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愛するふたり
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「それでどんな子なんだ? 観月先生の大事な子って」
「うん、まだ僕も詳しいことは聞いていないんだけど……悠木さんの依頼で出かけた先にその子がいたみたい」
「へぇー、それはまたすごい偶然だな」
「そうなんだよ。悪い人たちに騙されそうになってたところを先生が助け出して、それでお礼を言いに事務所に来てくれたみたい」
「みたいって……秀吾はその子に会わなかったのか?」
「うん。先生の帰りを外で待ってたみたいでね。先生、その子を見つけてそのまま自宅に上がっちゃったんだよ」
そう言うと、将臣の目が大きく開いた。
「それは、本物だな」
「でしょう?」
「ああ、だって観月さんが自宅に入れるのってほとんどないだろう?」
「うん。僕も自宅には上がらせてもらったことないよ」
「それをあった初日に入れるなんて……。ああ、それなら大事な子だって納得だな。でも、よかったじゃないか。綾城さんにいい子ができたって話してたら、悠木さんも観月さんも立て続けに……」
「やっぱり運命ってあるんだなって思ったよ。一つの糸が繋がったら連鎖するんだね」
「俺たちが出会ったのも運命だったしな」
そう言って将臣は幸せそうに僕を抱きしめた。
「前に、こんなに早く運命に出会えて羨ましいって観月さんに言われたろ?」
「うん、初めて会ったの日だよね」
「俺……秀吾ともし幼馴染じゃなかった人生考えたんだけど……多分、どれだけ回り道しても秀吾に出会うって確信したよ」
「ふふっ。僕のこと見つけてくれるの?」
「ああ、どれだけ離れてても絶対に探し出してみせるよ」
「将臣がそう言うとそうなる気がする」
「秀吾……愛してるよ」
僕も愛してる……という言葉は将臣の唇に阻まれてしまったけれど、きっとその想いは伝わっているだろう。
だって僕たちは運命の糸で繋がっているんだから……。
その後、木坂理央くんという先生の大事な子はそのまま先生の自宅で暮らすようになった。
しかも先生以外、誰も入ったことがない3階の完全プライベートエリアに理央くんの部屋まで作ったというのだから驚きだ。
あまりにも尽くしまくりの先生の様子に驚きながらも、毎日生き生きと過ごす先生の姿を見ているとこっちまで元気をもらえる気がする。
現に仕事がかなり捗っていて、楽しいんだ。
彼が先生の自宅に住むようになって数日後、夜に突然電話がかかってきた。
「あれ? こんな時間に珍しいな。何かあったのかな?」
「そうだな、気になるから早く取ったほうがいい」
将臣とそろそろ寝室に行こうかなんて話していたタイミングで何事かと思い電話を取ると、先生が申し訳なさそうな声で
ー榊くん、悪い。明日少し早く出社できないか?
と尋ねてきた。
早く出社するのは全然構わないけれど、残していた仕事も急ぎの仕事もなかったはずだけどな……。
飛び入りで大変な仕事でも入ったんだろうかと気になって聞いてみると、どうやら事務所の奥にある打ち合わせ用の防音部屋を理央くんが勉強できるように環境を整えたいという話だった。
一人で勉強できるようにと3階に自室を作ったはずだったのにと思っていると、先生は心配そうな声で、彼が集中しすぎて一人じゃ居させられないと言い出した。
なるほど。
先生にとって少しの時間でも心配で目を離したくないということなんだろう。
そのために扉に人感センサーをつけて声をかけなくても光で人が来たことを知らせるものを付けたいらしい。
理央くんは生まれ育った施設でかなり大声で罵倒されながら過ごしてきたそうで、突然声をかけられるのをかなり怖がるそうだ。
そういうところもちゃんと配慮してあげる先生の優しさに胸を打たれた。
本当に理央くんが大事なんだな……。
ふふっ。以前の先生の姿は見る影もないな。
明日ようやく理央くんを紹介してくれるという先生に
――先生が初めて好きになった理央くんに会うのを楽しみにしてます。
と伝えると、突然声色が真剣になり、
ー言っとくが手を出したら……
と凄んできた。
ふふっ。
僕に将臣がいるってわかってて牽制しちゃうくらい心配なんだなと思うと思わず笑ってしまう。
そんなの心配無用だと伝えると、ようやく将臣の存在を思い出したのが謝ってくれたけれど、アンドロイドのように感情を出すこともなかった先生から嫉妬が見えたのが嬉しい。
ああ、明日は先生の大事な理央くんのために頑張るとするか。
「秀吾、観月さんなんだって?」
「ふふっ。僕、牽制されちゃったよ」
「牽制?」
「うん。先生の大事な理央くんに手を出したら許さないって」
「ははっ。相当重症だな」
「だよね?」
「ああ、だって俺の秀吾が他に目移りなんてするわけないってわかってるんだろうに……」
「ふふっ。それくらい理央くんに恋してるんだよ」
「だな。じゃあ、もっと幸せになれるように俺たちが見せつけてやろうか」
「ふふっ。将臣ったら……」
僕たちは観月先生とまだ見ぬ理央くんのカップルに幸せのお裾分けをするべく、深く愛し合った。
けれど、翌日、それが余計なお節介だったと気づいた。
だって、先生が見たこともないほどの笑顔で可愛い理央くんのラブラブを見せつけられているんだもん。
ああ、本当に幸せそう。
先生、本当におめでとう。
よかったね。
これからも僕は将臣と一緒にずっと先生と理央くんの愛を見守り続けますよ。
「うん、まだ僕も詳しいことは聞いていないんだけど……悠木さんの依頼で出かけた先にその子がいたみたい」
「へぇー、それはまたすごい偶然だな」
「そうなんだよ。悪い人たちに騙されそうになってたところを先生が助け出して、それでお礼を言いに事務所に来てくれたみたい」
「みたいって……秀吾はその子に会わなかったのか?」
「うん。先生の帰りを外で待ってたみたいでね。先生、その子を見つけてそのまま自宅に上がっちゃったんだよ」
そう言うと、将臣の目が大きく開いた。
「それは、本物だな」
「でしょう?」
「ああ、だって観月さんが自宅に入れるのってほとんどないだろう?」
「うん。僕も自宅には上がらせてもらったことないよ」
「それをあった初日に入れるなんて……。ああ、それなら大事な子だって納得だな。でも、よかったじゃないか。綾城さんにいい子ができたって話してたら、悠木さんも観月さんも立て続けに……」
「やっぱり運命ってあるんだなって思ったよ。一つの糸が繋がったら連鎖するんだね」
「俺たちが出会ったのも運命だったしな」
そう言って将臣は幸せそうに僕を抱きしめた。
「前に、こんなに早く運命に出会えて羨ましいって観月さんに言われたろ?」
「うん、初めて会ったの日だよね」
「俺……秀吾ともし幼馴染じゃなかった人生考えたんだけど……多分、どれだけ回り道しても秀吾に出会うって確信したよ」
「ふふっ。僕のこと見つけてくれるの?」
「ああ、どれだけ離れてても絶対に探し出してみせるよ」
「将臣がそう言うとそうなる気がする」
「秀吾……愛してるよ」
僕も愛してる……という言葉は将臣の唇に阻まれてしまったけれど、きっとその想いは伝わっているだろう。
だって僕たちは運命の糸で繋がっているんだから……。
その後、木坂理央くんという先生の大事な子はそのまま先生の自宅で暮らすようになった。
しかも先生以外、誰も入ったことがない3階の完全プライベートエリアに理央くんの部屋まで作ったというのだから驚きだ。
あまりにも尽くしまくりの先生の様子に驚きながらも、毎日生き生きと過ごす先生の姿を見ているとこっちまで元気をもらえる気がする。
現に仕事がかなり捗っていて、楽しいんだ。
彼が先生の自宅に住むようになって数日後、夜に突然電話がかかってきた。
「あれ? こんな時間に珍しいな。何かあったのかな?」
「そうだな、気になるから早く取ったほうがいい」
将臣とそろそろ寝室に行こうかなんて話していたタイミングで何事かと思い電話を取ると、先生が申し訳なさそうな声で
ー榊くん、悪い。明日少し早く出社できないか?
と尋ねてきた。
早く出社するのは全然構わないけれど、残していた仕事も急ぎの仕事もなかったはずだけどな……。
飛び入りで大変な仕事でも入ったんだろうかと気になって聞いてみると、どうやら事務所の奥にある打ち合わせ用の防音部屋を理央くんが勉強できるように環境を整えたいという話だった。
一人で勉強できるようにと3階に自室を作ったはずだったのにと思っていると、先生は心配そうな声で、彼が集中しすぎて一人じゃ居させられないと言い出した。
なるほど。
先生にとって少しの時間でも心配で目を離したくないということなんだろう。
そのために扉に人感センサーをつけて声をかけなくても光で人が来たことを知らせるものを付けたいらしい。
理央くんは生まれ育った施設でかなり大声で罵倒されながら過ごしてきたそうで、突然声をかけられるのをかなり怖がるそうだ。
そういうところもちゃんと配慮してあげる先生の優しさに胸を打たれた。
本当に理央くんが大事なんだな……。
ふふっ。以前の先生の姿は見る影もないな。
明日ようやく理央くんを紹介してくれるという先生に
――先生が初めて好きになった理央くんに会うのを楽しみにしてます。
と伝えると、突然声色が真剣になり、
ー言っとくが手を出したら……
と凄んできた。
ふふっ。
僕に将臣がいるってわかってて牽制しちゃうくらい心配なんだなと思うと思わず笑ってしまう。
そんなの心配無用だと伝えると、ようやく将臣の存在を思い出したのが謝ってくれたけれど、アンドロイドのように感情を出すこともなかった先生から嫉妬が見えたのが嬉しい。
ああ、明日は先生の大事な理央くんのために頑張るとするか。
「秀吾、観月さんなんだって?」
「ふふっ。僕、牽制されちゃったよ」
「牽制?」
「うん。先生の大事な理央くんに手を出したら許さないって」
「ははっ。相当重症だな」
「だよね?」
「ああ、だって俺の秀吾が他に目移りなんてするわけないってわかってるんだろうに……」
「ふふっ。それくらい理央くんに恋してるんだよ」
「だな。じゃあ、もっと幸せになれるように俺たちが見せつけてやろうか」
「ふふっ。将臣ったら……」
僕たちは観月先生とまだ見ぬ理央くんのカップルに幸せのお裾分けをするべく、深く愛し合った。
けれど、翌日、それが余計なお節介だったと気づいた。
だって、先生が見たこともないほどの笑顔で可愛い理央くんのラブラブを見せつけられているんだもん。
ああ、本当に幸せそう。
先生、本当におめでとう。
よかったね。
これからも僕は将臣と一緒にずっと先生と理央くんの愛を見守り続けますよ。
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