恋人たちの夜 〜幸せな結婚式に参列して甘く蕩ける夜を過ごしました

波木真帆

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恋人たちの夜 <伊吹&史紀編 3>

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チュッと涙を吸われて目を開けると、

「涙まで美味しいんだな、史紀は」

と笑われる。

「伊吹……」

「そろそろ食事を頼もうか?」

このまま伊吹に愛してほしい。でも食事なしは辛いか。
逆に食事さえ終われば、あとはずっと伊吹と二人だけの時間だ。
ここまで我慢したんだから、もう少しの辛抱だ。

「うん、お願い」

僕の言葉に伊吹はさっと立ち上がり内線電話で食事をお願いしていた。
いつでも出せる準備ができていたようで、それからすぐに料理がやってきた。

地の物をふんだんに使った見た目も綺麗な料理の数々に圧倒される。
あっという間に大きな座卓の上が料理でいっぱいになった。

「これはすごいなー。伊吹の好きな松茸づくしだよ」

「ああ、すぐ近くの山で採れたものらしい。大きくて香りも最高だな」

「早速食べよう!」

「史紀、少し飲まないか?」

料理と一緒に運ばれてきた徳利を見せられてゴクリと喉が鳴る。

決して強くはないけれど、日本酒は嫌いじゃない。

「じゃあ、少しだけ」

お猪口を持つと伊吹が注いでくれる。
交代して伊吹のお猪口にも注いで乾杯することにした。

「何に乾杯する?」

「そりゃあもちろん俺たちの未来のために」

「うん。乾杯!」

カチンと小さな音が鳴るのを聞いてから口をつけた。

「あっ、これ美味しい!」

「ああ、かなりいい日本酒だよ。今度お礼を言わないとな」

「そうだね」

伊吹と二人っきりで食べる食事は珍しいわけじゃない。でも今日の食事がいつも以上に美味しく感じられるのは、今日で僕と伊吹の関係がすすんだからかもしれない。

「ふぅー、お腹いっぱい」

「史紀、いつもより食べてたな」

「だって、ものすごく美味しかったから」

「ああ。そうだな。どれも最高に美味しかった。さすが貴船コンツェルンだな」

「だね。うちもこういう保養所を作るのも社員の士気が高まっていいかもね」

僕一人で頑張っていた時は会社自体を機能させることで精一杯だったからそこまで手をつけられなかったけれど、一眞さんが戻ってきてくれた今なら周りに目を向けることもできそうだ。

伊吹がベルを鳴らすと、すぐに従業員の人たちが入ってきてあっという間に食べ終わったお皿を片付けてくれた。
その無駄のない動きに驚きしかない。

彼らが出ていくと伊吹はすぐに鍵をかけ、僕の元に戻ってきた。
その目が欲情を孕んでいてドキッとする。
ああ、とうとうこの時間が来たんだ。

「これで、明日の朝までは誰にも邪魔されない。温泉に入る前に少しだけそのドレス姿を堪能させてくれないか?」

「いいよ。今日は伊吹の好きにして……」

「史紀……」

伊吹はゴクリと喉を鳴らしながら、僕の手を取ってテラスへ連れて行った。
大きなソファーに足を投げ出させて僕を座らせた伊吹は、僕の横に腰を下ろすとそのまま唇を重ねた。
愛し合う前の情熱的で激しいキス。いつの間にか滑り込んできた肉厚な舌に絡みつかれて、甘い唾液を味わっていると、

「んんぅっ……!!」

突然、ビリビリっとした刺激が全身を駆け巡った。

あまりの衝撃に唇が離れて驚いて息吹を見ると、伊吹はこの上なく嬉しそうな表情で僕を見ていた。

「あ、今のは……?」

「これか?」

「ひゃあっん!!」

確実に知っているこの刺激にびっくりして視線を落とすと、ドレスを着たままなのに伊吹の手が僕の肌に直に触れているのがわかる。

「えっ? なん、で?」

「これは蓮見さんが作った、着用したまま愛し合えるドレスだそうだ」

「うそ……っ」

「知らなかったのか? てっきり史紀はそれをわかってて俺のためにこのドレスを選んでくれたんだと思っていたよ」

「そんなの、しらない……っ」

「まぁ、そういうことにしておくか。だから、たっぷりと堪能させてもらうよ」

伊吹は嬉しそうに服の中で指を動かし、僕の感じる場所を弄ってくる。
その度に僕の口から抑えられない声が漏れるけれど、

「もっと可愛い声を聞かせて……」

と耳元で囁かれる。

今日は全て伊吹の言う通りにしよう。そう決めたんだ。
だから僕は感じるままに声を上げ続けた。
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