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番外編
事件解決のために
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直くんたちが楽しい休暇を過ごしている(ここではまだ出発前ですが……)裏側のお話。
法律については素人ですのでさらっと読み流してもらえると助かります。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side榊元春>
仕事が一段落してコーヒーでも飲もうと席を立とうとしたところで、プライベート用のスマホが振動を伝えた。
私の仕事中に家族が電話をかけてくるなんてよほどの急用でしかない。
画面表示を見れば花織からで慌てて電話をとった。
ー花織、どうした?
ーごめんなさい。今、大丈夫かしら?
ーああ。問題ない。それより電話なんてどうしたんだ?
ーそれが、今日は凌也さんと理央くんがうちに来てくれていたんだけど……
ーそうだったな。何かあったのか?
ー凌也さん宛に緑川先生のお父さまから連絡があってお話ししたいことがあるからと仰っていたから、これから我が家にお越しになるのよ。
ーえっ? 賢将さんが? もう帰国されていたんだな。知らなかった。
ーそれで、久嗣さんと清吾さんもお越しになるそうだから、元春さんもそのお話に加わったほうがいいと思って連絡したの。
ーさすが花織だな。ありがとう、連絡してくれて助かるよ。仕事の都合をつけて早く帰れるようにするから私が帰るまでのんびり過ごしてもらうよう声をかけておいてくれないか?
ーわかりました。でも気をつけて帰ってきてくださいね。
ー分かってる。愛してるよ、花織。
ー私も、愛してますよ。
少し照れながらも愛の言葉を返してくれる花織を愛おしく思いながら電話を切った。賢将さんが帰国なさっていたことにも驚いたが、我が家に集まった顔ぶれの凄さにそれ以上の驚きがある。
彼らが同席して凌也くんに話があると言っている以上、何かしら事件の匂いがする。
すぐにでも動いたほうがいい案件なら私も手を貸したほうがいいはずだ。
私はすぐに仕事の都合をつけ、自宅へ急いだ。
話の邪魔をしてはいけないと思い、玄関チャイムを鳴らさずに自分で鍵を開けて中に入った。
重要な話をしているかもしれないとリビングの扉を少しだけ開けて中の様子を窺ってみると、中で録音テープを再生している声が聞こえる。
その内容に怒りが湧き上がる。
未就学児に対する猥褻行為か。しかも加害者は小児科医で、被害者は今でもそのトラウマに苦しんでいる。そんな奴を野放しになんてしてはいけない。嫌疑不十分で釈放したことも許せない。今度こそそいつを捕まえてもう二度と被害者を作らせないようにしないと。
やはり帰ってきて正解だった。私も仲間に加えてもらわないといけないな。
リビングの中に入り、話を聞いていたことを告げ私も仲間に入った。幸い、凌也くんがその加害者についての情報を今でもまだ持っているようで、すぐに調査に入れるようだ。
「ちょっと連絡をしてきますので、失礼します」
「凌也くん、隣の部屋を使ってくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
さっとリビングを出ていった凌也くんの姿は頼もしさしかない。
「久嗣、自慢の息子だな」
「ああ。理央と出会ってからは人間らしさも身についたから余計だな。弁護士としては感情に左右されてはいけないのかもしれないが、昔より今の方が男としては断然上だよ。そうなれたのも全て理央のおかげだな」
久嗣の表情が柔らかい。可愛い息子の話をしている時はいつもこうだ。まぁ、私も人のことは言えないが。
「磯山の息子になった子は、賢将さんのお孫さんでいいんですよね?」
「ああ。私の可愛い孫だ」
「その子の写真とかないんですか?」
「もちろんあるよ。せっかくだから見せてあげよう」
私の言葉に賢将さんは嬉しそうにスマホを取り出し、アルバムを開いて画像を見せてくれた。
「この子が私の可愛い孫だ」
「うわー、可愛いですね。着ているのは桜守の制服ですか?」
「ああ。絢斗の制服を着せてみたそうだ。だが、近々桜守の編入試験を受けさせると言っていたからこの写真と同じになるよ」
「自分の子どもを桜守に通わせるのはどこか夢みたいなところがありますよね」
「ああ。わかるな。うちは2歳くらいでもう諦めたな」
私の言葉に清吾さんがポツリと呟くと、
「それはうちも同じだよ」
と久嗣も言っていた。うちも秀吾を行かせたかったが、将臣くんと一緒がいいと譲らなかったから諦めたんだ。さすがに将臣くんにはあの校風は似合わないからな。
「まさか賢将の孫が行くことになるとは……羨ましいな」
そんな話をしていると、凌也くんがリビングに戻ってきた。
「元春さん。明日の朝にはかなりの情報が集まるので、それで逮捕状を請求してください」
「もう集まるのか?」
「はい。奴が以前嫌疑不十分になった時から、いつかのために情報を集めておいたんです。さっきの音声データと被害者の情報を元に調査を加えたら、彼の母親と奴に繋がりがあることがわかったので、今、追加調査を入れています」
凌也くんの言葉に賢将さんが静かに怒りを見せていたのは、猥褻行為を行う医師に被害者を与えたのが実の母親だという事実だろう。この母親はすでに捕まっているが、この件についても教唆容疑で再逮捕しなければな。
どんなに怒りをもつ相手でも決して手を出さず、法の下に裁かれ罪を償ってもらわないといけない。
私たちにできることは、被害者の彼がこれから先幸せに過ごせるように加害者との縁を断ち切ることだけだ。
そのために私は尽力しよう。
法律については素人ですのでさらっと読み流してもらえると助かります。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side榊元春>
仕事が一段落してコーヒーでも飲もうと席を立とうとしたところで、プライベート用のスマホが振動を伝えた。
私の仕事中に家族が電話をかけてくるなんてよほどの急用でしかない。
画面表示を見れば花織からで慌てて電話をとった。
ー花織、どうした?
ーごめんなさい。今、大丈夫かしら?
ーああ。問題ない。それより電話なんてどうしたんだ?
ーそれが、今日は凌也さんと理央くんがうちに来てくれていたんだけど……
ーそうだったな。何かあったのか?
ー凌也さん宛に緑川先生のお父さまから連絡があってお話ししたいことがあるからと仰っていたから、これから我が家にお越しになるのよ。
ーえっ? 賢将さんが? もう帰国されていたんだな。知らなかった。
ーそれで、久嗣さんと清吾さんもお越しになるそうだから、元春さんもそのお話に加わったほうがいいと思って連絡したの。
ーさすが花織だな。ありがとう、連絡してくれて助かるよ。仕事の都合をつけて早く帰れるようにするから私が帰るまでのんびり過ごしてもらうよう声をかけておいてくれないか?
ーわかりました。でも気をつけて帰ってきてくださいね。
ー分かってる。愛してるよ、花織。
ー私も、愛してますよ。
少し照れながらも愛の言葉を返してくれる花織を愛おしく思いながら電話を切った。賢将さんが帰国なさっていたことにも驚いたが、我が家に集まった顔ぶれの凄さにそれ以上の驚きがある。
彼らが同席して凌也くんに話があると言っている以上、何かしら事件の匂いがする。
すぐにでも動いたほうがいい案件なら私も手を貸したほうがいいはずだ。
私はすぐに仕事の都合をつけ、自宅へ急いだ。
話の邪魔をしてはいけないと思い、玄関チャイムを鳴らさずに自分で鍵を開けて中に入った。
重要な話をしているかもしれないとリビングの扉を少しだけ開けて中の様子を窺ってみると、中で録音テープを再生している声が聞こえる。
その内容に怒りが湧き上がる。
未就学児に対する猥褻行為か。しかも加害者は小児科医で、被害者は今でもそのトラウマに苦しんでいる。そんな奴を野放しになんてしてはいけない。嫌疑不十分で釈放したことも許せない。今度こそそいつを捕まえてもう二度と被害者を作らせないようにしないと。
やはり帰ってきて正解だった。私も仲間に加えてもらわないといけないな。
リビングの中に入り、話を聞いていたことを告げ私も仲間に入った。幸い、凌也くんがその加害者についての情報を今でもまだ持っているようで、すぐに調査に入れるようだ。
「ちょっと連絡をしてきますので、失礼します」
「凌也くん、隣の部屋を使ってくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
さっとリビングを出ていった凌也くんの姿は頼もしさしかない。
「久嗣、自慢の息子だな」
「ああ。理央と出会ってからは人間らしさも身についたから余計だな。弁護士としては感情に左右されてはいけないのかもしれないが、昔より今の方が男としては断然上だよ。そうなれたのも全て理央のおかげだな」
久嗣の表情が柔らかい。可愛い息子の話をしている時はいつもこうだ。まぁ、私も人のことは言えないが。
「磯山の息子になった子は、賢将さんのお孫さんでいいんですよね?」
「ああ。私の可愛い孫だ」
「その子の写真とかないんですか?」
「もちろんあるよ。せっかくだから見せてあげよう」
私の言葉に賢将さんは嬉しそうにスマホを取り出し、アルバムを開いて画像を見せてくれた。
「この子が私の可愛い孫だ」
「うわー、可愛いですね。着ているのは桜守の制服ですか?」
「ああ。絢斗の制服を着せてみたそうだ。だが、近々桜守の編入試験を受けさせると言っていたからこの写真と同じになるよ」
「自分の子どもを桜守に通わせるのはどこか夢みたいなところがありますよね」
「ああ。わかるな。うちは2歳くらいでもう諦めたな」
私の言葉に清吾さんがポツリと呟くと、
「それはうちも同じだよ」
と久嗣も言っていた。うちも秀吾を行かせたかったが、将臣くんと一緒がいいと譲らなかったから諦めたんだ。さすがに将臣くんにはあの校風は似合わないからな。
「まさか賢将の孫が行くことになるとは……羨ましいな」
そんな話をしていると、凌也くんがリビングに戻ってきた。
「元春さん。明日の朝にはかなりの情報が集まるので、それで逮捕状を請求してください」
「もう集まるのか?」
「はい。奴が以前嫌疑不十分になった時から、いつかのために情報を集めておいたんです。さっきの音声データと被害者の情報を元に調査を加えたら、彼の母親と奴に繋がりがあることがわかったので、今、追加調査を入れています」
凌也くんの言葉に賢将さんが静かに怒りを見せていたのは、猥褻行為を行う医師に被害者を与えたのが実の母親だという事実だろう。この母親はすでに捕まっているが、この件についても教唆容疑で再逮捕しなければな。
どんなに怒りをもつ相手でも決して手を出さず、法の下に裁かれ罪を償ってもらわないといけない。
私たちにできることは、被害者の彼がこれから先幸せに過ごせるように加害者との縁を断ち切ることだけだ。
そのために私は尽力しよう。
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