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番外編
大事なのは相性
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<side卓>
「ちょっ、一花。俺も行くよ」
一花くんが昇と直くんを誘って庭に遊びに行こうとしたのを見て、征哉くんが声をかけたけれどすげなく躱されていた。
少しショックを受けている様子の征哉くんを横目に一花くんは楽しそうに庭に向かった。
そんな様子を見たからか保くんが一緒に遊ぼうと一花くんに声をかけ、史紀くんもそれに加わって五人で庭に下りて行った。
征哉くんはそんな五人の姿を茫然として見つめているだけ。
あの征哉くんともあろう者がなんとも情けない姿だ。
「征哉くん、ほらこっちにきて話でもしないか?」
父の誘いにまだショックが隠せない様子ながらも征哉くんはこちらに来た。
「昇のことを気にしているんだろうが、何も心配はいらないよ。ずっと大事そうに直くんを抱っこしていただろう?」
「それはそうなんですが……やはり、同じ年齢だと私よりも話も合うだろうし、気にせずにはいられませんよ」
「ははっ。今更年齢のことなど考えても仕方がないだろう。そりゃあ小学生同士、共通点も多いのだから話が合うこともあるだろうが、相性はそれだけじゃない。一緒にいて安心するかどうかが重要な問題だろう。なぁ、卓」
父が征哉くんを諭しながら、私に話を振ってくる。
「ええ、そうですね。征哉くん、私も絢斗とは十歳歳が離れているし、他にも年が離れたカップルを知っている。大事なのは年齢じゃないことはわかるだろう? 玄哉と未知子さんも年が離れているが幸せなのは征哉くんも知っているじゃないか」
征哉くんは私の言葉に頷きながらもチラリと庭に視線を向ける。
「一花くんは優しい子だな。もうすっかり直くんのお兄さんになってくれている。きっと君を一緒に来させなかったのは直くんが大人の男を怖がると心配したからじゃないか?」
「でも、あの二人は……」
「右側にいるのは直くんの実の父親だよ」
私がさらりと告げると、征哉くんは驚きの表情を向けてきた。
「なんだ? 聞いてなかったのか」
「え、ええ。一花がこちらに招待されて子どもと会うと聞いたのでついてきただけで……」
なるほど。それなら心配するのも無理はない。
まぁ保くんと直くんの関係を詳しく話そうとすると事件も少し関わってくるからな。
「実の、父親……そうだったんですね」
なんとなく気が抜けたような、そんな表情をしているが彼のこんな表情を見られるのもなかなかないことだろう。
「史紀くんは彼の全てを気に入ってくれているんだよ。会社でも休憩時間はよく一緒に過ごしているらしい。君と会ったのも二人が一緒にいる時だったろう?」
「はい。カフェで楽しそうに話をしてました」
「でもあの二人に恋愛感情はないよ。ただ友人として仲がいいだけだ。昇と一花くん、それに直くんは彼らのような関係になるんじゃないかな」
「そう、ですね……」
みんなで庭に視線を向けると、
「すごい、すごーい!」
「のぼりゅ、ちゅごーい!」
と一花くんと直くんが昇を褒めているところが見えた。
ちょっとタイミングが悪かったかと思ったが、征哉くんからはさっきまでの嫉妬心の塊のような表情は見られなかった。
どうやらようやく納得してくれたようだ。
庭での遊びが一段落したところで、母さんがお昼にしようと庭に向かって声をかけた。
「わぁー、なおくん。ごはんだよー。おててあらいにいこー! のぼるくんもたもつくんもふみくんもいくよー!」
小さな先生のような一花くんの後について昇たちが手を洗いにいく。
それを見守っていると、手を洗い終えた一花くんは両手を見せたまま一直線に征哉くんの元にやってきた。
「みて、せいくん。おてて、きれいにあらってきたよー!」
その満面の笑みに釣られて私も笑ってしまう。
ほら、何も心配することはない。
一花くんにとって、征哉くんは大切な存在だと理解しているんだから。
「おれも、て、あらってきたー!」
「あらっちぇきちゃー」
昇と一花くんの真似をしているのか、直くんも一緒になって両手を広げて見せている。
そのなんともいえない可愛い姿にみんなが微笑ましく思っていた。
「ちょっ、一花。俺も行くよ」
一花くんが昇と直くんを誘って庭に遊びに行こうとしたのを見て、征哉くんが声をかけたけれどすげなく躱されていた。
少しショックを受けている様子の征哉くんを横目に一花くんは楽しそうに庭に向かった。
そんな様子を見たからか保くんが一緒に遊ぼうと一花くんに声をかけ、史紀くんもそれに加わって五人で庭に下りて行った。
征哉くんはそんな五人の姿を茫然として見つめているだけ。
あの征哉くんともあろう者がなんとも情けない姿だ。
「征哉くん、ほらこっちにきて話でもしないか?」
父の誘いにまだショックが隠せない様子ながらも征哉くんはこちらに来た。
「昇のことを気にしているんだろうが、何も心配はいらないよ。ずっと大事そうに直くんを抱っこしていただろう?」
「それはそうなんですが……やはり、同じ年齢だと私よりも話も合うだろうし、気にせずにはいられませんよ」
「ははっ。今更年齢のことなど考えても仕方がないだろう。そりゃあ小学生同士、共通点も多いのだから話が合うこともあるだろうが、相性はそれだけじゃない。一緒にいて安心するかどうかが重要な問題だろう。なぁ、卓」
父が征哉くんを諭しながら、私に話を振ってくる。
「ええ、そうですね。征哉くん、私も絢斗とは十歳歳が離れているし、他にも年が離れたカップルを知っている。大事なのは年齢じゃないことはわかるだろう? 玄哉と未知子さんも年が離れているが幸せなのは征哉くんも知っているじゃないか」
征哉くんは私の言葉に頷きながらもチラリと庭に視線を向ける。
「一花くんは優しい子だな。もうすっかり直くんのお兄さんになってくれている。きっと君を一緒に来させなかったのは直くんが大人の男を怖がると心配したからじゃないか?」
「でも、あの二人は……」
「右側にいるのは直くんの実の父親だよ」
私がさらりと告げると、征哉くんは驚きの表情を向けてきた。
「なんだ? 聞いてなかったのか」
「え、ええ。一花がこちらに招待されて子どもと会うと聞いたのでついてきただけで……」
なるほど。それなら心配するのも無理はない。
まぁ保くんと直くんの関係を詳しく話そうとすると事件も少し関わってくるからな。
「実の、父親……そうだったんですね」
なんとなく気が抜けたような、そんな表情をしているが彼のこんな表情を見られるのもなかなかないことだろう。
「史紀くんは彼の全てを気に入ってくれているんだよ。会社でも休憩時間はよく一緒に過ごしているらしい。君と会ったのも二人が一緒にいる時だったろう?」
「はい。カフェで楽しそうに話をしてました」
「でもあの二人に恋愛感情はないよ。ただ友人として仲がいいだけだ。昇と一花くん、それに直くんは彼らのような関係になるんじゃないかな」
「そう、ですね……」
みんなで庭に視線を向けると、
「すごい、すごーい!」
「のぼりゅ、ちゅごーい!」
と一花くんと直くんが昇を褒めているところが見えた。
ちょっとタイミングが悪かったかと思ったが、征哉くんからはさっきまでの嫉妬心の塊のような表情は見られなかった。
どうやらようやく納得してくれたようだ。
庭での遊びが一段落したところで、母さんがお昼にしようと庭に向かって声をかけた。
「わぁー、なおくん。ごはんだよー。おててあらいにいこー! のぼるくんもたもつくんもふみくんもいくよー!」
小さな先生のような一花くんの後について昇たちが手を洗いにいく。
それを見守っていると、手を洗い終えた一花くんは両手を見せたまま一直線に征哉くんの元にやってきた。
「みて、せいくん。おてて、きれいにあらってきたよー!」
その満面の笑みに釣られて私も笑ってしまう。
ほら、何も心配することはない。
一花くんにとって、征哉くんは大切な存在だと理解しているんだから。
「おれも、て、あらってきたー!」
「あらっちぇきちゃー」
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そのなんともいえない可愛い姿にみんなが微笑ましく思っていた。
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