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番外編
サプライズの行方 <中編>
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案の定楽しすぎて長くなったので前中後編にわけます。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「空良くん! みてみてー、ほら。うさぎだよ!」
「わぁー、可愛いっ! 僕のもみて! ほら、鳥さんだよ」
「ああー、可愛いっ!!」
理央くんも空良くんも型でくり抜くたびに嬉しそうな声をあげる。
その姿をお母さんは目を細めてみている。
「ふふっ。あなたにもあんな頃があったわね。ほら、初めて将臣くんにクッキーを焼いた時……」
「うん、覚えてる。懐かしいね」
何もないただの生地が可愛い形になって出来上がるのが嬉しかったんだ。
「あっ、この型……」
「覚えてる? あなたがヴァイオリンが好きだからって、将臣くんが買ってくれたのよね」
「そうそう。懐かしい~」
楽器シリーズの型はみんなでドイツに旅行に行った時、たまたま街の雑貨屋さんで見つけて気になってたら、将臣が買ってくれたんだ。
ヴァイオリンに、ホルン、ピアノにトランペット、トロンボーンなんて形も揃ってる。
それでクッキー焼いて行ったらしばらくの間、飾ってくれてたんだよね。
あれからしばらくクッキーといえば、あの型を使ってたっけ。
いろんな型でくり抜いたクッキーが天板に並んでいるけど、まだ生地は残ってる。
あっ、そうだ!
「ねぇ、理央くん。空良くん。この余った生地で可愛いのができるよ」
「えー、なになに? どうするんですか?」
手で擦ってしまったのか、打ち粉用の小麦粉をほっぺたにつけている理央くんと、同じくおでこに粉をつけちゃってる空良くん。
やっぱりこの二人は双子みたいで可愛い。
「いい? このプレーンの生地を大きな丸型でくり抜いて、その真ん中をこのハートの型でくり抜くんだよ。そして、こっちのピンクの生地を同じハートの型でくり抜いて、プレーンの生地の空いたところに嵌め込むの」
「わぁー、二色のクッキーになった! 可愛い!」
「ふふっ。これだけじゃないんだよ」
「なんだろう?」
不思議そうな顔をしている二人に見えるように作っていく。
「ハートの上の窪みに重なるように小さな星形の型でくり抜いて、抹茶生地を同じ星形の型でくり抜いて嵌め込んだら……」
「あっ! 苺みたい!!」
「ふふっ。せいかーいっ!! ピンクの生地にこうやって、白胡麻を飾ったら、ほら、もっと苺っぽく見えるでしょ?」
「秀吾さんっ、すごい! すごい! 魔法使いみたい!!」
「ふふっ。こんな感じでいろんな形でここにないものも作れるんだよ」
「わぁー! 僕も作ってみる!!」
「僕も! 僕も!」
理央くんと空良くんは二人して苺の形クッキーを作り始めた。
「あっ、上手!」
思っていた以上にくり抜くのがうまくて驚いてしまう。
「みてー、秀吾さん! こんなのできました!」
「あっ! 可愛いっ!!」
みると桜の花びらにくり抜かれたピンク生地の真ん中に小さな丸がくり抜かれ、そこに抹茶生地が嵌め込まれていて本物の花びらみたいに見える。
いろんなアイディアを出し合って、生地も全て使い切り、あとは焼くだけになった。
「ふふっ。たくさんできたわね。焼き上がったら味見がてらお茶しましょう」
「わぁー!」
「焼きたてを食べられるのが手作りのいいところだもんね」
大きなオーブンで一気に焼き上げていく。
もちろん、オーブンには理央くんも空良くんも一切近づかせない。
万が一にも火傷しちゃったら大変だもんね。
「わぁー、いい匂いがしてきましたー!!」
焼いて数分経つと、香ばしい匂いが漂ってくる。
二人とも待ちきれない様子で少し離れたところからオーブンの中身を見つめている。
「ふふっ。待ちきれない様子が可愛いわね」
「これもビデオに撮れてるの?」
「もちろんよ。あなたが理央くんと空良くんに苺の形の作り方を教えていたところも入ってるわ」
「えー、恥ずかしいな」
「ちゃーんと、そこは将臣くんにプレゼントしておくから」
「もうっ!」
恥ずかしいけど、多分将臣ならみたいっていうはず。
それくらい、愛されている自信はある。
ピーッピーッ。
焼き上がった音が聞こえて、理央くんも空良くんも目を輝かせている。
本当に可愛い。
「熱いから触っちゃダメだよ」
しっかりと言い聞かせて、焼き上がったクッキーを天板ごと外に出す。
そしてクッキーを取り出して、網の上で冷ましていく。
「こっちが理央くんが作ったもの。そして、こっちが空良くんのだよ。冷めたら箱に詰めていこうね」
「わぁー! 美味しそう!!」
「本当、いい匂いするー!!」
そろそろ冷めた頃かな。
「じゃあ、プレゼントする以外のから、味見用に何枚かお皿に乗せようか」
「はーい!」
元気よくそう言っていたけれど、選ぶのは難しいみたい。
だってどれも頑張って作っていたもんね。
かなり悩んでいたけれど、二人はそれぞれ三枚の味見用のクッキーをお皿に取った。
「じゃあ、あっちでお茶しましょうか」
いつの間にかお母さんがテラスにお茶の準備を整えてくれていた。
そこはお母さんの大好きな花たちで囲まれている。
「わぁー、コンサバトリーみたい!」
「あら、理央くん。コンサバトリーを知ってるの?」
「はい。ロレーヌさんと弓弦くんのお家にありました」
「素敵でしょうね、ロレーヌ邸のコンサバトリーなんて……」
確かにあそこはものすごく素敵だった。
あの日々は忘れようと思ってもきっと一生忘れられない。
観月先生は、フランス移住に向けて準備していると仰ってた。
もう少し整ったら、理央くんにも告げるんだろう。
僕と将臣も誘われているけど、将臣はどうするんだろう。
僕は将臣のいるところならどこだってついていくんだけどな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「空良くん! みてみてー、ほら。うさぎだよ!」
「わぁー、可愛いっ! 僕のもみて! ほら、鳥さんだよ」
「ああー、可愛いっ!!」
理央くんも空良くんも型でくり抜くたびに嬉しそうな声をあげる。
その姿をお母さんは目を細めてみている。
「ふふっ。あなたにもあんな頃があったわね。ほら、初めて将臣くんにクッキーを焼いた時……」
「うん、覚えてる。懐かしいね」
何もないただの生地が可愛い形になって出来上がるのが嬉しかったんだ。
「あっ、この型……」
「覚えてる? あなたがヴァイオリンが好きだからって、将臣くんが買ってくれたのよね」
「そうそう。懐かしい~」
楽器シリーズの型はみんなでドイツに旅行に行った時、たまたま街の雑貨屋さんで見つけて気になってたら、将臣が買ってくれたんだ。
ヴァイオリンに、ホルン、ピアノにトランペット、トロンボーンなんて形も揃ってる。
それでクッキー焼いて行ったらしばらくの間、飾ってくれてたんだよね。
あれからしばらくクッキーといえば、あの型を使ってたっけ。
いろんな型でくり抜いたクッキーが天板に並んでいるけど、まだ生地は残ってる。
あっ、そうだ!
「ねぇ、理央くん。空良くん。この余った生地で可愛いのができるよ」
「えー、なになに? どうするんですか?」
手で擦ってしまったのか、打ち粉用の小麦粉をほっぺたにつけている理央くんと、同じくおでこに粉をつけちゃってる空良くん。
やっぱりこの二人は双子みたいで可愛い。
「いい? このプレーンの生地を大きな丸型でくり抜いて、その真ん中をこのハートの型でくり抜くんだよ。そして、こっちのピンクの生地を同じハートの型でくり抜いて、プレーンの生地の空いたところに嵌め込むの」
「わぁー、二色のクッキーになった! 可愛い!」
「ふふっ。これだけじゃないんだよ」
「なんだろう?」
不思議そうな顔をしている二人に見えるように作っていく。
「ハートの上の窪みに重なるように小さな星形の型でくり抜いて、抹茶生地を同じ星形の型でくり抜いて嵌め込んだら……」
「あっ! 苺みたい!!」
「ふふっ。せいかーいっ!! ピンクの生地にこうやって、白胡麻を飾ったら、ほら、もっと苺っぽく見えるでしょ?」
「秀吾さんっ、すごい! すごい! 魔法使いみたい!!」
「ふふっ。こんな感じでいろんな形でここにないものも作れるんだよ」
「わぁー! 僕も作ってみる!!」
「僕も! 僕も!」
理央くんと空良くんは二人して苺の形クッキーを作り始めた。
「あっ、上手!」
思っていた以上にくり抜くのがうまくて驚いてしまう。
「みてー、秀吾さん! こんなのできました!」
「あっ! 可愛いっ!!」
みると桜の花びらにくり抜かれたピンク生地の真ん中に小さな丸がくり抜かれ、そこに抹茶生地が嵌め込まれていて本物の花びらみたいに見える。
いろんなアイディアを出し合って、生地も全て使い切り、あとは焼くだけになった。
「ふふっ。たくさんできたわね。焼き上がったら味見がてらお茶しましょう」
「わぁー!」
「焼きたてを食べられるのが手作りのいいところだもんね」
大きなオーブンで一気に焼き上げていく。
もちろん、オーブンには理央くんも空良くんも一切近づかせない。
万が一にも火傷しちゃったら大変だもんね。
「わぁー、いい匂いがしてきましたー!!」
焼いて数分経つと、香ばしい匂いが漂ってくる。
二人とも待ちきれない様子で少し離れたところからオーブンの中身を見つめている。
「ふふっ。待ちきれない様子が可愛いわね」
「これもビデオに撮れてるの?」
「もちろんよ。あなたが理央くんと空良くんに苺の形の作り方を教えていたところも入ってるわ」
「えー、恥ずかしいな」
「ちゃーんと、そこは将臣くんにプレゼントしておくから」
「もうっ!」
恥ずかしいけど、多分将臣ならみたいっていうはず。
それくらい、愛されている自信はある。
ピーッピーッ。
焼き上がった音が聞こえて、理央くんも空良くんも目を輝かせている。
本当に可愛い。
「熱いから触っちゃダメだよ」
しっかりと言い聞かせて、焼き上がったクッキーを天板ごと外に出す。
そしてクッキーを取り出して、網の上で冷ましていく。
「こっちが理央くんが作ったもの。そして、こっちが空良くんのだよ。冷めたら箱に詰めていこうね」
「わぁー! 美味しそう!!」
「本当、いい匂いするー!!」
そろそろ冷めた頃かな。
「じゃあ、プレゼントする以外のから、味見用に何枚かお皿に乗せようか」
「はーい!」
元気よくそう言っていたけれど、選ぶのは難しいみたい。
だってどれも頑張って作っていたもんね。
かなり悩んでいたけれど、二人はそれぞれ三枚の味見用のクッキーをお皿に取った。
「じゃあ、あっちでお茶しましょうか」
いつの間にかお母さんがテラスにお茶の準備を整えてくれていた。
そこはお母さんの大好きな花たちで囲まれている。
「わぁー、コンサバトリーみたい!」
「あら、理央くん。コンサバトリーを知ってるの?」
「はい。ロレーヌさんと弓弦くんのお家にありました」
「素敵でしょうね、ロレーヌ邸のコンサバトリーなんて……」
確かにあそこはものすごく素敵だった。
あの日々は忘れようと思ってもきっと一生忘れられない。
観月先生は、フランス移住に向けて準備していると仰ってた。
もう少し整ったら、理央くんにも告げるんだろう。
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