ラブラブな僕たちが見守るイケメンアンドロイドの恋

波木真帆

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番外編

俺たちの約束

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他の作品で高校生時代のお話を書いたらこっちでも書きたくなりました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *

<side将臣>


「ねぇねぇ、将臣」

帰る前に担任から頼まれた用事を済ませて教室に戻ってきた途端、いきなり秀吾が駆け寄ってきてくれた。
俺に会えたのが嬉しいようでニコニコしているのが可愛い。

「どうした?」

「あのね、プリクラって知ってる?」

「プリクラ?」

「そう! ゲームセンターで写真が撮れるんだって! 僕、将臣と一緒に撮りに行きたい!!」

俺が職員室に行っている間に、秀吾の席の近くで集まって喋っていた女子たちがプリクラの話をしていたらしい。
気になってみていたら、その写真を見せてもらったそうだ。

「なんかね、猫耳とかウサギ耳とかついた写真も撮れるんだって」

「猫耳?」

想像がつかなくて頭の中がハテナになっていると、

「周防くん、これだよ。これ」

と彼女たちが撮ったプリクラを見せてくれた。

それには猫耳やらウサギ耳やらをつけた女子が三人でポーズを取っているが、俺の目にはそれが全て秀吾の顔に脳内変換されて見えている。

「かわっ――!!」

秀吾に猫耳……と思ったら可愛くて、慌てて口を押さえたけれど思わず言葉が漏れてしまったのを女子に聞かれてしまった。

「きゃーっ! 周防くんに可愛いって言われちゃった!!」

「えー、ずるーいっ!! 周防くん、私たちのもみてよ!」

「私のも!!」

なぜか、俺の前で諍いが起こり始めてわけがわからない。

「ねぇ、この中で誰が一番可愛い?」

最初に写真を見せてくれた女子が笑顔で近づいてくるけど、

「いや、可愛いのは秀吾だよ」

と正直に答えると、

「えっ? なんで? 今、これみて可愛いって言ってくれたじゃない!」

急に怒り出した。

「ああ、それ? 全部秀吾に見えてたから」

「ちょ――っ、それ、どういうこと?」

「どういうことって、そういうことだよ。俺、何でも秀吾にしか見えないから」

「えっ……」

シーンと教室が静まり返るけれど、いい加減わかってほしい。
俺には秀吾しか見えていないってことに。

「秀吾、帰りながらそのプリクラ撮って帰ろうか」

「うん。いく!」

茫然とその場に立ち尽くす女子たちをその場に放置して、俺は秀吾と一緒に教室を出た。

「ねぇ、さっきの本当?」

「んっ?」

「本当に、あの女の子たちを可愛いって言ったんじゃないの?」

「ふふっ。当たり前だろ。前から言ってるじゃないか。俺の中で一番可愛いのが秀吾だって」

「ふふっ。そっか」

そういって嬉しそうに笑う秀吾が可愛い。
このままキスをして、全てを奪いたいくらい俺は秀吾のことが好きだけど、まだ秀吾は俺にそこまでの気持ちは抱いていないかもしれない。
でも秀吾が俺のことをそういう意味でも好きなのは間違いない。
ただ、一歳で知り合って、幼稚園からはほとんど毎日のように会っていたからか、秀吾は家族愛と勘違いしているんだ。

でも、今はそれでいい。
高校を卒業したら、すぐに秀吾を俺のものにするつもりだから。
それまではずっとそばで見守るだけだ。


いつもなら学校から直接秀吾の家か、俺の家に向かうけれど、プリクラを撮れる商業施設に向かう。

「うわぁー、ゲームセンターなんて初めてだね。将臣は行ったことある?」

「俺もないかな。危ないこともあるから、秀吾は一人では絶対に行くなよ」

「うん、わかってる。お父さんからも将臣がいない時は寄り道しちゃいけないって言われてるもん」

「そうか、ならいい」

「あっ、みて! 将臣! あのぬいぐるみ、どこかでみたことある!!」

秀吾が興奮して教えてくれたのは、有名なお菓子のキャラクターのコアラ。
小学生の時、学校でやったゲームの景品でお菓子をもらって、一時期秀吾が気に入って食べていたやつだ。

「あれ、欲しいのか?」

「うん、でも難しそうだよ」

俺たちの前で何度もトライしている人がいるが、全く取れる気配がない。
結局「これ、絶対無理ー!」と叫んで違うものを狙いに行ったみたいだ。

これは大きい分、ピンポイントにいい場所に当てないと掴むのは難しそうだ。
それでもさっきの動きとこの大きさを考えれば、決して取れないわけではない。

「大丈夫だよ、俺に任せとけ」

そう言って、俺は財布から百円玉を取り出し投入口に入れた。

「将臣、頑張って!」

「ああ」

秀吾に恥ずかしいところは絶対に見せられない。

俺はレバーを駆使して、ボタンを押した。

クレーンが動いていって、コアラを掴む。

「――っ、すごいっ!! わぁー、もう少しっ!!」

ふわりとクレーンに掴まれたコアラはスポンと穴の中に落ちた。

「わぁっ!!! 将臣っ、すごいっ!! 天才っ!!!」

嬉しそうに飛び跳ねる秀吾を可愛いと思いながら、取り出し口から取ったコアラを手渡す。

「ほら、秀吾のだよ」

「ありがとう! 将臣っ、大切にするね!!」

ぎゅーっと抱きしめるのを見ると、少しコアラに嫉妬してしまうが喜んでくれる姿を見るのは嬉しい。

「じゃあ、プリクラ撮りに行こうか」

コアラを抱きしめながら可愛い笑顔を見せる秀吾を抱き寄せて、プリクラコーナーに向かった。

写真は一回四百円らしい。
ちょうど小銭があってよかった。

投入口にお金を入れ、秀吾と一緒にブースに入る。

「いろんなポーズで撮るのが楽しいんだって。あっ、これがカメラかな?」

「なるほど。ここ押したら猫耳やらウサギ耳やらが出てくるみたいだぞ」

「わぁー、楽しそう!! せっかくだから耳つけたい!!」

「ふふっ。わかったよ」

スタートを押すと写真撮影が始まった。

何秒かごとにシャッターが切られるらしい。

「将臣! こっちきて!! しゃがんで!!」

言われた通りに秀吾の高さにしゃがむと、嬉しそうに頬を寄せてくる。
ああ、可愛いな。

「ねぇ、こうしてハート作るのも流行ってるんだって!」

秀吾が片手を出してくるのと同じように手を合わせると、ハートの形ができる。
秀吾はそれをみて嬉しそうに笑った。

俺しか知らない笑顔で写真が撮られていく。

ああ、これいいかも。

「最後は猫耳だよ」

パシャっと撮られた俺たちの写真には可愛い耳とヒゲがついていて、ほんのり頬も赤かった。

「ふふっ。将臣、可愛いっ!!」

俺の写真はともかく、確かに秀吾のはものすごく可愛い。

ああ、今日はこれだけでも興奮できそうだ。

「将臣、これ……誰にも見せちゃダメだよ」

「なんで?」

「だって……将臣がカッコ良すぎるから」

「秀吾……」

そんなことを言ってくるのに、秀吾はまだ俺たちがただの幼馴染だと思ってるんだよな。
まぁ、そんな無自覚だから他のやつの好意にも気づかなくて助かるんだけど。

「わかったよ、誰にも見せない。約束な」

そう言って、俺は秀吾の頬にちゅっとキスをした。

「ほら、秀吾も約束して」

すると秀吾も少し顔を赤くしながら、俺の頬にキスをしてくる。

これは俺たちが小学生の時に決めた約束の決まり。

これは一生変わらない俺たちの約束だ。
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