしまう。
彼は受け取ったグラスを隣のテーブルに置き、私の寝ているベッドの端にゆっくりと腰を下ろした。
「あの、仰りたくないことは無理にはお聞きいたしませんが……お話をお伺いしてもよろしいですか?」
「ああ。だが、私も何がどうなっているのかわからず……一体何から話したら良いやら……。あの、ここは一体どこなのだ?」
「ここはヴァラスウィン王国にある、僕の家……フェレーラ公爵家の客間です」
「ヴァラスウィン王国? フェレーラ、公爵家……?」
「はい。僕はここの息子でアシェルといいます。あなたがうちの中庭で倒れていたのを僕が見つけて、バート……あ、我が家の執事ですが、そのバートにこの客間まで運んでもらったのです」
聞きなれない国名に、公爵家……と言ったか。
目の前にいる彼はどう見ても日本人でないことは明らかだ。
一瞬にして海外に飛んだとは考えにくい。
何よりヴァラスウィン王国など地球上のどこにもないはずだ。
ということは……ここは、地球でないどこか。
私は異世界に飛ばされたということなのか?
いや、待て。
そんな漫画や小説のようなことが起こるのか?
だが、私の記憶通りだとすると私は刺されてあれほどの出血をしてしまったのだ。
あの時、死んでここにやってきた……そうも考えられる。
「あ、あの……もしかして、何も覚えていらっしゃらないとか? やはりもう一度医師を呼んで参りましょうか?」
私がなんの反応も示さなかったから心配してくれたのだろう。
「心配をかけてしまい申し訳ない。いや、申し訳ありません。公爵家のご子息であれば、王家に次ぐ身分でいらっしゃるはず。そうとは知らず、先ほどから不遜な物言いで失礼いたしました」
私が頭を下げると彼は焦ったように声をあげた。
「そ、そんな……。僕は公爵家といっても嫡男でもありませんし、あなたよりも年も下ですから気になさらないでください。それよりもあなたのことをお教えいただけませんか?」
「私の名は邑楽久遠。あ、名前が久遠です」
「クオンさん……とても素敵なお名前ですね」
「いや、ありがとうございます。仕事は……何と言ったらいいか……まぁ、経営者というところでしょうか。暴漢に襲われ大量出血で倒れたというのが私の覚えている最後の記憶です。目を覚ましたらここにいてどうなっているのかはわかりませんでしたが、あなたの話を伺っておそらくここは異世界だろうと思っています」
「……なるほど。あなたはやはり僕の『神の計らい』ですね」
「『神の計らい』? それは?」
「この世界では18歳までに必ず将来結婚する相手に出会うとされているのですよ。あなたを中庭で見つけたときにこの人が僕の運命の相手だとすぐにわかりました。だからすぐに客間に運んだのです」
「えっ……で、ですが私たちは男同士。結婚など……」
「『神の計らい』に男女の区別などありません。神がそれぞれにピッタリとあう相手を用意してくださるのですから、それに従うだけです。それとも、あなたは僕ではお嫌でしょうか?」
「嫌だなんて、そんなこと……」
そうだ。
嫌なことなどあろうはずがない。
初対面だというのにこんなにも惹かれた相手などいないのだから。
「ふふっ。僕、今日が18の誕生日なんです。このまま運命の相手に出会わずに誕生日を終えるのではと不安に思っていましたが神が他の世界から僕のお相手を連れて来てくれたのですね。素敵な誕生日の贈り物です。あの、クオンさん……僕のことはアシェルと呼んでください」
「アシェル……あの、そもそも異世界からきたなどそんなに容易く信じていただけるのですか?」
「『神の計らい』には男女の区別もないように、世界の区別もありません。この国にも異世界からやって来た方と運命を共にされている方は今までにも何人かいるのですよ」
「えっ? そうなのですか?」
「ええ。二十年ほど前にも異世界からこられた方と国王さまが出逢われて、今も仲睦まじくお過ごしでいらっしゃいますよ」
「国王さまの伴侶が異世界から……」
なるほど……アシェルがこんなにも冷静に話を聞いてくれるのも納得だな。
「あの、お加減がよろしいようでしたら、僕の父に会っていただけませんか? クオンさんを紹介したいのです」
「こちらこそぜひご挨拶をさせていただきたい」
「ではこちらへ……」
「あ、でもこのような格好では……」
病院着のような簡易的なものしか着ていないのに、これで挨拶に行くの憚られる。
「私が着てきた服はありますか?」
そう尋ねるとアシェルは急に顔を真っ赤にして、口籠もりながら話し始めた。
「あの……それが、クオンさん……その、中庭で……何も身につけずに倒れていらっしゃって……」
「えっ?!!」
「それで、バートに頼んで寝巻きを……」
「――っ!!!」
なんと!
まさか裸で倒れていたとは……。
どおりで荷物も何もないはずだ。
と、それよりもアシェルに裸を見られてしまったということか……。
うわー、なんたる失態。
神も急にここに連れてくるならせめて服くらい着させておいてくれよ。
「申し訳ありません。見苦しいものを見せてしまって……」
「そんな、見苦しいだなんて……ぼく、自分以外の裸を見たのは初めてでしたけどクオンさんの裸、すごく鍛えていらっしゃって素敵でした。騎士のように逞しくて……本当に格好良かったですよ。どうしたらそんなに鍛えられるのか教えていただきたいくらいです」
にっこりと微笑まれドキッとした。
今まで女性たちにも、それに鍛えていたジムでも身体を褒められることはよくあったが、アシェルに褒められるとどうしてこんなにも嬉しくなるのだろう。
本当にアシェルが私の運命の相手だということか……。
男なんて考えたこともなかったが……アシェルなら抱いてみたい。
アシェルが私の愛撫や私のモノに突かれて可愛い声をあげるのを見たい……。
一度そんな邪な気持ちを抱いたら我慢できなくなった。
薄い寝巻きの下で私の愚息は既に大きく昂っている。
ここのところ忙しくてひとりですることもなかったから余計だな。
「あの、クオンさん? どうかなさったのですか?――わっ!!」
アシェルを見つめながら微動だにしていなかった私を心配して声をかけてくれたアシェルに手を伸ばし、彼をギュッと抱きしめた。
辺りを見回すとかなり広々とした部屋に見慣れない家具が置かれている。
ぱっと見ただけでもどれも手の込んだ細工がされているのがわかる。
それに私が寝ているこのベッドもかなり品質が良く私の部屋に置いていたものと大差は無さそうだ。
だが、どれにも見覚えはない。
ここは一体どこなんだ?
落ち着け。
思い出すんだ。
私は……確か………………。
ああ、そうだ。
車に乗り込もうとしたところを暴漢に襲われたのだったな……。
ドンと誰かに体当たりされたと思ったら、内臓が抉られるような不快な感覚を味わった。
刺されたと気付いたのは足へ伝っていく生温かな血の感触と鉄の匂いを嗅いだからだ。
刺された刃物が引き抜かれた瞬間、一気に大量の血液が流れ出しあっという間に立っていられなくなった。
一番近い記憶がこれだということは、もしかしたらここは病室かもしれない。
そうか……あれほどの出血がありながら、命を取り留めたのか……。
ふっ。私もかなりしぶといな。
あの時の騒然とした情景を思い出すと、今こうして自分が生きていられることはとてつもない奇跡だろう。
……いや、ちょっと待て。
ここが病室だとしたら、あれだけの傷を負いながらどうして酸素マスクどころか管も何もないのだ?
点滴すらもしていないじゃないか。
それに何より身体に痛みが何もない。
恐る恐る刺された場所に手をやると、そこには手当ての痕どころか、傷を負った痕跡すらない。
「な――っ? これは、一体どういうことだ……?」
ここを刺されたと思ったがあまりの大量出血に記憶が混乱してるのか?
そう思って布団を剥ぎ取り、身体中をくまなく触れてみたがどこにも怪我ひとつしていない上、病院着のようなものしか身につけていない。
「……どういうことなんだ?」
もう訳がわからない。
この場所どころか自分の記憶すらもわからなくなっているこの状況でなにから整理すればわからない。
いや、落ち着け。
こういう時こそ冷静でいなければ……。
必死に深呼吸をして気持ちを落ち着けようとするが、落ち着かせようと思えば思うほど焦ってしまうのは何故だろう。
自分の周りを見回したが、鞄どころか、時計やスマホ、自分がきていたであろうスーツでさえも見当たらない。
そう。
ここには調べる術が全くないのだ。
とはいえ、ここがどこかもわからないのに勝手に部屋を出て動き回ることもできない。
この部屋に誰かが来てくれるのを待つしかないのか……。
そう思っていたその時、カチャリと扉が開く音が聞こえた。
「あ、目を覚まされましたか?」
「――っ!」
私を見てにっこりと微笑みかける美しい少女……いや、少年にときめいてしまった。
薄い茶色の髪は柔らかそうだ。
大きな二重の目に輝く青い瞳。それを覆う長いまつ毛、小さいがスーッと筋の通った可愛らしい鼻。
そして、小さくて形の良い唇。
何よりも陶器のように滑らかで色白の肌。
その全てが私を魅了する。
「ただお眠りになっているだけとの医師の診断だったのですが、どこかお加減でも? もう一度医師をお呼び致しましょうか?」
「あ、いや。大丈夫だ。迷惑をかけてしまったようで申し訳ない」
「お元気になられたようで安心いたしました。さぁ、よろしければこちらをお飲みください」
「これは……?」
「レモン水です。随分長くお眠りでしたから、喉が渇いていらっしゃるでしょう?」
見慣れない場所で手渡される飲み物に少し警戒してしまうが、目の前の美しい彼が悪いものを飲ませるとは到底思えず、私はそれを受け取りゴクリと飲んだ。
爽やかなレモン水がカラカラに渇いていた身体にスーッと染み渡っていくようなそんな感覚がして、私は一気にそれを飲み干した。
「ふふっ。おかわりをお持ちしましょうか?」
「えっ、あ、いや。もう大丈夫だ。ありがとう」
グラスを手渡すと彼の指がそっと触れる。
それだけでもなぜか無性にドキドキしてしまう。
彼は受け取ったグラスを隣のテーブルに置き、私の寝ているベッドの端にゆっくりと腰を下ろした。
「あの、仰りたくないことは無理にはお聞きいたしませんが……お話をお伺いしてもよろしいですか?」
「ああ。だが、私も何がどうなっているのかわからず……一体何から話したら良いやら……。あの、ここは一体どこなのだ?」
「ここはヴァラスウィン王国にある、僕の家……フェレーラ公爵家の客間です」
「ヴァラスウィン王国? フェレーラ、公爵家……?」
「はい。僕はここの息子でアシェルといいます。あなたがうちの中庭で倒れていたのを僕が見つけて、バート……あ、我が家の執事ですが、そのバートにこの客間まで運んでもらったのです」
聞きなれない国名に、公爵家……と言ったか。
目の前にいる彼はどう見ても日本人でないことは明らかだ。
一瞬にして海外に飛んだとは考えにくい。
何よりヴァラスウィン王国など地球上のどこにもないはずだ。
ということは……ここは、地球でないどこか。
私は異世界に飛ばされたということなのか?
いや、待て。
そんな漫画や小説のようなことが起こるのか?
だが、私の記憶通りだとすると私は刺されてあれほどの出血をしてしまったのだ。
あの時、死んでここにやってきた……そうも考えられる。
「あ、あの……もしかして、何も覚えていらっしゃらないとか? やはりもう一度医師を呼んで参りましょうか?」
私がなんの反応も示さなかったから心配してくれたのだろう。
「心配をかけてしまい申し訳ない。いや、申し訳ありません。公爵家のご子息であれば、王家に次ぐ身分でいらっしゃるはず。そうとは知らず、先ほどから不遜な物言いで失礼いたしました」
私が頭を下げると彼は焦ったように声をあげた。
「そ、そんな……。僕は公爵家といっても嫡男でもありませんし、あなたよりも年も下ですから気になさらないでください。それよりもあなたのことをお教えいただけませんか?」
「私の名は邑楽久遠。あ、名前が久遠です」
「クオンさん……とても素敵なお名前ですね」
「いや、ありがとうございます。仕事は……何と言ったらいいか……まぁ、経営者というところでしょうか。暴漢に襲われ大量出血で倒れたというのが私の覚えている最後の記憶です。目を覚ましたらここにいてどうなっているのかはわかりませんでしたが、あなたの話を伺っておそらくここは異世界だろうと思っています」
「……なるほど。あなたはやはり僕の『神の計らい』ですね」
「『神の計らい』? それは?」
「この世界では18歳までに必ず将来結婚する相手に出会うとされているのですよ。あなたを中庭で見つけたときにこの人が僕の運命の相手だとすぐにわかりました。だからすぐに客間に運んだのです」
「えっ……で、ですが私たちは男同士。結婚など……」
「『神の計らい』に男女の区別などありません。神がそれぞれにピッタリとあう相手を用意してくださるのですから、それに従うだけです。それとも、あなたは僕ではお嫌でしょうか?」
「嫌だなんて、そんなこと……」
そうだ。
嫌なことなどあろうはずがない。
初対面だというのにこんなにも惹かれた相手などいないのだから。
「ふふっ。僕、今日が18の誕生日なんです。このまま運命の相手に出会わずに誕生日を終えるのではと不安に思っていましたが神が他の世界から僕のお相手を連れて来てくれたのですね。素敵な誕生日の贈り物です。あの、クオンさん……僕のことはアシェルと呼んでください」
「アシェル……あの、そもそも異世界からきたなどそんなに容易く信じていただけるのですか?」
「『神の計らい』には男女の区別もないように、世界の区別もありません。この国にも異世界からやって来た方と運命を共にされている方は今までにも何人かいるのですよ」
「えっ? そうなのですか?」
「ええ。二十年ほど前にも異世界からこられた方と国王さまが出逢われて、今も仲睦まじくお過ごしでいらっしゃいますよ」
「国王さまの伴侶が異世界から……」
なるほど……アシェルがこんなにも冷静に話を聞いてくれるのも納得だな。
「あの、お加減がよろしいようでしたら、僕の父に会っていただけませんか? クオンさんを紹介したいのです」
「こちらこそぜひご挨拶をさせていただきたい」
「ではこちらへ……」
「あ、でもこのような格好では……」
病院着のような簡易的なものしか着ていないのに、これで挨拶に行くの憚られる。
「私が着てきた服はありますか?」
そう尋ねるとアシェルは急に顔を真っ赤にして、口籠もりながら話し始めた。
「あの……それが、クオンさん……その、中庭で……何も身につけずに倒れていらっしゃって……」
「えっ?!!」
「それで、バートに頼んで寝巻きを……」
「――っ!!!」
なんと!
まさか裸で倒れていたとは……。
どおりで荷物も何もないはずだ。
と、それよりもアシェルに裸を見られてしまったということか……。
うわー、なんたる失態。
神も急にここに連れてくるならせめて服くらい着させておいてくれよ。
「申し訳ありません。見苦しいものを見せてしまって……」
「そんな、見苦しいだなんて……ぼく、自分以外の裸を見たのは初めてでしたけどクオンさんの裸、すごく鍛えていらっしゃって素敵でした。騎士のように逞しくて……本当に格好良かったですよ。どうしたらそんなに鍛えられるのか教えていただきたいくらいです」
にっこりと微笑まれドキッとした。
今まで女性たちにも、それに鍛えていたジムでも身体を褒められることはよくあったが、アシェルに褒められるとどうしてこんなにも嬉しくなるのだろう。
本当にアシェルが私の運命の相手だということか……。
男なんて考えたこともなかったが……アシェルなら抱いてみたい。
アシェルが私の愛撫や私のモノに突かれて可愛い声をあげるのを見たい……。
一度そんな邪な気持ちを抱いたら我慢できなくなった。
薄い寝巻きの下で私の愚息は既に大きく昂っている。
ここのところ忙しくてひとりですることもなかったから余計だな。
「あの、クオンさん? どうかなさったのですか?――わっ!!」
アシェルを見つめながら微動だにしていなかった私を心配して声をかけてくれたアシェルに手を伸ばし、彼をギュッと抱きしめた。
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