イケメン国王の初恋 〜運命の相手は異世界人

波木真帆

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番外編

敗北を知った日

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ちょっと違う視点が書きたくなってしまったのでちょっと出してみます。
一応ここで終わりですが、次回、ヴィクトルか礼央視点を書いてお披露目編を完結にしたいと思っています。
楽しんでいただけると嬉しいです。


  *   *   *


<sideアールベルデ王国・ガルヴァー二侯爵令嬢・スザナ>

――お前はこの国で一番美しい。将来はアールベルデ王国の王妃となるのだぞ。

物心ついた時から、ずっとそう言われ続けてきた。

アールベルデ王国の王子・ヴィクトルさまの妻となり、王妃となって、国民から慕われるように美しい女性であり続けようと美容には人一倍気遣った。

そして、ようやく成人を迎え、社交界デビューをまもなくに控えたある日、アールベルデ王国に激震が走った。
国王陛下と王妃殿下が事故に遭われ崩御なさったのだ。

アールベルデ王国は悲しみに包まれたけれど、つい先日成人を迎えられたばかりのヴィクトル王子が後継となり新しい国王陛下となられることが正式に決まった。

私の社交界デビューとなる年に一度の王家主催のパーティーは、急遽ヴィクトル国王陛下の王妃を見つけるためのパーティーになってしまった。

国内外からたくさんの女性が集められ、私のその中の一人になってしまったけれど、周りを見ても私が一番美しい。
そんな自負があった。
現に、当日大広間中の視線を集めていたのは私。

ヴィクトルさまも私に一目惚れなさるはずだわ!

そう自信満々に並んでいたのに、ヴィクトルさまはさっと私に視線を向けただけで一切表情も変えずに私の前を過ぎ去っていってしまった。

私の美しい姿に一目惚れをなさって、目があった途端に

――スザナ! 其方はなんて美しいのだ! 私の妻になってくれ!!

そう言われる未来しか想像していなかったのに……。

結局私は、ヴィクトル王子と話もできないまま社交会デビューを終えてしまった。

それから数年。
私は結婚もせずに侯爵令嬢のまま。

決して縁談話がなかったわけじゃない。

あのパーティーで私を見初めた人たちからたくさんの縁談話が舞い込んできたけれど、物心ついた時からずっとヴィクトルさまの妻になることだけを信じて過ごして来たのだから、それを叶えることしか考えられず、全ての縁談を断っていたら話自体私には来なくなってしまっていた。

それでも微かな希望はヴィクトルさまが未だ結婚していないという事実。

あの時は結婚なさるお気持ちがなかったかもしれないけれど、後継ぎを作るために必ず結婚はなさるはず!!
そう信じて、ヴィクトルさまからお声がけくださる日を私は待ち続けた。

――スザナ、私の妻になってくれ!

そう言われる日をただただ夢見て……。


ところが、ある日。
お城から我が家に招待状が届いた。

――スザナ、ヴィクトル国王陛下がご結婚なさるそうだ。

父上のその言葉に目の前が真っ暗になった。
ヴィクトルさまが誰かとお会いになったなんて、そんな情報はなかったはずなのにいつの間にそんなことに?

そんなの信じられない!!

そう叫んだけれど、王家からの招待状はどう見ても本物。

しかも、お披露目の日は三日後。

王家の主催のパーティーなら一ヶ月は先なのが普通なのに、三日後?

――国王陛下がすぐにと仰ったようだ。それほど、手放されたくないお相手なのだろう。

そんなこと……。
私のヴィクトルさまなのに……。

――スザナ。お前がそんなにも国王陛下に固執してしまったのは、私のせいだな、申し訳ない。だが、国王陛下もご結婚なさる。いい加減お前も国王陛下を諦めて嫁にいってもらえないか?

父上に頭を下げられ、私は自分の恋をここで終わりにすることにした。

でも、ヴィクトルさまが本当にお幸せなのか、結婚相手が本当にヴィクトルさまに似合っているのか、それをはっきりとこの目で確かめてからだ。
そうでないと、諦められない!!

当日、私は最高級のドレスに身を包み、王宮の大広間に向かった。
私が大広間に入った途端、みんなが私に心を奪われているのがわかる。
ふふっ。当然よ。
私はこれまでずっと王妃となるべく人生の全てをかけて来たんだから。

ヴィクトルさまのお相手がいつ現れたのか、わからないけれど、絶対に私の方がヴィクトルさまを愛してるという自信がある。

相手が私を見て一瞬でも負けたと思わせられたら、私は絶対に諦めるのをやめよう。
そして、絶対に私が王妃になってやる!!

そう思っていたのだけど……


「ヴィクトル国王陛下、レオ妃殿下のご入場です」

という声に入口に目を向けると、あれほどざわついていた大広間が一瞬にして水を打ったように静まり返った。

ヴィクトルさまの腕に抱かれている神々しいほどの美しい人物に皆、心も目も奪われ、息をするのすら忘れてしまうほど魅入ってしまっていた。

ヴィクトルさまの足音と衣擦れの音だけが聞こえるのを身動きすることもなくただ黙って見つめていた。

あのお方が……ヴィクトルさまの、お相手……。
あんな美しい人がこの世にいるなんて……。

まるで女神のようなその美しさに、目が離せない。
ヴィクトルさまはそんな私たちの様子にご満悦の表情を見せながら、玉座にお座りになった。
もちろん、女神のように美しいお相手を抱きかかえたまま。

ほんの少しの時間も離れていたくないと訴えるように、ヴィクトルさまはお相手を腕に閉じ込めている。
その姿に私は敗北を知った。

あんなにも無表情で私を見ていたヴィクトルさまがあんなにも幸せな笑顔を惜しげなく、お相手さまには見せているのだから勝てるわけがない。

私はいつかヴィクトルさまが振り向いてくれると意地になっていたけれど、あの無表情な顔を向けられた時点で諦めるべきだったんだ。

これからは、ヴィクトルさまと王妃さまの幸せを祈り続けよう。
私の失った幸せの分まで、お二人には幸せになっていただきたい。

今までヴィクトルさまがいた心はぽっかりと空いてしまったけれど、ヴィクトルさまがお幸せならそれでいいんだ。

そんな私に隣国の侯爵家から縁談が届いたのは、このパーティーの翌日。
ヴィクトルさまを諦めた私はようやく幸せを手に入れたのだった。
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