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番外編
出発当日 <前編>
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「少し早く着きすぎちゃったかな?」
「遅れるより全然いいだろ。先に中に入ってゆっくりしとこう」
「うん、そうだね」
フランス旅行が楽しみすぎて、早々と空港についてしまった僕たちは、前もって聞いていたプライベートジェット用の出国ゲートに向かった。
さすがプライベートジェットだけあって荷物の検査もあっという間に終わり、パスポートを見せただけで大した質問もなく出国手続きは終わってしまった。
普通の飛行機の出国手続きに比べると3分の1の時間もかかっていないかもしれない。
こんな楽な旅行に慣れてしまったら、普通の飛行機に乗れなくなっちゃいそうで怖いな。
今回は特別だからと自分に言い聞かせながら、待合ルームに置かれたソファーに将臣と一緒に座った。
「秀吾、ずっと嬉しそうだな」
「当たり前だよ、だってこれから一週間もフランスに行くんだよ。将臣と海外行くのも久しぶりだし、それにお互いの両親以外との旅行は初めてだからなんかワクワクしちゃう」
「そうだな。家族旅行と友人との旅行は別物だろうしな。それに冬のパリはまだ行ったことがなかったから楽しみだな」
「ふふっ。将臣が寒がりだからでしょ? 冬の旅行はいつもあったかいところだもんね」
「ああ、寒がりだからあっちでは秀吾が離れずにずっと温めてくれよ」
「ふふっ。任せて」
大きな窓から見える飛行機を眺めながら、僕たちは寄り添って座っていると
「あっ、秀吾さん! はやーいっ、もう着いてた」
と元気いっぱいの佳都くんの声が聞こえた。
さっと出国手続きを終わらせた佳都くんと綾城さんは僕たちの近くのソファーに腰を下ろした。
「二人ともコーヒー飲まないか?」
「はい。いただきます」
綾城さんの言葉に将臣が答えると、さっと手をあげてスタッフさんを呼んでくれた。
綾城さんはブラックコーヒー。
佳都くんはミルクとお砂糖が入ったカフェオレを頼み、僕たちもそれぞれ同じものを頼んだ。
ブラックが飲めないこともないけど、やっぱりミルクとお砂糖が入っているコーヒーの方が僕は好きだな。
すぐにコーヒーが運ばれてきたと思ったら、
「こちらはコーヒーに合う焼き菓子でございます。よろしければお召し上がりください」
とクッキーも一緒に出してくれた。
あれ? このクッキー、見覚えがあるな……。
「わぁ、美味しそう。ありがとうございます」
嬉しそうにお礼を言った佳都くんは、嬉しそうに
「秀吾さん、食べよう」
と手渡してくれる。
「いただきます」
一緒に口に入れて、すぐにお互い目があった。
「んっ、美味しいっ!」
「これ、Mielの限定クッキーだね」
「うん、間違いないよ!」
「ここで食べられるとは思ってなかったな」
「ほんと、ほんと」
まさか、僕と佳都くんが大好きなMielのクッキーがここで食べられるなんて思ってもなかった。
「すごい偶然だよね」
と佳都くんは言っていたけど、あのロレーヌ総帥のことだ。
きっと僕たちの好みとか全部わかった上で準備してくれているんだろうな。
ここまで気遣ってくれるなんて……。
さすがロレーヌ一族の総帥。
こんなにすごい人とお知り合いになれるなんて……今でも驚きだよ。
僕と佳都くんがクッキーに夢中になっている間、将臣は綾城さんとなんだか真剣に話をしている。
真剣な表情の将臣ってやっぱりかっこいいな。
ついつい見惚れてしまう。
「ふふっ。秀吾さん……周防さんに釘付けだね」
「えっ? いや……そんなこと……ある、かな……」
「ふふっ。ある、ある。秀吾さんが周防さんと一緒にいるところはあまり見たことがなかったけど、やっぱり観月さんの事務所で見る秀吾さんと違って、可愛いね」
「そんなこと……っ」
「ふふっ。ある、でしょ?」
にっこりと微笑まれると、もう否定もできない。
「もう、佳都くんには参ったな。将臣といると、ついつい甘えモードになっちゃうから僕も困ってるんだ」
「幼馴染だって言ってましたもんね。いいんじゃないですか? 周防さんも甘えてくれる方が嬉しいだろうし」
「でも、観月さんに見られて笑われるのが恥ずかしいよ」
「ああ、それは大丈夫ですよ。だって、観月さんの方がびっくりするくらい甘々でラブラブだし他の人なんて目に入ってすらなさそう……」
「ははっ。それは確かに」
アンドロイドのようにいつも同じような感情しかなかった観月先生の目に光が灯ったのを見た時、驚いたものだ。
理央くんと出会ってからの先生は今までの無感情が嘘のようにいつでも幸せそうだ。
もちろん、甘々な視線も蕩けるような笑顔も理央くんに向けてだけだけど。
今回の旅行では、さらに違う先生の姿を見られるんだろうな……。
ふふっ、それも今回の旅の楽しみの一つかな。
「ねぇねぇ、そういえばサプライズの件はどうですか?」
「ああ、あれから必死で練習したよ。将臣にも何度も聞いてもらったから、なんとか形にはなるかもしれない」
「わぁ、よかった。ねぇ、アレは周防さんにも内緒にしてくれてるよね?」
アレと言われて、僕は一気に顔が赤くなる。
だって、サンタのコスプレだよ?
しかも……ミニスカ。
「もちろん、恥ずかしくて言ってないよ」
「ふふっ。よかった。せっかくのサプライズは驚く人がいっぱいいる方が楽しいからね」
いたずらっ子のような笑顔を見せる佳都くんは本当に可愛い。
弓弦くんとミシェルさんにもミニスカサンタのコスプレをしてもらう予定らしいけど、あの二人も可愛いから多分問題ないだろう。
僕だけすっごく浮いちゃったらどうしよう……。
他の人に何を思われるのは構わないけど、将臣に呆れられないといいな……。
「遅れるより全然いいだろ。先に中に入ってゆっくりしとこう」
「うん、そうだね」
フランス旅行が楽しみすぎて、早々と空港についてしまった僕たちは、前もって聞いていたプライベートジェット用の出国ゲートに向かった。
さすがプライベートジェットだけあって荷物の検査もあっという間に終わり、パスポートを見せただけで大した質問もなく出国手続きは終わってしまった。
普通の飛行機の出国手続きに比べると3分の1の時間もかかっていないかもしれない。
こんな楽な旅行に慣れてしまったら、普通の飛行機に乗れなくなっちゃいそうで怖いな。
今回は特別だからと自分に言い聞かせながら、待合ルームに置かれたソファーに将臣と一緒に座った。
「秀吾、ずっと嬉しそうだな」
「当たり前だよ、だってこれから一週間もフランスに行くんだよ。将臣と海外行くのも久しぶりだし、それにお互いの両親以外との旅行は初めてだからなんかワクワクしちゃう」
「そうだな。家族旅行と友人との旅行は別物だろうしな。それに冬のパリはまだ行ったことがなかったから楽しみだな」
「ふふっ。将臣が寒がりだからでしょ? 冬の旅行はいつもあったかいところだもんね」
「ああ、寒がりだからあっちでは秀吾が離れずにずっと温めてくれよ」
「ふふっ。任せて」
大きな窓から見える飛行機を眺めながら、僕たちは寄り添って座っていると
「あっ、秀吾さん! はやーいっ、もう着いてた」
と元気いっぱいの佳都くんの声が聞こえた。
さっと出国手続きを終わらせた佳都くんと綾城さんは僕たちの近くのソファーに腰を下ろした。
「二人ともコーヒー飲まないか?」
「はい。いただきます」
綾城さんの言葉に将臣が答えると、さっと手をあげてスタッフさんを呼んでくれた。
綾城さんはブラックコーヒー。
佳都くんはミルクとお砂糖が入ったカフェオレを頼み、僕たちもそれぞれ同じものを頼んだ。
ブラックが飲めないこともないけど、やっぱりミルクとお砂糖が入っているコーヒーの方が僕は好きだな。
すぐにコーヒーが運ばれてきたと思ったら、
「こちらはコーヒーに合う焼き菓子でございます。よろしければお召し上がりください」
とクッキーも一緒に出してくれた。
あれ? このクッキー、見覚えがあるな……。
「わぁ、美味しそう。ありがとうございます」
嬉しそうにお礼を言った佳都くんは、嬉しそうに
「秀吾さん、食べよう」
と手渡してくれる。
「いただきます」
一緒に口に入れて、すぐにお互い目があった。
「んっ、美味しいっ!」
「これ、Mielの限定クッキーだね」
「うん、間違いないよ!」
「ここで食べられるとは思ってなかったな」
「ほんと、ほんと」
まさか、僕と佳都くんが大好きなMielのクッキーがここで食べられるなんて思ってもなかった。
「すごい偶然だよね」
と佳都くんは言っていたけど、あのロレーヌ総帥のことだ。
きっと僕たちの好みとか全部わかった上で準備してくれているんだろうな。
ここまで気遣ってくれるなんて……。
さすがロレーヌ一族の総帥。
こんなにすごい人とお知り合いになれるなんて……今でも驚きだよ。
僕と佳都くんがクッキーに夢中になっている間、将臣は綾城さんとなんだか真剣に話をしている。
真剣な表情の将臣ってやっぱりかっこいいな。
ついつい見惚れてしまう。
「ふふっ。秀吾さん……周防さんに釘付けだね」
「えっ? いや……そんなこと……ある、かな……」
「ふふっ。ある、ある。秀吾さんが周防さんと一緒にいるところはあまり見たことがなかったけど、やっぱり観月さんの事務所で見る秀吾さんと違って、可愛いね」
「そんなこと……っ」
「ふふっ。ある、でしょ?」
にっこりと微笑まれると、もう否定もできない。
「もう、佳都くんには参ったな。将臣といると、ついつい甘えモードになっちゃうから僕も困ってるんだ」
「幼馴染だって言ってましたもんね。いいんじゃないですか? 周防さんも甘えてくれる方が嬉しいだろうし」
「でも、観月さんに見られて笑われるのが恥ずかしいよ」
「ああ、それは大丈夫ですよ。だって、観月さんの方がびっくりするくらい甘々でラブラブだし他の人なんて目に入ってすらなさそう……」
「ははっ。それは確かに」
アンドロイドのようにいつも同じような感情しかなかった観月先生の目に光が灯ったのを見た時、驚いたものだ。
理央くんと出会ってからの先生は今までの無感情が嘘のようにいつでも幸せそうだ。
もちろん、甘々な視線も蕩けるような笑顔も理央くんに向けてだけだけど。
今回の旅行では、さらに違う先生の姿を見られるんだろうな……。
ふふっ、それも今回の旅の楽しみの一つかな。
「ねぇねぇ、そういえばサプライズの件はどうですか?」
「ああ、あれから必死で練習したよ。将臣にも何度も聞いてもらったから、なんとか形にはなるかもしれない」
「わぁ、よかった。ねぇ、アレは周防さんにも内緒にしてくれてるよね?」
アレと言われて、僕は一気に顔が赤くなる。
だって、サンタのコスプレだよ?
しかも……ミニスカ。
「もちろん、恥ずかしくて言ってないよ」
「ふふっ。よかった。せっかくのサプライズは驚く人がいっぱいいる方が楽しいからね」
いたずらっ子のような笑顔を見せる佳都くんは本当に可愛い。
弓弦くんとミシェルさんにもミニスカサンタのコスプレをしてもらう予定らしいけど、あの二人も可愛いから多分問題ないだろう。
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